・Ishikawa T, Yanagisawa M, Kimura S, Goto K, Masaki T. Positive inotropic action of novel vasoconstrictor peptide endothelin on guinea pig atria. Am J Physiol 1988;255:H970-H973
・Yanagisawa M, Inoue A, Ishikawa T, Kasuya Y, Kimura S, Kumagaye S, Nakajima K, Watanabe TX, Sakakibara S, Goto K, Masaki T. Primary structure, synthesis, and biological activity of rat endothelin, an endothelium-derived vasoconstrictor peptide. Proc Natl Acad Sci USA 1988;85:6964-6967
・Ishikawa T, Yanagisawa M, Kimura S, Goto K, Masaki T. Positive chronotropic effects of endothelin, a novel endothelium-derived vasoconstrictor peptide. Pflugers Arch 1988;413:108 110
・Li L, Ishikawa T, Miyauchi T, Yanagisawa M, Kimura S, Goto K, Masaki T. Pressor response to endothelin in guinea pigs. Japan J Pharmacol 1989;49:549-552
・Goto K, Kasuya Y, Matsuki N, Takuwa Y, Kurihara H, Ishikawa T, Kimura S, Yanagisawa M, Masaki T. Endothelin activates the dihydropyridine-sensitive, voltage-dependent Ca2+ channel in vascular smooth muscle. Proc Natl Acad Sci USA 1989;86:3915-3918
・Kasuya Y, Ishikawa T, Yanagisawa M, Kimura S, Goto K, Masaki T. Mechanism of contraction to endothelin in isolated porcine coronary artery. Am J Physiol 1989;257:H1828-H1835
・Miyauchi T, Tomobe Y, Shiba R, Ishikawa T, Yanagisawa M, Kimura S, Sugishita Y, Ito I, Goto K, Masaki T. Involvement of endothelin in the regulation of human vascular tonus: potent vasoconstrictor effect and existence in endothelial cells. Circulation 1990;81:1874-1880
・Tomobe Y, Ishikawa T, Yanagisawa M, Kimura S, Masaki T, Goto K. Mechanisms of increased sensitivity to endothelin-1 in aortic smooth muscle of spontaneously hypertensive rats. J Pharmacol Exp Ther 1991;257:555-561
・Ishikawa T, Li L, Shinmi O, Kimura S, Yanagisawa M, Goto K, Masaki T. Characteristics of binding of endothelin-1 and endothelin-3 to rat hearts: developmental changes in mechanical responses and receptor subtypes. Circ Res 1991;69:918-926
・Yamanaka A, Ishikawa T, Goto K. Endothelium-dependent relaxation independent of NO, prostaglandins and epoxyeicosatrienoic acids in guinea pig coronary artery. J Pharmacol Exp Ther 1998;285:480-489
石川智久、柳沢正史、後藤勝年、真崎知生 エンドセリン 臨床科学 25巻
内皮由来血管収縮ペプチド・エンドセリン 日本臨床 47巻 p. 2121 - 2130
