No. 56
Titre
La Première enquête de Maigret
邦題名
(直訳名)
メグレの初捜査
執筆記録
Rédaction
米国アリゾナ州トゥマカコリにて;1948年10月完成
Tumacacori, Arizona, USA; Octobre, 1948
参照原本
Éditions
リーヴル・ド・ポッシュ版、#14232 ; 2001年1月刊
le Livre de Poche #14232 ; Jan. 2001
ISBN : 2-253-14232-8
邦訳本 萩野弘巳・訳、河出書房新社#11、1983年8月刊

(←)
リーヴル・ド・ポッシュ版
2001年1月刊
Livre de Poche #14232
Jan., 2001

        (すぐ右→)
   河出書房新社#11
      1983年8月刊

      (右2つ目⇒)
   河出書房新社#11
      1977年5月刊

物語の季節
Saison
4月の中旬。パリではいちばん美しい春が感じられる頃である。春の息吹きは
柔かく、かぐわしく、立ち止まって吸いこんでみたいと思う。 (De son après-
midi, il lui restait un souvenir radieux, celui du plus beau printemps de Paris,
et d'un air si doux, si parfumé qu'on s'arrêtait pour le respirer; Chap.6)
この事件では年月日がはっきり明示されている。1913年4月15日である。この
時期は第一次世界大戦が勃発する約1年前にあたる。20世紀初頭の辻馬車
が街を走り、パラソルやボンネット帽子をつけた婦人たちの姿、メグレ自身も口
髭をはやしているというような時代風俗を思いながら読むことになる。

(ただしメグレ自身の全体的な年齢計算からするとこの初手柄は上の日付の
約10年後の1923年であるならばその後の事件年代とうまく整合するように思
う。)
メグレの状態 
Son état
この事件ではメグレは26歳の初々しい青年刑事である。結婚してほやほや
の5ヵ月、勤続4年になる。(Il avait 26 ans et il était juste marié de 5 mois.
Depuis qu'il était entré dans la police 4 ans plus tôt, --- Chap.1er) それま
での3年間は、駅や繁華街・デパートなど公共領域でのスリ・かっぱらい・こそ
泥などを取り締まる地味な仕事をしていたが、1年前からサン=ジョルジュ分
署の秘書官になっていた。
事件の発端
Origine
国賓として某国の君主がパリを訪問中のこと。若いメグレの勤務する9区分署
でも警備のために人手が駆り出され、その夜はメグレが当直となっていた。
午前1時頃、フルート奏者だという青年が出頭し、事件が起きたと申し出たの
だった。近くの街路を通りかかった際に建物の2階の窓が急に開いて、若い女
性が身を乗り出し「助けて!」と叫んだあと、中に引きずり込まれたのを見た。
その直後に銃声もしたので、青年はすぐさまその家の門を大声でたたき、中に
入って確かめようとしたのだが、その家の執事に食い止められ、顔を殴られて
追い出された、と言うのだ。メグレはその青年と一緒に捜査に出かけることにし
た。・・・・
題名の意味
Ça veut
dire
それまでは上司の警視に付き添って捜査に加わっていたのだが、この夜の
一件が「メグレにとって初めて自分の翼で飛んだ」事件となった。(C'était la
première fois que Maigret volait de ses propres ailes; Chap.1er) 名探偵の
青年時代とか初手柄とかは、もし生みの親の作者が書かなかったならば、後
世必ず擬似作品の形で別の作家によって書かれることになるようだ。映画や
アニメの『ヤング・シャーロック・ホームズ』や『金田一少年』などもその好例だ。

警察官となったメグレには、日ごろからパリ警視庁勤務を強くあこがれる心情
が随所に現れている。「もし本庁勤めになったら分署の刑事たちに対してこん
なえらぶった態度は取るまい」などと思う。またこの事件がうまく解決できたら
本庁勤務の夢がかなうのではないか、と思ったりする。けがをしたメグレに署
長から休養するように言われたときに、「これは私の最初の事件ですから、私
一人で解決したいんです。」と若者らしい強いこだわりをみせる。(C'est ma
première enquête. Je peux sortir, finir l'enquête tout seul. Chap.7)

