日本経済新聞(2000年9月4日)
              
   

特殊装置で白血球を減らす

 ウイルスの感染によって肝臓に炎症が起きるウイルス性肝炎。そのうちの約75%を占めるとされるC型肝炎は、肝硬変や肝臓ガンに進行する恐れがある怖い病気だが、最近、新たな治療法や新薬の開発が進んできた。岡山大学が肝炎によって過剰に増えた患者の白血球を減らして肝臓への影響を抑制する血液治療法を開始したほか、海外の新薬などの臨床試験も進んでいる。

体に再び血液を戻す 

 岡山大学第一内科の辻孝夫教授らのグループは既存の治療薬が効かなくなったC型肝炎の患者に対して「顆粒(かりゅう)球吸着療法」という新しい治療を四月から実施している。ベッドに横たわる患者の腕の静脈から血液をチューブで特殊な装置に導き、ここで血液を処理して再び患者の体に戻す。
 C型肝炎の患者は肝臓に感染したC型肝炎ウイルスを退治するために、顆粒球やリンパ球などの白血球が過剰に増える。ところが、この増えた白血球がウイルスだけでなく、肝細胞も攻撃するため、肝臓の機能が弱ってしまう。そこで、特殊な装置に患者の血液を送り白血球を減らして患者に戻し、肝機能が改善することを狙っている。
 辻教授らは感染者三人に新治療を試みた。治療薬の使用を止めてから一週間に一回一時間、合計五回にわたって治療を施した。三人の患者のうち五十歳代の男性患者では、肝機能の改善が見られた。研究グループの下村宏之助手は「患者によっては効果が期待できそう」としている。今後、さらに多くの患者に新治療を試みて、その効果を確かめることにしている。

(中略)
(肝炎)の治療薬としてはインターフェロンが主流で、感染者の三割前後はこの薬で完治する。しかし、治療薬が効かないと病状が進み二十〜二十五年で肝硬変になり、最悪の場合は肝臓ガンになることもある。このため、新たな治療薬の研究が進められている。
 その一つが改良型インターフェロンだ。現在のインターフェロンは注射後二〜三時間で血液中の濃度が下がるため、一週間に最低三回は注射しなければならず、効きにくい。改良型はインターフェロンができるだけ長く血中に存在するようにして効果を高め、一週間に一度の注射で済ませるようにするものだ。
 インターフェロンと欧州などで臨床応用されている抗ウイルス薬とを併用する試みもある。下村助手によると「完治率が一割程度アップする可能性がある」という。

やっかいな副作用

 ただ、やっかいなのは副作用。東京慈恵会医科大学の戸田剛太郎教授は、インターフェロンには微熱や食欲不振などの副作用があり、「患者によっては使用を嫌がる」と言う。抗ウイルス薬を併用すると、腎(じん)臓障害になったケースもある。
 今後、新薬や新治療法の効果が確認されれば、インターフェロンが効かない凡そ七割の患者にとっては朗報となりそうだ。

               


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