
肝臓腫瘍の診断と治療
肝臓には様々な疾患あります。その中でも特にB型、C型肝炎を原因として発生する肝臓癌、正確にいうと肝細胞癌で苦しむ方は非常に多いです。このHPはそういう方々あるいはそういったことでお悩みの方に少しでも手助けになればと思って立ち上げました。もちろんこのHPに関係するすべての内容は現在最先端の医療現場で実際に医療、研究にあたっている専門の医師によるものです。疫学に始まり、一般論や統計学的な内容のものはすでに多くのMEDIAで伝えれているためにあえてこのHPでは述べるようなことはいたしません。このHPにはまだ実際に一般の方々には知れ渡っていない、実際の医療の現場、考え方、現実的な治療、最先端の治療方法、またこれら治療法の限界や欠点などについてのべていきます。患者さんの利益、あるいは不利益になることもつつみ隠さず記載していく予定です。ただし、このHPに記載されていることがすべて正しく王道であるといったことでは決してありません。医学は日々進歩していくものです。昨日常識であったことが今日には非常識になったりすることがある世界です。たとえばこのHPにこれこれうんぬんと記載されていたからといってほかの医療機関の医療行為、治療を否定するものではありません。あくまでこのHPは実際の肝臓癌の治療に携わっているものとしての意見、考え方が記載されているだけであり、ほかの医療機関、医師の意見も耳にされることも患者さんにとって重要です。なおHPに記載されることに関しては完全に個人のプライバシーが保護されています。HPの内容に関しては読んでいくうちに様々な疑問、質問をおもちになるものと思いますが、メールにて質問されて下さい。お答えできる範囲でお答えしていきたいと思います。
メール、質問受け付けます。アドレスはtfuji32@yahoo.co.jpです。
肝動脈塞栓術。これはようは癌に分布している血管を止めてしまうことです。手や足でもそうなように血液が通わなくなると腐って死んでしまいます。まずは足の付け根からカテーテル(以下カテと訳します)を挿入します。このカテーテルですが最近は細くていいものが開発されています。僕の施設では4フレンチと呼ばれる細さのカテを使用しています。細ければ細いほど患者さんが治療終了した後に安静にしている時間が短くなり、患者さんには楽なものとなります。また血管に挿入したときに細いために血管を傷つける危険性が少なくなり、合併症の発生頻度が減少します。一方細いと使う医者にとってはやや難しい操作が求められます。従って細いカテを使用するのを嫌う医者もいますが、これは世の中の趨勢にはずれているといってよいでしょう。太くても5フレンチまでといえます。はっきりいって未だに6フレンチとかいったサイズを使うような病院は肝臓癌の動脈塞栓術においては問題がある、あるいは習熟してないといえます。動脈に挿入したカテーテルは腹くう動脈を経由して肝動脈まで挿入します。今まではさらにここから肝臓深くまでこのカテーテルを挿入していましたが、血管を傷つけることもまれにあり、あまり奥まで挿入はしません。その代わり、マイクロカテと呼ばれるさらに細いカテをこの前もって挿入したカテのなかに通してこの細いカテを肝臓深くまで進めます。血管を傷つけるとは大きくいって2種類あります。一つは内膜損傷といわれる血管の一番内側の膜をカテで剥がしてしてしまうことです。こうなれば血管がつまっちゃてもうそれ以上の検査をすることが困難です。内膜損傷起こしてもたまにそのまま検査できることもありますが、まず無理です。乱暴なカテ操作によることが多いですが、丁寧にやってもお年寄りなんかではおきることがあります。もう一つはスパスムってよくいわれるやつです。これはいわゆる血管がびっくりした状態でけいれんしているようなものです。この場合は検査を中断してしばらくまって再開すれば治療試行可能です。
