糖新生の経路

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 絶食時などには、脳に必要な血糖を維持するために、肝臓で、ブドウ糖グルコース)が、アミノ酸(糖原性アミノ酸注1)の炭素骨格、ピルビン酸、乳酸(注2)、TCA回路の中間体、中性脂肪の加水分解で生成されるグリセロール(グリセリン)などから、糖新生されます。
 アミノ酸(糖原性アミノ酸)の炭素骨格、ピルビン酸、乳酸、TCA回路の中間体は、オキサロ酢酸を経由して、糖新生に利用されます。

 脂肪酸は、β-酸化により、アセチル-CoAに分解されます。
 動物の体には、アセチル-CoAを、オキサロ酢酸に変換する代謝経路(酵素)は、ありません。
 従って、脂肪は、ブドウ糖グルコース)に変換されません。
 このような糖新生(gluconeogenesis)は、主に肝臓で行われます。
 インスリンは、肝臓での糖新生を、抑制します。 
 糖新生の経路は、解糖の逆経路ではありません。
 ピルビン酸をグルコースまで糖新生(gluconeogenesis)する際に、非可逆的な段階を触媒するのは、下記の4つの酵素です。

 1.ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyruvate carboxylase)
 ピルビン酸カルボキシラーゼは、ミトコンドリア内で、ピルビン酸を、オキサロ酢酸に変換する酵素。
 脂肪酸がβ-酸化されて生じるアセチル-CoAは、グルコースに変換されませんが、アセチル-CoAにより、ピルビン酸カルボキシラーゼが、活性化されます(ピルビン酸キナーゼの迂回路)。

 2.MDH(リンゴ酸脱水素酵素:malate dehydrogenase)
 ミトコンドリア内の オキサロ酢酸は、ミトコンドリア内膜を通過出来ないので、一旦、MDHにより、リンゴ酸になって、リンゴ酸-アスパラギン酸シャトルにより、ミトコンドリア内膜を通過して、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)に移行し、再びMDHにより、オキサロ酢酸に戻ります (ピルビン酸キナーゼの迂回路)。

 3.PEPCK(phosphoenolpyruvate carboxykinase)
 PEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)は、細胞質ゾルで、オキサロ酢酸を、ホスホエノールピルビン酸PEP)に変換する酵素(ピルビン酸キナーゼの迂回路)。
 なお、ヒトでは、PEPCKは、ミトコンドリア内にも存在し、生成されたPEPは、ミトコンドリア膜を通過して、細胞質ゾルに輸送されます(注3)。

 4.フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(fructose-1,6-bisphosphatase)
 フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(別名、fructose-1,6-diphosphatase)は、細胞質ゾルで、フルクトース-1,6-ビスリン酸を、フルクトース-6-リン酸に変換する酵素(ホスホフルクトキナーゼの迂回路)。
 なお、フルクトース-2,6-ビスリン酸は、AMP同様に、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼの活性を抑制し、糖新生を抑制します。フルクトース 2,6-ビスリン酸は、また、ホスホフルクトキナーゼ(PFK)の活性を賦活化させ、肝臓での解糖を促進させます。
 このように、フルクトース 2,6-ビスリン酸の量が多いと、解糖系に進み、フルクトース 2,6-ビスリン酸の量が少ないと、糖新生系に進みます。
 フルクトース-1,6-ビスホスファターゼが欠損すると、糖新生が行われず、長時間の絶食や、果糖やグリセロールの投与により、著明な低血糖や、代謝性アシドーシスを来たすます。

 5.グルコース-6-ホスファターゼ(glucose-6-phosphatase)
 グルコース-6-(リン酸)ホスファターゼは、肝臓と腎臓のミクロソームにのみ存在し、グルコース-6-リン酸を、グルコースに変換する酵素(ヘキソキナーゼの迂回路)。
 糖新生は、グルコース-6-ホスファターゼを有する、肝臓と腎皮質でのみ、行われ得ます


 糖新生には、細胞質ゾル(サイトゾル)に、NADH2+が存在することが、必要です注4)。
 ミトコンドリア内から、細胞質ゾルへ、NADH2+の還元当量(reducing equivalents)を輸送する役割は、リンゴ酸輸送系リンゴ酸-α-ケトグルタル酸輸送体)により行われます:ミトコンドリア内で生成されたNADH2+は、オキサロ酢酸を、リンゴ酸に還元します。リンゴ酸は、ミトコンドリア内膜のリンゴ酸輸送系を通過して、細胞質ゾル(ミトコンドリア外)に輸送され、再び、オキサロ酢酸に戻ります。その際、NAD+が、NADH2+に還元されるので、結果的に、ミトコンドリア外(細胞質ゾル)に、NADH2+が輸送されます。
 なお、乳酸から糖新生する際には、細胞質ゾルで、ピルビン酸が生成される際に、NADH2+が生成されます。
 また、果糖から糖新生する際には、ATP(ミトコンドリアで生成されます)は必要ですが、NADH2+は必要でありません。