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 フルート奏者の供述
La déposition du flûtiste
ラ・ロシュフコー街 rue La Rochefoucault, 9e
シャプタル街 rue Chaptal, 9e
2 リシャールは嘘をついた
Richard a menti
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard-
Lenoir, 11e
ラ・ロシュフコー街 rue La Rochefoucault, 9e
マンサール街 rue Mansart, 9e
サン=ジョルジュ広場 place Saint-Georges, 9e
3 ポーメルおやじのおごり
Les tournées du père Paumelle
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard-
Lenoir, 11e
シャプタル街 rue Chaptal, 9e
4 ブローニュの森の外周通りに住む
老紳士
Le vieux monsieur de l'avenue
du Bois
シャプタル街 rue Chaptal, 9e
アカシア街 rue des Acacias, 17e
サントーギュスタン広場 place Saint-Augustin, 8e
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard-
Lenoir, 11e
ブランシュ広場 place Blanche, 9e
ブローニュの森通り avenue du Bois de Boulogne
5 メグレの最初の野心
La première ambition de Maigret
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard-
Lenoir, 11e
ラ・ロシュフコー街 rue La Rochefoucault, 9e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
6 身内の慶弔事
Une fête de famille
エトワール広場 place de l'Étoile, 17e
ブレー街 rue Brey, 17e
アカシア街 rue des Acacias, 17e
ワグラム通り avenue de Wagram, 17e
テルヌ広場 place des Ternes, 17e
ティルシット街 rue de Tilsit, 17e
7 メグレ夫人の笑い
Le rire de Mme Maigret
ワグラム通り avenue de Wagram, 17e
ボージョン街 rue de Beaujon, 8e
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard-
Lenoir, 11e
8 黙りこくる者、しゃべりすぎる者
Un qui se tait, un qui parle trop
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard-
Lenoir, 11e
ヴォルテール大通り boulevard Voltaire, 11e
オルロージュ河岸 quai de l'horloge, 1er
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er
シャプタル街 rue Chaptal, 9e
9 郊外での昼食
Le déjeuner à la campagne
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard-
Lenoir, 11e
ラ・ロシュフコー街 rue La Rochefoucault, 9e
マイヨ門 porte Maillot, 17e
ブージヴァル Bougival* (パリ西郊約20Kmの行楽地)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
(カフェ)
(Un café)
9区分署の近くにあるカフェ
サン=ジョルジュ広場 place Saint-Georges, 9e
ヴュー・カルヴァドス
Vieux Calvados
路地の角にあるレストラン・バー。老夫婦が経営。
シャプタル街 rue Chaptal, 9e
カフェバー中央山塊(マッシフ・サントラル)
Au rendez-vous du Massif-Central
辻馬車の御者が集まるカフェバー
サントーギュスタン広場 place Saint-Augustin, 8e
ブラッスリ・ド・クリシー
Brasserie de Clichy
バンドが生演奏をしているブラッスリ
ブランシュ広場 place Blanche, 9e
ホテル・デュ・サントル
Hôtel du Centre
エトワール広場の北側にある路地裏の安ホテル
ブレー街 rue Brey, 17e
ブラッスリ・ル=コック
Le Coq
エトワール広場の北側に伸びる大通り沿いのカフェ
ワグラム通り avenue Wagram. 17e
(イタリアン・レストラン)
(Restaurant italien)
イタリア人の経営するレストラン
ワグラム通り avenue Wagram. 17e
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の刑事たちの溜まり場
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er

警察関係者の動向 Situation de collègues

マクシム・ル=ブレ警視 Maxime Le Bret : サン=ジョルジュ分署の署長。モンソー新開地区に屋敷を構え、お抱えの御者と自家用の馬車を所有し、社交界にもつながりの深い唯一の警視。

ベッソン Besson : サン=ジョルジュ分署の刑事。

グザヴィエ・ギシャール Xavier Guichard : パリ警視庁の長官。メグレの父親と親しい関係にあった人物。

バロデ Barodet : パリ警視庁の警視。当時流行りだった髭は生やさないで、狩人のような鋭い目つきの顔をしている。事件の担当として送り込まれる。

ポール医師 Dr. Paul : まだメグレが分署勤務であるときからすでに警視庁の監察医となっている。

ヴァネル Vanel : パリ警視庁の風規班の部長刑事。
事件にかかわる登場人物  Personnages dans l'affaire

ジュスタン・ミナール Justin Minard : コンセール・ラムルー管弦楽団の第2フルート奏者。夜はカフェバーで楽士をして働いている。

エクトル・バルタザール Hector Balthazar : バルタザール・コーヒー店の創業者。パリで十指に入る大資産家。5年前に88歳で死去。複雑な遺言書を残した。

フェリシアン・ジャンドロー Félicien Gendreau : バルタザール家の女婿。競馬などの賭け事に熱中する遊び人。使用人たちからはチョビ髭とか古銭とか呼ばれて軽んぜられている。

リシャール・ジャンドロー=バルタザール Richard Gendreau-Baltazar : バルタザールの孫。フェリシアンの息子。30歳代、茶髪。鼻が曲がっている。

リーズ・ジャンドロー=バルタザール Lise Gendreau-Balthazar : バルタザールの孫娘。祖父の血筋をもっとも色濃く受け継いでいるため、莫大な遺産の唯一の相続人となっている。あと1ヵ月で21歳になる。

ユベール・バルタザール Hubert Balthazar : 50歳代。エクトルの実弟。上品な物腰でやせている芸術家肌の紳士。

ルイ・ヴィオー Louis Viaud : バルタザール家の執事。45歳くらいに見えるが実際は56歳。大柄で異常に太い眉。

ジェルメーヌ・バブーフ Germaine Baboeuf : バルタザール家の小間使い。田舎の妹の出産の手伝いに帰っているが、メグレが呼び出して一族のことを聞き出す。

マリー Marie : バルタザール家の小間使い。

アルベール Albert : バルタザール家の下僕。21歳までは競馬の騎手だった。

ジェローム Jérôme : バルタザール家のお抱え馬車の御者。厩舎の上に住み込む。

アルセーヌ Arsène : 自家用車の運転手。近所から通っている。

ポーメル Paumelle : シャプタル街にあるレストラン・バー「ヴュー・カルヴァドス」の店主。

ユジェーヌ・コルニル Eugène Cornille : 流しの馬車の御者。

ジャック・ダンスヴァル(ボブ)Jacques d'Anseval (Bob, Le comte) : アンスヴァルの伯爵領をバルタザール家に売った旧家の末裔。通称ボブとか伯爵とか呼ばれる。25歳の美青年ながら人を馬鹿にしたような態度をとる流れ者。警察の麻薬班からコカイン取引で目をつけられている。リーズと交際している。

リュシルLucile : ボブの愛人。左の頬に痣がある美人。

デデ Dédé : 凱旋門近くで自動車のガレージを経営している。ディオン=ブートンを運転している。

アルベールAlbert : もとボクサーと思われる体つきの男。鼻がつぶれている。


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