小さな苦い薬

血算・生化学データは緑色になっています。
WBC:白血球、RBC:赤血球、Hb:ヘモグロビン、Plts:血小板
腎機能の指標として、BUN:尿素窒素、CRE:クレアチニン

現在使用中のお薬

01/1/2  21世紀を迎える瞬間、なんと寝てました。大晦日の11時ごろ、眠かったから「12時直前に起きよう。」と思って寝たのが失敗だった・・・。かなりマヌケな新世紀の始まりとなってしまった。でも考えてみたら、新世紀ってそもそも西暦での話なんだな。ワイワイ騒いでる日本人は知らず知らずのうちに西洋文化に浸りきってるな、とも思った。でも、楽しければなんでもいっか。今年一年、ムカつくことがなるべく少なく、楽しいことがたくさんありますように!
1/9  研究室研修というやつがあって、これからエンドキサン(Cyclophosphamide)の誘導体の研究をやってくことになった。エンドキサンは急性白血病の治療や造血幹細胞移植でもよく使われる。僕はこの薬にはお世話になったことがないけど、この白血病業界(?)では超有名な薬だ。白血病に関係なくもない研究なら、少しはやりがいがある。
1/30  実習で初めて採血をやった。学生同士で採りあった。まず僕が採る番。最初、鉛筆の持ち方で注射器を持って刺そうとしたら、止められた。ふーん、違ったんだ。いつも病院で血を採られまくってるのに気がつかんかった。グサッとためらわずに刺したら、うまくヒットして採れた。めでたしめでたし。次に採られる番。不思議にあまり怖くなかった。ところがなかなか上手くいかず、途中で先生が代わりに採った。めでたくなし。採った血液にいろいろ操作を加えてDNAを精製した。これがmy DNAか。白血球のDNAだからドナーさんと同じDNAだ。なんか変な気分だ。おもしろくて誰かに言いたかったけど、周りの人はみな移植のことを知らないのでやめた。
 おもしろいといえば、最近勉強したんだけど、皮膚の中にもドナーさん由来の細胞がいるらしい。ランゲルハンス細胞というやつで、リンパ節に移動して抗原をT細胞に提示するのであります。それ以上は知らないので聞かないで下さい。
2/6  インフルエンザは今年は全然流行ってないらしい。張り切って予防接種を受けた僕は、一体・・・。でも、たぶん次の冬もめげずに受けると思う。僕、負けないから!(?)
 さて、つらい勉強生活を乗り切るためにちょっといい考え方を思いついたので、発表。「自分は今、将来メシを食っていくためのお金を必死に稼いでいるんだ。給料は後払いなんだ。」と思えば、何とかやる気を維持できるかもしれない。知的好奇心や「いい医者になりたい。」っていう崇高なキャッチフレーズだけでは、挫折してしまいそうだから。
2/26  月1ペースで風邪をひいている。今月も、ちゃんと先週からひいている。月曜日・火曜日と休み、水曜日に復帰した。が、水曜日に帰宅してから非常にだるくなった。普通ではない病的なだるさだったから、金曜日に病院で血液検査をしてもらった。そうしたらGOT241, GPT225という肝臓の最悪新記録がでてしまった。腎臓も調子悪く、CRE4.3、尿素窒素47だった。強ミノという点滴をして、週末はほとんど家で寝ていた。
 改めて自分の体のもろさを思い知らされた。復学するのは早すぎたかなとたまに思うけど、今ごろ遅いし、ダラダラ過ごしてしまう危険もあるから難しいところだ。入院してるときは早く社会復帰したいと思いがちだけど、「社会生活は体に厳しい」ってことを肝に銘じたほうがいいですよ。
3/19  先週やったマルクの結果は異常なし!ドナーさん由来の細胞たちはがんばってくれてるみたいだ。そのせいか、慢性GVHDも皮膚や肝臓に軽く出ている。まず、顔や頭皮が乾燥してかゆい。冬は特にそうだった。そこでこんな対策をとっている。ボディシャンプーやシャンプーは弱酸性のものを使う。ゴシゴシ洗わない。洗髪は2,3日に1回する。風呂上りには化粧液をつけ、最後にツバキ油を塗る。まだ試行錯誤しながら最善の方法や商品を探しているところだ。これがなぜか結構楽しい。それから肝臓。こっちは全然楽しくない。γーGTPが高いのでアルコールは控えている。僕はもともとお酒は飲めないからそんなに苦痛ではないけど、たまには日本酒でも飲みたい。
3/22  春休みになったから、さっそく日帰り旅行に出かけた。まずは自然薯料理を食べに行った。簡単に言うと「とろろめし」。うまかった。今度行くときは一食抜いて行って、もっとたくさん食べまくろうと思った。その後は川越電力館というところに行った。小学生のように遊んだ平和なひとときだった。
4/10  PHSを解約した。PHSを契約したのは移植をするちょっと前のことで、入院中にインターネットをやるためだった。前処置から移植後しばらくは弱りきっていてパソコンの電源をつけることもなかったから不要だったが、元気になるにつれて使うことが多くなり月2万近く使ってしまったこともある。いつもベッドの近くにひっかけてあって時計代わりだったから愛着があったんだけど、もう入院することがないといいなと願いを込めて解約だ!
