No. 82
Titre
Maigret aux assises
邦題名
(直訳名)
重罪裁判所のメグレ
執筆記録
Rédaction
スイス、ヴォー県ノランにて1959年11月23日完成
Noland, Vaud, Suisse ; 23, Nov. 1959
参照原本
Éditions
プレス・ドゥ・ラ・シテ社版 1977年2月発行
Presses de la cité #33 ; Fév.1977
ISBN : 2-258-00160-9
邦訳本 小佐井 伸二・訳、河出書房新社、1977.10

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プレス・ドゥ・ラ・シテ社版 
1977年2月刊
Presses de la cité #33
Fév.1977



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          河出書房新社版
           1977年10月刊

物語の季節
Saison
 10月になってパリは雨に濡れていた。その雨もいっこうに止みそうにな
い。(On était en octobre. … dans un Paris noyé sous une pluie qui
semblait ne pas devoir finir; Chap.1er) 
次の日になると太陽がやっと顔を出し、黄ばんできた河岸の木々の葉が
光を反射して朗らかな気分になった。
メグレの状態
Son état 
 メグレは53歳、定年制に従えばあと2年で退職になる。9月の後半から
3週間のバカンスを取ってロワール河岸のなじみの村に滞在し、その間
に老後のための田舎家をオークションで購入したが、庁内の仲間には後
ろめたい気がして黙っている。
事件の発端
Origine
 半年あまり前の2月の末に老婦人が部屋で絞殺される事件が起きた。
一緒に部屋に預かっていた4歳の女の子も窒息死させられていた。匿名
の電話から甥にあたる額縁職人の男がその日の夕方に部屋を訪ねたこ
とがわかり、血のついた背広も戸棚から見つかった。8ヵ月後の10月に裁
判が始まり、捜査に当たったメグレは証言台に立つが、容疑者の逮捕以
後、任意に続けてきた捜査の結果、新たな事実が明らかになったことを
その場で公表して、被告は無罪放免となる。果たして捜査の行方は・・・?
表題の意味
Ça veut dire
Assises(アッシーズ)は重罪裁判所の意味。慣用表現で重罪裁判所送り
になる(envoyé aux assises) などと使う。日本の裁判制度では刑事事件
も地裁や高裁で扱うのと異なり、フランスではこの重罪裁判所で取り扱う
ことになっているようで、陪審員制度もある。メグレにとっては、手がけた事
件が予審判事によって送検され、その後裁判において最終的な結末に
至るわけで、この物語は珍しくその最終局面から始められる。捜査の段階
では警察官と容疑者との一対一のぶつかり合いが生々しく続くが、ここで
はもっと厳粛に、まるで宗教的な儀式のように検察側と弁護側、それを執
り仕切る裁判長との法律用語を駆使した応酬があるのだ。
(Maigret … avait parlé de l'aboutissement de son travail à lui, c'est-à-
dire des Assises, puisque aussi bien c'est là que la plupart des enquêtes
trouvent leur conclusion; Chap.3)

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 (重罪裁判所)  
(La Cour d'Assises)
裁判所大通り boulevard du Palais, 1er
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
マニュエル街rue Manuel, 9e
シャロンヌ大通り boulevard de Charonne, 20e
ロケット街rue de la roquette, 11e
2 (ある意味では補足的な捜査)
(L'enquête en quelque sorte complé-
mentaire)
裁判所大通り boulevard du Palais, 1er
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
シャロンヌ大通り boulevard de Charonne, 20e
ロケット街rue de la roquette, 11e
マニュエル街rue Manuel, 9e
ヴィクトール・マセ街 rue Victor-Massé, 9e
3 (皆が期待している質問を彼女に訊ね
ないこと)
(De ne pas lui poser les questions
que tout le monde attendait)
裁判所大通り boulevard du Palais, 1er
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
シュマン=ヴェール街 rue du Chemin Vert, 11e
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er
4 (失敗した強盗事件)
(Un hold-up raté)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
オデオン広場place de l'Odéon, 6e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e
5 (四階の灯りのついた窓)
(Une fenêtre éclairée du 3e étage)
シャロンヌ大通り boulevard de Charonne, 20e
ロケット街rue de la roquette, 11e
レピュブリック広場 place de la République, 11e
ピガール広場 place Pigalle, 9e
ヴィクトール・マセ街 rue Victor-Massé, 9e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
6 (ユーカリ荘)
(Les Eucalyptus)
シャロンヌ大通り boulevard de Charonne, 20e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 11e
ムッシュ=ル=プランス街 rue Monsieur-le-Prince, 5e
ドゥランブル街 rue Delambre, 14e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
メニルモンタン大通り boulevard Ménilmontant, 20e
フォーブール・サン=タントワーヌ街
rue du faubourg Saint Antoine, 11e
リヨン駅 gare de Lyon, 12e
トゥーロンToulon*
7 (鵞鳥の小母さん) 
(La Mère aux Oies)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
リヨン駅 gare de Lyon, 12e
シェル Chelles* (パリ東方20km)
トゥーロンToulon*
8 (メグレの深い沈黙)
(Le silence dense de Maigret)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
シェル Chelles* (パリ東方20km)

