骨髄移植日記ミレニアム('001/4〜4/5)

医学的に大事そうなところは太字になっています。

血算・生化学データは青字になっています。WBC:白血球、RBC:赤血球、Hb:ヘモグロビン、Plts:血小板

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1/4

皮膚生検
移植してから、背中や胸、腕に湿疹みたいなのが出て、非常に痒かった。とうとう皮膚生検をやることになってしまった。右下腕の掌側からえぐってもらった。痛いのは麻酔のときだけだった。なんだ、大したことないじゃん。

結果・・・GVHD: stageは聞いていない。消化管のGVHDがおそらくstage1なので、急性GVHDはGRADE 2かなあ??GVL効果を考えるとちょうどいい感じに出てくれたと勝手に思っている。
1/7  骨髄移植センターを無事卒業し、移植前とは違う一般病棟へ。古臭くて狭い。暖房の調節もできない。ゴキっぽい虫も出現。家から空気清浄機をもってきてもらった。これで1日6000円の個室料金をとるのか!この部屋に来てから咳がふえたのは気のせいか?たぶん気のせいだけど。
1/15  病院のテレビを活用してプレステ三昧の日々。しかし咳は多く、胸が苦しいときもある。ちょっと前からサイトメガロウィルスに効く薬デノシン(ガンシクロビル)を点滴しているが、果たして効いてくれるだろうか。
1/17

 左肺だけではなく新たに右肺にも陰影が確認された。次の選択肢はあまり使いたくはないがステロイド。
(ステロイドは免疫を抑制するので再発や感染症のリスクは高まる。)
WBC5440, RBC320, Hb11.1, Plts13.6

【追記】後日、この頃のレントゲン写真を見た大学病院の先生は「これは危なかったね−」とおっしゃいました。そんな深刻な状況になっているとは、そのときは全然知らなかったです。