肝細胞癌って?。BやC型肝炎ウイルスに罹患している人に発生します。まれにウイルスもってない人にもできます。最近ではアルコールをたくさん飲む人にもできることがわかっています。医師の世界では肝細胞癌のことをHCCと通常呼んでます。時にヘパトーマ、肝Kなんて呼ぶこともあります。いきなりきれいな肝臓にできることもありますが通常は肝炎から肝硬変に至ったあるいは肝炎の状態の肝にできます。見つかるのはエコー、超音波検査であることが多く、エコーで肝臓に腫瘍を指摘されてからCT検査なんかに回ってくる人がおおいようです。血液検査(また後に詳細を加えますが)ではごく早期のHCCは見つかることはまれです。肝炎ウイルスが陽性である方は常々肝臓に腫瘍ができていないかどうか定期的に検査する必要があります。ただし、必ずしもできるとは限りません。陽性でも肝臓が全くきれいなままで天寿を全うされる方はたくさんおられます。なおこのHPでは肝細胞癌だけではなくほかの臓器の癌か肝臓にとんでついた転移性肝腫瘍についても記述していきます。
治療。HCCの治療には大きく分けて外科的、内科的と2つに分けられます。肝臓の機能自体が良好で腫瘍が小さく、数が少ない(1個か2個程度)のであれば切る傾向にありますが最近ではラジオ波治療、動脈塞栓術などの内科的治療が患者さんにやさしく外科的切除と同じような効果が期待できるために行われるようになってきています。日本では外科と内科、放射線科との緊密なカンファレンス、意見交換が行われているところが十分な数はなく、治療方針の決定が患者さんが最初に受診した科で決定されることが多いようです。もうすぐ続きを書きます。

実際の塞栓術1。実際にカテを肝臓の血管の奥深くまですすめられたら治療にはいります。なれた医師が行えば腫瘍をカバーするだけの血管までカテを挿入することができ、余分な正常な肝臓を痛めることは少なくなります。カテから造影剤を注入して癌全体がよく造影されるかどうかを確認します。腫瘍全体が造影されたならばここから抗ガン剤とリピオドールと呼ばれる造影剤をよく混合してカテから注入します。通常の肝臓癌はここで癌の中にこの造影剤がたまっていくのが観察されます。癌のなかにこの抗ガン剤を混ぜた薬がたまれば徐々に放出され癌にダメージを与えるわけです。ただ、これがよく効くという確証はありません。この薬剤の注入の後にジェラチンスポンジを1mm状に小さくはさみできった細片をカテを通して注入します。そうすることで癌に栄養していた先ほどの動脈が塞栓されます。塞栓とは血液が流れなくなってしまうことです。見ていると動脈の中の血液が止まってしまったことがわかります。こうなると血液が腫瘍に流れなくなるわけですから腫瘍は死んでしまいます。結局のところこのスポンジで動脈を閉塞することが非常に重要で腫瘍が死んでしまうわけです。一方周囲の肝臓組織は門脈といわれる血管に栄養されているためにさほどダメージは受けません。ただし、絶対に癌以外の肝臓実質が傷害を受けないかといったらそうではありません。動脈が閉塞されるわけですから周囲肝臓組織もなんらかの傷害があります。ゼラチンは4、5日もすれば血管の中で溶けてしまいます。ただ4、5日血管が詰まっていたわけですから腫瘍は死んでしまいます。ここで重要なのはこれで完全に癌が死んでしまうわけではありません。中には完全に癌が一回の治療で死んでしまう方もおられますが、残念なことに腫瘍が生き残るかたもおられます。これは治療直後にはわかりませんので治療後数日した後にCTやMRととって効果判定します。この時にCTやMRIですが造影検査をしなくては全く意味がありません。造影することで生きている癌の部分が造影域として描出されるために生きているか、死んでいるか判断できるわけです。ただしCTの場合リピオドールが高吸収として写るので効果判定のじゃまになります。従って必ずMRで評価することが重要です。ここでも普通の造影MRは無意味であり、必ず造影剤を急速投与して時間ごとにスキャンするダイナミックMRが必要です。
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2008/12/25更新
組織生検。ちょっと話かえます。画像診断が発達して肝硬変の肝臓に小さいうちから多数の結節が見つかるようになってきています。それにともなって細い針による組織生検、検査もずいぶん行われるようになってきています。その中には当然、癌もあればそうでないのもたくさんあります。ただ癌と診断するのは小さなうちでは実際非常に難しいこともあります。我々臨床医では当然組織学的診断は困難ですが、専門の病理医が見ても判断困難なことはたくさんあります。それだけ肝臓腫瘍の病理診断は難しいものと言えます。病理の先生がたを悪く言うつもりはまったくありませんが、診断が変わること、一定しないことはしょっちゅうです。