No. 99
Titre
La folle de Maigret
邦題名
(直訳名)
メグレと老婦人の謎
(メグレの気のふれた女)
執筆記録
Rédaction
ヴォー県エパランジュ; 1970年5月7日完成
Epalinges, Vaud; 1970.05.07
参照原本
Éditions
Livre de Poche; 1999.12
ISBN : 2-253-14214-X
邦訳本 長島 良三・訳、河出書房新社、1978, 1983.07
河出文庫 2001.06

(←)
リーヴル・ド・ポシュ社版
1999年12月刊のもの
Édition: Livre de Poche
1999.12


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        河出書房新社旧版
           1983年07月刊

物語の季節
Saison
5月。木々の緑が太陽の光に輝き、気持ちのいいそよ風が頬をかすめ
る。一年のうちでも最も素晴らしいと誰もが感じる日々。
(On était en mai, le soleil était vibrant et Paris avait des couleurs
pastel. Chap.1er)
メグレの状態
Son état 
メグレの99作目の事件。シムノンの文体は老境を反映して簡明で枯
れた筆致になっている。メグレ夫妻についても、互いを理解しつくした
年を経た中老の夫婦としての時間の過ごし方が描かれている。
初期の捜査では関係者全員がシロの感触で、行き詰まったメグレは些
細な手がかりを追って南仏トゥーロンまで赴く。そこで昔の同僚のマレ
ッラと再会し、協力して捜査を続ける。
事件の発端
Origine
86歳の身なりのきちんとした老婦人が、自分の留守中に家の中が荒さ
れていると警視庁に相談に来るが、適当にあしらわれ相手にされなか
ったので、メグレの退庁時を待ち伏せて直訴する。メグレは数日中の訪
問を約束するが、その前に老婦人は自分の部屋で殺されているのが
発見された。彼女は何年も前から夫を亡くして独り暮らしをしていた。
部屋には昔からの思い出の装飾品がこまごまと置かれていたが、特に
高価な物があるわけでもない。留守中に入り込んで家捜しをしていた人
物の犯行か?何のために、何を探していたのか?身内の関係者は?
表題の意味
Ça veut dire
原題のla folle は直訳すると「頭が変な女」ということになる。必ずしも
病的な異常者を指すだけでなく広い意味で使われていて、突拍子も
ないことを口走ったり行動したりする人、いわゆる奇矯な考えの人に
対しても使っている。パリ警視庁にもそういう人たちがひんぱんに訪れ、
被害に会いそうだとか事件が起きたようだとかを口走ることが多いの
だ。
今回の被害者の老婦人がそういった根も葉もないことをメグレに直接会
って言いたいとやって来たのは自分に注意をひきたいからだろう、と部
下の刑事たちもタカをくくっていて、「メグレ担当の頭の変な老女」と
陰で呼ぶようになっていた。メグレはその老婦人に何もできなかった
ことを悔やむ。(il pensa à la vieille dame que les inspecteurs avaient
déjà baptisée la vieille folle de Maigret; Chap.1er)

各 章 の 表 題 と 場 所
Table de matière et les lieux cités
1 (白い帽子をかぶった灰色の眼の老婦人)
(La vieille dame au chapeau blanc et aux
yeux gris)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
メジッスリ河岸 quai de la Mégisserie, 1er
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 10e
バスティーユ広場 place de la Bastille, 4e
2 (なんとなく気分の悪い感じ)
(Un certain sentiment de malaise)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
メジッスリ河岸 quai de la Mégisserie, 1er
ドーフィヌ広場 place Dauphine, 1er
3 (たまたまスリッパを見つけた男)
(Un homme qui, comme par hasard, y avait
trouvé ses pantoufles)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 10e
バスティーユ広場 place de la Bastille, 4e
サンタンドレ・デザール街
rue Saint-André-des-Arts, 6e
4 (寂しいどころではない葬儀)
(Obsèque qui n'est même pas triste)
バティニョル大通りboulevard des Batignolles, 9e
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 10e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
メジッスリ河岸 quai de la Mégisserie, 1er
モーベール広場 place Maubert, 5e
ブラン・マントー街 rue des Blancs-Manteaux, 4e
モンパルナス墓地 Cimetière du Montparnasse, 14e
サンタンドレ・デザール街
rue Saint-André-des-Arts, 6e
5 (プロヴァンスのワイン)
(Le vin de Provence)
ムフタール街 rue Mouffetard, 5e
サンタンドレ・デザール街
rue Saint-André-des-Arts, 6e
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
トゥーロン Toulon* (南仏の軍港で知られる港町)
6 (国際的なスケールの大きなビジネスのため
の商品見本)
(Une échantillon pour une grosse affaire
d'envergure internationale)
トゥーロン Toulon*
リシャール・ルノワール大通り
boulevard Richard-Lenoir, 10e
サンタンドレ・デザール街
rue Saint-André-des-Arts, 6e
メジッスリ河岸 quai de la Mégisserie, 1er
テュイルリ公園 jardin des Tuileries, 1er
ヴィクトワール広場 place des Victoires, 1er
7 (要するに犯罪者へのタバコ)
(La cigarette du condamné, en somme)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er
8 (もはや言葉は何の役にも立たない)
(Les mots ne servent plus à rien mainte-
nant)
オルフェーヴル河岸 quai des Orfèvres, 1er

