書評の小箱
ここでは、管理人みもんの読んだオンライン小説を紹介していきます。

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犬の首輪

読了時間……約10分
ジャンル……現代・掌編
原稿用紙換算……15枚
DL版……無
人称……一人称



今回は読み進めるうちにどきりとさせられる、三家原 優人さんの不思議な現代掌編を紹介しよう。

舞台は現代。
会社員の「俺」が主人公だ。出勤した「俺」がある異変に気付き、それの意味を知っていく、そんなストーリーである。

文体は「俺」を中心に展開される一人称。
文章は「俺」の思考を純粋にトレースするように描かれ、地の文に「俺」の思考が混じることもある。そのためであろうか、人物の描写はほとんどないが、物語の内容がそれを気にさせるタイプのものでもないので、すんなり読み進めることが出来た。

一つ難点を挙げるとすれば、犬の首輪の意味するところが分かったその先の展開が、少々読みやすかったところだろうか。その発想の奇想天外さがとても面白かった分、少々残念であった。

下手に書くとネタバレになてしまいそうなので物語の特徴にはこれ以上触れないことにするが、犬の首輪に象徴されている日本人らしいモチーフが、どきりとさせられるこの作品。
読み終わったらあなたも一度自分の首を、鏡で確認してみてはいかがだろうか。2005.4.9


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犬の首輪
http://mikehara.com/novel/sakuhin/37.htm

三家原 優人さんのサイト
LEVEL 3
http://mikehara.com/



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スカートの中

読了時間……約1時間
ジャンル……現代・中編
話数……全2話
原稿用紙換算……45枚
DL版……txt版一括有
人称……三人称
備考……軽い性的描写有



※ 最初に注意しておくが、備考として軽い性的描写を含むとさせて頂いた。ただし、描写自体はほんの僅かであり、作者も言っているように制限をかけるほどのものではない。

さて、今回書評させて頂くのは、題名から人を引きずりこんでしまいそうなインパクトを持った、ひのさんの現代中編。

舞台は現代日本。二十八歳の中学校教師、田上恭平が主人公となる。物語は彼を中心とした三人称で、少し変わりつつも普段どおり流れていく、彼の教師生活の日常を描いていく。

文章は田上の視点から、彼の思考などを織り交ぜつつ述べられている。彼の気分や気持ちをそれを指す単語ではなく、文章の端々から感じさせるような叙述の仕方は、とても上手だと思えた。
文体の特徴としては、先に述べたようなものの他に、必要以外の情景描写が非常に少ない点も上げられる。頭の中にイメージを浮かべながら読むのが好きで、だがそれをするのに多くの情景描写が必要な方は苦手とする文体かもしれない。
また、これは長所にも短所にもならないだろうが、文章に「色」についての描写がとても少ないのも特徴の一つかもしれない。名詞としての色は出てくるが、文章で色を描写している部分はほとんど見当たらない。

ストーリーの展開は、最初はつながらない日常の端々のように読めるが、それが最後の部分で一気に収束していくのが、とても印象的だった。
田上以外の教師たちの性格付けも実際にありそうで、それでありながらステレオタイプにはめただけではなく、リアリティを持たせているのは上手だと感じた。ただ、生徒の一人、白木の行動は、中学生でもそこまで変わり身は早いだろうか、と感じたり、少々理解しずらい部分もある。

多くはないが、丁寧な描写。そしてストーリー展開の上手さ。題名のつけ方も秀逸で、どのようなストーリーか気になる方も多いだろう。気になった方には、是非読んでいただきたい作品だ。2005.3.25


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スカートの中
http://tpot.jp/~sugarless/novels/tanpen/suka-to1.html

ひのさんのサイト
Sugarless
http://tpot.jp/~sugarless/



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幻のバイ・ビー・ハニー!