1/21  移植前の病棟へ移動。ここのほうが広くてきれいな感じだ。トイレはどこも汚いが。
1/22  大学の友人8人がお見舞いに来てくれた。そのときシャックリが出て止まらなくなる。
 夕食のとき、祖父母に買ってきてもらったウナギを食べた。食欲が上向きなのは先日始まったステロイド(ソルメドロール)の副作用だ。咳もほとんど出なくなっている。
1/24  レントゲンは毎週撮っている。本日は肺の陰影が少し消えてきたようだ。ステロイドが効いているようだ。その代わり、足がむくんできたり、胃が痛かったりする。WBC3040, RBC288 ,Hb9.9, Plts11.4
1/28  肺はきれいになりつつあるみたいだ。ステロイドは2ヶ月ぐらい続くそうだ。中心静脈カテーテルについて「とれないことはないよ。」と先生に言われたけど、「別にこのままでいいですよ。」と答えた。腕に点滴は痛いからねえ。
2/4  血小板が下がっているのがやや気に掛かるけど、赤血球、ヘモグロビンの回復ぶりはすごい。最近時々、再発のこととか考えてしまう。でも、そんなことを考えたって意味はないだろう。人事はつくしている。あとは天命か。昨日からなんだけど、カテーテルをヘパリンロックして点滴を外したときに運動するように心がけている。今日は地下の売店までエレベーターを一切使わずに行った。地下1階から3階まで階段を上がったが、手すりに掴まらずにはいられない!重力の存在をものすごく感じた。こんなに足腰が弱っているとは。WBC6580, RBC355, Hb12.5, Plts6.1
2/5  9月20日以来、初の外出。看護婦Sさんに教えてもらった病院の近くの焼肉屋までちょっとフラフラしながら歩いていった。店は空いていたので、感染が怖い身としては助かった。塩タン、上ロース、上カルビ、イカ、ナンコツ、レバー、焼き野菜、キムチ、タマゴスープ、ドジョウ汁を食した。特によかったのは、上ロースと上カルビ。今まで食べた肉の中では一番柔らかかった。いい肉なのだろう。コーラを飲んだが、炭酸が抜けていた。母はそれにかなり不満だった。帰りにコンビニに寄ったら、お菓子がたくさんあってワクワクした。ついでに私服のA先生も発見。
2/6  焼肉の後、尿の出が悪い。塩分とりすぎたか。点滴の落ちが劇的に悪い。どうしたことか。トイレは誰が汚すのか、劇的に汚い。おまけに夜、ゴキブリが出た。美人看護婦Yさんがスプレーで勇敢にやっつけてくれた。ありがとう。
2/10  末梢血中のbcr−abl遺伝子(正常ではみられない遺伝子)をPCR法で調べるのをN大学に依頼してやってもらっている、とは知らなかった。聞いて安心した。「来週マルクやろうか」と言われた。ギクッ。夜になって下痢になってしまった。最近の食べ過ぎがよくなかったか。エゴグラムという性格判断(リンクのページ参照)をやってみたら前とだいぶ変わっていた。(AとFCが増加してACが減った。)性格が変わった?
WBC6370, RBC344, Hb12.2, Plts8.1
2/11  胃腸の調子が悪い。昼飯を食ったが全部吐いてしまった。血圧も最近高く、今日は下が100あった。プレドニンのせいだろうとのこと。
2/12  あいかわらずの下痢続き。血も混じった。点滴を高カロリー輸液に変えて絶食になった。そうしたら下痢は少し落ち着いてきている。早く再び食べられるようになりたい。尿量は増えた。あっちがよくなるとこっちが悪くなるって感じだ。
2/14  WBC2640に減少してビックリ。今日も食べれず。食欲はあり、食べることばかり考えている。
2/15  下痢の回数は食べてないから多くはないが、また血が混じった。食べれないと人生おもしろくない!マルクをした。さすがS先生、うまい。
2/17  血圧が高い! 190/100!!!アダラート(降圧剤)の呪文を唱えるしかない。アダラート!(ドラクエ育ちの僕にとっては呪文っぽく聞こえるのだ。決してゲームおたくではないと弁明。)下痢が止まったので食事再開、やったね。
2/18  このサイトを苦労の末、ついにアップできた。ここ1週間つまずいていた原因は「POPパスワード」を入力せずに「PPPパスワード」を入力していたということだった。WBC2260, RBC337, Hb11.8, Plts4.6
2/19  大学の友人2人が来てくれた。電話でも話した。
2/22  中心静脈カテーテル(IVH)を固定する2本の糸のうち1本がほどけた。縫い直すか、プレドニンを内服に変えてIVHを抜いてしまうかの選択を迫られた。IVHがあれば、いざという時、高カロリー輸液や抗生剤をいれることができる。しかし、IVHは感染源にもなりうる。迷ったが抜いてもらうことにした。だってさ、縫い直すとしたら麻酔の注射が痛いんだもん!IVHさん、さようなら。ちょっと心細いけど、すっきりだよ。夜も寝返りし放題だ。
 退院について先生に聞いたら、このまま順調に経過すれば3月下旬にできるみたい。それまでは週末に外出や外泊をして体を慣らしていきたい。
2/23  大学の友人が3人来た。お手紙も2通いただく。
2/24  大学の友人が来てくれた。椎名林檎のCD「ギブス」をもらって喜ぶ。椎名林檎いいね。誰か「無罪モラトリアム」貸してください。そして、5ヶ月以上に及ぶ蓄尿終了!病人気分がさらに少なくなる。
WBC5480, RBC337, Hb11.9, Plts5.3
2/25  母が胸が苦しくて救急で診てもらう。過労かな、少し休みやー。
2/27

 昼食後、外出して5ヶ月半ぶりに我が家へ帰った。もう退院した気分!本物のゴンタ(犬)に吠えられると思ったが、意外にも彼はおとなしかった。さすが9歳、大人だ。「九にして吠えず。」しかも、前よりかわいくなっていた。(久しぶりだからか。)我が家なのに、そわそわして落ち着かなかった。TVが病院より大きくワイドなので、違和感があった。あと、温室のような病院より寒かった。夕食はウナギ屋へ食べに行った。僕は上鰻丼、茶碗蒸を頼んだ。ずっと食べたかったカキフライ、鰻肝焼も食べた。満腹で満足。