個人的なことを言いますとたとえ病理診断にて悪性所見なし、前癌病変だと診断ついても画像診断にて肝細胞癌と判断された病変においては患者さんにその旨を十分にお話しして治療することもあるわけです。肝臓をみる病理の先生も大変です。もっと具体的にいうといわゆる肝硬変からいきなり肝臓癌が発生するわけではありません(中にはこういう例もありますが)。通常は肝硬変の肝実質内に再生結節が発生しそれが大再生結節へ、さらに進んで腺腫様過形成、さらに異型腺腫様過形成、さらにその中にごく早期の肝細胞癌、さらに早期肝細胞癌へ、さらに全体が早期の肝細胞癌、さらに早期の肝細胞癌の中にちょっと悪性度が増した進行癌、さらに進んで全体が進行癌へと。こんな多段階的発育を示します。このなかで異型腺腫様過形成と超早期肝細胞癌の鑑別なんかは日本の肝臓のトップ病理医である、K先生や、N先生方でも判断に困るえわけです。従って大きな病院、施設の病理検査室でもこれら病変を厳密に鑑別することは困難といっていいです。だから先ほど示したように病理学的、いわゆる組織学的な裏付けがなくても画像診断にて肝細胞癌と判断した場合には治療を開始します。
肝細胞癌ってなっったら全部治療する必要あるのか?肝細胞癌にもいわれる病変にもいろいろあります。大きくてどんどん肝臓で大きくなっていくもの。大きいながらもずーーっあまり大きさが変わらない肝細胞癌。こういうやつは少ないですが。他に小さくてもどんどんおおきくなるやつ。この中で人間の命を奪っていくものはどんどん大きくなっていく病変です。それと見つかったときにすでに大きいやつ。これら病変は多数の血管からいわゆる肝動脈から血流を受けて、造影検査でもよく染まると言われる多血性の肝細胞癌がほとんどです。これら多血性といわれる肝細胞癌は大きくなる速度もはやくそれだけ命に関わってきます。血液にあまり富まず、いわゆる乏血性で小さいやつなんかはほっといても何年もかわらないやつがあります。ただ中にはまれですが乏血性でも早い速度で大きくなるのがあります。でもほんとめったにありませんが。tsuzuku
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ラジオ波焼灼術:最近肝動脈塞栓術と並んでラジオ波焼灼術も行われるようになってきています。僕の施設でも最近ずいぶんと行うようになりました。これは簡単に言うと針の先端に電子レンジみたいなものが付いていてこの針を癌に直接刺入して癌を高温加熱することによって焼いてやっつけてしまおうといったものです。様々な針が医療機器メーカーから販売されていますが私がもっとも使用しているものはラジオニクス社のクールチップといわれる針です。局所麻酔をして超音波あるいはCT写真を参考にしながらこの針を直接ガンに刺入します。そして徐々に出力をあげていって癌を焼灼します。大きさが2センチ以内のガンなら一回の治療で完全に殺してしまうことが可能です。時間も30分足らずでできることから患者さんの負担もずいぶんと楽になっているものと思います。ただし焼灼中には熱感、痛みを感じることが多くこれに関しては少し患者さんを寝かせてあげてから行うなどの処置が必要となってきます。患者さんを寝かせてあげる薬剤には様々なものがあり使用する種類はいろいろありますが呼吸や血圧などの変動が少ないものが望ましいです。現在までにずいぶんの数の患者さんを治療してきましたが大きな合併症はなく安全に施行できています。大きさが3cm以下のものであればほぼ100%可能性で完全壊死(治癒)可能です。ただ大きさが5ないし6cmを超えるようなガンであればどうしても辺縁部、つまり熱が伝わりにくい部位のガンは生き残ってしまうことが多いようです。従って一回の治療では完全壊死に至らせるのは困難であり何回かのRFA治療が必要になってきます。このRFA治療後の効果を見るためには前にも記述したようにどうしても造影のCT,あるいはMRIが必要になります。それも単なる造影検査では全く意味がありません。急速静注によるダイナミックstudyが必須です。RFA治療後の治療部周囲には反応性の変化による変化、つまり炎症を反映した造影所見が出現しますがこれと残存ガン部との鑑別が困難なことがありこの判断をダイナミックstudyと治療前の写真を参考にすればおおよその見当がつき焼け残り(残存)と炎症性(反応性)変化との鑑別が可能になります。ちゃんとした専門家のいる施設ではこれら一連の治療、効果判定方法が確立されているために無駄な追加治療をしたり治療後の再発を避けることが可能になります。現在はあの怠慢な厚生労働省もやっと肝癌に対するRFAに対して保険認可をしましたので今後はさらにどんどん普及していくものと考えます。実際のところ我々の施設では肝のみではなく肺癌、転移性胸膜腫瘍、骨軟部悪性腫瘍、直腸癌再発腫瘍、縦隔腫瘍(胸腺癌)など様々な悪性腫瘍にたいしてRFAを行っています。
