書評の小箱
ここでは、管理人みもんの読んだオンライン小説を紹介していきます。

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賞味期限

読了時間……約5分
ジャンル……現代不思議・掌編
原稿用紙換算……4枚
DL版……無
人称……一人称



伏線らしいものがほとんどなく、最後の最後のオチで驚かされる。三家原 優人さんの現代掌編。「犬の首輪」に似ている気もするが、衝撃ならばこちらの方が上だろう。また受ける印象も全く違う。

舞台は現代日本。『僕』と『彼女』の二人の、ある一日を切り取った作品だ。なぜか賞味期限切れのものばかり入れてある『僕』の冷蔵庫に憤る『彼女』だが――責める『彼女』に、弱腰で抗弁する『僕』。普段の二人の関係が覗われる冒頭のシーンもまた読んでいて楽しいが、この作品の核はやはり、最後のシーンだと私は思う。そこは、読んでみてのお楽しみだ。

文体は『僕』の一人称。弱腰な彼、という印象が私の中で出来てしまっているせいかもしれないが、二度目からは読んでみると文章全体からも、どこか気の弱そうな印象を受ける。それを反映して、文体はやや柔らかめだ。

今後『彼女』と『僕』がどうなってしまうのか、非常に気になる終わり方。また作者の一部の他作品からも感じる、異物への違和感、空恐ろしい印象も受けることだろう。ラストを予想しつつ読むのも、また楽しいかもしれない。2005.4.28



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賞味期限
http://mikehara.com/novel/sakuhin/15.html

三家原 優人さんのサイト
LEVEL 3
http://mikehara.com/



過去の書評
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最果ての二人

読了時間……約1時間30分
ジャンル……異世界ファンタジー・中編
話数……7話
原稿用紙換算……160枚
DL版……一括txt版lzh形式圧縮有
人称……3人称



小説を紹介させていただくのは今回で三作目となる、神秋 昌史さんの異世界ファンタジー。他の2作に較べるとインパクトは強いが、やや王道よりの展開だろうか。

舞台は中世ファンタジー世界。ダルワナ大陸の東方、サオラニーンに住む魔法使い、ゼイル=ラッキンダムと西方ウェルドアに住む魔女、ミレッタ=バルリードの二人が主人公だ。魔術の才能が秀で過ぎた彼らは、自分以上の天才が現れないのを、不満に思い始めていた。なんとも贅沢な悩みを抱える二人が、同時にあることを思いつき――という物語。

文体は、これまで書評させていただいた2作、「IF 夢物語第一話 白」と「幻のバイ・ビー・ハニー!」よりはやや硬め。それでもコミカルな雰囲気には丁度良い柔らかさであると言えよう。作者の独特なクセはかなり抜けており、文体自体が苦手、という方はまずいないのではないだろうか。

ただ、会話文には作者の持ち味である(と私は思っている)、独特のノリが存在し、そのノリに困惑してしまう方もいるかもしれない。ただ、このノリを地の文からも、会話文からも排してしまったとしたら、ひどく「普通」な、悪く言えば個性の感じられない文章になってしまうだろう。私はこの文章くらいが、読者層を広げつつ作者の個性を残すギリギリのラインではないかと感じた。

さて、展開についてであるが、この作品は展開上、同じような状況に置かれた二組の行動を描いていく事になる。自然と同じような展開の繰り返しになりそうではあるが、そこを上手に、同じ展開が被らないようにしてある配慮が覗える。
ただ、その分少しでも似たような展開があるとそこが目立ってしまい、苦痛に感じられてしまう。

キャラクターについても少し言及しよう。
彼ら二人の魔法使いには互いに猫とレイヴンというカラスのような生き物の使い魔がいるが、彼らはその人格付けと物語の登場人物の少なさも相まって、非常に誰が誰なのか認識しやすい。心配性のライバと冷静なシルキアと、彼らと主人の掛け合いも、彼ら使い魔同士の会話もどちらも楽しめるから不思議なものだ。

ある意味最後の展開はなるべくしてなるものであろうが、そこまでの紆余曲折は先を読ませない。今回の作品も「もしも」なエンターテイメント性に溢れた作品だ。2005.4.24