5/18  医学部のメインイベントの一つ、解剖をやっている。3時間ぶっ続けの実習、毎晩遅くまでかかる予習のおかげで毎日クタクタ、栄養ドリンクのお世話になっている生活だ。他人から見れば「充実した学生生活」なのかもしれない。自分は医者にならないほうが幸せなんじゃないかと最近よく思う。でも、とりあえず卒業して実際仕事してみてから考えることにしようか。どんな仕事も大変なんだし。
5/30  季節はずれの風邪をひいてしまい、咳が多い。病院で動脈血のヘモグロビンの酸素飽和度を測ったら96%だった。(正常は97%以上)移植後は肺機能が落ちるという論文を読んだことがあるけど、当てはまってるかもしれない。
6/11  咳は続く。今日撮った肺のレントゲン写真には陰影が見られた。BOOPという診断で、1年ぶりにプレドニン(コルチコステロイド)の再開となってしまった。45mg(9錠)からスタートである。
 BOOP・・・器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎。過剰増殖した線維性肉芽組織が細気管支や肺胞管を閉塞し,周辺の肺胞における慢性の炎症を伴うもの。難しくてよくわからん。
 あああ、せっかく外見的には元に戻っていたのに・・・数ヵ月後にはまたマルマルとした顔になってしまう!結果的に行動が消極的になってしまうかも。そうならないように気持ちをコントロールしていきたいとは思っているけど、なかなか簡単なことじゃない。「時間を返せ〜!!」このやり場のない怒りをどうすればいいのだろう。とりあえず叫びます、ガオーーーッ!!そういえば、9月に運転免許の更新があるんだった。早めに写真だけ撮っておきたいんだけど。
6/19  プレドニンの効果が出て咳は止まった。おまけに肝臓の値がガクッと下がった。肝臓に慢性GVHDが起きていたのは間違いなさそうだ。あと、胸部CTを撮って新しいことが判明した。肝臓に鉄が貯まっているそうなのだ。(ヘモジデローシスという。)過去の輸血の影響ということ。
6/29  プレドニンの量が減ったら、咳がほんの少し復活してきた。というわけで、今日もCT、レントゲン。今後どうなっていくか心配ではある。
 ところで、ここ数日暑いからもう夏休み気分になってしまった。まだ4つもテストがあるっていうのに。そのうち半分は再試というのが泣けてくる。かつてこの時期はプールの授業があっていやだったもんだ。それよりましかな。うーん、どうだろう。
7/4  下宿に悲しい電話が届いた。飼い犬の「ゴンタ」が死んじゃったという。朝は普通だったけど、父が夕方に帰宅したとき、もう死んでいたそうだ。今日は今年に入って1番の暑さで最高気温は37℃ぐらいあった。10歳という高齢でしかも肥満のゴンタにとっては、木陰にいたとはいえ、きつすぎた。2,3日前から犬用の冷却マットを買おうか話していた矢先だった。もっと早く用意してたら助かったかもしれないのに。そもそも犬の健康管理にもっと気を配って、太らせなければもっと生きられただろう。本当に可哀相なことをしてしまった。ここ何年かは僕の健康状態のこともあり、まともに相手にしてやることすらできなかった。罪悪感でいっぱいになり、涙が出た。そして、家族を失った人の気持ちを初めて実感できた。最後にゴンタは身をもって教えてくれたのだ。
 ゴンタは分子に戻り、めぐりめぐって、また何かの命に生まれ変わるのだろう。
7/16  また今日から入院している。肺をちゃんと治そうということで、明日からメチルプレドニゾロン(ソルメドロール)の点滴、すなわちパルス療法をする。2週間で退院できる予定なので、夏休みには影響はないだろう。ただ、今月末に再試験を受けないといけないので、教科書を持ち込んで入院している。これは体に悪いかもしれない!