塞栓術 蛇足。塞栓術は動脈を穿刺していますから終了後数時間はベッド上で安静にしておかないといけません。ただしその時間は施設によってまちまちです。ある施設なんかでは治療終了後翌日まで穿刺部を圧迫し砂嚢までも乗っけて止血しているところがありますが患者さんはその間動けないわけですからこんな苦痛なことはありません。「検査、治療は別にたいしたことなかったけどその後の安静が苦痛だった」ということはよくあります。所によっては12時間もの安静、動脈圧迫をしいる施設もあります。一方うちの施設では基本的に2時間の安静、圧迫止血でその後は歩いてもらっています。これは使用しているカテーテルが4Frと細いために治療後の圧迫止血が短時間ですむからです。現在までに肝癌以外にも1320例の患者さんにこの4Frのシステムで行ってきましたが出血が止まらず大変だったという症例は特別な3例をのけて特にありませんでした。長時間に動脈を圧迫止血することは実は非常に危険なことなのです。併走する静脈も自ずとその流れが止められているわけですからこれは静脈血栓症を引き起こしてしまいます(続く)。
PEITについて。 以前から存在する肝癌の治療方法のひとつにPEIT(アルコール注入療法)なるものがあります。アルコールの蛋白凝固作用、脱水作用による腫瘍細胞の死滅を利用した治療で以前はずいぶんと施行されていました。その他に酢酸や熱湯を注入したりする治療もありました。ただ最近ではこれら治療はラジオ波治療の普及によりずいぶんと衰退しています。PEITの場合2ないし3cm大の肝臓癌を完全死滅させるためには週2回の治療を3週ないしは4週、つまり6ないし8回は治療しなければなりません。つまりそれだけ治療期間を要するわけです。一方ラジオ波治療の場合同様な大きさの病変の場合わずか一回の治療で同様、あるいはそれ以上の効果が得られます。当方の施設では3cm以下の病変の場合、1泊2日程度の短期入院で治療可能です。このようにPEITは特別な場合をのぞいてそのほとんどRFA、ラジオ波治療に置き換わっていっています。
塞栓術の成否に関して。多くの施設で塞栓術、TAEが施行さっれていますがその成否に関しては施設間で大きな差があります。前述したようにその技術者、つまり施行する医師の腕前によって成績がかわります。これはもちろん胃や大腸の外科的切除と同じ事なのです。上手な医師が施行すれば当然腫瘍の壊死する確率は高くなり、また一方では正常肝実質のダメージは少なくなって治療後の副作用も軽減されます。腫瘍を栄養している血管に対してのみアプローチして完全に塞栓することが治癒率を向上させます。ただし広範囲な塞栓の場合には術後の合併症を引き起こします。一方塞栓後の肝機能障害の出現をおそれて手ぬるい塞栓になれば正常実質の障害は軽減されますが腫瘍は生き残ります。微妙なさじ加減によりうまくいくときとそうで無い場合に分かれます。もちろん元の肝臓の状態も様々なのですべてじょうずな医師がうまくいくとは限りません。現在は使用するカテーテル特にマイクロカテーテル、あるいはガイドワイヤーと言われる器具が相当に発達し使いやすい物になっていますがそれでも術者によって差がでます。
なにはともあれ一番塞栓術において大切なことは既存の血管を傷つけずに確実に腫瘍とその腫瘍を含んでいる肝区域を完全に塞栓させてしまうことです。これを区域、亜区域、亜亜区域塞栓術といいます。もちろん腫瘍径が大きくなってしますと単区域の塞栓だけではすまなくなります。このような場合はやはり正常実質の障害も大きくなります。
