No. 86
Titre
Maigret et le client du samedi
邦題名
(直訳名)
メグレと妻を寝取られた男
(メグレと土曜日の客)
Rédaction 1962.02.27; Noland, Échandens, Vaud
Éditions Presses de la cité #37; 1996.10
邦訳本 大友 徳明・訳、河出書房新社#22、1978.03

(←)
プレス・ドゥラ・シテ社版
(黒流フルーヴ・ノワール版)
1996年10月刊のもの
Édition: Presses de la Cité #37
Fleuve Noir
1996.10



                  (⇒)
         河出書房新社旧版
              1978年3月

物語の季節
Saison
 大寒の時期にあたる1月半ば過ぎの頃、どんよりとした曇り空の下で氷
のような細かい雨が降る日が続く。人々は肩をすくめて足早に行き交う。
(目に見えない氷の結晶でできたような細かな雨の中で寒さに身を縮めた。
Dans la pluie fine, comme faite d'invisibles cristaux de glace, le froid
le saisissait.) (Chap.5)
メグレの状態
Son état 
 今やメグレはパリ警視庁の犯罪捜査部長の地位についているが、いつに
なっても昔の刑事時代の張り込みや聞き込み捜査の時代を親しみをこめて
懐しがっている。捜査の大詰めに至って、風邪を引いた感じがするのでグロ
ッグを飲んで暖かく着込んで出かける。
(Il endossait son manteau, n'oubliait pas son écharpe. Il venait de prendre
un grog, car il se sentait toujours à la veille d'une bonne grippe.)
(Chap.7)
事件の発端
Origine
 1月のある土曜日、警視庁内は(一流ホテルを荒らしまわる連続宝石泥
棒の件以外は)緊急の事件もなく、メグレは平日よりも早めに退庁するこ
とにした。
 大時計のところから両替橋を渡って行くうちにふと、自分の後をつけて来
るような男の姿に気づいた。それには大して気にも留めなかったが、自宅に
帰ると夫人から来客が待っていると告げられる。それはいつも土曜日に警
視庁で何度か面会票を出しては会わずに立ち去ってしまう通称「土曜日の
客」の男だった。夕食を尻目にメグレはその男のみじめな身の上話を延々
と聞くはめになったのだった。
題名の意味
Ça veut
Dire
 いつも土曜日にメグレに面会したいと訪ねて来るので、部下たちがその男
のことを「土曜日のお客さん」と呼ぶようになった。
(Toujours le samedi après-midi. De sorte qu'on avait fini par l'appeler le
client du samedi.) (Chap.1)
 こうした悩める人々から親身な態度で話を聞き出すこと、あるいは自分の
仕事とは言えなくても気に留め続けることが、メグレの包容力のある人間性
の表われなのだと言える。

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 (その男はオーバーを着たままで、帽子を手にして
部屋の隅に立っていた)
(L'homme, dans un coin, était resté debout, en
manteau, son chapeau à la main.)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
両替橋 pont aux Changes, 1er  
シャトレ広場 place de Châtelet, 3e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
2 (あなたは2ヵ月ものあいだ、その考えを抱きながら
毎日を過ごしていると…)  
(Depuis deux mois, vous vivez quotidiennement
avec cette pensée…)
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
3 (課税床面積の再測定という漠然とした調査)
(Un vague service pour la réévaluation de la
surface bâtie)
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
アベッス街 rue des Abbesses, 18e
トロゼ街 rue Tholozé, 18e  
テルトル広場 place du Tertre, 18e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
4 (私たちを笑わせるようなことをしているようなふう
だったわ)  
(On aurait pu croire qu'il était en train de nous
faire une bonne farce.)
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
トロゼ街 rue Tholozé, 18e
5 (彼が一日中仕事をした家屋からすぐのアベッス広
場のカフェで)
(Dans un café de la place des Abbesses, à deux
pas d'une maison ou il avait travaillé toute la
journée.)
アベッス広場place des Abbesses, 18e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er  
6 (この書類にサインした男は酒飲みですかね?)
(Le type qui a signé ces papiers boit beaucoup?)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
ルピック街 rue Lepic, 18e (Hotel Beauséjour)
7 (月曜に彼が酒場に来たのは何時だったか?)  
(Quelle heure etait-il, lundi, quand il est arrivé
à la brasserie?)
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard Lenoir, 11e
アベッス広場 place des Abbesses, 18e
ジェルマン・ピロン街 rue Germain-Pilon, 18e
ルピック街 rue Lepic, 18e  
ブランシュ広場 place Blanche, 18e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
トロゼ街 rue Tholozé, 18e
8 (彼女がやれたかやれなかったかは、おれには関
係ないよ)  
(Ce qu'elle a pu faire ou ne pas faire, ne me
regarde pas.)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er


メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
クリヨン・ホテル*
Hôtel Crillon
コンコルド広場に臨む超一流ホテル。
コンコルド広場 10, place de la Concorde, 8e
ガレットの風車*
Moulin de la Galette
モンマルトルの歴史的な社交場、現在は観光レストラン。
ルピック街 Rue Lepic, 18e
バル・デ・コパン
Bals des Copains
一般市民向けのダンスホール。バル・ミュゼット。
トロゼ街 Rue Tholozé, 18e
プラザ・アテネ・ホテル*
Plaza Athénée
シャンゼリゼに近い超一流ホテル。
モンテーニュ通り 25, avenue Montaigne, 8e
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の近くにあるブラッスリ。メグレも常連。
ドーフィヌ広場 Place Dauphine, 1er
ボーセジュール・ホテル
Hôtel Beauséjour
短期滞在者用の安宿、連込み宿にもなっている。
ルピック街 Rue Lepic, 18e
オーボンコワン
Au Bon Coin
モンマルトルの路地裏にあるカフェ・バー。
ジェルマン・ピロン街 Rue Germain-Pilon, 18e


警察関係者の動向
Situation de collègue

リュカ Lucas : メグレの代理で来訪者に用向きをたずねる。失踪した男を乗せたタクシーの運転手を探す。

ジャンヴィエJanvier : 一流ホテルの泊り客を狙って出没する宝石泥棒の警戒のためクリヨン・ホテルに張り込んでいた。ラポワントと一緒にプランションの家の様子を探りに行く。モンマルトルで行方不明になった男の当夜の行動を知る者を片端から聞き込む。

ラポワントLapointe : ジャンヴィエと一緒に課税床面積の再測定という名目でプランションの家の様子を探りに行く。

トーランス Torrence : 日曜日の当直。プラザ・アテネ・ホテルで宝飾品の盗難が発生したことをメグレに報告する。


ピルエ Pirouet : 科学班の職員。譲渡契約書の筆跡鑑定をする。さんづけで呼ばれている。

事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire

レオナール・プランション Leonard Planchon : モンマルトル地区で塗装業を営む兎唇の三十代半ばの男。若い妻と雇った男との裏切りで家の隅に追いやられても何の手も打てず、夜は飲んだくれている。毎土曜日にメグレに相談に来る。

ルネ・プランションRenée Planchon : フランス西部ヴァンデ地方の出身。レオナールの妻。

イザベルIsabelle Planchon : レオナールの一人娘。7歳。

ロジェ・プルーRoger Prou : レオナールの相棒として雇い入れた男。ルネと通じて寝泊りするまでとなり、塗装屋の商売を実際に切り盛りしている。

ジュール・ラヴィッス(ペペール)Jules Lavisse (Pepère) : レオナールの塗装屋の古くからの労働者。

アンジェロ・マッソレッティAngelo Massoletti : レオナールの塗装屋で働く前科のあるコルシカ出身の美男。

アントワネット・ルスール(シルヴィ)Antoinette Lesourd (Sylvie) : モンマルトルの娼婦。本名はアントワネットだが、古臭いのでシルヴィと名乗っている。足はすらりとしているがずん胴である。

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