 飢餓などの絶食時には、筋肉の蛋白質が分解され、糖原性アミノ酸から、ピルビン酸やオキサロ酢酸が生成され、糖新生によって、グルコース(ブドウ糖)が、合成されます。

 インスリンは、肝臓で、グリコーゲン分解を抑制し、アミノ酸、乳酸、グリセロール(グリセリン)などからの糖新生を抑制し、グルコースの放出を抑制します。その結果、肝臓に、グリコーゲンが、貯蔵されます
 インスリンは、解糖系の律速酵素(調節酵素)である、グルコキナーゼホスホフルクトキナーゼピルビン酸キナーゼピルビン酸デヒドロキナーゼを誘導、あるいは、活性化させます。また、PEPCKグルコース-6-ホスファターゼ(glucose-6-phosphatase )の転写を抑制し、糖新生を抑制します。
 インスリンは、肝臓でのグリコーゲン分解を抑制し、糖新生をも抑制するので、追加インスリン分泌が低下する糖尿病では、肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生が亢進し、空腹時に高血糖を惹起します。

 夜間も、脳、赤血球、心筋などでは、活発な糖代謝が行われています。
 これは、肝臓が、グリコーゲンを分解したり、糖新生をして、てブドウ糖を血中に供給するから、可能です:供給されるブドウ糖の、約75%はグリコーゲン分解により、約25%「は糖新生により、産生されます。糖新生は、骨格筋で蛋白質が分解されて生成されるアミノ酸(アラニンなど)や、脂肪組織で中性脂肪が分解されて生成されるグリセロールや、諸臓器で解糖により生成される乳酸やピルビン酸が、材料に用いられます。

  動物では、アセチル-CoAを、オキサロ酢酸に変換する酵素が、存在しない。従って、β-酸化でアセチル-CoAに分解される脂肪酸は、グルコース前駆体として、糖新生に使用されない。

. 注1:骨格筋で、運動時に、BCAAから生成されるグルタミン酸は、ALTGPT)により、ピルビン酸に、アミノ基を転移し、糖原性アミノ酸である、アラニンが生成されます。アラニンは、血液中を肝臓に輸送され、ALTGPT)により、ピルビン酸に戻り、グルコースに糖新生されます。糖新生されたグルコースは、肝臓から放出され、血液中を骨格筋に輸送され、利用されます(グルコース・アラニンサイクル)。BCAAのロイシン(Leu)は、ケト原性アミノ酸ですが、骨格筋では、BCATにより、α-ケトグルタル酸にアミノ基を転移して、グルタミン酸が生成され、糖新生に関与すると思われます。
 このように、BCAAは、運動時などに、骨格筋で異化され、生成されるグルタミン酸から、アラニンが生成され、肝臓での糖新生を、促進させると考えられます。
 
 注2:乳酸は、ピルビン酸からLDHの作用により、生成されます。
 乳酸は、主に、骨格筋や赤血球で、生成されています。
 骨格筋で、嫌気的解糖で生成された乳酸は、血液中を肝臓に輸送され、LDHにより、ピルビン酸に変換され、グルコースに糖新生されます。糖新生されたグルコースは、肝臓から放出され、血液中を骨格筋に輸送され、利用されます(Coriのサイクル)。
 肝臓や腎臓での糖新生が障害されると、ピルビン酸や乳酸が、血液中に増加します。

 注3:ヒトでは、PEPCKは、ミトコンドリア内にも、細胞質ゾル(サイトゾル)にも、存在する。PEPCKは、生物種によっては、ミトコンドリア内にのみ存在したり、細胞質ゾルにのみ存在したりする。

 注4:糖新生に必要なNADH2+は、脂肪酸が、ミトコンドリア内で、β-酸化されて生成されるアセチル-CoAが、TCA回路で代謝され、供給されます。
 糖新生では、グルコースブドウ糖)は、乳酸やピルビン酸(一部は、アラニンから誘導される)から、合成されます。
 脂肪酸は、β-酸化により、アセチル-CoAに分解されます。
 動物の体には、アセチル-CoAを、オキサロ酢酸に変換する代謝経路は、ありません。
 従って、脂肪酸からは、糖新生で、ブドウ糖が生成されることはありません。

 脂肪酸は、それ自体は、グルコースに、変換されません。
 しかし、脂肪酸のβ-酸化により、細胞内のアセチル-CoA濃度と、NADH/NAD+が、増加すると、糖新生が、促進されます。

 脂肪酸のβ-酸化に異常があるFAODでは、糖新生も障害され、飢餓などの絶食時に、低ケトン性低血糖を来たします。これは、絶食時に、脂肪酸のβ-酸化が障害されていると、脂肪酸からアセチル-CoAが生成されないので、TCA回路で、NADH2+が生成されず、糖新生が、行えないためと、考えられます。従って、脂肪酸のβ-酸化で生成されるアセチル-CoAは、運動時に、筋肉のミトコンドリアで、NADH2+からATPを生成する原料となるだけでなく、肝臓では、NADH2+を細胞質に供給して、糖新生のエネルギー源となります(ケトン体は、脳のエネルギー源になります)。
 なお、糖新生には、NADH2+以外に、ATP(ミトコンドリアで生成される)、GTPが、エネルギー源として、必要です。
 2ピルビン酸+4 ATP+2 GTP+2 NADH2++6 H2O→グルコース+4 ADP+2 GDP+6 リン酸(Pi)+2 NAD++2 H+


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