読了時間……約2時間
ジャンル……ファンタジー・中編
話数……全15話
原稿用紙換算……約150枚
DL版……無
人称……三人称



書評は今回で二度目となる、神秋昌史さんのファンタジー中編。
今回もコメディではあるが、「IF 夢物語第一話 白」より文体のクセがなくなり、より万人に勧められる内容となった気がする。

さて、この物語は、中世あたりの時代をベースとした異世界で、宮廷菓子職人を目指す三人の元傭兵たちの物語である。菓子職人を目指す、というところから、菓子作りが中心となると思われる方もいるかもしれないが、この作品は菓子作りの一つ前の段階、材料集めが中心となっている。
この世界に住む巨大蜂、バイ・ビーの蜜を取るのが、三人組の目的である。

文体は三人組の一人、弓使いの女性・レイリーを中心に据えた三人称で、かなり柔らかい部類に入るだろう。地の文の一部には、通常なら会話文で使われそうな接続語などが入り、堅い文体が好きな方はひっかかることも多いと思われる。
ただ、そのコミカルな文体はコメディには向いていると感じるのも事実だ。

また、文中には、お調子者の魔術師・フィリガルが調子に乗って話し、糸目の戦士・マイクとレイリーがそれにつっこむ掛け合いが随所にある。
どうしても脱線気味になる掛け合いを、上手にストーリーにそって展開させているのは評価できるところだろう。

また、物語の前半部分の展開は、正直少々長く感じ、もう少し短くしてしまってもいい気がした。
逆に後半部分、特にNo13話以降は、適度な速度の物語の展開や読者を楽しませる要素、表現の適度さから見て、とてもよく出来ていると感じた。
バイ・ビーとの死闘を「読んで」体験した事からくる、ドキドキ感がたまらない。途中で読者が当然感じる疑問点もしっかりと回収し回答を与え、後味もすっきりだ。

今後は続編も書かれる予定の同作、私個人としてはは「IF 夢物語第一話 白」より更に推したい一作だ。2005.3.25



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幻のバイ・ビー・ハニー!
http://yume-kami.com/sykhp/novels/bbh/bbh_top.html


神秋昌史さんのサイト
ゆめかみ!
http://yume-kami.com/



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王子様の花嫁

読了時間……約1時間(6話現在)
ジャンル……異世界転送ファンタジー・長編
原稿用紙換算……約72枚
話数……6話(2005年3月現在)
DL版……無
人称……3人称



ClubA&Cでお世話になっている、メェさんの異世界ファンタジー。少々変わった連載形式のために更新頻度はあまり高くないので、読む側もゆったり構えて行くといいだろう。

文体は、ヒロインの一ノ瀬 ゆかり(いちのせ ゆかり)と、魔法使いのギィを中心にすえた三人称。情景をイメージさせる要となる表現が上手く選ばれ、簡潔・平易で読み進めやすい。難を述べるなら、やや戦闘シーンが脳裏に浮かびにくいところだろうか。だが、これは物語の中心部分ではないので大きな欠点とは言えないだろう。

さて、この作品は、現代日本の専門学校生であるゆかりが、付き合ってきた彼氏に振られるシーンから始まる。打ちのめされたゆかりが地下鉄から降りて改札に向かう途中、突然目の前に、魔法使いだと名乗る青年が現れる。彼は、異世界からゆかりを自国の王子の花嫁として迎えに来たと告げ――
悲劇的な展開から異世界へと連れて行かれる、という流れは王道かもしれないが、この作品には他にも特徴がある。

その一つが、読者とゆかりが、それぞれ『騙されて』しまうところだろう。伏線がいくつも巡らされており、ゆかりは知っているが読者には明確に示されない伏線、逆に読者には分かっていながらゆかりは気付いていない伏線などがあり、推理し、にやにやしながら読むことが出来る。
ネタバレになるので内容は述べないが、ゆかりがいつ『気付く』のかが楽しみなところだ。

また、私があまり同ジャンルの作品を読まないせいかもしれないが、続きの展開が読みづらいというのも、読者をわくわくさせてくれる要素の一つだろう。実際、話が進むに従って、加速度的に読むのが楽しくなってくる。何がそうさせるのかは分からないが、その読ませる力は中々のものである。

ただ、少し文体の話ともかぶるが、会話文などには少々少女向けかと感じる部分もあり、苦手な方もいるかもしれない。しかし、そのほのぼのとした世界が気に入れば、ハマってしまうだろう。

そのほんわりとした世界とにやにやできる展開。今後も楽しみな作品だ。2005.3.20



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王子様の花嫁
http://mellow.sakura.ne.jp/ouji/html/love.html