 家に帰れてうれしかった。移植前最後の外泊の時は「生きて帰って来れるだろうか。」と思ったから。

2/29  プレドニン(今は1日30mg)のせいでかなりムーンフェイスになってきた。ドラゴンズにいたソンドンヨル投手ほどではないが、顔が丸くなってきている。久しぶりに会う人には太った印象を与えるかもしれないけど、43kgしかない。でも、もともと46kgだったから激しく痩せたわけでもない。
3/5  外出。というか気分的には脱出!先週の外出の時も思ったが、名古屋の県庁とかの街並みに「都会だなあ」と新鮮な感動を覚えた。長い間、病院から見える景色しか見ていないからだろう。 昼前に家に着き、昼飯はカレーライスを食べた。長年食べてきた母のカレーはうまかった。もっとたくさん食べれそうだったが、おなかのことを考えて我慢した。(その我慢は夕食で爆発する。)食後はパソコンばっかりやっていた。RealPlayer7とReal Jukeboxをダウンロードした。病院で32kのPHSでダウンロードじゃ効率が悪いからね。夜は「あさくま」にステーキを食べに行った。僕は一番高い「トビテンダロインステーキ」を初めて食した。脂肪が少ないのに柔らかい。だから高いわけだ。ホカホカの海老シュウマイもよかった。ただ「生禁」なのでサラダが食べれないのは悔しかった。(妖怪人間口調で・・・「早く生物(なまもの)が食べた〜い。」焼肉、ウナギ、ステーキ・・・さあ、来週は何を食べようかな。どうも病院食からかけ離れたものを食べる傾向があるようだ。それはそれでいいことだと思うが、お金がかかって仕方がない。退院してしばらく経ったら、家庭教師でもやらなかんわ。必要な方、メールください(笑)。
3/6  文章からはそこそこ元気そうな印象を与えているかもしれんけど、わしも「健康そのもの」じゃないんじゃよ。レバーも腎臓もまだまだ。(血液検査ではLDH、尿素窒素が高く、総蛋白が低い。)なんと心臓も移植後肥大したらしい。(先週知った。)てなわけで、本日心エコーをやった。ディスプレイの中で自分の心臓が踊っている。ふと解剖室で見た心臓を思い出してしまった。血流がカラーで表示される。ハイテクだなあと興奮した。
WBC5590, RBC305, Hb10.5, Plts4.3
3/7  耳鼻科で鼻のレントゲンを撮ったが、異常なし。よかった。先月15日のマルクの染色体検査は異常なしだった。すごくよかった!!また、今日からプレドニンは4錠(20mg)に減った。プレドニンの特有の苦味は結構好きになったが(変かな?)、減るのはうれしい。だってこのムーンフェイス(満月顔)は気に入らんよ。「月に変わっておしおきよ!」って言われちゃう。
3/9  プレドニンの影響で抗体が減っているということで、免疫グロブリンの点滴を今日やった。IVH生活が長かったから腕からの点滴は久しぶりだ。当たり前だけど刺すのは痛いね。
3/10  クレアチニンの値が1.3、つまり腎機能がよくないということで、イトリゾールとバクタを中止することになった。腎臓とか肝臓とか聞くと、忍者ハットリくんを思い出すなー。ハットリジンゾウはハットリくんの父親だったっけ?思えば僕の子供のときは、藤子不二雄アニメ全盛期だった。
WBC6780, RBC286, Hb10.0, Plts3.9
3/12  金曜の夜から初めての外泊、いきなり2泊。(先週までは外出) 今日は外泊して2日目、ダラダラと1日中家で過ごした。足腰がなまっているので、立ち上がったり座ったりの動作がふらついて大変だ。 車でレンタル店に行こうかと考えたが、結局行かず。車の運転席に座って音楽を聞いただけに終わった。今週は外食はしなかったが、昼のハマグリ汁、夜の天丼は美味だった。 弟に熱帯JAZZ楽団のCDを買って来てもらったが、かなりいい。今までBIG BANDはあんまり聞かなかったけど、結構いいもんだと思った。
3/13

 婦長さんに「大部屋に変わってくれないかな。」と打診された。首を縦に振ることはできなかった。個室に慣れきっているので、いまさら大部屋に適応できるとは思えない。もし移動したら、ストレスを感じるのは間違いない。心苦しいけど、自分を守るため。

  しかも、先生に「心臓に水がたまっている。」と言われ、さらにたまげた。ここ最近は増加はしていないが、存在はしているということだ。「針を刺して抜く程の量ではない。」と聞いて胸を撫で下ろした。(想像するだけでも恐ろしい・・・)今は様子を見守るしかないようだ。早速「解剖学講義」という本を広げた。心臓壁のすぐ外側の心膜腔に液体が徐々に貯留する心膜水腫の状態か。勉強になった。こういう時しか本気で読まないからね。 ということで、安全策として「退院は当分しないほうがよい。」ということになってしまった…、トホホ。大学へは病院から通うことになりそうだ。それで、どっちの病院から通うかが問題となってくる。いつでも大学病院に転院させてくれるけど、今の環境が自分にとってまあまあ心地よいので、あえて転院せずにここから通おうかなと考えている。週2日行くだけだし。WBC7980, RBC282, Hb9.9, Plts4.4, CRE1.3

