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性的行動:英語版


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幼児性的虐待による
不適切な性的行動に対する療法

不適切な性的行動
査定
療法
結論
参照文献

性的幼児虐待を受けた子供達に関する過去の研究で、2歳児から早くも不適切な性的行動を見せ始めるという結果が出ている。(10, pp.229-230) そのような幼児の性的行動には、さまざまな要因が関係していると考えられている。その中でも一番よく見られる要因として、親子間の不穏、親の感情的社会的能力の低下、うつ病、行動障害、ADHD(行動欠陥多動性障害)などの精神障害、身体的虐待経験などが挙げられる。(1 4 6 9) 性的幼児虐待経験のある子供達の不適切な性的行動には、このように多くの要因が関係しているため、子供達の環境や、問題とされている行動の特性などの多様性を考慮した上で、適切な処置をされるべきである。


不適切な性的行動

性的幼児虐待の及ぼす一般的な影響として、子供達の不適切な性的行動が挙げられる。(13) なぜこのような行動が発達するのか、その理由を示すものとして様々な理論が提案され、更に、どの様な行動を「不適切」とみなすか、その定義も幅広いものだが、一般的に不適切な性的行動とは、公的あるいは過度の自慰行為、繰り返し他者(子供も大人も含める)の体を触る、自己露出、性行為に対する過度の不安、近親相姦などの攻撃的性的行動などが含まれる。(1 6,p.254 10,p.227 13 15,pp.42-43 16,pp.114-115) この様な行動は、子供達の環境や発達段階などの背景も考慮し、細かく明確に査定されるべきである。(10,p.236) 攻撃的性的行動は、問題ある行為、倒錯した行為とみなされ、常に適切な処置を施す必要があるが、自慰行為や自己露出などのその他の性的行動は、子供の年齢を十分に考慮した上で、慎重に査定されなければならないのだ。というのも、性的行動は子供一般、特に4歳から6歳の間の子供の中では普通に見られるもので(6, p.255 10, p.233)、そのような行動の査定には子供の発達についての知識が不可欠なのである。


不適切な性的行動の分類:
子供の性的行動を分類するには様々な方法があるが、最も一般的な分類基準として、子供の平均発達段階と照らし合わせて標準的な行動かどうか、そして、その行動が暴力的か、他人に強制するものかどうかが挙げられる。(1 6,p.244 9 13) その他に、子供の家族の特性、幼児虐待経験の有無、精神障害の有無など、性的行動そのものよりも、性的行動を見せる子供たちに関する要素に基づいて分類する研究者もいる。(13) しかし殆どの場合は、発達段階的適当性と身体的暴力の有無が分類基準として使われることが多い。

例えば、Adams, McClellan, Douglass, McCurry, and Storck (1995) は子供の性的行動を三つに分類分けしている。(1)軽い過度性的行動(軽く他者の体を触る)。(2)自己露出(公的自慰行為や露出)(3)他人を傷つける行為(性的いたずら行為、近親相姦、レイプなど) Hall, Mathews, and Pearce (2002)は3つの発達段階的部類と、3つの身体暴力的部類を使った分類分けをしている。(1)発達段階的に標準行為 (2)発達段階的に異常行為−自己集中型 (3)発達段階的に異常行為−対人型。この三番目の部類は更に、以下の3つの身体暴力的部類に分けられる。(1)非計画的−非暴力的 (2)計画的−非暴力的 (3)計画的−暴力的。これらの分類方法は主に、実験や研究結果ではなく、臨床観察や理論的な見地に基づいて作られたもので、性的反動型行動と性的攻撃型行動の区別の必要性を示唆している。(7,p.110) これまでの文献によると、子供の異常性的行動に対するカウンセリングその他の処置過程や方法は、その行為が暴力を使ったものなのか、また、なぜ子供がそのような行動を取るのか、その理由によって、大きく異なる必要があるようである。(7 p.110 9 13 14)


