No. 68
Titre
Maigret et l'homme du banc
邦題名
(直訳名)
メグレとベンチの男
執筆記録
Rédaction
1952年9月19日 米国コネチカット州レイクヴィル、
シャドウ・ロック・ファームにて
le 19 septembre, 1952 ; Shadow Rock Farm,
Lakeville, Connecticut, USA
参照原本
Éditions
リーヴル・ド・ポッシュ版、#14234 ; 2001年3月刊
le Livre de Poche #14234 ; Mars, 2001
ISBN : 2-253-14234-4
邦訳本 矢野浩三郎・訳、河出書房新社#15、1982年11月刊

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リーヴル・ド・ポッシュ版
2001年3月刊
Livre de Poche #14234
Mars, 2001

         (→)
   河出書房新社#15
     1982年11月刊

     

物語の季節
Saison
10月19日(月)その年の冬の季節を感じさせる最初の事件となった。前日の日
曜日も一日中冷たい雨降りだった。目に見えないほどの細かい雨だが、舗道
の石が濡れたままになっている。(Une pluie froide et fine, les toits et les
pavés étaient d'un noir luisant, et un brouillard jaunatre semblait s'insinuer
par les interstices des fenêtres; Chap.1er)
メグレの状態 
Son état
 事件現場に出向く時も、被害者の葬式に立ち会った時も冷たい長雨にすっか
り濡れてしまって、自宅に立寄って着替えたりする。「葬式に行くと風邪を引く」
というフランスのことわざ通り鼻風邪をひいた感じがする。もちろん熱々のグロ
ッグを頼むわけだが・・・(- - - l'eau froide qui tombait du ciel lui était entrée
dans les narines, - - - peut-être à cause de la tradition qui veut qu'on
attrape des rhumes aux enterrements? Chap.4)
事件の発端
Origine
 じめじめした雨降りの月曜日の午後、中年の男がサン=マルタン大通りか
ら内奥に入ったところで背中をナイフで刺されて死んでいるという知らせが入
る。服装の真っ赤なネクタイと黄色の靴だけが異様に見えた。メグレは車です
ぐに郊外の彼の自宅に向かったが、平凡な勤め人である被害者の意外な側
面が洗い出されてくる。調べていくうちに彼の勤めていた会社は3年前に廃業
していたにもかかわらず、毎朝弁当を持って通勤列車に乗り、夕刻には帰宅す
るという生活を続け、しかも給料は毎月きちんと支払われていたというのだ。
職を失って途方にくれた男は昔の同僚から借金までして追い詰められていた
はずなのだが・・・
題名の意味
Ça veut
dire
 被害者の男についてはよく大通りのベンチに座っている姿を見かけたという。
(Un homme comme on en voit sur les bancs du quartier.Chap.3)
要するに決まった仕事を持たない人間が真昼間から何時間もベンチに座って
過ごし、ぼんやりと通行人をながめるようなことである。これが広い公園ならば
老人や年金生活者なのだが、特にこの界隈の場合は意味が違っていた。
はっきり言えば浮浪者に近い人間と思われるような姿である。被害者の妻は
姉妹が鉄道公務員の家庭でいわばしっかりした職業であることに張り合う気
持が強く、保険のセールスのように歩き回る人間を軽蔑していた。まして失職
してベンチに座っている事がバレてしまったならば大変なことになるのが目に
見えていたのである。

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 黄色の靴
Les souliers jaunes
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard Lenoir, 11e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
サン・マルタン大通り boulevard Saint-Martin, 3e
ジュヴィジー* Juvisy-sur-Orge(パリ南方20kmの新興住宅地。
鉄道の操車場がある)
マザス広場 place Mazas, 12e
リヨン駅 gare de Lyon, 12e
2 鼻の大きな老嬢
La vierge au gros nez
ボンディ街 rue de Bondy, 10e (現在:ルネ・ブーランジェ街
rue René Boulanger)
サン・マルタン大通り boulevard Saint-Martin, 3e
クリニャンクール街 rue de Clignancourt, 18e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
3 半熟たまご
L'œuf à la coque
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er
メジッスリ河岸 quai de la Mégisserie, 1er
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
リヴォリ街 rue de Rivoli, 1er
サン=ミシェル大通り boulevard Saint Michel, 5e
シャティヨン通り avenue de Châtillon (Jean Moulin), 14e
サン・マルタン大通り boulevard Saint-Martin, 3e
リュヌ街 rue de la Lune, 2e
4 雨の中での埋葬
L'enterrement sous la pluie
裁判所大通り boulevard du Palais, 4e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ジュヴィジー* Juvisy-sur-Orge
ボンヌ=ヌーヴェル大通りboulevard Bonne-Nouvelle, 2e
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard Lenoir, 11e
レピュブリック広場 place de la République, 9e
ダングレーム街 rue d'Angoulême, 3e
5 巡査の寡婦
La veuve du sergent de ville
ダングレーム街 rue d'Angoulême, 3e
クリニャンクール街 rue de Clignancourt, 18e
裁判所大通り boulevard du Palais, 1er
ドーメニル通り avenue Daumesnil, 12e
サン=タントワーヌ街 rue Saint Antoine, 4e
リシャール・ルノワール大通り boulevard Richard Lenoir, 11e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
6 物乞いのような商売
Les mendiants
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
7 レインコートの卸会社
Le marchand d'imperméables
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ブロンデル街 rue Blondel, 3e
ヴァルミー河岸 quai de Valmy, 10e
8 モニクの秘密
Le secret de Monique
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ヴァルミー河岸 quai de Valmy, 10e
9 待ちきれなくなったコメリオ判事
L'impatience du juge Coméliau
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
クリニャンクール街 rue de Clignancourt, 18e
ダングレーム街 rue d'Angoulême, 3e
レピュブリック広場 place de la République, 9e

