娘のヘルパー日記


ホームヘルパー日記(2001年1〜3月期)
Hさん(男性・82歳)
 ほぼ寝たきり(リハビリにて歩行練習中)のご主人を、痴呆症状の出てきた奥様が介護されているというお宅を、新たに2月より担当。
 お手数ですが、スクロールして、日付順にご覧ください。
Sさん
(男性・75歳)
肺炎をおこされ、救急搬送で入院後3日目に急死。
わたしにとっては、初めてお世話させていただいたSさん。
初めての訃報。
01年1月6日(土)

 年末の31日に亡くなられたSさんのお悔やみに出かける・・・。(ヘルパーステーションの許可により、個別にお悔やみに行ってもよい、とのことから。)

 75歳のSさん、肺炎をおこされ、救急搬送で入院後3日目に急死された。

 お正月の3日にこの訃報を受け取り、信じられないという気持ちのほうが強かった。・・・。交通事故と、頚椎あたりの持病がもとでほぼ寝たきりの状態だけれども、にこやかで表情も明るいSさんが・・・?

 わたしがヘルパーになってはじめてお世話させていただいたSさん、年齢もわが父親に近いことで、特に思い入れが深かった。介護されている奥様が明るくてしっかりされているので、何かにつけ、おしゃべりに花が咲いた。Sさん担当のケア・マネージャーさんのいらっしゃるデイサービスセンターにわが父親が通っていることが判明してからは、「お互い介護は大変だけれども、がんばりましょう。」と逆に励ましてもらったりもした。しっかりとした信仰をもっておられて、その理念に後押しされたお姿がりりしいほど。ご主人のためにできるだけの事はしてあげたい、という様子がうかがえた。

 その奥様が、ご主人が急死されたあと、5日間も声が出なくなってしまったという。今日、お悔やみに出かけたら、やっと声が出るようになってきたとおっしゃった。「いつも憎まれ口ばかり言っているから、うるさいって言って、しゃべらせてくれなかったんでしょうね。」とおっしゃる。1日24時間〜1週間〜365日の家庭介護は、介護するほうもされるほうもわがままや甘えが出て、ときには喧嘩ごしになってしまったりすることもあるだろう。

 奥様は、時々生前のご主人に言っておられたそうだ、「こんなにあなたの世話をしているんだから、死ぬ前には、ありがとうの一言くらい言ってから逝ってよね。」 そうしたら、本当にご主人、意識が亡くなる前の日に、いつものように体を拭いてもらったあとで「ありがとう。」とおっしゃっていたそうだ。食事も奥様が介助されていたのが、その日だけは自分ひとりでちゃんと召し上がって、「最後にいいところ見せてから逝ったんでしょうね。」と、奥様。あとから思い起こしてみると、本当に涙が止まらない。

 容態が急変して、慌てて病院に駆けつけた奥様が、危篤状態のご主人の顔をパパパとたたくと、キョロッと目を開けて奥様の顔をご覧になったのが最期だそうだ。「ちゃんとあの人、わたしの顔をみてから逝ってしまったのよね・・・。」

 生前のご主人がショートステイで外泊されているとき、夜になると一人ぼっちの大きなお家(ご夫婦二人暮らし)で、「あの人がいなくなったら、ずっとこんなにさびしいんだろうな、ってそのとき思った。」と奥様。仏壇に飾られている遺影の瞳を見ても、「わたしが右へ行ったら右へ、左に寄ったら左へと目を動かしているみたい・・・。ベットの上でいつもそんなふうに台所のわたしを目で追っていた・・・。」

 何とか気を持ち直して、「これからは一人で、しっかりしなくてはならない。自分の好きなこともできるし。」とおっしゃっている奥様が、いつもよりうんと小さく見えてしまった。ご主人のお悔やみには寄せてもらったものの、奥様の様子も心配だった。「お元気でいらっしゃってくださいね。」と声をかけたものの、奥様のそばをなかなか離れることができなかった。盛大なお葬式を済まされ、お正月休みの間は、入れ替わり立ち代りご子息さんや親戚の方、ご近所の方が訪問してくださっているようだが、休みもあけると、本当にこの広いおうちにお一人になられる。

