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−−− 真実のスギ花粉症 −−−
 

大気汚染が減ったから花粉症が増えた
 


 花粉以外に花粉症増加の原因を求めようとすると、まずまっさきに「大気汚染」という言葉が出てきます。どちらも鼻から吸い込むものだから発想しやすいのかもしれません。
 ですが、大気汚染などという漠然とした言葉で表現するのはまずいと思います。

 前のページで取り上げた『花粉症こうして治す』でも、こうあります。


 では、アレルギー性の病気が、どうして都会に多く、また年々増加しているのでしょうか。ひとつは、工場や自動車からの排煙や排ガスによる大気汚染があげられるでしょう。


 そうかもしれないです。
 ですが、こうしたイメージで語られる「大気汚染」というのは、たとえば四日市喘息などに代表される「公害」のイメージが強くはないでしょうか。

 昨今では「ディーゼル排ガス」あるいは「DEP」などと具体名が語られるようになりましたが、「大気汚染」などという言葉はイメージ性(?)が強く、原因として語るには不適当ではないでしょうか。
 いや、逆にそういう言葉で語られれば語られるほど、次のことがいえると思います。
 つまり、そうした「公害」と表現していいようなひどい「大気汚染」は、それが社会問題になったころに比べて、規制が強くなったせいもあり、あきらかに改善している、ということです。

 自動車の排ガスの規制も強くなりました。光化学スモッグだって、注意報などが出る頻度はあきらかに下がっています。それが猛威を振るっていたのは70年代です。それ以降は酸性雨などが話題になったと思いますが、いずれにしろデータなどを示さなくてもわかるでしょう。一定の年齢以上の人であれば、それがいつだったか覚えていなくとも、身をもって体験していることです。
 それなのに、まだ大気汚染大気汚染といわれることを、誰も不思議には思わないのでしょうか。


 なお、この件については、昔は道路がなかったが、できたおかげで汚染がひどくなったとかいう局地的な汚染度の変化は別にします。それに、光化学スモッグについても、近年に限れば、場所によってはやや増えているところもなくはないです。
 ここで述べているのは、もっと長いスパン、広い範囲でのことです。


 まあ、最近の若い人たちには「大気汚染」=「(昔の)公害」というイメージはないのかもしれません。それに、言いやすい言葉であるということはたしかにあるから、多少はしかたがないというところはあります(私も言いやすいので使うことがありますしね)。
 しかし、「公害」のイメージが強い世代としては、少々違和感を感じざるを得ません。
 焚き火ですら制限されるようなこの時代、どこの「都会」に煙もくもくの工場が増えているんでしょうか。そういう「公害」を吐き出す工場の建設を自治体や住民が推進しているとは思えません。


 では、この大気汚染説のモトネタはどこだったのでしょうか。
 ここで三好彰先生の本に登場していただこうと思います……といいたいところですが、先生のサイトを見てもらったほうが早いです。本の内容がまるまるアップされていますので。
 『スギ花粉症』より「大気汚染によるアレルギー増加説」というところを読んでください。
 出所がどこにあったかということだけではなく、ほとんどすべての謎解きが行なわれています。そして、たしかにそれでも説明がつくのです。

 まあ、多少の疑問はなくはないです。そのページで紹介されている三好先生の大気汚染との関連を調べる研究は、製紙工場からの排ガス(排煙)に関して行なわれたものです。いっぽう「おかしい」と指摘されている慈恵グループのいう「大気汚染」とはどんなものなのか、明らかになっていません。
 少なくとも「同一条件で追試してみたら違う結果が出た。やっぱりおかしい」ということではないので注意が必要かもしれません(もっとも、過去に戻って追試をするというのは不可能ですけどね)。

 けっきょく、こうしたことも、漠然と「大気汚染」などと言っているからおこるのではないでしょうか。大気汚染物質の中のなにがあやしくて、なにがあやしくないのかということを調べないと、話は始まらないと思います。