俺の場合は、やはりラッキーな出来事の連続だったと思います。1990年にエンドセリンB受容体のクローニングを発表しました(筑波の4年後輩で、現同大助教授の桜井君の仕事です)。それが、京大中西研のエンドセリンA受容体の論文と一緒にNatureに載り、その号に英国のDr. Sir John Vane(アスピリン作用機序とプロスタサイクリンの発見でノーベル賞)がNews and Viewsを書いたのです。そのNews and Views記事が一風変わっていて、当時筑波の講師になりたてだった俺の個人史にずいぶんと触れたものでした。その論文が出る直前に開かれた「国際エンドセリン会議」の時、John Vaneに誘われて二人で一緒に喰った昼食が、実はそれ用の取材だったことは後から気付きました。
その記事が、今いるデパートメントのヘッドであるDrs. Joe GoldsteinとMike Brown(LDL受容体でノーベル賞)の眼にとまり、マドリッドで彼らの主催する小さな研究会で発表する機会を与えられました。そこでの発表の次の日に、ディナーの時に丁度Joe Goldsteinの隣に座ることになり、いろいろ話をしたのです。当時、俺の筑波でのボスは現国立循環器病センター研究所長の眞崎知生元京大教授でした。彼のおおらかな指導のもと、俺は日本で決してunhappyではありませんでしたが、やはり本当にfinancially independentになって独り立ちするには、日本ではまだ何年も時間がかかりそうでした。その辺の事情を話し、もしチャンスがあればアメリカで仕事をしたい旨Goldsteinに言いました。実際、俺は当時アメリカで職を探し始めており、ハーバードのMGHやGenentech社からもオファーは来ていたのです。すると、Joeは、「お前ならHHMI Investigatorにしてやるから、ダラスに来い」と、いとも簡単に言いました。最初は半信半疑でしたが、実際1週間後にJoeから手紙が来て、いろいろあって結局ダラスへの就職が決まったのです。最初からAssociate Professor & HHMI Associate Investigatorという、破格のオファーでした。決まった時、すでに眞崎教授には京都に一緒について行く旨約束してあったので、京都経由でのダラス行きとなりました。京都には結局8ヶ月ほどしか居ませんでしたが。
アメリカの医学部(medical school)の出身者で、基礎へ(特に直接)進む学生は、日本以上に少ないです。しかし、アメリカの主要医学部にはM.D./Ph.D.コース(いわゆるMSTP = medical scientist training program)があり、最優秀中の最優秀の学生が入学してきます。現在アメリカで活躍しているM.D.基礎医学者のかなりが、MSTP graduatesです。うちの大学にも、年間平均15人ほどのMSTP studentsがおり、俺のラボでも2人がthesis workをしています。彼らは本当に優秀です。期待したいと思うし、メンターとしての重大な責任も感じています。
このような事を正しく実行するためには、お金を出す官庁の役人が、官僚制度生え抜きの「素人」集団ではダメです。Big name bossたちによる評価シンジケートに完全に依存ぜざるを得ない今の状況ではダメで、自らCell, Nature, Scienceなどの原著論文を毎日読むような、本当の「プロ官僚」を官庁が外部から引き抜いて、冷静に、政治的あるいはリニエージ・バイアスのない研究費分配が出来るようにならないと、若い研究者で突出する人がなかなか出てこないと思います。
いやいや、拮抗薬が臨床認可された暁には、(初期の適応が何であろうと)爆発的に臨床研究が進むと思っていますよ。論文にならないというのも不正確で、エンドセリン拮抗薬を用いた仕事は、Medlineで数100報ではきかないとおもいます。すでにヒトでの仕事も、New Eng. J. Med.やLancetといった一流誌にいっぱい出ていますよ。俺自身は分子遺伝屋なので、自分自身の仕事には拮抗薬は道具程度にしか使いませんけど、拮抗薬というものは(とくに一旦臨床認可されたら)決して馬鹿に出来ないのです。
Dr. M.Y.
日本人の医学・生物学系研究者は相当な数が欧米の超一流のラボに留学し、そのうちのかなりの数が指導的立場になっているはずですよね。それを考えると、日本のシステムの変化は歯がゆいほど遅い。他人を評価することが苦手、かつ/または評価基準の多様性に欠けるのかなあと思います。研究費を取るためもありますが、日本中の大学で流行に遅れないように同じような系統の研究を追いかける傾向にあるように感じます。これはアメリカでもある程度は見られる現象でしょうが、日本の方が画一化がはっきりしているようです。
あ、ちなみにこのYK君っていうのは、東大医学部を卒業して、半年だけ内科研修やって医局にも入らず、院にも行かず、いきなり俺のラボにM.D.ポスドクとして来てしまったという大変オモロイ奴です。今ほぼアクセプトされつつある論文の他に、結構でっかい仕事を2つほど完成させつつあります。金髪碧眼の女医さんとの結婚では、最初反対していたご両親を、勘当をも恐れず、かつ粘り勝ちで説得した奴です。I am pround of him, too!
Goldstein, J.L., Brown, M.S. The clinical investigator: bewitched, bothered, and bewildered -- but still beloved (editorial). J. Clin. Invest. 99:2803-2812, 1997.
