身の回りの出来事



全盲のMさん、駅のホームから転落
(01年1月11日)
 わたしの友人に全盲の人がいる。Mさんという彼は、マラソンランナー。フルマラソンだって3時間7分で走るし、132キロというウルトラマラソンも一晩で走破している。私自身がマラソンをはじめるまでは、目の見えない人が走ることが出来るなんて、知らなかった。運動能力的に問題が無いので、体を動かすことが出来るのはあたりまえなのに・・・。

 ただ、目の見えない人が走るにあたって、ガイド役ともいえる伴走者が必要だ。「伴走紐」と呼ばれる長さ50センチほどの輪になった紐をお互いの手に持って、まっすぐにはしれるようにガイドする。お互いの腕振りや脚の運びが似かよっていると、とても走りやすいらしい。

 私が彼と走るときには、彼よりも背の低いわたしの歩幅に合わせてくれるのは彼だし、わたしの知らない道を案内してくれるのも彼。完全にブラインドタッチで見事にパソコンを操作する彼に、パソコンの扱い方を教えてもらったりもする。耳も感もすばらしく良くって、わたしが彼の前でのんきにあぐらをかいていると、「なんだか行儀が悪いんとちゃうか。」と指摘されたりする。もちろん白い杖を頼りに、単独行動なんのその。10年以上前に視力を完全に失ったそうで、かすかに見えているときの印象などで、外出できるそうだ。 

 そんな彼が、師走の23日にまさかの転落事故。単独外出中に市内の大きな乗換駅のホームから落ちて、肋骨2本と手首の骨を折ってしまった。ホームからすとんと落ちたそうで、落ちるときにホームの端にかすって折れたのが肋骨だそうだ。見えているわたしたちと違って、きっとなんの前ぶれもなく転落してしまったので、身構えることも出来ずに本当に痛かっただろう。気丈な彼は、痛みをこらえて帰宅したそうだが、2日後の整形外科受診で骨折が判明したらしい。

 事故当日は祝日の夕刻で、大勢の人が駅を利用していただろう。そんな中で、白い杖を持って、ひとりで歩いているMさんに、面と向かって手助けをするほどでなくても、まわりの一人一人が一瞬でもいいからMさんのことを目配りしていたら、このような転落は無かっただろうと思うと残念で仕方ない。一人一人の一瞬の目配りがつながって、Mさんは守られるのだ。

 とはいえ、わたし自身、Mさんと出会うまでは、白い杖をついた人にどのように接したらいいのか見当もつかなかった。

 Mさんは言う・・・「僕は一人で歩けるけれども、周りに対して緊張がものすごいから、ちょっとでもガイドしてくれる人がいるととても助かる。」・・・そこで、わたしは街角で見かける白い杖の人に、出来るだけ声をかけてみることにした。

 「でも、僕は声をかけてもらうと助かるけど、中には嫌がる人もいるから、ちゃんと聞いてからのほうがいいと思うよ。」・・・そこで、わたしは「何かお手伝いしましょうか。同じ方向に歩いているようですので。」と、申し出ることにした。自分にも無理のないように、相手にも気持ちの負担のないように、出来ることがあるはず。

 Mさんと知り合うようになってから、街の中で同じような白い杖の人が目に止まるようになった。一人で歩いている人を見かけると、まわりの安全を気にしてしまう。自分も急いでいたりして、反対方向に進んでいるときはどうしようもないが、せめてわたしの視界の中で安全を確認してあげたい。

 わたしの気持ちはほんの些細な「点」だが、街じゅうのみんなが同じように目配りをしてくれるようになると、それは「線」となってつながっていくに違いない。そんなことを教えてくれるMさんの存在である。

<追加>この記事を見てくださった、Mさんのまわりの方へ
(01年1月15日)
 その事故当日、Mさんと直前まで一緒におられた方からメールをいただきました。当日は、ある場所でかなりの人数(200人くらい)が一堂に会していたそうです。

<メールの一部を抜粋>
 大勢いたけど大勢すぎて一人ぼっちで帰るMさんに、誰も気づかなかったのかと思います。わたしはそんなこととは知らず、〜(中略)〜責任感じます。

 Mさんのことは、その日に直前まで一緒にいた人を非難するつもりで書いたのではないのです。そんなふうに読めてしまうのであれば、わたしの表現のまずさに本当に申し訳なく思います。
 Mさん自身、「誰かと一緒に途中まで帰ってきても、いつかは分かれて帰らなくてはならないので、頼らないことにしている。」とおっしゃっているので、わたしも彼に同感です。そう言い切れるのが、彼のりりしいところだと思います。
 ただ、一般的に周りの人に期待したくて、これを機会にHPに書いてみることにしました。これからもいろいろ貴重なご意見、どうぞよろしくお願いいたします。
<追加>大変な反響、ありがとうございました。
(01年2月10日更新)
 たくさんの方から貴重なメールをいただきました。いくつかをご紹介したいと思います。プライバシーのために、メール内容を抜粋または一部文章を変更して掲載している事をお許しください。