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最果ての二人
http://yume-kami.com/sykhp/novels/sh/sh_top.html

神秋 昌史さんのサイト
ゆめかみ!
http://yume-kami.com/



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魔女の冒険

読了時間……約四時間
ジャンル……異世界転送ファンタジー・長編
話数……全4章・62話(完結)
原稿用紙換算……約650枚
DL版……2章までtxt形式lzh圧縮・HTML形式lzh圧縮有
人称……三人称



はまった。引き込まれる速度はスロースタートだが、ぐんぐん加速度的に面白くなる、相沢 秋乃さんの異世界転送ファンタジー。超長編であるが、本当に逃げずに読んでもらいたい。

舞台は魔女や魔法使い、魔物が存在する、中世的な異世界。だがただ単にステレオタイプなファンタジー世界ではなく、人格を持ち、魔力の結晶を動力源とする魔女のホウキ、体に描かれた紋様、光、血筋などを触媒とするいくつもの魔法など、作者のオリジナリティが随所に見受けられる。
さて、主人公となるのはエスメラルダ大学校国の生徒であるラセミスタと、新しくラセミスタの部屋に引っ越してきた魔女マリアラ、ラセミスタの『兄』のフェルドだ。物語を追って行くうちに、登場人物の総数は15名を超えるが、少しずつ登場するのと、個性付けがはっきりしているせいだろうか、混乱はしない。

物語はラセミスタが実験中だった、異世界への扉を開ける装置が暴走したことから始まる。暴走した装置にマリアラとフェルド、そしてラセミスタが飲み込まれ、見た事もない異世界へ転送されてしまう。そこでラセミスタとマリアラの二人は死にかけた二人の子供に会い、フェルドは気付いた時には牢の中に入れられていて――という展開だ。

文体は三人称。完全な三人称というよりは、少し登場人物よりの語り口ではないだろうか。文章自体は全く問題なく読みやすいのだが、その視点が結構頻繁に入れ替わるので戸惑うことがある。

さて、あまり魅力を紹介しきれていないのだが、ここで私が、この作品のここが好きだ、という点を語らせてもらおう。
私がとても読んでいて気持ち良かったのは、駆け引き、である。
具体的には三章第二節のあたりだが、この部分の駆け引きの描写が、各人の視点の切り替え(ここでは混乱することはなかった)の適度さ、思考の描写の分かりやすさと相まって、本当に楽しいのだ。正に痛快。
スクロールをする手が止まらず、「うわー、うわー」と声を上げてしまいそうなほどであった。

無論最後の幕引きも、伏線や気になる点を上手く回収できている。私の個人的な評価ではあるが、全体を振り返ってみると、1章2章はマル、3章から後が三重マルで総合評価も三重丸である。

本当に、この面白さを的確に表現出来る技量が欲しいのであるが、残念ながら今の私には足りないようである。ただ言えるのは、1,2章があまり面白いと感じなくても、最後まで是非読んでもらいたいということである。作品に投げるようで申し訳ないが、読めば、私の言わんとするところが分かってもらえるだろう。
ちなみにこの作品は、「魔女の遍歴」シリーズの三作目となる。面白いと感じた方は他の作品も読んでみるといいだろう。2005.4.26



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魔女の冒険
http://akitaro.moo.jp/ura/shousetu/esmeralda/esmeraldayou.htm

相沢 秋乃さんのサイト
天上捜索
http://akitaro.moo.jp/index.htm



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モモの魔法

読了時間……約10分
ジャンル……現代・掌編
原稿用紙換算……9枚
DL版……無
人称……一人称



幸せってなんだろう。モモの率直な健気さに温められつつ、そんな思いが浮かんできた筒井 ツグさんの現代掌編。大人にも子供にもオススメ出来る、素朴な物語だ。

それでは作品の内容に入ろう。
作品舞台は現代日本。マンションに体の弱い妹のモモと住む『私』とモモ、そして私が雑貨屋で見つけた『幸福の水』にまつわる物語だ。ちなみに『幸福の水』自体には恐らく魔法の効果はない。魔法を持っているのは水ではないと私は感じた。