塞栓術の合併症について。 動脈を塞栓するわけですから塞栓後にはそれなりの副作用が出現します。塞栓直後には疼痛がまず出現します。この疼痛は個人差がありあまり痛みを感じない人からずいぶんと痛みを感じる人まで様々です。ただ痛み止めの注射あるいは座薬でほとんどコントロール可能です。次に治療後より発熱があります。これは腫瘍が塞栓され壊死するためにおこる生体の反応ですがこれも通常の下熱剤で対処できることがほとんどです。他には塞栓が胆管を栄養する血管までおよぶわけですから胆管壊死が発生することがあります。この発生頻度は高くなく滅多なことでは発生しませんが胆管壊死がおこると胆汁が胆管をうまく流れずに肝内に胆汁が貯留してバイローマと呼ばれる胆汁の袋を形成することがあります。この時も体外から針を刺してこの胆汁を体外に排出させてあげれば良くなることが多いです。ただ大きな、あるいは程度のひどいバイローマではなかなか収まらずに時間がかかることがあります。私個人としてはこの胆管壊死、バイローマがひどくなった経験はしたことがありません。塞栓物質、つまりゼラチンスポンジを小さくしすぎるとこ胆管壊死の発生が多くなりバイローマを起こすことが多いようです。従って塞栓時の塞栓物質の大きさの調整が重要です。あまり大きいと手前の大きな血管ばっかりつまって末しょうに存在する腫瘍が側副血行路で栄養されつずけ壊死にならないといったことが起こりますし、小さくしすぎると前述したバイローマの発生させてしまうことになります。従って熟練した医師による手技が必要になるわけです。他に肝膿瘍、肝不全続
rjsbp323@ybb.ne.jp
上記のアドレスにて質問をくれた方へ。アドレスが間違っているようでこちらからお返事が送れませんでした。このHPを利用してお答えいたします。
お返事。
早期の肝細胞癌は肝硬変のラフな実質の中にハイパー、ハイポ両方のエコー輝度でどちらの可能性でも描出されます。つまり周囲実質とはちょっと違うエコー輝度で描出されるということです。特に大きさが1cm以下ではモザイク、周囲ハローもないことが多いわけですから肝硬変に見られるようなdysplastic
noduleなどとの鑑別が当然困難なことがあると思います。経験でこれはおかしいかなと気づく医師もいるとは思いますが1cm以下の結節の場合、厳密な質的は鑑別は困難と思われます。CTやMRでのさらなる評価が必要です。ただエコー輝度が周囲実質と同等な肝細胞癌も当然あるわけですからこのような場合はエコーでの検出は困難と思われます。エコーの限界ですね。血管腫の場合、当然ベースの肝が慢性的な変化が少ない(肝炎に罹患していない)ことが多いわけであり、そのような肝臓の中に教科書で見られるようなmarginal
strong echoを有する結節やハイパーな結節が見られれば簡単に血管腫と分かります。時にハイポな結節も当然ありますがエコー輝度や形態の変化(カメレオンサイン)等、経験を積んだ医師であればだいたい推察はできます。困難な場合は前述のとうりCT,MR必要です。ただベースに肝硬変がある場合はハイパーな結節が見つかった場合早急に血管腫と判断するのは危険です。脂肪成分を含む肝細胞癌もあるわけですからCT、MRで確診する必要があります。
早期の肝細胞癌の場合は当然分化度は高分化ですので門脈血流の低下に伴い動脈血流の低下も来しているわけです。従って造影エコー早期相(動脈血反映)で周囲実質よりも造影されるといったことは少ないです。逆にこの相で増強されるようでしたら分化度は高分化ではないと言えます。つまり早期ガンではありません。一方実質相では門脈血流の低下を反映して周囲実質よりも低輝度、ハイポに描出されます。まだ門脈血流の低下も来していない、周囲実質とかわらないような早期肝細胞癌では周囲実質と同じエコー輝度になりエコー上は不明瞭になります。ただこのような肝細胞癌の場合焦って治療を急ぐ必要はありません。
長い説明になってしまいましたがよろしいでしょうか?僕が説明した上記内容はちょっと詳しい肝臓癌専門の書籍には載っています。何か不明な点があればまたメール下さい。正しいアドレスにて。