 ということで、「説明がつく」ということと「それが正しい」ということは違うのですが、もしも「それは違う」と考える研究者がいるのであれば、実験研究をして自説を証明する必要があります。
 私は一般人ですから、そういうことはしません。より「なるほど」と思うことを支持するだけです。(^_^;)

 さらに、もうひとつデータを紹介しましょう。大阪ということで場所が限定されますし、少々古いものですが、下のグラフを見てください。

おもな大気汚染物質の市内平均濃度の経年変化(大阪市)
「鼻アレルギー基礎と臨床」(奥田稔/医薬ジャーナル社)より。画像クリックでコメント付きの大きな画像が出ます。


 花粉症が社会問題化しはじめた80年前後から、なにか目立って増えた大気汚染物質があるでしょうか。場所によってNO2(二酸化窒素)が少し増えているにすぎません。
 こんなカーブを描いて下がるグラフを見ると、かえって大気汚染が減ったから花粉症が増えたとすらいえるのではないでしょうか。違いますか?
 そうです、大気汚染が減ったから花粉症が増えたんです。再び汚染をひどくすれば花粉症は少なくなりますよ。そうじゃないんですか? 私が育ったところは24時間煙モクモクの工場があった場所です。そのころは花粉症はなかったですよ。規制はやめたほうがいいんじゃないですか? もう規制はやめてください(泣きそうです)。

 これはちょうど、下に示す「慢性副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎」との関係のようです(ちょっと違うけどね)。

学校検診(6〜15歳)における鼻疾患の年代推移
「鼻アレルギー基礎と臨床」(奥田稔/医薬ジャーナル社)より。画像クリックでコメント付きの大きな画像が出ます。


 もう少し近年のものを紹介します。中部地方(と全国平均)の「浮遊粒子状物質」のデータです。ディーゼル排ガスに含まれる微粒子だけではないですが、それもふくまれるでしょう。

浮遊粒子状物質の年平均値の経年変化
国土交通省中部地方整備局浮遊粒子状物質(SPM)のデータより。大きなグラフやデータを見るには当該のページへジャンプしてください。


 めだって減っているわけではないですが、全体的に減っているのは事実だし、増えてはいません。

 東京のものも出しておきましょう。

大気汚染物質の概況(年平均濃度)
東京の環境2005大気の状況より。大きなグラフやデータなどを見るには当該のページへジャンプしてください。


 光化学オキシダントというのが微増です。先に述べたように、場所によっては光化学スモッグの発生が少し増えている、という例です。
 しかし、全体的には横ばいか改善しているという傾向が認められます。花粉症増加との関連はありそうではありません。

 平成17年版の環境白書のページも紹介しておきます。いろいろな大気汚染物質の経年変化がグラフで紹介されています。花粉症が増えだしたころにいっしょに増えているものがあるかどうかみてください。


 それでもやはりなにか関係してはいないだろうか、と思う人はいるでしょう。私もそういうところがなきにしもあらずです。
 なにせ、アレルゲンとは無関係によくなったり悪くなったりすることもあります。排ガス吸うと症状が悪化するよ、という人もいるでしょう。研究がどうこうではありません。私たちは患者ですから、自分の体でわかります。

 でも、それは必ずしも「花粉症の原因」ではないです。「悪化要因」とか「修飾因子」とかいうものである可能性があります。同じカゼでも、もともと体調のわるいときにかかると悪化しやすい、というようなものです(悪化するとさらに過敏になる、という「悪循環」もあるでしょう)。
 三好先生の先のページにも「アレルギー発症要因と増悪要因の混同も、気になるところである」ということが出ています。

 ただ、こうした「悪化要因」「修飾因子」「増悪要因」、呼び方はいろいろありますが、これらによって症状が悪化するのであれば、今までがまんしていた人も、耐えられなくなって病院に受診することはあるかもしれないです。
 抗体値が高くても、ぎりぎりで発症をまぬがれていた人が、限界をこえて発症するということもあるかもしれないです。
 だから、「花粉症(を発症している)患者が増えた原因」「受診者が増えた原因」のひとつではあるのかもしれません。




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