No. 1
Titre
Pietr-le-Letton
邦題名
(直訳名)
怪盗レトン
(ラトヴィア人ピェトル)
執筆記録
Rédaction
デルフジィル(オランダ);1929年9月完成
Delfzijl, Hollande; Sep. 1929
参照原本
Éditions
リーヴル・ド・ポッシュ版 1972年9月
Livre de Poche #2909 ; Sep.1972
邦訳本 稲葉明雄・訳、角川文庫、1978年1月

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リーヴル・ド・ポッシュ社版
1972年9月刊のもの
Livre de Poche #2909 ; Sep.1972




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           角川文庫版
           1978年01月刊
           

物語の季節
Saison
11月中旬。低気圧の影響で大荒れの天気になっている。強風であお
られながら人々はコートを着て身をすくめて歩く。雹のように冷たい大粒
の雨が降り、メグレは傘もなしに張り込みを続けて全身ずぶぬれにな
る。(On était en novembre - - - Les gens étaient enfoncés dans
leurs vêtements; Chap.1er)
メグレの状態
Son état 
メグレの年齢は45歳。この事件の捜査中に銃撃されてかなりの傷を
負うが、気力をふりしぼって仕事を続ける。人間的な穏かさよりもキャ
バレーやホテルに踏み込んで関係者に厳しい命令を下す態度のほう
が目につく。
事件の発端
Origine
国際手配の極めて危険な人物が列車でパリに到着するという情報が入
る。メグレは手配書の人相、鼻筋が尖った小柄で金髪の男、特に左耳
の特徴を頭に入れて北駅で張り込むが、到着した列車からその手配書
の人物が案内人とともに高級ホテルへ向かうのを見かけた。しかしそ
れと同時にその列車内で他殺の死体が発見されたのだ。駆けつけたメ
グレは、殺された男もまさに手配書の男に他ならないことを知った。加害
者は誰なのか?メグレはすぐさまシャンゼリゼの高級ホテルへと向かっ
た。
表題の意味
Ça veut dire
メグレ物の記念すべき第1作。原題 Pietr-le-Letton の le Letton は、
バルト三国のうちの中央に位置するラトヴィア(フランス語表記でLetto-
nie)の人間、つまり「ラトヴィア人ピェトル」となる。この男は国際手配中
の詐欺団を率いる極めて危険な人物とされ、過去にも小切手の偽造な
どで2度逮捕され2度逃げた記録があった。(Deux fois, il a été pris et
les deux fois il s'en est tiré. Chap.18)
ロシアを含む東欧諸国において高学歴のすぐれた知能をもちあわせた人
々がその能力を生かす機会にも環境にも恵まれず、西欧の都会の片隅
で犯罪に手を染めて生きる糧を得るしかない(Tout cela se retrouve à
l'ombre de Notre-Dame de Paris; Chap.15) という不条理な状況を正面
から見つめて描いている。
ホテル
マジェスティック
Hôtel Majestic
シャンゼリゼ通りに面したデラックス・ホテル。中期の作品「マジェスティ
ック・ホテルの地下倉」にも出てくる。英語でおごそかな・荘厳なという
意味(フランス語ではマジェスチューmajestueux)。スタッフが格式と体
面を重んじて、やっかいな犯罪や事件が起きるのを恐れ、起きても表沙
汰にならないようにと取りつくろいに走る。裏口が狭いポンテュー街へ通
じている。この作品が書かれた当時は両大戦間の時代で、現在このホ
テルは存在しないが、一流ブティクが並ぶショッピングアーケード(ギャ
ルリ・ポワン・ショウGalerie Point Show)となっている建物が描写に合致
する。