不適切な性的行動の発達に関する理論:
行動派的観点: 行動派によると、性的幼児虐待を受けた子供たちは、行動模写と対連合学習によって、性的行動を見せるようになるという。(2 3 6, p.251) 性的虐待を受ける過程で、子供たちは性的行動を学び、更にはそれを模写するようになるのだ。ということは、彼らの性的行動は、自分の性的虐待経験を単に反射しているだけとも言える。(10 p.229-230) また、性的虐待を受ける子供達の中には、性的行動を、喜びや愛情、注目などの肯定的感情と結びつけて考えているために、そのような行動を見せるという場合もある。

精神分析派的観点: 幼児虐待を受ける子供たちは、性的虐待加害者の行為を内面化し、加害者との一体化を経験する場合がある。(2 6 p.252 15 p.43) その場合子供たちは、自分の性的虐待経験で失われた力と支配の感覚をもう一度取り戻すために、性的虐待の加害者として、虐待を追経験する必要に駆られるという。(6, p.252 10, p.240, 11 15, p.43)

社会学習派的観点: 性的に攻撃的な子供たちは多くの場合、同時に、反抗挑戦性障害(ODD:Oppositional Defiant Disorder)や性的行動化を伴う行動障害(CD:Conduct Disorder)をもっている場合が多い。(1) 家族の崩壊や親の子供に対する管理不行き届き、子育て技術の不足などが、家族間での攻撃的相互関係と伴って、子供たちを攻撃的性的行動へと導いてしまっている場合もある。(6, p.246-247 9) この場合、子供の攻撃的性的行動は、自分の虐待経験に直接反応しているというよりは、行動障害の一部であると考えられる。(6, p.259)

その他: 幼児虐待を受ける子供たちは更に、性的な問題に過度に敏感になっていることがあり、そのような場合、子供たちは性的な問題に対応するに当たって、性的行動に強い魅力を感じる場合がある。(16, p.145) そして同時に、彼らは自分たちのことを「悪い人間」だと感じ、その為に自己非難や性的行動化を体験してしまうこともある。(5)その他に性的行動化の理由として考えられるのは、幼児段階で性的虐待を経験する子供達の多くは、健康的な愛着形成や社会学習の過程を通過しておらず、結果的に、他者への共感能力に欠けている場合があるということだ。(6, p.253 5, p.212) その為に、他者の目からものを見ることが困難になり、性的に攻撃的になってしまうというものだ。

子供の不適当な性的行動や攻撃的性的行動の発達に関するこれらの理論は、子供たちを性的行動へと駆り立てるその理由やメカニズムによって、カウンセリングその他の処置の過程や技法がどのように変化するべきなのかを示唆している。性的幼児虐待を受けた子供達は、誰一人として、他の子供たちと全く同じ虐待経験を持ったり、全く同じ症状を全く同じ程度で経験することはない為、カウンセリングやその他の処置内容は子供一人一人、その状況や症状に合わせて変更されるべきである。(9 14) 更に、暴力を使ったり、性的行動を取るにあたって他者を脅したりする性的攻撃的な子供達と、自己の性的虐待経験への直接的反応としてのみ不適当な性的行動を見せる性的反応型子供達は、カウンセリングその他の処置の以前やその過程途中で、明確に区別されるべきである。(7, p.110)


不適切な性的行動の査定

子供の不適切な性的行動を減少させようとする前に、子供やその家族、性的行動などについての詳細な査定が行われる必要がある。まず初めに、不適切な性的行動そのものを細かく調べる必要がある。子供の保護者は不適切な性的行動の存在に気付いていないかも知れず、あるいは、自己防御が働いてそのような行動を問題視しない可能性もある為、保護者との直接的な面接以外に、性的行動の客観的計測尺度を用いる必要のある場合もある。(7 , p.145) それらの方法で、不適切な性的行動の種類、現れる頻度、時間、場所などを査定しなければならない。(6, p.255 10, p.234) こうして性的行動自体を詳細に査定していくことによって、セラピストは子供の発達過程で自然に現れる性的行動と、性的反応型行動とを見分けることができるのである。