メグレ警視の事件に明記された店舗・施設(*印は実在のもの)
Les Bonnes Adresses reconnues du commissaire Maigret
ブラッスリ・ドーフィヌ
Brasserie Dauphine
パリ警視庁の近くにあるブラッスリ。メグレも常連。
ドーフィヌ広場 Place Dauphine, 1er
ボンゴ
Bongo
小さなカフェレストラン。若いミュージシャンの生演奏がある。
モーベール広場 Place Maubert, 5e

警察関係者の動向
Situation de collègue
ラポワント Lapointe : メグレ本人に直接話をしたいという老婦人から代理で話を聞く。その老婦人が殺されたことで自分の判断が間違っていたのかと気に病む。捜査ではメグレに同伴し運転手の役もつとめ、容疑者との訊問にあたっては速記をとる。

リュカ Lucas : 被害者の2番目の夫アントワーヌの勤務先BHVに聞き込みに行く。

ジャンヴィエ Janvier : 被害者の最初の夫カラメの勤務したパリ市役所に情報を聴取に行く。

トーランス Torrence : 当時珍しかったテレビを見るのが好きなので、被害者の家で夜間の張り込みをするのに派遣される。彼が手が空いているときはこうした役が回ってくることが多い。

ルールティLourtie : 夜明かししたトーランスと交代して朝から張り込みにつく。

ジェントンJenton : パリ1区所轄の警察署の警視。事件現場に最初に到着している。

リバールLibart : 予審判事。常識的で穏健な態度でメグレの注文どおりの令状を作成してくれる。

フォルニオーForniaux : 検死医。司法解剖で被害者の死因について報告してくる。

マレッラMarella : メグレと同時期に2年間、パリ警視庁で駆け出しの刑事として働いた。現在は南仏トゥーロン警察署の警視。郊外の自宅に妻と息子とで住む。
事件にかかわる登場人物
Personnages dans l'affaire
レオンティーヌ・アントワーヌ=ド・カラメ Léontine Antoine de Caramé : 86歳の独り住まいの老婦人。子供を思わせるくらいの小柄できちんとした身なりだが、自分の留守中に家の中が荒らされていると、メグレに直接に話したいと警視庁を訪れる。その後まもなくして自宅で殺されているのが見つかる。

ジャン・ド・カラメJean de Caramé : レオンティーヌの最初の夫。今は故人。パリ市役所の役人だった。

ジョゼフ・アントワーヌJoseph Antoine : レオンティーヌの2番目の夫。今は故人。BHVという工具道具一般の大型店に勤めていた。自分で発明品を作る趣味があり、自宅に工作室を持っていた。

アンジェル・ルエットAngèle Louette : 被害者の姪で唯一の身内。肩幅が広く大柄で男のような容貌の不美人な女。40歳代後半に見えるが実際は55歳。マッサージ師。

エミール(ビリー)ルエットEmile (Billy) Louette : アンジェルの息子。25歳。親とは違って小柄でやせており淡青色の目をしている。親元を離れてカフェバーのミュージシャンとして生計を立てている。親子仲は良くない。

マルセル・モントロン(でかいマルセル)Marcel Montrond (Le Grand Marcel) : 35歳。南仏出身のバーテン。アンジェルと同棲している。逮捕歴があり、メグレも見覚えがある。大柄で痩せて骨張っている。

カィユCaille : 被害者のアパルトマンの階下で小鳥屋の店を古くから経営している老人。カイユは日本語で鶉(うずら)の意味。

ボブ Bob : トゥーロンのカフェバー「アミラル」のバーテン。元ボクサーでヤクザたちの間の連絡役。

ペピート・ジョヴァンニ Pepito Giovanni : 南仏の暗黒界のボス。飲食店や映画館を数多く所有。トゥーロンのサナリー岬に広大な邸宅を買い取り、隠棲しているように見える。


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