7/22  ステロイドの副作用で血圧が高い。アムロジン(Ca拮抗剤)って薬が追加になったけど、まだあんまり効いた感じがしない。下が100を越えたらアダラートっていう薬を飲むことになっている。あと、β−Dグルカンが高値ということで、バクタ(カリニ対策)を予防的に飲んでいる。それ以外には咳などの症状もなく、午後は自転車で下宿に戻り、消灯時間ギリギリに帰ってくる。
 夏休みの予定を考えてるけど、わざわざ人の多いところにマスクして出かけるのも嫌だな。泳ぐのは今年は止めておくべきだろう。この1年、勉強漬けだったから、旅行とかを通して人間性を取り戻したい気持ちでいっぱいなのになあ。
7/30  進級が決まったので、ホッとしている。ステロイドは点滴から内服に変わった。入院生活は大した検査も無く、暇すぎて途方に暮れている。本を読むための時間は腐るほどあるが、活字を見てるとすぐ眠くなってしまう。ヒトというのは少しはクリエイティブな作業をしていないと満足しないのだろう。なんて贅沢な悩みなんだ。
8/3  午前、退院した。入院中、腎臓病食だったので、自分が腎臓が悪いことを再認識した。腎機能は悪いなりに安定していたから、食事制限もちょっとルーズになっていたかもしれない。
8/19  プレドニンは現在、35mg。浮腫んでいてダルいのもあり、自宅軟禁生活を送っている。9種類の薬を飲んでいて、なんだか移植前以上に病人だ。ビデオを借りてきて映画を見たり、音楽を聴いたり、右脳中心に生きている。DVDプレーヤーも買ったし。
9/3  あっという間に9月になってしまった。もうすぐ夏休みも終わってしまう。今年の夏も不完全燃焼だった。次の春休みか夏休みには、遠出したい。特に北海道を狙っている。
 ステロイドと運動不足のせいで、足腰がやばいほど弱くなってしまった。だから、このごろストレッチをしている。
10/14  ステロイドはだんだん減って15mgになった。体脂肪率が一桁(少なすぎ)だったのが、20%を越えてしまった。血液も脂ギッシュで、コレステロールも300を越えている。
 先日、移植して2周年を迎えた。あの前処置は確かに昨日のことには思えない。だけど、体調のことを優先する生活はずっと連続していて、まだ「戦後」を迎えていないって気持ちが強い。ま、それはしょうがない。努力してどうにかなるってもんじゃない。
11/11  飽きっぽく、新しいものが好きな性分なので、WindowsXPがインストールされたパソコンを早速購入した。
12/25  今日はクリスマス。午後1時前。約束の時間が近づいていた。僕は時計を気にしながら、今日着ていく服を考えていた。シャツを着た瞬間、いや数秒後だったかもしれない。刺すような痛みが左の前腕に走った。静電気かと思ったが、それにしては痛い。すぐさま右手でその部分を押さえると、わずかに感触があった。ほとんど反射的に僕はそれを握りつぶしていた。シャツを脱ぎ、目にしたものは・・・なんとハチだった。刺されたのが外来診察の直前だったのは不幸中の幸いだった。クリームを処方してもらえたから。今年は刺激的なクリスマスだった。