<40歳代の男性の方から>(01年2月10日着信)

 偶然のタイミングとは思いますが、Mさんの事故以来、大きなホーム転落事故が相次いでいますね。
 先週の日曜日の夕方、「スクープ21」という番組で先日の新大久保の事故を元にホーム転落事故に関する特集をしていましたが、その中で視覚障害を持つ人にアンケートを実施した結果、アンケートに答えた人の3人に2人がホーム転落を体験していて、実際に知り合いで死亡事故につながったケースも少なくないという回答が含まれていたとの報告がされていました。

 もちろん、アンケート対象となったのは全国に数多くいらっしゃる目の不自由な人たちのほんの一握りの人であると思いますし、たまたま転落体験者が多かっただけかも知れませんが、そうだとしても目が見える人に同じアンケートを実施して同様の結果が得られるとは思えない。 多分、全国の視覚障害者、聴覚障害者のうちの決して少なくない数の人たちが駅のプラットホームという全ての人に対して安全が確保されてなければならないはずの公共の場で危険な思いをしているのだと思います。

 あれ以来、ホームで白い杖を見かけるとついつい緊張してしまいます。
 でも、報道されている事故の内容を見ると視覚障害を持っていない者もホームは危険ですよね。 自分たちもお互い、気をつけましょう。

<60歳代の男性の方から>(01年1月中に着信)

 Mさんの追加を見ました。貴女の初めのページで特に問題を感じませんでした。もちろん、両方を見ての意見です。貴女の初めのものは一般の人はMさんのような人を見かけてどのように対応しているか、出来たら進んで援助の手をという事のアピールでした。
 私の経験から、以前にとある駅で乗り換えのために、若い女性から乗り換え駅に誘導してくださいと言われ、右手をだして案内しました。それから白い杖の方を見ると状況を見て出来るだけ声をかけるようにしています。しかし、大変勇気のいることです。
 海外ではそれは普通のことで、すべて人が自然に対応しているようです、日本も早くそうなることを祈ります。

<40歳代の男性の方から>(01年1月中に着信)

 Mさんの事故はホントに恐いですね。最近は端境期と言うか、障害者が思い切って外へ出て来るようになって、周囲も少しずつ配慮するようになってきているのだけど、それがまだ追いついてないようです。誤解を招くと拙いけど、まだ危ないのに障害者が外へ出すぎる状態を感じます。でも、勇気を持って出てくる人たちがいるからこそ、わたしたちも現実から学べるわけで、月並みだけど、できる限り気を配る、ということになるのでしょうか。

<30歳代の男性の方から>(01年1月中に着信)

 ニュースでもこのような事故が、たびたび指摘されています。特に電車の車両と車両の間に落ちて、命を落とされたりします。最近はあちこちの電鉄で、間にカバーを設けたりしていますが、電車とホームの間が広かったら、そこもやはり危険です。僕自身そのような人に気をつけていたつもりでしたが、これからもより一層気をつけたいと思いました。

<30歳代の男性の方から>(01年1月中に着信)

 ホームから転落するなんて、落ちるタイミングによったら、骨折だけでは済まなかったかもしれない。命にかかわりますよね。
 日頃、ハンディキャップを抱えている人の手助けを申し出るという行為はなかなか難しいことですが、路上やホームなどで見かけたら少し注意して気を配って差し上げる事くらいなら出来そうです。
 これから私自身も気をつけることにします。
 自分自身が、例えば目をつぶって歩いていて突然地面がなくなった所を想像すると、やっぱりぞっとしますよね。
 
〜コメント〜
 Mさん自身の全盲の友人の中には、ホームから転落したときに運悪く電車がやってきて、即死してしまった方もいるとか。本当に怖い事故です。

<30歳代の男性の方から>(01年1月中に着信)

 何とも難しい問題で、上手い言い方(良い意見)が見つからないけど、自分が、何をすればいいか?何が出来るか?は、時々考えます。
 相手が人間なので、その人なりの考えとか感性が有るから、それに入り込むことは、今の自分には出来ないから、せめて、ハンディキャップのある人(そうで無い人も含めて)邪魔になることはしない様、心がけているつもりだけど・・・。
 全ての人がそう言う問題意識を持っていれば少しは良くなるんだろうけど・・・。

<60歳代の男性の方から>(01年1月中に着信)

 私の長男の中学まで一緒だった友達も盲人となり、今までは家の近くで見かけてましたが、すごいですね、踏切を渡ってパン屋さんに入ってるのを見たことがありました。
 最近、彼の母親に聞くところ、彼はまえからプールに行き、パラリンピックに出ているとのことを聞き、驚くやらすばらしくおもっております、私たち健常者はもっとがんばればならないとおもいます。
 つらいこともありきと思いますがそれなりにやってゆきましょうや。







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