同様に、子供の虐待経験や性的行動に対する保護者の反応や、保護者が子供の性的行動に見出す意味も査定する必要がある。小さな子供は認知能力や経験に欠ける為、自分の性的虐待経験や不適切な性的行動が社会的に何を意味するのかわからずにいる事が多い。それ故に、自分が性的虐待を受けた、ということの意味を、親の反応を見て学んでいくのである。(10, p.229) その為、子供が虐待の経験を語ったり、その経験から起きた性的行動を取った時などに、保護者が不適当な反応を取ってしまうと、子供達は時として、虐待そのものの経験よりも保護者のネガティブな反応によって傷ついてしまうこともあるのだ。(10, p.229)

更に、親と子供の関係も査定する必要がある。(6, p.255) 親への愛着は子供の発達過程においてとても重要な為、親や親の代理が子供にとって十分に精神的な支えとなることは、性的虐待を含むあらゆる精神的外傷をもつ子供達を治療するのに最重要要素となるのである。(11 13 14) 実際に過去の研究結果では、性的虐待経験のある子供が親やその代理と良い関係を保っている場合、その子の不適切な性的行動も予後が良好とされているのだ。(11 13 14)

また、保護者の現在の精神的機能も査定されなければならない。子供が性的虐待を受けた場合、恐らくその親自身も、その事実を乗り越える為に個人やグループのカウンセリングを受ける必要があると思われる。(11) 性的虐待を受けた子供を治療する過程では、保護者はとても重要な役割を担うことになるので、その役割を果たせるよう、必要ならば保護者もカウンセリングなどのメンタルケアを受けるべきなのだ。(8 10, p.243 13) 更に、子供が攻撃的な性的行動を見せている場合、他の子供達や場合によっては大人を傷つけない為に、保護者は子供の行動に規制を作ったり、行動を注意深く管理する必要も出てくる。(6, p.255, p.260 13) もし子供が性的に攻撃的で、親や親の代理が子供の行動を管理することができない場合、子供は少なくとも一時的に、生活支援型の機関や施設に入ることが望ましい。(2 6, p.260)


不適切な性的行動の療法と考慮すべき事項

療法に当たって考慮すべき事項:
性的虐待経験があり、不適切な性的行動をみせる子供に接する場合、セラピストが考慮しなければならない事柄がある。これらの事柄は治療過程を妨害する恐れがある為、できれば最初のうちに解決されるのが望ましい。しかし、たとえ治療過程の初めに解決されたとしても、セラピストは常にそれらの事柄を心にとどめておく必要がある。

まず、子供はセラピストに自分の支配力や自治権などに関する感情をセラピストに転移させることがある。セラピストは子供にとって、幼児虐待経験の中での権威者、つまり虐待者や子供を虐待から守れなかった親などと同じく、権威をもった者として見られる為、子供はセラピストに対して不の感情を抱くことがあるのだ。また、子供が正常な境界線内での関係に不安を感じる場合、セラピストやセラピストとの境界線をコントロールしようとするケースもある。(11)

あるいは、セラピスト自身が子供の性的行動に怒りや恐怖、嫌悪感を抱くことで逆転移を経験することもある。(6, p.242 11) 親や親代理が子供の性的行動に対して、子供を避けたり罰を与えるという反応を示すことがよくあるが、そのような反応は子供にとっての強化反応ともなり得る為、子供の性的行動を増加させたり、子供とセラピストとの距離を隔たせることになる場合もある。(6, p.242 11)

不適切な性的行動を見せる子供の保護者は、時として自分の子供がそのような行動を取っているということを認識しない場合がある。幼い子供は性的な生き物ではないと単純に信じている場合もあれば(2 10, p.240 15, p.168)、子供が性的虐待を受けてしまったことで罪悪感を感じたり自分を責めたりする余り防御的になって、子供がそんな問題を抱えていると認めない場合もある。(2 6, p.168) どちらの場合も、子供の正常な発達と性的関心についてや、性的虐待の子供に及ぼす影響についてなどの情報や教育を受けることによって、保護者の認識は変えることができる。(11) また、保護者も、子供の問題と向き合う為の能力を身に付けたり、子供の性的関心や性行動について話し合えるように訓練を受けることで、子供の不適切な性的行動を減らす第一歩となる場合もある。(11)