メェさんのサイト
王子様の花嫁
http://mellow.sakura.ne.jp/ouji/index.html



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この雨があがる頃には

読了時間……約40分
ジャンル……現代恋愛・中編
話数……全3話
DL版……無
人称……三人称



夏目瀬里奈さんの『名古屋偏見』小説。在住者の方は更に楽しむことが出来るかもしれない。

主人公は、30代を目前に控えたキャリアウーマン、岩野みつき。ウエディングプランナーとして仕事をこなす彼女のお見合いが、この作品の中心となる。
ただの『お見合いとその後』の話だけにせず、名古屋というみつきの出身と、後に出てくる魔法についての要素が加えられているのがこの作品の特徴だ。

文体は、少し柔らかめかもしれないが、かなり癖のない、みつきを中心とした三人称。
情景描写も心理描写も適度に入れられ、読みやすいと感じた。文体が合わない、という読者はあまりいないのではないだろうか。

展開は、少々ネタバレになるが、魔法使いについての部分は夢があるようでない、だがやっぱり少しだけある、という感じで、その加減がちょうどいいと感じた。

ただ、全体的に少女漫画のような風味もあるので、展開が苦手な方もいるかもしれない。みつきも見合い相手の山田洋平も、少し年齢にそぐわない言動があるようにも見受けられた。

最後になるが、この作品『名古屋偏見小説』となる、名古屋文化の紹介について。
見受けられるのはほとんどが冒頭の部分や、みつきの家族の口調などである。
実際に名古屋に住んだことのある方は、こんな風ではない、と思われるかもしれない。しかし、これは偏見というよりは、他県の方の抱く標準的な名古屋像であるので、このように見られているのか、と思いつつ読んで頂きたい。

名古屋偏見、という珍しい修飾が付くが、それを抜きにしても、最後はほんのりと温まれる小説だ。名古屋在住者はより楽しめるかもしれない。2005.3.3



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この雨があがる頃には
http://www.geocities.jp/natsume_poppo/event/magician.html

夏目 瀬里奈さんのサイト
ぽぷりねっと。
http://www.geocities.jp/natsume_poppo/



--この作品への雁乃さんの感想--


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世界が廻るスピードで

読了時間……約45分
ジャンル……現代恋愛・中編
話数……全2話
DL版……無
人称……一人称



クロスレビュー企画に作品提供してくださった、常葉あいさんの現代恋愛小説。

主人公は、女子高生の吉川真由(よしかわ まゆ)。援助交際をしている、ということ以外は、ほぼ普通の女子高生である彼女が、ある日通学電車で痴漢に遭い、クラスメイトの高橋裕也(たかはし ゆうや)に助けられるところから、物語は展開していく。

文体は全体的にシンプルで、真由の一人称で進められる。比喩などは少なめだが、会話文も地の文も読み進めやすく、リアルさが印象に残った。必要以上に飾らないこの文体は、置かれている環境などが推察しやすい現代モノに合うのではないかと感じた。

ただ、文体がとても感情移入しやすい反面、全体的な展開が少し出来すぎているのでは、と感じてしまい、物語への感情移入から離れてしまうこともあった。この辺りは、好みで分かれるところだろう。

少々ネタバレになるが、「今がよければそれで良いジャン」という考えが主人公の真由の中にはあり、それで周りから見れば自暴自棄とも見える援助交際をしたり、共にいても楽しくない学校の友人ともあまり付き合わない。
そんな彼女が最後にはその自説を曲げず? しかし、読者にとってもも好印象な結論を出すのが、とても上手だと感じた。

物語の中ではクリスマスと、少々時期としてはずれてしまったが、まだ寒い中、最後の展開はきっとあなたの心をじんわり温めてくれるだろう。2005.2.21


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世界が廻るスピードで
http://www.ne.jp/asahi/ayi/lav/sky/speed1.html

常葉あいさんのサイト
青い空の片隅で
http://www.ne.jp/asahi/ayi/lav/sky/index.html

--この作品への雁乃さんの感想--


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自意識的汚生物

読了時間……約1時間
ジャンル……現代・中編
話数……全8話
DL版……一括有(lzh圧縮txt)
人称……一人称



さて、今回はA&Cクロスレビュー企画に作品提供してくださった、伏河 竹比呂さんの、誰でも一度は考えたことがある、と思えるテーマを扱った中編作品。

舞台は現代日本。物語は、高校生の酒井 裕基(さかい ゆうき)の一人称でつづられる。自ら「普通」でありたいと願う彼が、毎日学校からの帰り際に、夕日をずっと見つめている彼から見れば「異常」な少女、斉木 由(さいき ゆい)と出会うところから物語は始まる。

