No. 67
Titre
Le Revolver de Maigret
邦題名
(直訳名)
メグレの拳銃
執筆記録
Rédaction
1952年6月、米国コネティカット州レイクヴィル
「シャドゥ・ロック農場」にて完成
Shadow Rock Farm, Lakeville, Connecticut,
USA ; Juin, 1952
参照原本
Éditions
プレス・ドゥ・ラ・シテ社版 1962年12月刊
Presses de la cité Déc, 1962
邦訳本 佐宗 鈴夫・訳、河出書房新社、1979.06

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プレス・ドゥ・ラ・シテ社版 
1962年12月刊
Presses de la cité
Déc.1962



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          河出書房新社版
           1979年6月刊

物語の季節
Saison
 6月になって晴れわたった青空の下、パリは新鮮な夏の息吹きに包まれ
ている。開いた窓の外に木々の緑が繁り、日が長い夕べにはくつろいだ姿
で河岸を散歩する人々が多い。(La fenêtre est ouverte, car on était en
juin et sous le chaud soleil, Paris avait pris son odeur d'été; Chap.1er)
メグレの状態
Son état 
 自分の留守中に招き入れた人物に記念品の拳銃を盗まれるという不始
末にメグレ自身はどうしようもない不機嫌を覚える。夫人が悪いわけでは
ないが、サロンに飾りっぱなしにしていた自分も悪いと言えば悪いのだ。
 事件が思いがけない方向へと展開していき、メグレは飛行機でロンドン
へ赴くことになる。10年以上の久しぶりの訪問だが、苦手な英語を話さな
くてはならず、ましてや捜査権限の及ばないところで思うように身動きが
取れない。特に酒を飲みたくても朝からカフェで一杯ということが英国で
は出来ず、悪態をつく。
事件の発端
Origine
 珍しく夫人から昼食に帰宅するかどうかの電話が入る。身なりのきちん
とした青年がメグレを訪ねて自宅に相談に来たのだという。メグレが旧友
の刑事と昼食前の一杯をやってから帰宅すると、いつのまにか青年はい
なくなってしまったという。しかも夫人が台所にいる間、サロンで待たせて
いたのだが、そこに飾っておいたアメリカ製の拳銃が消えているのに気
づいた。メグレは警視庁に連絡して、その拳銃に合った銃弾を銃砲店に
買いにきた男がいないかどうかパリ中に手配を命じた。しかしすでに時遅
く、若い男が銃弾を買いに来て帰ったことがわかった。メグレは不機嫌な
まま、友人のパルドン医師の自宅での夕食会に夫人を連れて出かける
ことにする。
表題の意味
Ça veut dire
 メグレは捜査に当たる場合でも銃を持たないのが普通である。この題名
の拳銃とは、かつてメグレがFBIの招待で米国を訪れたときに記念にもら
ったスミス&ウェッソンの75口径のもので、簡単に扱えるものではなく、自
宅に飾り物のように置いていたのである。「メグレ君へFBIの友より」(To:
J-J. Maigret from FBI friends)と刻印されている。
医者仲間の夕食会
Les Dîners des
toubibs
 町医者パルドン家での夕食会。のちにメグレ夫妻がこのパルドン夫妻と
互いに招待しあって親密な夕食会をするようになるのだが、この医者仲
間の夕食会はそのきっかけとなった。パルドン医師は気さくな性格でか
ねてから警視庁関係の医者たちを招いて毎月1回夕食会を開いていた。
一品料理とワインだけで気軽な会話を楽しむ夕べである。

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 メグレが昼食に遅れたこと、そして夕食に招いた客
が来なかったこと
Où Maigret arrive en retard pour le déjeuner
et où un convive manque au dîner
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e
ヴォルテール大通り boulevard Voltaire, 11e
2 管理人が面倒見のいい女ではないこと、そして戸
口の鍵穴から外を見るいい年をした男のこと 
Où il est question d'une concierge qui n'est pas
curieuse et d'un monsieur d'un certain âge qui
regarde par le trou de la serrure
ポパンクール街 rue Popincourt, 11e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
シャンゼリゼ通り
avenue des Champs-Elysées, 8e
北駅 gare du Nord, 10e
3 死んでも生きているときと同じくらい厄介な人物の
こと、そしてメグレの眠れぬ夜のこと
D'un personnage aussi encombrant mort que
vivant et de la nuit blanche de Maigret.
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ポパンクール街 rue Popincourt, 11e
4 眠れぬ夜の続きと気分の悪い聞き取り調査
Suite de la nuit blanche et des entrevues
désagreables
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
モーブージュ街 rue de Maubeuge, 10e
リシャール・ワラス大通り boulevard
Richard-Wallace, Neuilly-sur-Seine
5 下女が満足そうに話すこと、しかしながらメグレは
朝の6時半頃、自分には不満を感じていること
Où la bonne est contente d'elle, mais où
Maigret, vers les six heures du matin, l'est
moins de lui-même
リシャール・ワラス大通り boulevard
Richard-Wallace, Neuilly-sur-Seine
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e
ル・ブールジェ空港 l'aéroport Le Bourget
6 メグレはわざわざ上着のボタン穴にひなげしの花を
挿すこと、しかしながら物事がうまく行かなかった
こと
Où Maigret fait le sacrifice de porter un œillet
à la boutonnière, mais où cela ne lui réussit pas
クロイドン空港 Croydon
ロンドン Londres
7 救いのミルク・チョコレートの箱のこと、そしてかつ
て町内一帯を騒がせた猫のこと
D'une actuelle tablette de chocolat au lait et
d'un chat d'autrefois qui ameuta tout un quartier
ロンドン Londres
ポパンクール街 rue Popincourt, 11e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
8 メグレが数日間父なる神でいたかったこと、そして
飛行機が誰もを快適には出来なかったこと
Où Maigret voudrait bien être Dieu le Père
pour quelques jours et où l'avion ne réussit
pas à tout le monde
ロンドンLondres
9 メグレが亀ソース付き子牛の頭料理を初めて味わ
うこと、そして夫人にロンドンのことを話すこと。
Où Maigret découvre la tête de veau en tortue
et où il décrit Londres à Madame Maigret
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ポパンクール街 rue Popincourt, 11e
ヴォルテール大通り boulevard Voltaire, 11e

