my HLA

(*この文章はMLルークトークのNinja先生のお言葉などを参考に書きました。)

 HLA(Human Leukocyte Antigen: ヒト白血球抗原)は「自他認識のマーカー」であり、造血幹細胞移植の成功の鍵を握ります。HLAは主にA,B,Cw,DR,DQ,DPなどの「座位」があり、その座位毎に数10種類の型があります。それをまとめてハプロタイプという親から子へ遺伝するセットで考えるのですが、そのハプロタイプは数万種類あります。そのハプロタイプを一人のヒトは2つ持つわけですから、数億種類の型があることになります。造血幹細胞移植は、HLAの一致した(あるいは近い)ドナーから行われます。

 僕の場合、HLAは弟とは一致しませんでした。(兄弟と合う確率は1/4です。) 幸い日本骨髄バンクでドナー様がみつかり、移植を受けることができたわけです。移植を受けることを決めてすぐ、国内のドナーを検索した結果、24人が見つかりました。この中から3人をコーディネートしていき(同意の確認やDNAタイピングなどの検査)、最適のドナーを決定するのです。

 ところで、僕のHLAなんですが、ドナー様が特定されるといけないので一部だけ以下に記します。( )内はDNAの型(アリル)です。

gonta:A2(0206),・・・・・・・・・・・・・・・・・・・,DR14(1429)

 そして、コーディネートした3人のドナー候補のHLAです。どなたも血清学的には一致しています。

donor1:A2(0206),・・・・・・・・・・・・・・・・・・・,DR14(1406)

donor2:A2(0201),・・・・・・・・・・・・・・・・・・・,DR14(1406)

donor3:A2(0206),・・・・・・・・・・・・・・・・・・・,DR14(1406)

 ここで問題になるのは、DNAレベルでの相違です。日本の報告では、HLAクラスT(A座、B座)の不一致と重症急性GVHDの間には有意な相関があり(p=0.001)、生存率にも有意な影響を与えており、HLAクラスUについては、DRB1の不適合と急性GVHDの間にはわずかの有意差で相関を認めるが、クラスTの不適合ほど顕著な差ではないとのことです。そういう理由でdonor1かdonor3に絞られました。その後、その他の身体上の理由でドナー候補が決定されました。

 当時第2慢性期の僕は移植に踏み切るか、よりマッチしたドナーを探すかの選択を迫られました。ただ、ドナー探しを続けて、よりマッチしたドナーがみつかる保証はないのです。その間に手遅れになる可能性がありました。

 メーリングリスト”ルークトーク”で相談した結果、以下のようなアドバイスをもらいました。

 なるほど、DRB1*1429はめずらしい。日本人では3例ぐらいしか見つかっていません。NMDPにもあるといううわさですが(^^ゞ
 DRB1*1429は日本人が日本人から見つけたアリルです。(中央血液センターのHLAラボがJMDPのドナーの中に発見したものです。)たぶんアジア人特有のものでしょう。

1、DRB1*1429DRB1*1406のVariantである。
 DRB1*1429とDRB1*14グループのDNAまたはアミノ酸シークエンスを比較してみればわかることですが、たった1個所のポイント・ミューテイション(点突然変異)です。すなわち、DRB1*1429は最近日本人やアジア人に出現した進化的に新しいアリルで、その祖先アリルは間違いなくDRB1*1406です。

2、ポイント・ミューテーションの結果は?
 HLA‐DR分子の85番目のアミノ酸が
*1406がバリンで*1429はアラニンに置換されています。85番という位置は微妙です。86番アミノ酸は非常に有意なのですが、、、すなわち、86番のアミノ酸置換はそのHLAクラスIIの抗原ペプチドの受容特異性を決める決定的に重要な場所です。でも85番はそれほどではありません。

3、バリンとアラニンはどう違う?
 いずれも、中性、非極性、脂肪族直鎖の側鎖を持つアミノ酸で性質は良く似ています。
アラニン:CH3-CH-(NH2)-COOH
バリン:(CH3)2‐CH‐CH-(NH2)-COOH
すなわち、アラニンにCH3側鎖が二つくっついたものがバリンです。

4、結論!
 DRB1*1429DRB1*1406は非常に良く似たDR分子であり、抗原ペプチド受容の特異性もほとんど変わらない。よって、DRB1*1429DRB1*1406不適合は極僅かな不適合性です。不適合性のマグニチュードは1座ミスマッチを「1」とし、1座アリルミスマッチを「0.5」としたとき、「0.1」程度のものとご理解下さい。

 この回答や、「第2慢性期は短いことが多い」という指摘(確かに約5ヶ月で再び急性転化してしまった)から、すぐに移植を受けることに決めました。この選択は正しかったと思います。

 コーディネート期間がもっと短ければ、急性期ではなく、もっと成功率の高い第2慢性期に移植できたでしょう。今後の骨髄バンクの改革に注目しています。