No. 70
Titre
Maigret se trompe
邦題名
(直訳名)
メグレ間違う
執筆記録
Rédaction
米国コネチカット州レイクヴィル、シャドーロック牧場にて
1953年8月完成
Shadow Rock Farm, Lakeville ;
Connecticut, U.S.A: 1953.08
参照原本
Éditions
リーヴル・ド・ポッシュ版 2000年3月刊
Le Livre de Poche #14229; 2000.03
ISBN : 2-253-14229-8
邦訳本 萩野 弘巳・訳、河出書房新社#2、1976.10
河出文庫、2000.09

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リーヴル・ド・ポッシュ版
2000年03月刊のもの
Edition: Livre de Poche
2000.03


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        河出書房新社旧版
           1976年10月刊

物語の季節
Saison
まだ11月なのに部屋に灯をつけている。霧の朝、窓から見下ろすと人
々は背を丸め、両手をコートに入れて足早に歩いて行く。(On n'était qu'
en novembre et pourtant la lampe était allumée.) (Chap.1)
まだ身体が寒さになじまない頃なので、外気の寒さと部屋の暖房の落
差の調節がむずかしい。風邪を引きそうになる気もする。(C'était la
saison de l'année où le contraste est le plus sensible entre le froid du
dehors et la chaleur des maisons.)
メグレの状態
Son état 
もうすぐ勤続35周年になる。50歳代の半ばに至り、体力的な衰えを
隠せないが、女性に執着する高名な老医師の生活行動に戸惑いもす
る。昔なじみの下町ラ・シャペル地区を深夜捜査しながらマール酒を
飲みすぎ、翌日息が酒くさいので遠慮がちに話をする。
事件の発端
Origine
パリの凱旋門のすぐ北側にあるカルノー通りは上品なアパルトマンが
建ち並ぶ閑静な一角である。その一室で若い女性が死んでいるのを
毎朝通ってくる家政婦が見つける。一見ピストル自殺のように思えた
が、武器が見つからないので殺人と思われた。被害者はもともと下町
で街娼をしていたことがわかる。誰かが彼女をこの立派な部屋に住ま
わせていたのか?しかも死体解剖で彼女が妊娠していたことも判明
して・・・
表題の意味
Ça veut dire
メグレが何かを間違えるとすれば、捜査のやり方以外に考えられな
い。本文中には口ぐせのように「もし間違ってなければ…」(Si je ne
me trompe pas, …)という前置きで話を切り出す場面が何度も出てく
る。そうして消去法のように絞り込んで行った末に、半信半疑ながら
もその人間の犯行の線を裏付けようとするが、意外な事実で覆される。
(Quelque chose ne se passait pas comme il l'avait prévu.) (Chap.8)
単なる犯人探しにしては、多くの女たちと関係し続ける高名な医学教
授の私生活の裏面に割り切れないものを残す。

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 (知っていることを明かしたがらない女たち)
(Les femmes qui évitaient de lui révéler tout ce
qu'elles savaient)
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
カルノー通り avenue Carnot, 17e
エトワール広場 place des Étoiles, 17e
ヴォルテール広場 place Voltaire, 11e
2 (労働日と見なす考え)  
(L'idée qu'on se fait d'un jour ouvrable)
ロシュシュアール大通り
boulevard de Rochechouart, 18e
リケ街 rue Riquet, 18e
オルフェーヴル河岸
quai des Orfèvres, 1er
カルノー通り avenue Carnot, 17e
シャルボニエール街
rue de la Charbonnière, 18e
3 (夫の愛人についてかくも冷静に語る女)
(La femme qui parle aussi tranquillement de la
maîtrese de son mari)
カルノー通り avenue Carnot, 17e
オルフェーヴル河岸
quai des Orfèvres, 1er
4 (地下鉄高架のラ・シャペル大通りで毎晩同じような
見慣れた人影)
(Boulevard de La Chapelle, en dessous du métro
aérien, les silhouettes familières à leur place,
les mêmes que toutes les nuits)
オルフェーヴル河岸
quai des Orfèvres, 1er
ラ・シャペル大通り boulevard La Chapelle, 18e
リケ街 rue Riquet, 18e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
グランゾーギュスタン河岸
quai des Grands-Augustins, 6e
5 (彼女の主義として警察に助力しない)
(Un principe chez elle, de ne pas aider la police)
オルフェーヴル河岸
quai des Orfèvres, 1er
ノレ街 rue Nollet, 17e
サン・シュルピス広場
place Saint Sulpice, 6e
6 (微妙な尋問のためにメグレができる限り選んだ時
間帯)
(Un intérrogatoire délicat au moment de la jour-
née que Maigret choisissait autant que possible)
フォブール・サン=ジャック街
rue du Faubourg Saint Jacques, 14e
オルフェーヴル河岸
quai des Orfèvres, 1er
オルロージュ河岸 quai de l'horloge, 1er
カルノー通り avenue Carnot, 17e
7 (犯行に及ぶ具体的な可能性)
(La possibilité matérielle de commettre le crime)
カルノー通り avenue Carnot, 17e  
アカシア街 rue des Acacias, 17e
オルフェーヴル河岸
quai des Orfèvres, 1er
8 (女たちは自分たちの重要性を確かめたがる)
(Les femmes éprouvent le besoin de se sentir
importantes)
オルフェーヴル河岸
quai des Orfèvres, 1er
カルノー通り avenue Carnot, 17e
9 (しょうがないわ、これが真実よ!)
(Tant pis! C'est la verité.)
カルノー通り avenue Carnot, 17e

