あつ花別館トップへもどる

 
−−− 真実のスギ花粉症 −−−
 

郊外のほうが花粉症患者が多い
 


 大気汚染と患者増加の謎についてみてきましたが、大気汚染が(大気汚染も)原因ではないかと考えられた根拠としては、郊外よりも都市部のほうが患者が多いということがありました。
 都市部のほうが空気が汚れているだろう、すなわち大気汚染も関係しているのだ、ということです。

 さて、ここに興味深い調査結果があります。東京の大田区、調布市、秋川市での調査です。
 東京近辺にお住まいではない人には、どういうところなのかわからないと思いますので、地図を示します。
 東京都衛生局の花粉症対策総合報告書より地図をどうぞ。黒いところが調査対象区域です。

花粉症患者実態調査の対象区域図
花粉症対策総合報告書」のPDFより。大きな画像やその他のデータ類を見たい方はリンク先をどうぞ。


 字がかすれているので、わかりにくいと思います。ヤフーの地図もどうぞ。

ヤフーの東京の地図
Yahoo!地図情報 - 東京都 - より。大きな画像を見る場合は当該ページへジャンプしてください。


 どのあたりに緑(スギ林とは限りませんが)が多いかというのは以下の画像から、およそわかると思います。

東京の森林のようす
東京都森林組合ホームページ多摩の森林・林業より。大きな画像を見る場合は当該ページへジャンプしてください。


 関東地方(東京湾周辺だけですが)の衛星写真も紹介しておきましょう(これも、緑のところは森林だとは限りません)。

人工衛星による観測画像
地球資源衛星1号(JERS-1/OPS)「ふよう1号」画像 (提供METI・JAXA)


 大田区はほんとに緑の少ない都心(からは少し外れてますが)、調布市はやや郊外、秋川市は森林に近いところです。

 で、その調査結果なのですが、たしかに秋川市が少ないです。

秋川市調布市大田区のグラフ


 でも、よく見てください。これは調査年度が違います。ですので、これを比較するのは反則です。
 同じ年にいっせいに調査したら、こうなりました。

スギ花粉症の地区別年齢別有病率
「アレルギー疾患ガイドブック2004」(東京都)より。画像クリックで大きな画像が出てきます。


 どうでしょう。これでは「都会のほうが患者が多い」とはいえないのではないでしょうか。いかにも花粉飛散量が多そうな郊外のほうが多いとしかいいようがありません。
 ちなみに、秋川市があきる野市になってますが、これは市町村合併ということで、そうなっただけの話です。調査場所が違うわけではありません。


 違う見方をすることもできます。
 それはなにかというと、調査が昭和58年(1983年)と平成8年(1996年)ですから、後者のほうがいわゆる「都市化」の波が郊外のほうにもおしよせているだろうということが容易に想像できます。
 都市化といっていいかどうかわかりませんが、緑被率というのを示した地図があります。

ランドサット情報による東京都緑被状況図(森林塾より)
森林塾東京の森林はどのように変化しているでしょうかより。大きな画像を見る場合は当該ページへジャンプしてください。


 これをみると、たしかに年をおって、山のほうに開発の手がのびていることがわかります。
 しかし、いずれにしろ大田区よりあきる野市(秋川市)のほうが都会だとはいえないでしょうし、単に「都市部に患者が多い」とはいい切れないのは事実のようです(たしかに都市部に患者が多いという調査結果はありましたが、このように。相反する結果もあるのでは、「なんともいえない」といわざるを得ません)
 ただ、花粉が多そうなところで都市化が進むと患者が多くなる、ということは言えそうです(花粉が多くなくてもですが)。

 それなら「やっぱり都市部ならではの汚染が」と思われるかもしれませんが、都市化というのはそういうことだけを考えればすむ問題ではないです(まあ「都市化」というのも漠然とした言葉ですが)。もういろんなことが変わってきてしまい、なにがなんだかわからなくなるというのが正直なところではないでしょうか。

 では、そうした「いろいろなこと」との相関を調べた研究というのはないのかと思われるかもしれませんが、奥田稔先生の1991年の調査というのがあります(『鼻アレルギー基礎と臨床』より)。
 それによると、環境因子、喫煙、嗜好品、乳幼児期栄養、年月日、居住地、職業、住宅構造、冷暖房、ペットの飼育などとは明らかな相関はなかったということだそうです。
 いやいや、まったくもって、なにがなんだかわからないですね。