不適切な性的行動を見せる子供への療法:
過剰な性的行動を減少させるには、保護者、教師、保育士など、子供の生活の複数の分野でのケアが必要となってくる。(10, p.236 16 ,p.145) 子供の行動や態度に常に注意を払い、一貫した管理を行うことが最重要な要素となる為、子供の保護者や家族は特に大切な存在である。(8 10, p.236 13) 同時に、個人カウンセリングや家族セラピー、グループセラピー、必要な場合には生活支援型施設など、様々なケアを利用する可能性も検討しなければならない。(2) 子供が過度な攻撃型性的行動を見せ、更に保護者が子供のそのような行動を抑制したり管理することができない時は、少なくとも一時的に、子供は生活支援型施設に入った上で治療を受ける必要がある。そのような場合は兄弟など周りにいる子供達に被害を及ぼす可能性が高い為、その子供は少しの間だけでも家から離れて暮らさなければならないのだ。(6, p.260)


認知行動療法
性的虐待を受けた子供達の治療に関する研究では、不適切な性的行動を減少させるには、認知行動療法(CBT)が非指示的支援セラピーなど他の療法よりも一般的に効果があるという結果が出ている。(3 7 , p.130 12 14) CBTとは、子供がもつ問題の認知的要素と行動的要素の両方に焦点を当てるものである。

認知的要素とは、感情、考え、そして行動の関係を含み、子供はその三つの要素の関係と、性的虐待がそれらにどのような影響を与えるのかを学ぶ。(7, p.130) そこで子供は、自分の感情や考えを自分でモニターする、セルフモニタリングの技術を学ぶことで、自分の性的行動に関係している感情やその引き金を認識することができる。(7, p.130 11) そして、子供とセラピストは、性的な行動化以外にそれらの感情と向き合う方法がないか、一緒に考えていくのだ。もし性的行動の引き金となるものが、裸の人を見る、というように環境的なものである場合は、状況や環境を変える、という外的制御という手段を取ることができる。(7, p.130) 例えば、子供が裸の人を見た後に性的行動化を起こしやすいとしたら、裸の人がテレビに映っている時はテレビを消したり、半裸で居間や室内を歩くことをやめるなど、家族が協力し合って環境を変えることができる。(7, p.130)

認知的要素は他にも、性的行動と肯定的感情の対連合学習の逆学習も含む。セラピストは、子供の感情的要求を満たす他の方法を見つける手伝いをすることで、子供が自分の性的感情を愛情への欲求から切り離す手助けができるのだ。(10, p.243) 子供の保護者も同様に、子供との精神的愛着の大切さや、子供に対して愛情をもって接する方法などについて教育を受けることもできる。(7, p.144 10, p.243 14)

認知行動療法の行動要素とは、子供の行動や他の子供への接触に関して、明確な規制と規則を設けることである。(10, p.240 16, p.146) セラピストは子供に、「今までは、他の人にどうやって触るか、どうやって他の人と仲良くするかを間違えて教わっていて、これから新しいルールを習うから、それを守ること」という風に、人との関わり方について再教育をする。また、新たな規則を教えるにあたって、セラピストは子供を「規則係」と称することで、子供が今は規則の専門家であるという印象を与えることができる。自分がその係りになり専門家になることで、子供は自分の行動や人との関わりにおいて、自分自身で管理している、という感覚が芽生えるのだ。これにより、子供は自分自身を「無力な被害者」という立場から、規則についての知識をもち規則を管理できる「力のある専門家」という立場へ移行することができるのだ。(10, p.241) 人との境界線と人間関係についての新たな規則を学んだ後は、個人セラピーやグループセラピーでロールプレイしながらその規則を練習するとよい。(10, p.241 16, p.146)