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設
(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
シェ・レオン
Chez Léon
モンマルトルの丘のふもとの繁華街のカフェ
ロシュシュアール大通り Boulevard de Rochechouart, 18e
グルロ
Grelot
下町の一角にあるミュゼット・クラブ
シャルボニエール街 Rue de la Charbonnière, 18e
ラペルーズ *
Lapérouse
セーヌ左岸にある老舗。サービス・内装ともに華麗。
グラン・ゾーギュスタン河岸 Quai des Grands-Augustins, 6e
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の近くにあるブラッスリ。メグレも常連。
ドーフィヌ広場 Place Dauphine, 1er

警察関係者の動向
Situation de collègue

ジャンヴィエ Janvier : ロシュシュアール大通りのバーから被害者の愛人が電話をかけてきたので調べに行く。この作品では珍しくジャンヴィエの捜査活動を(あとからの報告としてではなく)そのまま刻々と描写している個所がある。

リュカ Lucas : 被害者宅に呼びつけられて電話のそばで待機する。ひまなので被害者の読んでいたロマンス小説を読む。

ラポワント Lapointe : 被害者の愛人の住んでいる安ホテルの前で張り込む。

ポール医師 Dr. Paul : 被害者の司法解剖で妊娠していたことを告げる。

ムルス Moers : 鑑識課員。殺害された女性のアパートに急行して、鑑識作業をする。

デュプー Dupeu : エトワール署の警部。ぼんやりとした霧の朝の雰囲気のやぶにらみの男。高級マンションで死体が発見されて急行するが、どうも他殺と思えるのですぐメグレの自宅に電話してくる。

ジャナン Janin : 18区の刑事。被害者の恋人の青年を捕まえようと付近の聞き込みと捜索を続ける。

ロベー Lober : 警視庁所属のメグレと同年輩の刑事。出世しようとせず、いつも同じ仕事に甘んじている。
事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire

ルイーズ・フィロン Louise Filon : 凱旋門広場のすぐそばの高級マンションで死体となって発見される。まだ若い女で愛妾として囲われていたことがわかる。少し前までは下町でルル(Lulu)という名で娼婦をしていた。

デジレー・ブロー Desiree Brault : ルイーズの部屋の家政婦。毎朝家事をしに通って来る。第一発見者。前科が多いことがわかる。

コルネ夫人 Mme Cornet : カルノー通りの超高級アパルトマンの管理人。なかなかの美人で身の回りのきちんとした女性。

ピエール・エイロー(ピエロ) Pierre Eyraud (Pierrot) : ルイーズの恋人。ミュゼットクラブでサキソフォンの演奏をしている。

ルイ Louis : ピエロの友人。ミュゼットクラブで働くバンド仲間でアコーデオンを弾く。

メラニー Melanie : ミュゼットクラブ「グルロ」の女主人。

エティエンヌ・グーアンEtienne Gouin : 脳外科の世界的権威。コシャン病院のほか高名な病院を受け持つ。休むことを知らず、手術一筋で現在の地位を築き上げたが、多くの女性との関係を持っている。

ジェルメーヌ・グーアン Germaine Gouin : グーアン博士の妻。元看護婦。カルノー通りの超高級アパルトマンの3階に住む。

アントワネット・オリヴィエ Antoinette Olivier : ジェルメーヌの姉。義弟にあたるグーアン医師を嫌悪している。図書館司書。

リュシル・ドゥコー Lucile Decaux : 医師の資格をもつ秘書。グーアン医師の朝から晩まで付き添ってあらゆる手助けをする。

ラウル・マンシュイ Raoul Mansuy : コシャン病院の医師。


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