 こういう調査結果があるのに、それを無視して、動物実験で排ガスをプラスしたら(しかもお腹の中に注射!)抗体が増えたなどという都合のいい研究結果だけを示して、「ディーゼル排ガスが悪い」とかなんとかいわれているというのが、一般に広まっている「花粉症の原因」のように思えます。
 専門書にだって、大気汚染との関連については、証拠はないとか疑わしいということが出ています。それなのに一般書には、いかにものようなことが出ています。そうした書物を参考にして書かれた記事がネットにはあふれています(黄砂や関東ローム層の赤土などについても実験がなされていて、アレルギーを悪化させるおそれがあるということが示されています。そんな「悪いかもしれないもの」は他にもあるってことです)。

 とくに東京都は、ディーゼル排ガス規制を正当化するために、都合のいいデータを恣意的に出していたように思えなくもありません(マスコミも、無批判にそれに乗りますし)。いままで動物実験だけだったのが、世界ではじめてヒトで確かめられたとかなんとかいってますが、しょせん試験管内での実験です。
 また、都内の4地区の成人女性1万人を対象に行なった調査では、ディーゼル排ガスが花粉症発症を増やすという証拠は得られなかった、という結果が出ているのに、それについては積極的に言おうとはしていないようです。おまけに、この調査では個人の花粉暴露量との関係も調べられていて、患者ではない人より患者のほうが花粉をたくさん浴びていた(※注)ということもわかりました。発症と花粉の量との因果関係がものすごく強く示唆されたといっていいと思います(だからマスクしようね)。

 そうして強行(?)した規制の結果、石原都知事がめでたく2005年シーズンにカフナーの仲間入りをしました。シーズン前には「花粉が異常に多くても、例年に比べれば、花粉症の人たちは、それほど苦しまずに済むんじゃないかと私は期待しておりますけれども」とかなんとか吹いてましたけどね。

 いや、お前、花粉症という病気になったのにめでたいってことはないだろう……と思うかもしれませんが、まあ、そのせいで東京都がスギを切るだの植え替えるだの言い出したわけですから、患者としては強い味方ができてめでたいんじゃないでしょうか。
 知事のわがままぶりにはあきれる面もありますが、従来説にしがみついてないだけ、ある意味偉いと思いますよ。


追記:おもしろいことに知事が花粉症になってからというものの、「排ガスが悪い」という話を都は言わなくなりました。それどころか、上の「※注」で示した件を、東京都発行の『平成20年版花粉症一口メモ』(PDF)の5ページ目(書籍としてのページ数では8〜9ページ)で説明するようにもなっています。


 もちろん、排ガス(DEPに限らず)は体にいいものではないでしょうし、いろんなリスクがあることも示唆されている……というか、証明されているといってもいいぐらいですから、花粉症のためでなくとも避けるに越したことはないと思います。今後も、規制をより強くしてほしいと願いたいところです。
 ですが、すでに述べたように、それが「花粉対策」「スギ林対策」をおろそかにしていいという口実になるのは、カフナーとして、イチ国民として許せないことだと思います。
 患者みずからが、「スギは悪くない」などというようでは、「あなたは騙されている」と私はいいたいと思います。もちろん、自分が「いわゆる体質改善」の結果よくなった、というようなことがあるのであれば、それは喜ばしいことです。それは否定しませんし、おおいにあり得ることだとも思います(いうまでもなく、スギが悪意を持って花粉を飛ばしているわけなどはあるはずがないです。その意味では「スギは悪くはない」ですが、ここで言ってるのは、そんな子どもの屁理屈のようなことではありません)。


 で、けっきょく都市化と花粉症増加の謎はとけないままですが、少なくともいえることがひとつあります。
 都市化が進むということは、道路はできるわ、ビルはできるわ、ということとほぼ同じ意味です。要するに土の地面が少なくなった。車も多くなった。
 ほかにもいろいろあると思いますが、そうすると、一度落下した花粉が再びまいあがる率も高くなるだろう、ということが考えられています。いつまでたっても自然に還らない。つまり、空中をただよう花粉(ただよったままの花粉)は多くなる。
 そうすれば、花粉症患者は増えるでしょう。そう考えて、なにか不都合があるでしょうか。