文体は、同じく伏河さん作の「スリィピィシィズ」と同じく、改行が非常に多いのが特徴的だ。そのときにも書いたが、文が一定の間隔をおかず、一部ではウィンドウのほとんどが空白になってしまうこの文体は、読者を選ぶところがあるといえるだろう。

さて、作品の感想に入るが、全体で扱われている「普通」と「異常」。裕基は、「普通」を「よいこと」と考えており、周囲もそうだと認識し、自分から見ると「異常」である由を非難する。しかし、由の切り返しも鋭く、「何がおかしくて何が普通かも分からないくせに、自分を非難するのか」という一文などには、はっとさせられる。

少し残念だったのは、裕基の行動の説明が不足気味だと感じたところだろうか。由との会話などで、このようなことを言われて、どうしてこういう反応を返すのだろう、という部分がいくつか見受けられた。
感情移入をする登場人物だったので、この部分で移入から戻されるのは少し辛い。

また、終わり方も少々唐突で、あれ、ここで!? と思ってしまった。しかし、ではどこで終わらせるのがいいのか、と考えて見ると、この部分での終わり方も悪くはないと思える。ここは作者も苦渋の選択だったのではないだろうか。

扱ってあるテーマが誰しも一度は考えるであろう身近なテーマであることもあり、ああ、このような感覚、わかる、とうなずきながら読むことが出来るであろう作品だ。長く感じても意外とすんなり読めてしまうので、いかがだろうか。2005.2.21


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自意識的汚生物
http://hstk.nobody.jp/g/index.html

伏河竹比呂さんのサイト
TexT――ティー・エクス・ティー
http://hstk.nobody.jp/



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つれづれなるままに。

読了時間……5分前後(一話)
ジャンル……現代日常・掌編シリーズ
話数……12話(2005年2月6日現在)
DL版……無



今回紹介するのは、ClubA&C繋がりでお世話になっている、夏目瀬里奈さんの、ほのぼの夫婦モノ掌編シリーズ。ひのさん作の「僕たちの日常」並みの甘さなので、最初に注意をしておく。

本作品は、結婚二年目の夫婦、出不精で専業主婦な「私(妻)」と、全体的にあまり気の利かない「夫」の日常を描いた、掌編作品集である。1話ずつ、どれから読んでも楽しめるようになっているので、好きな作品から読んでいくといいだろう。短すぎず長すぎず、さらりと読める長さなので、少し時間の出来た時に読むのにちょうどいい。

さて、作品の内容に入るが、大抵の作品は本当に「日常」を切り取った形になっていて、夫婦なら誰もが体験しそうな内容であり、とてもリアルだ。作品の大部分は、「私」の思考と情景の描写に占められている。この情景の描写が言葉を選んで書かれており、丁寧な描き方に好感がもてた。

ただ、日常を切り取った、ということで劇的なストーリー展開に欠け、そのようなものを期待して読むと拍子抜けさせられてしまうかもしれない。逆に、ハラハラドキドキというものがない分、安心して読み進めることが出来る、というのは利点だろう。

もう一つ難点を挙げるとすれば、過去と現在の描写が、時々把握できないことがあることだろうか。一部作品ではあったが(『師、走る そして睦むとき』など)現在と過去が交互に入れ替わっているのか、それともずっと過去なのか、というのが少し分かりずらい部分があった。

全体を通して流れている優しく暖かな雰囲気と、新婚二年目の、少しそっけないようで、それでも甘々の日常。少し時間の空いたときに一作、いかがだろうか。2005.2.7


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つれづれなるままに。
http://www.geocities.jp/natsume_poppo/turedure/turedure_top.html

夏目瀬里奈さんのサイト
ぽぷりねっと。
http://www.geocities.jp/natsume_poppo/

--この作品へのずうやぎさんの感想--


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IF 夢物語第一話 白

読了時間……約2時間(原稿用紙約150枚)
ジャンル……メルヘンファンタジックコメディ・中編
話数……全30話
DL版……一括有(lzh圧縮txt)