腫瘍マーカー 腫瘍マーカーと呼ばれるものがあります。これは血中の物質ですが主に腫瘍が産生するもので原発性、いわゆる肝細胞癌の場合AFP(アルファフェトプロテイン)やPIVKA-II(ピブカ2)と言われるものが一般的です。肝細胞癌ができるとこれらの物質の血中濃度が上昇しますので血液検査で腫瘍の存在を疑うことができます。もちろんすべての方にあてはまるわけではありません。肝細胞癌ができても上昇しないかたもおられます。AFPが上昇してPIVKAが正常な方もおられますし反対のかたもおられ様々です。全く両者が正常なかたもおられます。参考になる程度であって絶対的なものではありません。特にAFPなどは肝細胞再生などの時にも上昇しますので高いからといって癌ができたとはいえません。あくまで腫瘍マーカーは参考であった絶対的所見はCT,MRIによる画像診断です。マーカーがいくら高くても画像診断にて腫瘍が確認されなければ治療はしません。一方マーカー正常でも腫瘍が画像で確認されれば即治療です。腫瘍マーカーが高く実際ガンが存在する患者さんではこのマーカーは治療する上で有用な指標になります。例えば治療前にAFPが1000であった患者さんが動脈塞栓術後に10以下になったりすれば治療が著効していることがわかります。その後この値がずーっとこのままであれば再発なしで、徐々に高くなれば再発、残存があるということになるわけで次の治療戦略を立てることができます。ただ当然マーカーは前述したようにあくまで参考でありますのでマーカー上昇なくても治療後の画像診断で再発あればもちろん追加治療を行います。
一方転移性肝癌の場合マーカーは様々です。もとの癌の性質によりますので胃癌の肝転移の場合はCEAやCA19-9と呼ばれるマーカーが高くなります。肺癌の肝転移の場合はSCCやprogrp、NSE等々。元の、原発の腫瘍が増大しても血中マーカーは上昇するわけですからいろんな検索が必要です。
大腸癌 肝転移に関して。話題を少し変えて大腸癌肝転移に関して。肝臓には肝細胞を元とする肝細胞癌意外にも多臓器の癌の転移もよくあります。というより原発性肝癌(肝細胞癌)よりもこの転移性肝癌の数が多いくらいです。その中でも胃癌、大腸癌、膵癌などからの転移はよく遭遇する腫瘍といえます。大腸癌の場合、原発の大腸のガンは手術でうまく取れたんだけど不幸にして術後肝転移を来したなんてことはよくあるわけです。この場合肝転移の数が少数であれば当然外科的切除術の適応になりますが多数が肝臓全体にあるようならば当然手術は不可能です。この場合化学療法、いわゆる抗癌剤の治療になります。古くは静脈投与による全身化学療法が行われていましたが僕らは肝臓の動脈にカテーテルを挿入してそれにポート、リザーバーといわれる小さなボタンを付けて皮下に埋め込んだ動注化学療法を行っています。直接抗癌剤を肝臓に流せる、そのため全身化学療法に比較して薬の量が減らせる(必ずしも絶対ではない)、直接腫瘍に流れるため高濃度の薬がガンに行き渡るなど利点があります。ただ全身化学療法に比較して明らかな統計学的根拠をもって効果があり、有用といったデータはまだ十分には出ていません。明らかに延命するといったデータはないんです。が、腫瘍の縮小効果は明らかに高いような印象はあります。以前は5FUやCDDP,CBDCAといった薬を使用していましたが最近は5FU
やLVやオキサリプラチン、イリノテカン、UFT、TS1などから数種類を組み合わせた多剤併用療法を行っています。この中でも5FUとLVとオキサリを合わせたFOLFOXやオキサリの代わりにイリノテカンを合わせたFOLFIRIなどが主流の治療を行っています。オキサリは日本で開発された薬ですが臨床の場では早くに欧米で使用されその成績の良さから最近では進行した大腸、直腸癌治療の第I選択になっています。このあたりの詳しいことなネットでいくらでも調べることは可能です。日本でも最近行われるようになっていますが十分な検討を加えるまでの例数には至ってないようですがその効果は既存のレジメに比較しても相当優れるようです。僕の経験もずいぶん増えてきました。まだ十分な検討はしていませんが実際に投与の早いうちから腫瘍が小さくなり効果が期待できる方もたくさんおられます。投与の方法は様々ありますがオキサリ動注も十分可能で今後は主体になるものと思います。ただレジメにのってFOLFOX6など推奨されているを行うと数回目でやはり白血球、血小板減少などの血液毒性が顕著になり治療をスキップ(とばす)しなければならないこともあります。今後はゼローダなどの新規適応をとれた薬などが使用可能になるようならさらに期待できるものと思います。この動注FOLFOX等は十分に外来で施行可能であり患者さんのQOLを維持しながら積極的な治療で延命していくといったことができるように思います。ただ残念ながらすべての患者さんに効果があるわけではなく残念な結果になることも実際あります(続)。