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
警視庁の刑事たちの溜まり場。メグレの昼食時の定席がある。
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er
ブラッスリ・ド・ラ・レピュブリック
Brasserie de la République
広場に面したブラッスリ。ラポワントとの待ち合わせに使う。
レピュブリック広場 place de la République, 9e
シェ・フェルナン
Chez Fernand
サン=マルタン門からすぐのカフェバー、PMU馬券も扱う。
元騎手のフェルナンがマスターをしている。
ブロンデル街 rue Blondel, 10e

警察関係者の動向 Situation de collègues

サントーニ Santoni : コルシカ出身の刑事。10年間賭博課、風紀課で仕事をしてきて、殺人課に転属してきて間もない。小柄でかかとの高い靴をはく。髪はgomine' いつも香水をつけている。被害者の娘の周辺を洗わせるが、メグレの目からすると無駄な動きが多い。

ヌヴー Neveu : パリ3区警察署の刑事。最初に事件現場に駆けつける。付近の聞き込みを朝から辛抱強く続ける。最後に有力な常習犯を捕まえてくるが・・・

リュカ Lucas : 2週間以上別の事件にかかわっていたが、途中から捜査に加わり各方面からの情報連絡の調整役となる。ジョリス青年の捜索手配を各駅・国境・憲兵隊へ流す。貸間の女主人の電話に盗聴をかける。

ジャンヴィエ Janvier :犯行に使用されたナイフの入手先を割り出すためにパリ中の金物店を4人で聞込みに歩く。尋問後のモニクの後を尾行する。 

ラポワント Lapointe : 被害者が着替えるために借りていたと思われる部屋をさがし歩き、機転を働かせて見つけ出す。

トーランス Torrence:たまたま手が空いていたので、窃盗事件の担当警視のところにリストをもらいに行かされる。

ルロワ Leroy :テヴナール夫人の甥を尋問する。

ポール医師 Dr. Paul : 被害者の司法解剖の結果を電話で連絡してくる。

コメリオ判事 Coméliau : 最初から「ならず者の犯行だと思うが・・・」と話してくるが・・・

ダンボワ巡査 Dambois :クリシー広場で手配中のジョリス青年を見かけるが逃げられる。

アントワーヌ Antoine:窃盗事件の担当警視。

事件にかかわる登場人物  Personnages dans l'affaire

ルイ・トゥレ Louis Thouret: 被害者。10区の小物卸カプラン&ザナン商会に勤めている50歳少し前の男。長雨の降る夕方に路地裏で刺殺体で発見される。

エミリー・トゥレ Emilie Thouret: ルイの妻。ジュヴィジーの住宅地の一軒家で姉妹2人世帯の近くに住む。

モニク Monique: ルイの娘。22歳。パリのリヴォリ街の債権回収事務所で働いている。

ジャンヌ・マニャン Jeannne Magnin: エミリーの姉妹。身元の確認のためエミリーに付き添う。

アルベール・マニャン Albert Magnin: ジャンヌの夫。鉄道員。もったいぶった態度。

セリーヌ・ローダン Céline Laudin:エミリーの姉妹。

ジュリアン・ローダンJulien Laudin:セリーヌの夫。長距離列車の運転手。

(女管理人 Une concierge):ルイが勤めていた会社の建物の門番。

レオーヌ嬢 Mlle Léone:ルイの勤めていた会社の元タイピスト。クリニャンクール街でベビー用品を売る店「ベベ・ローズ」を経営している。

センブロン氏 M. Saimbron:ルイの勤めていた会社の元会計係。年金でつつましく暮らしている老人。

アルベール・ジョリス Albert Jorisse:19歳の学生。モニクの恋人。書店でアルバイトをして学費を稼いでいる。

マリエット・ジボン Mariette Gibon:部屋貸しをしている女主人。

アルレット Arlette:マリエットの間借人。家の中を平気で裸で歩き回る。クレルモン=フェランからパリに出てきた。

アントワネット・マシェール Antoinette Machère:殉職した巡査の妻。シャトレ劇場の案内係をしている。

テヴナール夫人 Mme Thévenard:留守中に家の食料が食い荒らされたと届け出る。

ユベールHubert:テヴナール夫人の甥。アルベールの学友。

ブランシュ嬢Mlle Blanche:モニクの勤務先の同僚。敵対心を持っている。

ジェフ・シュラメックJef Schrameck:通称「道化師のフレッド」(Fred le Clown)又は軽業師。アルザスのリクヴィール生まれ。普段でも舞台化粧を落としたピエロの顔という印象を与える。スリと窃盗の常習犯。ある春先の宵に目抜き通りのビルの壁をよじ登り、屋根から屋根へ飛び移っての大捕物劇は伝説的であった。

フランソワース・ビドゥ Françoise Bidou:ジェフの愛人。行商の野菜売りの女。

フェルナン Fernand:競馬の元騎手。カフェバー「シェ・フェルナン」を経営。

フェリクスFélix:「ポーカーの切り札」というバーのボーイ。

マルコ Marco:マリエットの愛人。マルセイユ出身。


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