HHMIホームページで先生が進化的なコメントをされているのを見つけ、
驚くとともにうれしく思いました。
>Yanagisawa said the biochemical link between orexin and
>narcolepsy is still a mystery. "But if you just think
>about it philosophically, it makes sense," he added.
>"When an animal gets hungry, it had better be alert.
>It would be bad from an evolutionary standpoint to be
>sleepy when it's time to hunt for food."
Chemelli RM, Willie JT, Sinton CM, Elmquist JK, Scammell T, Lee C, Richardson JA, Williams SC, Xiong Y, Kisanuki Y, Fitch TE, Nakazato M, Hammer RE, Saper CB, Yanagisawa M.
Narcolepsy in orexin knockout mice: molecular genetics of sleep regulation.
Cell. 1999 Aug 20;98(4):437-51.
Sakurai T, Amemiya A, Ishii M, Matsuzaki I, Chemelli RM, Tanaka H, Williams SC, Richardson JA, Kozlowski GP, Wilson S, Arch JR, Buckingham RE, Haynes AC, Carr SA, Annan RS, McNulty DE, Liu WS, Terrett JA, Elshourbagy NA, Bergsma DJ, Yanagisawa M.
Orexins and orexin receptors: a family of hypothalamic neuropeptides and G protein-coupled receptors that regulate feeding behavior.
Cell. 1998 Feb 20;92(4):573-85.
その当時ちょうど、東大第三内科から、俺とほぼ同年代の栗原先生が眞崎研に分子生物学を習うということで出向していて、俺は彼といつも、「血管内皮で何か面白いことは出来ないかねぇ」と話し合っていました。彼が「内皮由来の細胞増殖因子は採れないものか」と言ったのにたいし、「いや、古典的な系で収縮・弛緩因子をとった方が却って面白いのでは」などと答えた会話を、今でも覚えています(結局エンドセリンは両者だったわけですが)。そんな時ふと、後藤先生が教室にたまたま持って来られた心血管系の基礎研究の教科書(当時出たばかりだった。編者は忘れました)の、Regulation of Coronary Circulationとか何とかいう章をパラパラとめくっていて、その中に1パラグラフだけ、内皮由来の収縮因子の可能性について触れた部分があったのです。そこに引用してあったのは、シンシナチ大のグループがFASEBに出したアブストラクトでした。早速、図書館に行き、興奮してそのアブストラクトを読みました。血管内皮細胞の培養上清中に、どうやら血管収縮活性が存在する、という85年の報告でした。栗原先生と二人で、そこから著者検索でたぐっていった所、この内皮由来収縮因子に関して、87年までにシンシナチとコロラドのグループからそれぞれ1報ずつ論文が出ていること、しかしどうもこれらのグループは、この物質に関してそこから先に進めあぐねているらしいこと、などが見えてきました。つまり彼らは、このものをバイオアッセイでの活性としては検出していましたが、もしかするとペプチドかも知れないという程度で、物質的根拠は全く得られていなかったのです。
これは知る人ぞ知る裏話なのですが、論文の最初の投稿原稿では、エンドセリンの構造図が完全に間違っていました。エンドセリンにはCys残基が4つあり、二組のS−S結合を作っているのですが、そのS−Sのトポロジーを逆にしてしまったのです(正解は1−4,2−3のところ、1−3,2−4として投稿)。これは後で単純な試験管ラベルミスであると判明しましたが、冷や汗ものでした。おかしかったのは、論文がNatureの88年3月31日号に出た直後のFASEB meetingで、何故かすでにPeninsulaが合成エンドセリンのカタログを配っており、それが逆の構造になっていたこと(レフリーから最初のバージョンが漏れた以外考えられない)。それから、後でDr. S. Moncada(NOの話で、ラスカー賞とノーベル賞を両方取り損なった人です)が、「自分も実はレフリーで、間違った構造で合成してしまい、えらい無駄をした。あれはお前、どう見てもわざと間違えたんだろ?」と笑いながら言っていました。(爆)