 また、落下と再飛散を繰り返すうちに粉砕され、細かくなっていくことも考えられます。粒子が細かいと、さらに再飛散しやすいでしょうし、人体のより深いところに入り込みやすくなってくるということはないでしょうか。
 鼻だけであれば、くしゃみや鼻水で出て行くかもしれませんが、肺に入ったら、溶け出たアレルゲンが体中をめぐるかもしれません。より重症になる可能性はないでしょうか。
 そうでなくとも、吸い込む前から粉砕されていれば、アレルゲンが外に出やすいのではないでしょうか(花粉本体は吸い込まれて鼻水に触れ、水分を吸って破裂することでアレルゲンが外に出ます)。
 こちらのページにあるように、日を追って崩れた花粉が多くなるというのも、再飛散を繰り返すうちに形が崩れてきた、ばらばらになってきた、それでも舞っているということなのかもしれません(このページは花粉症の研究者によるものではありませんが、かなり貴重だと私は思います)。

 そのほか、都市ならではの廃熱の多さや建物の蓄熱性の高さにより、ヒートアイランド現象というのがおこるといわれます。それにより、周辺との間で気流が循環し、ダストドームというのができるという研究もあります。
 そういうことも、なかなか自然に還らないとか、空中花粉数が多くなる原因となる可能性があるかもしれません。

 ついでにいえば、よくスギの産地に近い地方の人が「うちのほうでは積もるほど花粉があるのに花粉症の人は少ない」などということもありますが……積もっているなら、いつまでも空中を舞ってないってこともあるんじゃないの、といっておきましょう。 → 追記:林業従事者に花粉症が少ないということの謎解きの記事をみてください。

フィンランドのマツ花粉
この写真はものすごく極端な例ですが、このように自然の中に降り積もった花粉が容易に再飛散するとは考えられませんし、積もるということはそれだけスムーズに落下して、いつまでもただよってはいないということなのかもしれません。「植物の私生活」(デービッド・アッテンボロー/門田裕一監訳/手塚勲・小堀民恵訳/山と渓谷社)より、フィンランドにおけるマツ花粉。


 そういうわけで、もともと花粉が多いところが都市化すれば、さらに空中花粉(ヒトが吸い込む花粉)は増えるのではないでしょうか。そうして患者が多くなる。
 上の3か所のデータは、もしかしたらそういうことを示しているのかもしれないです。



※追記
ここでは患者が多いかどうかを調べる「調査対象地域」がスギ林に近いかどうかということを問題にしていますが、じつはスギ花粉というのはかなり遠くから飛んできます。最近ではこれも当たり前のこととして各種の花粉症サイトでも説明されるようになってきつつありますが、たとえば関東平野は山地に囲まれている(関東のスギ林の分布は上記「花粉症一口メモ」内に出ています)ので、どちらから風が吹いても大量の花粉が飛んでくるといわれています。だから、トータルでの花粉飛散量(空中花粉数)は、日本全国の中でもけっこう多いほうなのです。東京都内でどこが多いかなどということではなく、もっと大きな目でみれば、そういうこともあるのです。
したがって、いわゆる田舎から東京に出てきて花粉症になった、これは都会の大気環境が悪いからだ……とは簡単にいえないということもあります。なぜかといえば、飛散花粉数を比較してみれば、じつは東京のほうが多いという可能性も少なくないからです(いうまでもなく、実際の飛散数は年によって異なります)。
ちなみに、関東地方の主要都市に飛んでくる花粉の発生源はどこなのかということを、各家庭のパソコンで計算するというプロジェクトが行われ、その解析結果が発表されています。参考までに見るといいと思います(もちろんこれが正しいと決まったわけではないのですが)。
花粉経路探索プロジェクト(SPRING 2007/03/22〜2007/07/17)解析報告





もどる 真実のスギ花粉症メニューへもどる すすむ


あつ花別館トップへもどる


あつまれ!花粉症の仲間たち