 ヘルパーとして、いろいろなご家庭に寄せていただくが、どの家庭でも、介護する人たちは、一生懸命介護される人のことを考え、思いやっておられる。「少しでもこの人のためになるならば・・・」と考えて、われわれヘルパーの派遣を依頼されてくる。ご家族にとって介護は毎日のことなので、時には寝不足で疲れてイライラが募るときもあるだろう。身近な存在ゆえに見えないトンネルに踏み込んで、やるせなさだって沸いてくる。そんな時、他人であるヘルパーが、他人であるからゆえに何かできることがあるのではないかと思う。 

Mさん
(女性・75歳)
ねたきりのMさん。ご夫婦2人暮らし。
意思はしっかりしているので、話し相手と手足の血行促進を促す(軽くさすって差し上げる)
 わたしの担当はお正月の2〜3日だったが、ヘルパーの仕事は盆も正月も関係ない。お正月だからこそ、いつも寝たきりの方にも心地よく過ごしていただきたい。

 いつも、日曜・祝日は、私自身の趣味の時間に充てるため、「仕事はお引き受けできません。」と断ることが多いのだが、時間の都合のつくときは出来るだけ利用者さん(=在宅介護サービスを利用する方、という意味)のニーズに合わせることが出来るように。

Oさん
(女性・79歳)
1時間の手押し車を押しての歩行練習、続行中。寒くても毎日出かけることが大切!
01年1月15日(月)

 今日の当地の最高気温は4℃。温暖な当地としては、極寒を感じる。軒先のバケツの水が凍ったまま。道端のたまり水も凍っている。

 それでもOさん(女性・79歳)のリハビリ散歩(手押し車を押しての歩行練習)は順調。「こうやってヘルパーさんが毎日きてくださると思うから、歩けるんですよ。さむいのに、悪いですねえ、おたく、大丈夫ですか?」と、逆に気遣ってくださる。秋のうちは近くの公園まで行って、ベンチで休憩したりしていたが、今は寒いので、近所の大きなスーパーに出かける。

 「こうやって準備するのも楽しみでね。」と、ポットに入れた熱い日本茶と甘い和菓子を取り出して、「一緒に飲んでくださると、おいしいですから。」と、わたしにも勧めてくださる。

 気持ちの明るいこの方は、この冬まだ、風邪を引いていらっしゃらないようだ。「そういえば、まったく風邪を引いていらっしゃいませんね。」と声をかけると、「わたし、あほですから。あほは風邪ひかん、というでしょ。」などとおっしゃる。一本取られた、という感じで笑わせていただいた。

 気候が寒くなって、体も動きにくくなってくるだろうに、当初に比べてOさんの1回の歩行距離は少しずつだが伸びてきている。毎日続けることの大切さは、年齢にも関係ない。気持ちよく続けることが本当に大切なのだ。

Hさん
(男性・82歳)
2月より新しいサービス開始。朝1時間のモーニングケア・夕方2時間の夕食の準備や介助等・就寝前30分間のおむつ交換と、1日3回、ヘルパーがお邪魔させていただくことになった。ヘルパーも4名体制だ。
2001年2月20日(火)Hさん(男性・82歳)

 新しいサービスに入るため、先輩男性ヘルパーKさんに同行して、夜9時半から10時の、就寝前介助(おもにおむつ交換と水分補給)の研修(見習)。

 さすがにベテランのKさん、手順も動作もてきぱき。お家の方へのアドバイスも、たんに「○○しましょう。」だけではなく、ちゃんとその理由を教えてあげながら、「△△だから、○○しましょう。」といった具合で、説得力がある。まさにヘルパーがリードして、在宅介護を支えている感じ。