独特のギャグセンスをお持ちの、神秋昌史さんのファンタジック・コメディ。おとぎ話のリメイク版、ともいえるが、内容的には別物である。
ちなみに「IF 夢物語」には、この「白」の他にもいくつかそれぞれで独立した作品がある。それぞれで完結しているようなので、他の作品から読み始めるのもいいだろう。

さて、作品そのものの前に、ページの設定についてなのだが、一話戻る、目次に戻る、などがついていないため、少し不便だと感じた。

さて、作品の紹介に移ろう。
この作品は、童話「白雪姫」の世界をベースに、それを毒りんごをもっていく魔女、ルージュの視点から描いたものである。彼女は仲間の魔女に依頼され、白雪姫に毒りんごを食べさせるために、りんご売りの格好で彼女が住んでいる森へ行くのだが、その森で思わぬアクシデントに遭遇する――というストーリー。

文体は、ストレートに笑いに導くように作者のツッコミなどが随所に見られ、文字を追っているだけで笑いがこみ上げてくる、そんな文章である。状況を文章から読みとって、自分でつっこむ、というよりは、文章の中で繰り広げられるコントを眺めるのに近い。
私はこのような文体も好きだが、ある程度アクが強いともいえるので、ここは好みが分かれるところかもしれない。

難点といえば、人の心を捨てた、とされている魔女のルージュが、意外とすんなり人の情にほだされてしまったところだろうか。ラスト付近になるが、読んでいる側としては少し長くなってもいいので、もう少し心の描写が欲しかったところだ。

あとがきで作者は一部だらだらになってしまった部分があったと書いていたが、私から見るとそのような部分はなかったように思える。
確かに展開としては進んでいない部分もあったが、そこも笑いが随所に散りばめられていて、飽きずに読み進められた。

「神秋節」ともいえる独特の文章に、最後のオチまで楽しく読むことが出来る良作であった。最近笑いが足りない、と思ったときには是非読んでみて欲しい。2005.2.8


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IF 夢物語
http://yume-kami.com/sykhp/novels/ifd/siro_tyoku.html

神秋昌史さんのサイト
ゆめかみ!
http://yume-kami.com/

--この作品への雁乃さんの感想--


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魔王更正委員会

読了時間……約3時間(原稿用紙294枚)
ジャンル……現代ファンタジー・長編
話数……全八話54ページ
DL版……一括有



初投稿ながらえんため大賞の一次選考を通過した、三紀藍生さんの現代ファンタジー。ボリュームの割にさらっと読めてしまったのが印象的だ。

舞台は現代日本。ごく普通の高校に通う女子高生、三原 直樹(みはら なおき)が主人公である。物語は主に直樹と、後に出てくる黒猫(の姿をした魔物)タンゴの一人称で展開される。文体はとても読みやすいリズムで、更に作者独特の言い回しが随所に散りばめられている。

序盤の序盤、前提となる粗筋は、直樹が偶然盗み見ることになった父の日記には、間近に迫ったクリスマスの日に魔王を復活させる、という内容が記されており、それだけならまだしも、日記によればその魔王の現在の姿は、クラスメイトの千歳彰良(ちとせ あきよし)だというのだった――というもの。最初は父の日記だけだった異変が、段々と彰良の周りをうろつく怪しい集団、魔王に会おうとやってくる黒猫のタンゴなどが現れ、広がっていく。

さて、細かい点で恐縮なのだが、文体がしっかりとしている分、私は直樹の父への呼び名が、正に「父」だったのが少し気になってしまった。特に背景もないようなので、直接呼ぶときなどは「お父さん」などにしておいたほうがすんなり感情移入できるのではないだろうか。

また、先が読めない序盤の展開はとても良かったのだが、最後の部分は終わり方がなんとなく予測できてしまった。それでも、充分私としては好印象な終わり方ではあったが、不満を持つ読者もいるかもしれない。

ともあれ、細かい点は抜きにして、さすがに一次通過をしただけはある、と納得させられるこの作品。良質な読み心地なので、是非読んでもらいたい。2005.2.5


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魔王更正委員会
http://www.geocities.co.jp/Bookend/1200/soda/mao/index.html

三紀藍生さんのサイト
天河砂粒-Sodadrop-
http://www.geocities.co.jp/Bookend/1200/soda/index.html



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