読売新聞 [2002年8月13日]

 出生時に母親から感染した場合などに慢性化する日本在来のB型肝炎と異なり、成人での感染でも慢性化して肝硬変や肝臓がんに進む恐れがある欧米系のB型肝炎が、性感染により国内で勢力を拡大していることが、2つの研究グループの調査で明らかになった。

 B型肝炎はワクチンの普及で母子感染対策が確立、慢性肝炎を根絶に追い込めるとみられていたが、新たなタイプの拡大は撲滅にブレーキをかける恐れもある。研究者らは「母子感染だけに的を絞った従来の予防策では、B型慢性肝炎は防ぎ切れない」と警鐘を鳴らしている。

 血液など体液を通じて感染するB型肝炎ウイルスは、遺伝子の構造でAからGまで7タイプに分類され、日本のB型慢性肝炎は大半がCタイプ。アジアに多いBタイプも数%を占めるが、他のタイプはほとんどない。在来型は成人で感染しても急性肝炎にとどまり慢性化しなかった。ただ、7タイプの中でAタイプが唯一、約1割が慢性化する。

 全国21の国立病院・療養所による「肝疾患共同研究班」が、1990年以降に入院した254人のB型急性肝炎患者について、病原体の肝炎ウイルス(HBV)遺伝子を分析したところ、母子感染や免疫が正常でない人が慢性化するこれまでのタイプとは異なり、欧米とフィリピンに多いAタイプが24人(9・5%)に上っていた。男性が88%を占めていた。

 さらに、東京女子医大(東京都新宿区)の長谷川潔講師(消化器内科)らが、96―2000年に診察した25人のB型急性肝炎について、HBVを分析した結果、男性ばかり14人がAタイプだった。このうち感染経路が判明した8人は、すべて性感染だった。

 こうした結果から、国立病院長崎医療センターの八橋弘・臨床研究部長は「都会で外国人などから性感染した例が多いのではないか」と推測。長谷川講師は「最初は外国から持ち込まれたAタイプが、今や性産業などを通じてまん延している可能性もある」とみる。 国立病院・療養所の患者24人のうち、2人は発症から6か月後もウイルスが体内から消えず、慢性化している可能性があった。フィリピンで急性肝炎になったことのある夫から感染した女性もいた。

 同研究班の調査では、Aタイプの割合が、2000年は14%、2001年は18・5%と、上昇傾向にあり、八橋部長は「肝炎もグローバル化の影響を受けている」とみている。


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