 ほぼ寝たきりの状態のHさん、Hさんの事故のあとショックからか奥さまにも痴呆症状が見られ、見守りは欠かせない。朝8時〜9時、夕方4時〜6時、そしてこの夜9時半〜10時と、一日3回ヘルパーが訪れて、お二人の生活を応援することになっている。近くに身内の方もいらっしゃるので、お昼間はこの方が覗きにこられることになっている。また、訪問看護も受けていらっしゃる。かなり大勢の人間がこちらのお宅にお邪魔させていただくことになっているのだが、はたして、うまくコミュニケーションが取れ、連携できていくだろうか。

2001年2月21日(水)Hさん

 きょうからは、ひとりでHさん宅を訪問。夜の時間帯なので、住宅街の中を自転車に乗っていくのはさすがに用心して、首から防犯ブザーをぶら下げていく。いい年をして、ミニーマウスの顔の防犯ブザーである。暗い夜道もミニーちゃんがお供してくれると思うと、怖くない、怖くない。

 夜9時半の訪問時、玄関先で挨拶するも、応答がない。ひとりで訪問するのが初回なので、勝手に上がらせていただくのは気が引ける。「?」と思い、何度も声をかけながら中に上がらせていただくと、奥様、茶の間でうたた寝。

 「○○ステーションのヘルパーの○○です。おむつ交換に参りました。」と挨拶し、昨日のKヘルパーの手順にて、準備をして交換。排尿・排便あり、軟便。少しずつ出るようで、交換しているときにもまた出てきたので、ふき取る。陰部洗浄のボトルを用意して下さっていたので、温水をいれて利用する。お尻の発赤、あり。お湯で絞ったタオルで、部分清拭。首のコルセットがはずされていたので、付け直す。

 部屋の温度が以上に高く、エアコンの設定温度などで気温調節する。Hさんも暑く感じられていたようで、毛布すらかぶっていらっしゃらなかった。水分補給、すいのみに半分の量を召し上がられた。

 わたしが、一連の手順でおむつ交換する間も、奥様傍らに座り、うたた寝から目覚めたところでボーっとした様子。
「どうしてここにいるのか、わからん・・・。」
「どうなっているのか、わからん・・・。」
「確か、介護の人を待っていて、寝てしもた・・・。」
「どうしたらいいんやろ・・・」
と、つぶやくことしきり。

 「少しお疲れになっているようですから、お休みください。」
と声かけをしてみる。奥様依然、ボーっと座っておられ、わたしに対しては反応がない。

 就寝前の、火の元、電気の確認もしなければ、と思い、台所の給湯器のガスセンを閉めようとするが、元栓を締める習慣がないのか、とても固くて私の力では閉まらなかった。

 その他の、お風呂の給湯器なども確認したかったが、奥様、ボーっとされていたので、一緒に確認も出来ず、どこにあるのかもわからず、お宅を物色するわけにも行かず、そのまま。

 「もう一回、寝たらまた、思い出すかもしれん。」と横になりかけた奥様に、「わたしはそろそろ、帰らせていただきますので、戸締りだけはしっかりしてください。」と促し、無理やり玄関まで来てもらって、わたしが外へ出た後、内側からカギをかけていただくのを確認。

 昨日、Kヘルパーと同行したときは、身内の訪問客があり、奥様ともほぼ会話できたが、今日は様子がまったく一変していた。わたしのこの対処でよかったのか、とても不安である。

 ヘルパーステーションには、この時間帯、緊急時以外は連絡をしていない。もちろん、急を要する場合は、24時間対応で、センター長のところにつながるようになっているのだが、今夜の様子はとりあえず、急を要するものではないと判断し、ファックスにて連絡内容を送信しておいた。こうしておくと、翌朝、センターに出勤してきた誰かが、一番に見てくれる。とりあえず、報告文でひとまとめにしておいて、明日の朝、電話で指示ないしは教えを請うことにして、今夜のところは一仕事終えたことにしよう。