肝細胞癌 TAE(肝動脈塞栓術)の実際 自分が使用しているスライドからの引用です。
TAEの効果に関して。肝癌の肝動脈塞栓術(TAE)の効果に関して、本によっては再発を繰り返すことが多くそのためTAE自体を何度も行わなければならないといった内容を記載しているものがあります。こういった内容の文章を読むとすべてのTAEにおいて再発するような印象を一般の方がもつようなことも起こりえます。確かに患者さんによっては局所再発を繰り返しそのため何度もTAEを行うといったことはありますが必ずしも真実ではありません。通常3cm以下の大きさで血管に富んだ腫瘍であれば一回のTAEで(時には2ないし3回かかるときもありますが)完全完治させることは十分可能です。TAEをしたといっても施設によってその上手、下手はあるものです。当然不完全、不十分なTAEを行えば患者さんはTAE後は楽に過ごせますが再発の可能性は高まります。一方TAE後の副作用(熱発、痛み、肝障害)の程度は多少強くともきっちりTAEされれば一回の治療でガンを完全壊死させることは十分可能なのです。いかに上手にTAEするか否かで再発の程度は全然異なってきます。だから簡単にTAEは再発しやすいといったことは全くのナンセンスです。症例、術者の技量に左右されるものです。IVRを専門に行う放射線科医を有する施設で行うことをお勧めします。なおその場合、その放射線科が病棟を有し患者さんの治療から治療後のケアまで放射線科が行うようであればなおさら良いと思われます。
現在は区域性、亜区域TAEと呼ばれるTAEの方法が主体です。これは肝区域あるいは亜区域を全部塞栓する方法です。肝細胞癌は通常肝動脈だけから栄養されているためにこの古くは肝動脈だけを塞栓することを基本的概念として行ってきました。腫瘍周囲の肝実質は門脈から栄養を受けていることから動脈を塞栓しても腫瘍は死ぬ一方で周囲の実質は壊死することがないようになります。ただこの方法では腫瘍の辺縁から再発を繰り返すことが起こるようなことが多いことがわかってきました。従って最近では動脈を塞栓して、さらに塞栓物質であるリピオドールが門脈まで流出して門脈が描出されるようになるまでこのリピオドールを注入するようにしています。ただしすべての症例でこうしているわけではありませんが。肝動脈と門脈は肝内では太い通常吻合、交通はありませんが肝小葉手前レベルでは細い導管を介して交通しています。従って区域の動脈に塞栓物質を流すとその量が多い場合は門脈にまで流入してきます。そうするとその区域全部が塞栓されることになるわけです。(最後に動脈にゼラチンをながすことも必須です。そうでないと塞栓効果は半減します)。門脈も閉塞するためにガンとそれを含む区域も塞栓されるために腫瘍周囲からの再発率がぐっと減少します(続)。
上写真 区域TAEの実際: 2006年版に詳細記載
肝細胞癌血管造影所見
区域TAE後のCT所見
RFA(ラジオ波治療)は技術的には可能ですがそれが患者さんの予後、QOLを改善して延命に寄与することができるかと言われれば無理なように思います。肺にしても肝にしても穿刺して焼くことはできますが腫瘍は画像で見えるだけで実際には多数あるわけですから細胞レベルではほぼ無数に存在していると考えられます。ですからCTで見えたものを焼いたからと言って多数存在する腫瘍にとってはあまりダメージを与えた訳にはなりません。一つ焼いても次がすぐに見えてくるようになるわけです。このような場合全身化学療法が第一選択です。それで例えば腫瘍がおおむね消失して一部残存しているだけとあればRFAを追加して行うことは一つの方法です。ラジオ波の場合、肝で3個以内、かつ最大径で3cm以内までは適応と言われます。肺も同様です。多数の病変を痛い思いして繰り返してRFAしたけどつらいばかりで思ったように長生きできなかったとういことが多いです。個人的には過去には肺、肝に多数転移が存在するRFAしてきましたがなかなか期待された結果、生存期間が得られなかったのが実状です。一方一個や二個の転移の時は比較的長期に渡って良好にコントロールできる場合があります。
ラジオ波焼灼術(RFA)に関して
肺にも肝にも多数転移が存在する場合ラジオ波焼灼術の適応はあるかないか?
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