ブナ林を守ろう

ブナ林の保水力を見直そう

ブナ林は美しいだけでなく、ダムの役目を果している。50年位のブナの木でも、その葉と落ち葉に約1トンの水を蓄えるといわれている。ブナの木々は人々を洪水の災害から守り、大量の炭酸ガスを吸収してくれる。数年に一度、多量の実をつけ、これらの実はリス、鳥、熊、カモシカなどの重要な餌となる。

 

春を待つブナの木

深い山の中のブナに木に春がくると、根元の雪が解け、まるく大きく開く。いち早く春の光を体全体に浴びたブナの木が温まり、根元の雪を解かす。その根回り穴は雪深いところでは直径34m、深さ1m近くになる。ブナの木は枝先で芽をふくらませ、芽吹きを待つばかりである。雪の下の水分を少しずつ吸い上げて、準備しているに違いない。

 

立地条件とブナ林

平地の若木の森ではブナの木々は間隔もないほどに密集して生える。このようなブナ林では光は上からしか射し込めないために、ブナの木は上へ上へと真っ直ぐに伸びて、中間で枝別れしない。一方、山の斜面のブナは斜面の高低差のために横からも光が差し込み、その光を求めてブナの木は幹の途中から枝分かれをする。ブナは高木になると、30メートル位の高さになるが、そうなれるのは生存環境の良いブナのみである。山の稜線近くでは風雨も強く、積雪量も多い。このような厳しい環境ではブナは高木にはなれず、背をかがめるようにして生きている。いわゆる矮小化した樹形になっている。常に強風に晒されていると樹はいつも脱水状態になり、このような厳しい環境では樹肌は荒々しく、ゴツゴツして、乾燥している。遅くまで残雪で覆われている場所ではブナの木は真っ直ぐに立っている木はほとんどない。枝を斜めに伸ばしていたり、根元曲がりになっていたり、クネクネと株立ちのように立ち上がっている。ブナ達は雪に痛めつけられながらも必死で生きている。

 

ブナの木の伐採

ブナ林は、冷温帯気候の代表的な極相林で、かっては本州中部から東北地方の大部分を広くおおっていた。しかしブナの木は材木にも燃料にも適さないため、多くが伐り倒され、替わりに松やナラや杉などが植えられた。現在では伐り倒した木を運び出すのが難しい山地のブナが伐り取られずに残っている。

 

参考:信州百山より

伐採で姿を消す原生林

志賀高原のなかでも豊かな山なみをもつ岩菅山だが、森林伐採がすすんで秘境の面影がなくなってきた。志賀高原に向かう途中、直径一メートルもあるようなブナ材を満載した大型トラックが、砂ぼこりをあげて下ってくるのによく出会う。秘境岩菅連峰の原生林は、こうしてどんどん姿を消してきた。昭和16年、旧平穏村(現山ノ内町)とこの一帯の大地主、財団法人和合会、同共益会が王子製紙へ4600ヘクタールに及ぶ岩菅共有林を売り払った。名目は上水道建設資金。代金は四十二万八千円。そのころの村の総予算は九万円前後。「樹齢二、三百年の天然林はもうよみがえらない。胸高直径十八メートル以下は伐採しないという条件だが皆伐にひとしい」と嘆く声が聞かれるのも当然のことだろう。

伐採されるブナ原生林

高妻山を訪れた人なら、裏山の美しさはブナの原生林によって支えられていることを知ろう。ブナが春は残雪のドレスを縦横に模様付けし、秋は全山を紅に染める。いまなお、一般の登山者を寄せ付けない裾花の源流へ向けて、ブナの尾根が折り重なって落ち込み、戸隠連峰の盟主高妻を厚く包んでいる。“ブナの着物”があるところ、動物たち、小鳥たちの楽園でもある。しかし、いま表山を“目かくし”のびょうぶにし、裏山のブナを急ピッチで剥ぎ取っているのを、多くの人たちは知らない。チェーンソーのうなりは、年毎に高妻山に近くなってきた。すでに東側に切り込んでくる氷沢流域は坊主にされた。南の源流側からも伐採の火は上がっている。

 

長野県では豪雪地帯の戸隠、鬼無里、白馬、奥信濃の鍋倉山、小菅山、カヤの平などにブナの原生林が残っている。

 

カヤの平(下高井郡木島平村)

標高1500mに広がるカヤの平高原は、命の鼓動を感じる樹齢300年を超える巨大なブナの原生林が樹海をなし、季節ごとに美しい景観で迎えてくれる。比較的なだらかな地形が続くあたりに、樹齢200年〜300年のブナの大木が数多く見られる。灰白色の樹肌の色は微妙に変化しており、長い年月の風雪に耐えてきた風格を感じさせる。カヤの平のブナの森は、日本でいちばん美しいブナの森といわれている。なだらかに続く林道と、ブナの樹相のコントラストがすばらしい。

 

奥裾花自然園(鬼無里村)

信州の秘境鬼無里の、そのまた奥の奥裾花はうっそうとしたブナの原生林に囲まれて、ミズバショウが咲きほこる今池、吉池がある。ミズバショウはその数81万株ともいわれている。樹齢200から300年の大樹が今池を中心に生い茂っている。村は村有林(120ヘクタール)のブナを伐採しないことに決めている。

 

飯山市

飯山市の市の木はブナで、ブナの宝庫である。その中で有名なのが鍋倉山一帯で400ヘクタールに及ぶブナ林がある。多くのブナの中に「森太郎」、「森姫」と呼ばれる有名な巨木がある。鍋倉山の東北、関田峠の南に茶屋池がある。神秘さが漂う茶屋池とその周囲のブナの芽吹きは夢幻の世界を作り出す。

重要文化財の小菅神社奥社が建っている小菅山の頂上付近にブナ林がある。幹囲1メートルから2メートルの若いブナが中心である。湖と菜の花で有名な北竜湖は、小菅山の深い森に包まれ、神秘的である。

 

写真集

l        カヤの平

根回り穴(1):根明けともいう。春の光を体全体に浴びたブナの木があたたまり、根元の雪を解かす。

根回り穴(2):根回り穴は大木のブナでは直径3〜4m近くになり、芽吹きを待つ。

芽吹き:いっせいに黄緑色の葉が芽吹く。

ブナの樹海枝分かれが少なく、真っ直ぐ上に伸びた幹は整然とした樹形となる。

ブナの実生:林床に多数の実生が芽生える。

新緑新緑のブナ林は美しい。

l        奥裾花自然園

雪解け:雪解けとともにミズバショウが咲きはじめる。

ミズバショウ:81万株といわれるミズバショウ。

新緑:上に真っ直ぐ伸びたブナ。

集合体:10本くらいのブナが集まっている。

l        飯山市

茶屋池(1):湖面に映えるブナの新緑。

茶屋池(2):ブナの芽吹きは夢幻の世界を作り出す。

小菅山(1):比較的若いブナの木が多い。

小菅山(2):太陽をいっぱいに浴びる新緑。

北竜湖:湖の周囲に菜の花が咲き誇る北竜湖。