No. 18
Titre
L'Écluse No.1
邦題名
(直訳名)
第1号水門
執筆記録
Rédaction
マルシィイ・ラ・リシャルディエール;1933年4月完成
Marsilly, La Richardière, Avril 1933
参照原本
Éditions
リーヴル・ド・ポシュ版 1974年11月
Livre de Poche #2923, Nov.1974
ISBN : 2-253-00680-7
邦訳本 大久保 輝臣・訳、創元推理文庫、1992.08
(「13の秘密」に併収)

(←)
リーヴル・ド・ポシュ社版
1974年11月刊のもの
Édition: Livre de
Poche #2923, Nov.1974


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           東京創元社版
           創元推理文庫
           1992年08月刊
           「13の秘密」に
           併収

物語の季節
Saison
物語のヤマの4月13日(日)に合致するカレンダーは1930年である。
メグレは第2章から登場するが、春の新鮮な息吹きとぽかぽかと暖かい
陽光を一身に浴びながら捜査を依頼された経営者の家に向かう。
(Maigret, qui était tout baigné de tiédeur, la peau moite et volupteuse
comme elle ne l'est qu'aux premiers soleil d'avril, - - - Chap.2)
メグレの状態
Son état 
定年まではしばらく年数があるにもかかわらず早期退職願を出している。
退職日まで残り一週間足らずのところでこの事件の担当となる。ちょうど
エドガー・キネ街にあった住まいを引き払ってロワール河畔の村に引っ
越しするところである。夫人だけが先に新居に出向き、メグレは数日間ホ
テルに泊まるなどして早朝から深夜まで捜査にかかわる。退職の理由は
はっきり書かれていないが、心身ともにくたびれて静かな田舎暮らしを考
えたようである。(Maigret avait vraiment envie de campagne, de
quiétude, de lecture. Il est fatigué; Chap.6)
事件の発端
Origine
春らしくなったある夜。シャラントンの運河に酔っ払いの老人が落ちた。
一緒に飲み屋にいた男たちが助けたが、そこにもう一人の男が溺れて
いるのが見つかった。背中に刺し傷があって急いで引き上げると男は息
を吹き返した。彼はこの一帯の水運事業を思いのままに支配しているデュ
クローという実業家だった。彼は平底船を数多く所有し、河岸の土地を買
い占め、第一水門の近くに立派な館を建て、家族のほかに愛人まで住ま
わせていたのだった。(N'était-il pas un des cinq ou six personnages
à régner sur le monde de l'eau? Chap.4) 被害にあったその男の要請
で、メグレが殺人未遂事件の捜査に乗り出した。メグレは、横柄な態度
で接するその男との係わり合いを通して、その取り巻く重苦しい家庭環
境をベースとする背景の中から浮かび上がってくる真実に迫ろうとする。
昔から知るダンスホールの女主人の弁では、「あんなにお金かせいでも
幸せじゃないっていうのは、やっぱり不幸なことね!」(Avouez que c'est
quand-même malheureux d'avoir tant d'argent et de n'être pas heureux!
Chap.5)
表題の意味
Ça veut dire
この第1号水門があった場所は、パリの東隣の町シャラントンである。
ちょうどセーヌ川とマルヌ川が合流する場所で、当時(第2次大戦前)は
マルティネ島と呼ばれる中州があり、北側の支流が運河として水運事業
に使用されていたようだ。現在は半分以上埋め立てられて高速道路に
なっている。