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の近くにあるブラッスリ。メグレも常連。
ドーフィヌ広場 Place Dauphine, 1er
リオン・ホテル(獅子館)
Hôtel du Lion
歓楽街の近くにある安ホテル。
ヴィクトール・マセ街 rue Victor-Massé, 9e
コンカルノー・ホテル
Hôtel de Concarneau
モンパルナス駅付近にある安ホテル。
ドゥランブル街 rue Delambre, 14e

警察関係者の動向
Situation de collègue

ラポワント Lapointe : 公判中に傍聴席で異常な行動をする人間がいないかどうか見張る。被告の妻が弁護士と昼食に行くのを尾行する。

リュカ Lucas : この事件とは別に20区の銀行の支店を襲った二人組の犯人を見つけ、連行してくる。この事件については方々に張り込ませた刑事たちのコントロール役となる。記録庫から古い犯罪記録を探す。

ジャンヴィエ Janvier : 裁判の休廷中にメグレと昼食を取る。被告の家を見張る。

ポール医師 Dr. Paul : 被害者たちの死因を司法解剖でつきとめる。

スグレ Segré : 殺人事件の管内であるパリ9区警察署の警視。

ボンフィスBonfils : 刑事。公判中に傍聴席を見張る。

ヴァシェ Vacher : 刑事。帰宅した被告の家の戸口で夜通し張り込む。

ジュッシュー Jussieu : 刑事。公判中に傍聴席を見張る。帰宅した被告の家の前を夜通し張り込みもする。

バロン Baron : 刑事。ヴァシェに代わって被告を尾行する。

デュプー Dupeu : なかなか優秀な刑事だが、報告が細か過ぎて聞く者をイライラさせる欠点がある。被告の妻を尾行する。

ヌヴー Neveu : ベテラン刑事。長年交通課に所属し、スリや置き引きの担当をしていた。リヨン駅に張り込む。

ブラン Blanc : トゥーロン警察の警視。メグレの昔馴染み。

ル・ゴエネク Le Goënec : 3日前にブレストからトゥーロン警察に着任したばかりの若手刑事。顔が知られていないため札付きの男たちが出入りするペンションへ乗り込む。

グザヴィエ・ベルヌリー Xavier Bernerie :裁判長。人格者で公判の前に書類にていねいに目を通す。

ジュスタン・アイユヴァール Justin Aillevard :検事。

ピエール・デュシェ Pierre Duché : 若手の弁護士。血気にはやる弁論を行なう傾向がある。

ランブラン Lamblin : 弁護士。形勢が不利になりそうな女性の弁護を買って出ることで自分の宣伝効果を狙っている。
事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire

レオンティヌ・ファヴェルジュ Léontine Faverges : 62歳、独り暮らしの老女。田舎から出てパリで結婚したが、早くに夫と死別し、街娼をしながら金を貯め、待合を経営後隠居していた。ある日の夕方、面倒を見ていた女児とともに殺され、蓄えていた金も盗られていることがわかった。

セシル・ペランCécile Perrin : 4歳の女の子。レオンティヌのもとに預けられていたが窒息死させられているのを発見。

ジュリエット・ペランJuliette Perrin : セシルの母親。キャバレーのホステスをしている。

ガストン・ムーランGaston Meurant : レオンティヌの甥。38歳。大柄で赤味がかった金髪で肩幅が広い。青目の赤ら顔。人付き合いの少ないまじめな額縁職人。密告電話がもとでこの殺人事件の被告となった。

ジネット・ムーランGinette Meurant : 容疑者ガストンの妻。10歳年下の28歳。愛想のいい性格で元カフェのウェイトレス。毎晩映画に行く趣味がある。

アルフレッド・ムーランAlfred Meurant : ガストンの兄。セールスの仕事をしていたが長続きせず、南仏のトゥーロンあたりで良からぬ仲間とたむろする。

ソランジュ・ロリス Solange Lorris : レオンティヌの隣に住む洋裁師の女性。

エルニー夫人 Mme Érnie : ロリス夫人のところに洋服合わせに来て、犯人が逃げるのを目撃した近所の女性。

ジェルマン・ロンブラ Germain Lombras : ピアノ教師。額縁の注文に訪れた。

ニコラ・カジュー Nicolas Cajou : 歓楽街に近い安ホテル「獅子館」の管理人。手術のために数ヶ月入院していた。

ジュヌヴィエーヴ・ラヴァンシェ Geneviève Lavancher : 安ホテル「獅子館」の客室係の女。

フレッド・リスカ Freddo Lisca : トゥーロン郊外のペンション「ユーカリ荘」の主人。

ジョゼフィーヌ・ミヤール Joséphine Millard : マルヌ河畔の小屋で鵞鳥を飼っている老女。

ピエール・ミヤール Pierre Millard: 祖母のもとでひっそりと釣りをして暮らす男。


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