2001年3月上旬(火)Hさん(男性・82歳)

 夕方の時間帯に入っていたヘルパーが、急遽交代することになった。Hさんの身内の方からの要望らしい。
 ところが、月〜金まで、週5回もあるので、なかなか次のヘルパーが見つからない。夕方の時間帯は、私も何かと私用で忙しく、おまけに家事援助が苦手ときているので、この2時間のサービスに入ることを私から断っていたのだ。

 実際のところ、家事援助は、たとえば主婦ならば誰でもできる、というサービスではないと思う。そのお宅にはそのお宅のやり方の掃除があるだろうし、洗濯の手順ひとつにしても、自分とはやり方が違うだろう。ましてや、お惣菜の調理など、その方の口に合うように作るのは、超一流のコックさんだって難しいだろう。そのような理由で、じつは私は、家事援助は自信がない。

 しかし、代わりがいない・・・次の方が見つかるまでの間だけ、というセンター長との約束で、ピンチヒッターを引き受けることにした。

 とはいえ、奥様は「人にばっかり頼んでいたら、呆けてしまう。」と、なるべく自分で調理等をなさるようで、どちらかというと、夕方の時間帯もHさん自身の身体介護を中心に希望されているようだ。私も足浴・手浴・全身清拭など、Hさん自身が気持ちよくなってくださることをして差し上げるのが好きなので、ころあいを見てそれらをお勧めし、望まれた場合、出来るだけのことをするようにした。

 ただ、奥様、物忘れの症状が出ているので、冷蔵庫の中身など、賞味期限の切れたものや、カビの生えたものまで入っている。幸いにして、「新鮮でないものは食べてはだめ。」との意識が徹底しているので、古い食材を処分することを厭われていないので、私が発見した古めのものは奥様に確認いただいた上で、ぎりぎり調理してしまうか、処分をさせていただく。
 ここにいたって、人様のお宅で、調理をする羽目になってきた。しかもプロのサービスの一環として、だ。どうしよう、お口に合うものが作れるだろうか?

 幸いにして、奥様、おおらかな方で、私がコトコトと台所で音をたて、なべから湯気が上がり始めると、「あ〜、いい匂いしているね〜。おいしそう〜。」といって喜んでくださる。
 私の数少ないレパートリーと、冷蔵庫の中の食材をにらめっこして、それでも何とかできるものだ。我が家ではかなり薄味 にしているが、よそのお宅ではそういうわけにもいくまい、

 看護婦さんからは、塩分の厳格な指示は出ていないので、普通食でいいようだ。奥様の味付けはかなり濃いようで、Hさんも濃い目がお好み。それにしても、やはり、今後の影響を考えて、薄味にするようにしている。
 それにしても、人さまのお宅の台所に立つということは、難しい。

2001年3月中旬(火)Hさん(男性・82歳)宅・その後
 痴呆症状の出ていた奥さまにも、介護認定が下りた。Hさんの介護保険だけでは、限度額をオーバーしてしまうし、実際、調理や配膳・下膳といった家事援助も行っている。

◎ 以下、ただいま記録中。
痴呆症状の出始めた奥様の様子が、我が父と重なって、気にかけずにはいられないお宅となっている。

≪Hさん宅について思うこと≫

 今回のヘルパーの仕事は、ほぼ寝たきり(リハビリにて歩行練習中)のご主人を、痴呆症状の出てきた奥様が介護されているというお宅。おむつ交換やリハビリはすべて他者(ヘルパーや看護婦)が担当し、奥様への見守りも欠かせない。

 それでも、他人であるヘルパーを、心安く家の中に入れていただけることに感謝し、訪問はじめてから半月ほどでわたしの顔を覚えて笑顔を返してくださることに感謝し、わたしのほうがやはり、日々勉強させていただいている。

 わたしにとってヘルパーの仕事は、人恋しくなる仕事でもある。






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