身の回りの出来事


92歳、お元気の秘訣〜何にでも疑問をもって
(01年1月19日)
  お正月明けに、大学時代の恩師宅を訪問した。年末に92歳になられた先生は、86歳の奥様とともに、わたしが現在お目にかかることのできる最高齢のご夫婦。

 80才代までずっと現役で、大学にて教鞭をとられていた先生、敬虔なクリスチャンでいらっしゃるので12月には決まってクリスマスカードを送ってくださった。ところが昨年末にはこのカードが届かない。わたしも季節のお便りや旅先からの便りを欠かしていないが、そういえばここ半年ほど返信もきていない。ご高齢であらせられることから、まさか万が一のことが???

 心配していると本年元旦には、ちゃんと年賀状が届いた。秋にご病気をされたとの事。しかし回復されて、家に戻られているとの事だったので、取り越し苦労の余計な心配をしてしまったことを後悔する。先生は、昨夏すぎから、食欲不振と脚のむくみに悩まれていたそうで、あちこちの病院で検査の結果、ようやく前立腺肥大と判明。入院して手術をされた。ほかの合併症もなく、術後の経過もよく、1ヶ月ほどで退院できたそうだ。「ぜひどうぞ、お越しください。」の言葉に甘えて、訪問させていただくことにした。

 入院生活のため、脚が弱ってしまったとかで、確かに少しおぼつかない。とはいえ、家の中の移動には十分。顔色もよく、背筋もしゃんとされていて、とても92歳には見えない。耳も目も正常で、細かい手書き文字で年賀状にも添え書きを下さる。

86歳の奥様もこれまたお元気で、毎月1回、高等女学校時代の同窓会で、繁華街まで出かけていらっしゃるそうだ。「元気なばあさんたちでしょ。」とご自分でおっしゃる。月1回の同窓会なんて、あまりにも頻繁。とはいえ、昔話に花が咲いているのではないらしい。話題といえば社会の動向、新聞をにぎわす政治・掲載の話だそうだ。今となっては数人の集まりだそうだが、毎回議論を戦わせるという。中には発言されない無口な方もいらっしゃるそうだが、そんな方もその場に来て議論を聞いているのがお好きだそうだ。「とてもばあさんの話題ではないんですけどね。」という奥様は、ご自身の卒業された高等女学校に誇りを持っておられて、そのような仲間ばかりが集まっているのだという。

 ご主人であられる先生とのお茶のみ話も同様のようだ。訪問させていただいたわたしが、たじたじとなるほどの激論。

 まずはひとつこんな具合〜わたしが、登録のホームヘルパーをはじめたことを知らせると、「あなた、ヘルパーの派遣業なんて、中間搾取の最たるところだとは思わないの?電話1本で、人を派遣するなんて・・・。」 「いや、そうではないのです、ヘルパーの仕事も人対人、質の向上のために会社は研修やミーティングを行ってくれます、担当ヘルパーが急遽の欠勤をするときでも、ちゃんと会社は代行を探してくれます。」と、なんとか現状を答えると、「あら、そう、そうやって中に入って中間搾取されている人が納得しているんだから、仕方ないわね。でも、何にでも疑問をもつことは大切なことよ。」と諭してくださる。

 化学がご専門の先生も、「水素エネルギーがクリーンなエネルギーといっても、それをある単位生み出すにはどれほどの別のエネルギーが消費されているんだ、このプラスマイナスを埋めるのが大変だ。」などと考え込まれている。

 さらに奥様、「キレル」子供たちについて〜「命の大切さを教えろって云ったって、命が大切、ばかりを繰り返していてもだめでしょ。命がなぜ大切かを教えないといけないのよ。命はかけがえのないひとつのもので、失ってしまうと取り返しのつかないもので・・・・」と雄弁は続く。

 まったく恐れ入りました。最後に奥様、「わたしたちみたいな、92歳と86歳の老夫婦二人暮らしだと聞いたら、介護保険でヘルパーでもなんでもとんでこないといけないのに、主治医も意見書すら書いてくれない。こんなに高齢のわたしたちから保険料を取るだけとって。」ともおっしゃっていた。

 う〜ん、でもいまのところ、まったく「自立」そのものにお見受けできるので、介護保険を使う必要はなさそう。ご近所の方とのお付き合いも良好で、先生が入院の間、山の手の住宅街から町の病院まで、車で奥様の送迎を申し出てくださった方もいるという。ご近所助け合いの精神が生きているのだ。

 ご夫婦そろって、お元気の秘訣は、世の中の状況をよく把握して、何にでも疑問をもって、意見を戦わせること。新聞の三面記事ばかり見ていないで、政治・経済面もよく読むこと。それから、人それぞれだが、信仰を持っていることもお二人にとっては力強いようだった。

およそご高齢世帯とは思えない白熱した「お茶会」を訪問させていただいて、日ごろ使わない脳細胞を酷使したのち、帰途についたのは、あたりがすっかり暮れてからであった。







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