子供に、自分自身や人との関わりにおいて自分で統御し管理している、という感覚を芽生えさせるのに、もうひとつ、自分の体について学ぶ、という方法がある。セラピストは子供に、自分の体は自分のもので、自分が管理しているのだから、好きなように触ったり探索するのは良いのだと教える。しかし同時に、そこには守るべきルールがあり、決まった場所、決まった時間のみそうしてもいいのだ、と教えるのだ。(6, p.258 7, p.145 5 10, p.242) これは、自己露出や過度の、あるいは公的な場所での自慰行為をみせる子供によく使われる方法だ。しかし、保護者によっては、プライベートな場所だとしても、子供が自分の体に触れるというのを許可したがらない場合もある。(10, p.242) その場合はセラピストは、幼児期や児童期における正常な性の発達についてと、性的虐待が性の発達にもたらす影響について、保護者に教育をする必要がある。子供が性的行動によって自分自身や人への支配力と統御力を取り戻そうとしている場合は、その欲求をスポーツや人を助ける行為など、もっと社会的に受け入れられる活動に導くことで性的行動を減らすことができる。(16, p.146)

認知行動療法での方法や行動の制御などの殆どは、子供の自宅で保護者によって行われる為、治療過程では保護者の強い協力が必要になってくる。そのため、保護者は行動の制御と子育てについての勉強会などに参加する必要がある。(7, p.145 11 14) 勉強会で保護者は、子供の行動に明確な規制をつくる方法(6, p.145 14)、性的でない行動を言葉で誉めてあげる方法(6, p.257 7, p.145 11)、子供が性的行動をとった場合、単純にやめるように言うことで、あるいは子供の発達に応じては、なぜその行動が適当でないのかを説明することで、性的行動を減らす方法(10, p.241)、そして子供の行動を注意深く見る事で良い観察者になる方法(7, p.144 14)などを学ぶ。攻撃的性的行動を頻繁にみせる子供には特に、兄弟のために安全な環境を保ち、また、この先その子供による被害者が出ないようにする為にも、保護者の管理というのはとても重要になってくるのだ。(6, p.255 7, p.144 13)

教育
性的行動を見せる子供達への対処法として、性的幼児虐待の加害者である大人達について学ぶ、というものがある。(5 10, p.240 11) 加害者について学ぶことで、子供は自責の念から逃れ、虐待を受けたのは自分が悪いのだ、という歪んだ自己像を直すことができるのだ。攻撃的性的行動を見せる子供は、自分が受けた性的虐待は自分のせいではないが、自分には、虐待の被害者が加害者になってしまうという悪循環を壊すという責任がある、と学ぶことができる。(5)

性的虐待を受けた子供達にとっては、性教育を受けるというのも治療の一環になり得る。性教育の内容は子供の発達段階に応じて決められるべきであるが、性教育を受けることによって、性的虐待が及ぼした性の発達や性行為についての認識などへのダメージを修正することに焦点が当てられる。(2 15, p.168 16, p.145) 性教育は個人セラピーだけでなく、グループ形式で行われても効果があるとされている。

親へのケア:
性的虐待を受けた子供の保護者は、しばしば精神的に圧倒されていてどうしたらよいかわからないでいる上に、自分の子供が性的虐待を受けたことに多大な精神的苦痛を経験する。そのため、保護者が自分の精神的苦痛を上手に対処できるように、保護者の為のセラピーも必要になってくるかもしれない。(11)  更に性的に攻撃的な子供の家族は、アルコール・薬物の依存や威圧的なコミュニケーションのスタイルなどの問題を抱えて、あまりうまく機能していない家族である傾向があるので、そのような場合は保護者を対象として、問題への対処方式の再構成を目指す訓練や、広義での支援を目的とするセラピーなども適切な処置と言えるだろう。加えて、攻撃的な性行動を見せる子供達は、保護者との間に否定的な愛着関係があることが多い。(11 13 15) 子供が性的虐待の経験を乗り越え、不適切な性的行動の出現を減らす為には、保護者の支えと親子間の肯定的な愛着関係が大切になってくる。そのため、保護者が子供にどのように精神的支えとなるべく接し、コミュニケーションをとるべきなのかを保護者に教えることも大事である。(7 p.144, 15) 子供の性的行動が軽度の場合、支援的な環境の中では自然と問題行動がなくなっていく事が多いのだ。 (6 p.259)