文体は全体的に柔らかく、所々には会話文に非常に近い語句が出てきたりもする。この辺りは柔らかすぎる、と不自然に感じてしまう方もいるかもしれない。私はもう少し固い方がいいと感じた。
ただ、この柔らかさが物語全体の優しいイメージの構築に役立っているのも、また事実だろう。

この作品の魅力を一つ述べるなら、私は迷わず「モモの素直な優しさ」をあげる。子供らしい少し変わった、だがとても純粋な言動には『私』同様に自分の矮小さを痛感させられ、こちらもその優しさに自分の固まった幸せの観点を解きほぐされる。
まさにこの優しさが、『モモの魔法』である。

僅かな違和感はあっても、是非読んでもらいたい作品。自分が今不幸だと感じている方も、幸せだと感じている方も、きっと温かな気分にさせてくれることだろう。2005.4.18



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モモの魔法
http://www.ii.e-mansion.com/~tugu/ss/momo.html

筒井 ツグさんのサイト
Story no Page
http://www.ii.e-mansion.com/~tugu/



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小説を書く人

読了時間……約15分
ジャンル……現代・掌編
原稿用紙換算……17枚
DL版……無
人称……一人称



もしも、願いを一つ叶えてもらえるとしたら――? 不思議な世界と最後の思いがけない展開に驚かされる、遠来 雲雀さんの現代掌編。

舞台は現代日本。受験勉強真っ只中の少女の目の前に、神の使いと名乗る少女が現れる。彼女は、人に迷惑をかけない範囲で、一つだけ願いを叶えてくれる、と言うが――というストーリー。ここで、彼女が小説を書いている、というのがキーになる。

文体は柔らかめ。女子高生らしい、素直な、そしてやや冷めた思考がよく作品とマッチしていると言えるだろう。人物の描写も、若い女の子らしい部分を見ていると思える。ただ、文頭や感嘆符の後の一字空け、三点リーダは二つで一セットなどの文章作法については守られていない部分があり、気になる方もいるかもしれない。ページ自体については、適度な文字色・サイズにテーブルによる幅指定と、非常に読みやすく仕上がっている。

ネタバレになるかもしれないが、彼女の願いは小説を書いている人間ならば、一度は体験してみたいと思うだろうもので、物語を書いている方には特に読んでもらいたいと思えた。

そして最後の展開がまた面白い。
私自身がそうでないと言い切ることは出来ない種類のもので、どこか空恐ろしさを感じさせる展開だ。最後の最後まではそうだと気付かせない、物語の運び方も上手だと思える。

小説作者の方には是非読んでもらいたい今作。
あなたの前にも、いつか見知らぬ少女が現れるかもしれない。2005.4.24



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小説を書く人
http://citron8.nobody.jp/t2.html

遠来 雲雀さんのサイト
citron8
http://citron8.nobody.jp/



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ラベンダーキャンドル

読了時間……約20分
ジャンル……現代恋愛・短編
話数……3話
原稿用紙換算……14枚
DL版……無
人称……一人称



始まりは暗く、どんよりとした気分になるものの、読後の期待感は清々しい、黒曜さんの短編恋愛小説。私は恋愛要素はそれほど強くはないと感じたので、恋愛小説に興味のない方にも読んでもらいたいと思う作品だ。

舞台は現代日本。失恋して半年、未だに立ち直れず日々ラベンダーのアロマキャンドルで心を癒す、大学生の女性が主人公の物語だ。
ネットの失恋掲示板で他人の失恋経験を見るのが日課となった彼女が、ふと恋愛したい人の集まる掲示板を覗くところから、物語が展開していく。

文体はやや柔らかめ。主人公の行動と思考が自然に交差されて構成され、彼女の意識の流れが掴みやすい。的確な数値的な情景描写は少ないが、イメージとして情景を思い浮かべる事はしやすい。特に文体にひっかかる方は少ないのではないだろうか。

さて、最初の一話だけを読むと、全体的に暗い話なのかな、と思わされたが、最終話の雰囲気の切り替え方は上手だと思えた。読み終わってから考えると少し王道的な展開かな、とも思えるが、読んでいる最中にはそのような考えは浮かんでこない。
ただ、物語の切り替え部分とも思える、展望台のシーンの描写が少なく、肝心な部分での感情移入がややしずらい。もう少しこの部分を描きこむとより物語に入り込めるだろう。