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 (もっと大柄で重たくぐったりした溺れ人)
(Un noyé plus gros, plus lourd, plus inerte)
(日曜日dimanche)
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
2 (立派な館)
(La maison haute)
(火曜日mardi)
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
3 (鷲集亭)
(Au rendez-vous des Aigles)
(火曜日mardi)
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
4 (セーヌ川沿いの遊歩)
(Déambulation le long de la Seine)
(水曜日mercredi)
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
ベルシー港port de Bercy, 12e
オーステルリッツ橋pont d'Austerlitz, 12e
ポンヌフ(新橋)広場place du pont neuf, 1er
5 (仕事をこなすための余計な奴ら)
(Assez de crabes pour faire la besogne)
(木曜日jeudi)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
セレスタン河岸 quai des Celestins, 4e
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
6 (オランダのブランデー)
(L'eau de vie hollandaise)
(金曜日vendredi)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
エドガー・キネ大通りboulevard Edgar-Quinet, 14e
オルセー駅gare d'Orsay, 7e
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
ロワイヤル街 rue Royale, 8e
サン=トノレ街 rue Saint-Honore, 1er
7 (シャロンの医者)
(Le médecin de Châlons)
(土曜日samedi)
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
8 (幼少の思い出の中にしかないような日曜日)
(Un dimanche comme on n'en a que dans
ses souvenirs d'enfant)
(日曜日dimanche)
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
サモワ Samois*(フォンテーヌブロー北側9kmに
あるセーヌ上流河畔の別荘地)
9 (日暮れを待ちながら)
(Dans l'attente du crépuscule)
(日曜日dimanche)
サモワ Samois*
10 (後ろにひっくりかえった椅子)
(La chaise renversée en arrière)
(日曜日dimanche)
サモワ Samois*
11 (静かにさせておいてくれ)
(Fiche-moi la paix)
(月曜日Lundi)
サモワ Samois*
カリエール河岸(シャラントン)
quai des Carrières, Charenton
ポンヌフ(新橋)広場place du pont neuf, 1er
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
オー・ランデヴー・デゼーグル
(鷲集亭)
Au rendez-vous des Aigles
シャラントンの運河沿いにあるカフェバー
カリエール河岸quai des Carrières, Charenton
マキシム *
Maxim
往年の豪奢なレストラン。最近は斜陽気味。
ロワイヤル街 Rue Royale, 8e
タバ・アンリ・キャトル
Tabac Henri-IV
ポンヌフの中ほどのシテ島にあるカフェバー
ポンヌフ広場Place du Pont-Neuf, 1er

警察関係者の動向
Situation de collègue

リュカ Lucas : メグレを補佐して捜査を担当。このときはまだ30歳代である。メグレの信頼を受けてガッサンを尾け、小雨の中で濡れながら何時間も見張りを続ける。
事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire

エミール・デュクロー(ミミル) Emile Ducrau (Mimile) : セーヌ・マルヌ河川運輸業の総元締め。水門の管理人から身を起こして成功者となった。ある夜背中を刺されて運河に落ち、溺死する寸前に救助される。

ジャンヌ・デュクロー Jeanne Ducrau : ミミルの妻。いつも不幸を背負ったような気分で夫の怒鳴り声にも身をすくめる。

ジャン・デュクロー Jean Ducrau : ミミルの息子。病弱で引っ込み思案の少年。

ベルト・ドゥシャルム Berthe Decharme: ミミルの娘。ドゥシャルムと結婚している。

ドゥシャルム Decharme : ベルトの夫。ル・マン出身。陸軍大尉としてヴェルサイユ付近に住む。

ガッサン Gassin : 平底船「金羊毛」(Toison d'or) の船主。ミミルとは旧知の仲。昼間から飲んだくれている。

アリーヌ Aline : ガッサンの娘。知恵遅れだが美しい容姿をしている。

ローズ Rose : マキシムの接客係でミミルの愛人。3階に囲われて住んでいる。

マティルド Mathilde : デュクロー家の女中。

カトリーヌ(マルト) Catherine(Marthe) : 場末のダンスホールの女主人。

フェルナン Fernand : カフェバー「鷲集亭」の主人。

イルマ Irma : フェルナンの妻。

ベベール Bebert : 水門の管理人助手。

メリー Melie : サモワにあるデュクロー家の別荘にいる女中。


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