セラピストは保護者に、保護者が子供の性的行動を特別視しすぎないことで、子供を精神的に支えることができるのだと示す事も出来る。(6 p.258, 7 p.145, 10 p.230) 保護者は、子供が性的虐待を受けた後に性的行動の問題を起こす事は自然な事であり、それが、性的虐待で受けた苦痛と痛みを表現する子供なりの方法なのだと理解する必要がある。

攻撃的性的行動を見せる子供たち:
性的攻撃性を見せる子供たちには、上で述べられているような事以外にも、その攻撃性に対処する介入方法と技法が必要になってくる。自己露出や過剰自慰行為、身体的力の使用を伴わない形での、他者の性的部分への不適切な接触などの性的反応型行動と異なり、レイプなどの攻撃的性的行動は療法への抵抗力が強くなる傾向にあるため、性的に攻撃的な子供たちの治療過程は長期にわたることが多い。(6 p.262 13) また、攻撃的性的行動は他者に被害を及ぼすため、治療過程の始めにセラピストと子供の間で安全に関する固い約束がなされることもある。(11)

まず第一に、子供は自分のとる虐待行為について、全面的に責任を負わなければならない事を理解する必要がある。(2 5 p.212) セラピストは、性的虐待を受けたということを、子供のとる虐待行為への言い訳として受け入れてはいけない。このことで、セラピストは性的虐待が子供に及ぼす負の影響がどれだけ深刻なものか、子供に強調することが出来る。(5) そして子供は、自分の受けた性的虐待の経験と、それによってもたらされた精神的混乱を解決することに対して、全面的に自分が努力しなければならないのだと教えられる。(2 5 p.212) そうすることで、子供は自分が被害を受けた経験を通して、自分が傷つけているかもしれない他者に対する共感を発達させる事が出来得るのである。(5 p.212 10 p.231 11)

第二に、子供は、自分の行動は自分でコントロールできるのだと教えられなければならない。セラピストは子供に、他の子供を性的に虐待する行動を抑制し止めることが出来るのだから、その子は自分を虐待した人間とは違うのだ、という風に言うと良いだろう。また、被害者になるか虐待者になるか、それは二者択一ではなく、その他にも選択肢があるのだと示唆する事で、子供の世界観を広げる事が出来る。(5 p.211)

第三に、性的に攻撃的な子供たちは、自分の受けた性的虐待によって精神的に未解決な問題を抱えている事が多い為、虐待行為に走るよりもその問題そのものに目を向けさせる事も大切である。(6 p.258 7 p.110, p.145 5 p.211) 子供自身の性的虐待を受けた経験が未解決のままだと、性的に攻撃的な子供たちの治療は予後が悪いという傾向がある。(5 p.211 11)


結論
一般的に、性的虐待を受けた子供たちには、自責の解消・認知の歪みの修正・親子関係の改善・性教育など、同じような多岐にわたる治療や介入がなされる事が多いが、いくつかの要素は特に、不適切な性的行動を見せる子供たちの治療には重要だとされている。それらの要素とは、転移と逆転移の問題の対処、子供の性的関心について保護者の防衛の減少、子供の性的行動の管理に焦点を当てた行動的技法、保護者への行動管理教育、虐待者としての子供の明確な責任などが含まれる。幼児や児童の性的関心や性行動について考えると、大抵の人はある程度居心地の悪さを覚えるものなので、これらの事柄を進めていくのは容易ではないかもしれない。しかし、性的虐待による未解決な精神的問題や性的関心は、攻撃性が付け加えられた場合には、他の子供に更に被害を及ぼす非常に有力な道具となり得るため、子供たちの性的行動に関する問題を適切に対処していくことが重要なのである。



参照文献

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