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 「年の頃32歳、身長169cm」
"Âge apparent 32, taille 169 "
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
北駅 gare du Nord, 10e
シャンゼリゼ大通り avenue des Champs-Elysées, 8e
2 億万長者たちの友人
L'ami des milliardaires
シャンゼリゼ大通り avenue des Champs-Elysées, 8e
3 髪の毛の房
La mèche de cheveux
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
4 「ステートイフェル」号の二等航海士
Le second officier du "Steeteufel"
フェカンFécamp*
(ノルマンディの海岸にある港町。パリの北西205Km)
5 酔っ払いのロシア人
Le Russe ivre
フェカンFécamp*
6 シシリー王ホテル
Au roi de Sicile
フェカンFécamp*
サン=ラザール駅Gare Saint-Lazare, 8e
ロジエ街 rue des Rosiers, 4e
シシリー王街 rue du Roi-de-Sicile, 4e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
7 三回目の幕間 
Troisième entracte
シャンゼリゼ大通り avenue des Champs-Elysées, 8e
ボンヌ=ヌーヴェル大通り boulevard Bonne-Nouvelle, 10e
フォンテーヌ街 rue Fontaine, 9e
8 メグレはもはや楽しまない
Maigret ne joue plus
フォンテーヌ街 rue Fontaine, 9e
ポンテュー街 rue de Ponthieu, 8e
シャンゼリゼ大通り avenue des Champs-Elysées, 8e
9 殺人者
Le "tueur"
シャンゼリゼ通りavenue des Champs-Elysées, 8e
バティニョル街 rue des Batignolles, 9e
フォンテーヌ街 rue Fontaine, 9e
ルピック街 rue Lepic, 18e
ブランシュ広場 place Blanche, 18e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
10 オズワルド・オッペンハイムの帰還
Le retour d'Oswald Oppenheim
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ムッシュ=ル=プランス街 rue Monsieur-le-Prince, 6e
シシリー王街 rue du Roi-de Sicile, 4e
シャンゼリゼ通りavenue des Champs-Elysées, 8e
11 出入りが多い一日
La journée des allées et venues
シャンゼリゼ通りavenue des Champs-Elysées, 8e
ベリ街 rue de Berri, 8e
ワシントン街 rue Washington, 8e
12 銃を持ったユダヤ女
La juive au revolver
シャンゼリゼ通りavenue des Champs-Elysées, 8e
オペラ広場 place de l'Opéra, 8e
13 二人のピェトル
Les deux Pietr
シャンゼリゼ通りavenue des Champs-Elysées, 8e
14 ウガラ学生同盟
La corporation Ugala
シシリー王街 rue du Roi-de-Sicile, 4e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
15 二通の電報
Deux Télégrammes
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
フェカンFécamp*
16 岩の上の男
L'homme sur le rocher
フェカンFécamp*
17 ラム酒の瓶
La bouteille du rhum
フェカンFécamp*
18 ハンスの夫婦
Le ménage de Hans
フェカンFécamp*
19 けが人
Le blessé
エドガー・キネ大通り boulevard Edgar Quinet, 14e

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
ホテル・マジェスティック
Hôtel Majestic
経済界の大物も利用する高級ホテル。
シャンゼリゼ通り avenue des Champs-Elysées, 8e
ジムナズ座*
Théâtre Gymnase
実在の劇場。繁華街の大通りに面している。
ボンヌ=ヌーヴェル大通り boulevard Bonne-Nouvelle, 10e
シシリー王ホテル
Hôtel au Roi de Sicile
移民や外国人労働者たちが暮らす下宿兼用ホテル。
シシリー王街 rue du Roi de Sicile, 4e
ピクウィックス・バー
Pickwick's bar
観光客向けのキャバレー。ホスト役の青年がダンスの相手をする。
フォンテーヌ街 rue Fontaine, 9e

警察関係者の動向
Situation de collègue

トーランスTorrence : ここ5年間はメグレの右腕として最も信頼されている刑事。30歳の新進気鋭で体つきもメグレの小型版と言わるほど似ている。ホテルで張り込みの任務についていたが・・・

デュフール Dufour : 35歳。3カ国語を話す。その中にロシア語があるようで、東欧出身者が寝泊りする安宿の見張りを指示されるが、まんまと裏をかかれてしまう。簡単な話を面倒にしてしまう傾向がある。


リュカ Lucas : まだ若々しい刑事としてちょっとだけ登場。別の事件を担当して容疑者を検挙し自白させる。

コメリオ Coméliau : 事件を担当する予審判事。彼の執務室でメグレは平気でパイプを吸う。

ジャン Jean : 警視庁の受付係の老人。

ボルニエ Bornier : 新入りの警官。フェカンの田舎家をデュフールと交代で見張る。

事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire

ピェトル・ル=レトンPietr-le-Letton : 国際的な詐欺団の主要人物。国籍不明で北欧のリトアニアかエストニアの出身らしい。露仏英独語を流暢に話す。手配書によると耳の形に特徴がある。

モーティマー=レヴィングストンMortimer-Levingston : アメリカの百万長者。ラテン系の容貌で長身痩せ型、黒髪。夫人とともにマジェスティック・ホテルに滞在。フランスの大企業と商談を成立させたばかり。

オズワルド・オッペンハイムOswald Oppenheim : ブレーメンの実業家としてホテルに投宿した男。

オラフ・スワン Olaf Swann : ドイツの商船「ステートイフェル」号の二等航海士。嵐で船が足止めを食ったフェカンの港町で知り合った女性と結婚しているが、その地に長く居着くことがほとんどない。

ベルト・スワン Berthe Swann : フェカンのホテルで部屋係として働いていた美人の女性。船員のオラフに見初められて結婚し、子供と共に町外れの居まいで暮らす。

レオン・ムーテLéon Moutet : フェカンの町の写真屋。

フェドール・ユーロヴィッチ Fédor Yourovitch : ヴィルナ出身の工員。28歳。シシリー王ホテルに長期滞在している。

アンナ・ゴルスキン Anna Gorskine : オデッサ出身の若い女性。25歳。フェドールと同宿。

ペピート・モレット Pepito Moretto : マジェスティック・ホテルの従業員。数日前から紹介されて働いていた。

ジョゼ・ラトゥリー José Latourie : キャバレーで婦人客のダンスの相手をする男。

ハンス・ジョハンソン Hans Johannson : リトアニアの田舎町プスコフにある洋服屋の双子の息子の一人。何事においても優秀な兄を心から慕っている。


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