3/19

 夜、高校の時の友達4人と会った。8月に会って以来だ。焼肉かお好み焼きか迷ったけど、肉嫌いのN君のことを考えてお好み焼きを食べに行った。今まで上手く焼けた試しがなかったが、今回は奇跡的に上手く焼けた。TVで上から押さないほうがフックラ焼けると聞いたが、どうやら本当らしい。分けてもらったネギ焼が美味しかったので、次はそれを食べたい。食べた後はカラオケを1時間やって解散した。血圧が高く、血小板は低い状態でのカラオケはなかなかスリルがあるよ。 白血病で骨髄移植したことを言うとみんな最初は驚いていたけど、「アウエル小体(急性骨髄性白血病の細胞内にみられる)とか見つかったの?」という専門的な質問をされて、こっちが驚いた。(名前しか知らんかったから^^;)さすがナースや検査技師のタマゴだなと感心してしまった。僕は「フィラデルフィア染色体はあったよ。」と答えて、医学生の面目は保ったつもり。 

 ところで、集合場所の隣町まで半年振りに車を運転した。(実はその前に父を助手席に乗せて練習したんだけど。)偶然にも免許をとって1周年の日だった。若葉マークはもちろん付けておいた。音楽もかけずに緊張しっぱなしで、心臓にはゴメンサイだった。ここ数ヶ月で最も死亡する可能性の高い1日だったと思う。(黒笑)

3/21  プレドニン減量につれて顔にできた痒いブツブツはGVHDかと思っていたが、皮膚科で一瞬で「にきび」といわれた。ついでに手のひらにできたウオノメみたいなものを見てもらったら「ウイルス性のイボ」ということで、超低温の棒で焼かれた。(表現が幼稚だな…。)火傷したのと同じ状態になったが、これで本当に治るのか?ちなみに、CRE1.8、LDH617と今日の生化学は最悪。内臓たち、がんばっておくれ! WBC7910, RBC319, Hb11.5, Plts5.3
3/22  再び心エコー検査。水は前回(3/6)に比べて減っているそうだ。よかった、よかった。循環器のヒゲの先生がディスプレイを指差しながら、「わかるでしょう。ここが左心室で、これが心膜、この黒い部分に水があって・・・」と丁寧に説明してくてた。今日の結果をうけて、主治医のS先生から「退院できないことはない」みたいな話があった。じゃあ退院したいなあ、授業が始まる頃には。
3/26  大学復学の4月がいつのまにか来週ということで、ソワソワしている。実は、「3月中に退院できる」と思っていた先月、大学近くの賃貸マンションを契約したのであった。そこでの新生活の準備として、今日は家具屋にベッドを買いに行った。最初はショッピングカタログに載ってた安いベッドにしようと思っていたけど、体調維持のためには睡眠が重要と考える僕は五万円のちゃんとしたベッドを買うことにした。枕も先日、新しいのを買った。これで眠りの質がよくなって目覚めがよくなり、遅刻が減ることを期待している。
4/3

 今日は(記念すべき?)大学に行く日。大学のあるZ市まで車で1時間半、買い物を済ませてから、まず新居へ。南向きで西に出窓があるカド部屋なので、とにかく明るい。インターホンも付いているので、新聞屋対策もバッチリだ。(この日だけでも3人来た。)昼過ぎに大学へ行ったが、今日は授業ではなく事務的な手続きだけなので「復学!」っていう感覚は無かった。

 夕方、ちょっと高級な中国料理屋へ行った。店の雰囲気はいい感じで「上品に食べないとなあ」と思うほどだった、最初はね。前菜を食べ終わった頃だったかな、すぐ隣の丸テーブルに女3人、その子供2人、ロン毛の旦那1人がやってきて、煙草を吸うわ、フラッシュたいて写真を撮るわ、ガキがうるさいわ、そこらへんのファミレス以下の状態になってしまった。周りの迷惑を考えろっつーの!イライラして料理に集中できなかった。あーあ、運が悪かったなあ。…で、料理なのだが、フカヒレの姿煮込を生まれて初めて食した。比較対象がないので「へえ、こういうものなんですか。」としか言えない。5000円也。他には鶏の唐揚げがカレー風味で美味しかった。

4/5  待ちに待った退院の日を迎えた。泣いて喜んでくれた看護婦さんもいた。自分は幸せな人間だと思った。もちろん退院は嬉しいけど、住み慣れた病院を去るのは少し寂しい気もした。今度この病院に帰ってくるとしたら、患者としてではなく医者として帰ってきたい。来週からは、大学病院の外来で診てもらう。さよなら、Me病院。

腎不全のはじまりへ続く!