免疫機能の活性化
 細菌、ウイルス、がん細胞など、私たちの体は内外の敵からひっきりなしに攻撃を受けています。こうした内外の敵から日夜私たちの体を守ってくれているのは言うまでもなく免疫システムです。

 私たちの体には必要に応じて、各々の機能が働くように促進する因子と働き過ぎないように抑制する因子があります。こうした2種類の因子は体の各レベルで見られます。両者のバランスが取れている時は免疫機能が最も活性化し、健康が保てます。しかし何らかの原因によってバランスがくずれ、免疫機能が弱くなると、病気が防げなくなってしまいます。

体のバランスと漢方医学
 肝炎になったことのない人でも、血液検査で肝炎ウイルスの抗体が検出されることがあります。これはいつの間にか体内に侵入した肝炎ウイルスが知らない間に免疫機能によって排除されたことを意味します。これが出来るのは体のバランスが取れていて、免疫システムが健全に機能しているからです。しかしバランスがくずれ、免疫機能が弱くなっていれば、体内に侵入した肝炎ウイルスがそのまま肝臓に住みついて、キャリアになったり、肝炎を起こしたりします。

 漢方医学は体のバランスを最も重視しています。たとえば「陰」と「陽」、「虚」と「実」などは、漢方医学ではいずれも独自の意味を持ったバランスに関する概念です。こうしたバランスがとれている時は体内に「正気」が充実し、病気に犯されることはありません。このような場合、たとえ体内に肝炎ウイルスが侵入しても、上記のように知らない間に体がそれを排除してしまいます。しかしバランスがくずれると、これに乗じて「邪気」が侵入して、病気を起こしてしまいます。「邪気」は色々ありますが、もしそれが肝炎ウイルスでしたら、当然キャリアや肝炎の発症につながっていくでしょう。

漢方医学と肝炎治療
 漢方医学による病気治療は体全体の視点から病気をとらえ、くずれた体のバランスを元に戻します。これを通じて、弱くなっていた免疫機能を回復させ、体が本来持っている力で病気を克服させるのです。

 西洋医学の肝炎治療法のひとつとしてステロイド離脱療法があります。これはまずステロイドを一定量投与して、免疫機能を抑制します。それから突然同剤の投与を停止すると、抑制されていた免疫機能が一気に活性化され、ウイルスに対して猛烈な攻撃を始めます。この方法は免疫機能をうまく利用したやり方です。ただこの方法は肝臓に与えるダメージが大きく、治療を受けるには肝臓に相当の予備能力が必要です。

 肝炎治療で漢方薬を服用しているうちに、肝機能が改善されるばかりでなく、ウイルスも検出されなくなることがよくあります。これは漢方薬の服用によって体のバランスが戻り、健全な免疫機能が回復されたため、ウイルスが排除されたと専門家たちが指摘しています。

 現在、肝炎に対する漢方薬の作用機序がさかんに研究されており、肝炎治療において漢方薬が果たす役割は益々大きくなるでしょう。
                      (漢方医学研究家 呉 信一)
 
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