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の近くにあるブラッスリ。メグレも常連。
ドーフィヌ広場 Place Dauphine, 1er
カフェ・ル・フランセ
Café Le Français
シャンゼリゼの大通りに面したカフェ
シャンゼリゼ通り avenue des Champs-Elysées, 8e
マキシム *
Maxim's
パリを代表する社交界の名士が出入りする高級レストラン。
ロワイヤル街 rue royale, 8e
サヴォイ・ホテル*
Savoy Hotel
ロンドンにある格式の最も高いホテルのひとつ。
ロンドン Londres

警察関係者の動向
Situation de collègue

リュカ Lucas : タクシーの運転手への聞き込みの結果、北駅まで大きな荷物を運んだことをつき止め、手荷物預り所から連絡してくる。容疑者の家の中を探して、隠されていた別の拳銃を見つける。

トーランス Torrence : パリ中の銃砲店に連絡して、盗まれたメグレの拳銃に使う弾丸を買いに来た男がいたかどうかを調べる。

ジャンヴィエ Janvier : 容疑者のアパルトマンの建物を見張る。

ラポワントLapointe : 容疑者の取調べの書記役をする。

パルドン医師 Dr.Pardon : メグレの近所に住む医師。最も親しい友の一人。医者仲間での夕食会を主催。小柄で小太り、頭が大きい。

パイク M. Pyke : ロンドン警視庁の警部。メグレとは旧知の仲である。


ルールティLourtie : メグレの旧知の刑事。南仏ニースの警察署にいるが用事でパリに来た。骨ばった大柄な男。

ジュッシューJussieu : 科学捜査研究所の所長でメグレよりも10歳年下。パルドン家の夕食会のメンバーの一人でメグレ夫妻も連れて行った。

ポール医師 Dr. Paul : レストランで夕食中に呼び出され、発見された他殺体の司法解剖をする。いつもタバコをくわえ、唇にくっついている。

ラトー Rateau : 予審判事。友人のもとでブリッジをしているところを呼び出される。

ジュルヌ医師Journe : 警察病院の医師。

ルクール巡査 Lecœur: 北駅付近のパトロール中に拳銃を突きつけられて追いはぎにあったというある経営者から話をきいて、報告してくる。

エミール・ルブラズ巡査 Emile Le Braz : パリ西隣のヌィイ市の高級アパルトマンで深夜パトロール中に挙動不審の若い男を見かけて、手配中の写真と一致すると報告してくる。

マテュー Mathieu : ル・ブールジェ空港勤務の刑事。

ブライアンBryan : パイクの部下。サヴォイ・ホテルの張り込みを手伝う。

フェントンFenton : パイクの部下。特徴のある容姿なので尾行に気づかれてしまう。

事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire

フランソワ・ラグランジュ François Lagrange : パルドン医師の旧友。昔アンリ4世校のリセで一緒だったが、父親が男爵だというので記憶していた。身なりはいいが太っていて皆からからかわれていた。最近しばらくぶりで診察を受けに来た。夕食会に招いたが来なかった。

ラグランジュ嬢 Mlle Lagrange : フランソワの娘。母親なしで育てられ、21歳の誕生日を期して家を出た。シャンゼリゼのランジェリー店で働く。

アラン・ラグランジュ Alain Lagrange : フランソワの末っ子、19歳。父親と同居し、広告代理店で働く。理由はわからないが家を出たまま帰らない。

アンドレ・デルテイユ André Delteil : 国会議員。元は弁護士。金持ちのアメリカ人女性と結婚し、3年後に政界に進出した。無派閥で容赦なく相手を論駁することで恐れられている。

ピエール・デルテイユ Pierre Delteil : アンドレの2〜3歳年下の弟。映画監督という名刺を持っているが、実際に製作したことはない。有名レストランに出入りする。

ジェラール・ロンブラ Gérard Lombras : 新聞記者。我慢強くねばって情報を得ようとする。

ガストン・グリマル Gaston Grimal : クレルモン=フェランの企業経営者。北駅の路地裏で財布を取られる。

ジャンヌ・ドゥビュル Jeanne Debul : ヌィイの高級アパルトマンに住む女性。高級な宝飾品を身につけ、ロンドンの一流ホテルを定宿にしている。

ジョルジェット Georgette : ジャンヌの家の家政婦。22歳。パリに出て6年になる。


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