また、一話から段々と、彼女の心の変化につれて垣間見えてくる、素直な気持ちの描写。三話目に特に多いが、段落の終わりに配されるその描写が、私にはとても快く感じられた。

悪意から始まり、善意で閉じられる最後の幕引きも、未知ではあるものの明るい未来を予感させる引き方で好感が持てる。新生活の始まりにぴったりな作品だ。序盤の重さにめげずに最後まで読んでもらいたい。2005.4.24



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ラベンダーキャンドル
http://www.geocities.jp/miyuki_shenxue/novel/lavender/lavender1.html

黒曜 深雪さんのサイト
勿忘草
http://www.geocities.jp/miyuki_shenxue/index3.html



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七月の雪は

読了時間……約15分
ジャンル……現代・短編
原稿用紙換算……20枚
DL版……無
人称……一人称



童話との絡ませ方が印象的な、香澄 翔さんの現代短編。読み易さは残しつつ、読み終わった後には主人公と共に考え込ませる、そんな作品だ。

舞台は現代日本。難病にかかった唯とその兄、拓哉が主な登場人物だ。
病院で闘病生活を続ける唯と、見舞いに来る拓哉。その病室のシーンと、あるおとぎ話が交錯し、物語を構成する。おとぎ話に見覚えのある方はいないだろうが、その理由にはほろりとさせられた。

文体は主人公である拓哉の一人称で、彼くらいの年齢に相応しい文章だ。
会話文、特に最後の部分あたりには不思議な力があり、物語の中に否応なく引き込まれる。地の文は箇所によって句読点が多かったり少なかったりするが、それが却って文章の強弱のメリハリをつけており、そこが読みやすさにつながっているのかもしれない。

ただ、非常に細かい点ではあるのだが、物語の最後の最後、その一文がそれまでとは僅かに違う文体なのが私にはひっかかってしまった。拓哉の純粋な気持ちの表現かもしれないが、そのままの文体のほうがいい方と、評価が分かれるかもしれない。

全体に漂う儚げなイメージと、後半の切ない雰囲気。七月の雪は、という題名も作品によくマッチしている。夏でも冬でもないこの季節ではあるが、読んでみてはいかがだろうか。2005.4.18



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七月の雪は
http://homepage3.nifty.com/kasumi-syou/snow.html

香澄 翔さんのサイト
香澄 翔の楽しいお部屋
http://homepage3.nifty.com/kasumi-syou/

--この作品へのずうやぎさんの感想--


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まいご

読了時間……約3分
ジャンル……現代・掌編
原稿用紙換算……約3枚
DL版……無
人称……一人称



いかにカンのいい方でも、恐らく途中までは彼がどんな「まいご」なのかは気付けないのではないだろうか。非常に短いが、その短さを上手く生かしていると思える、朝希 萌さんの作品。

舞台は現代。恐らくヨーロッパ。ある場所で発見された「まいご」の子供を語り手に、彼の問いかけが文章の主体を成す掌編だ。
子供らしい全てに問いかける姿勢などが、上手に表現できていると思える。

最初は普通の、途中からは明らかに疑問に思いつつもその意味が分からず。そして最後にはやっと意味を理解し、驚かされると同時になんとも哀しい気持ちになる。作者の意図がそのようなものであるなら、この作品はそれを見事に達成出来ていると私は思えた。文章の量もこのくらいが丁度よく、とても上手にまとめられていると思える。

短いものの、読む時間分の価値は十二分にあると言える。是非読んでもらいたい一作だ。2005.4.16



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まいご
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Sirius/3262/maigo.html

朝希 萌さんのサイト
AQUA WORLD
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Sirius/3262/



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となりのおにいさん

読了時間……約5分
ジャンル……現代・掌編
原稿用紙換算……約10枚
DL版……無
人称……一人称



今回はClub A&Cでお世話になっている天ノ ちはれさんの、少し不思議な現代掌編を紹介する。主人公の女性の自分を客観視する姿勢とその展開が、ありきたりではなく少し不思議な印象だ。

舞台は現代日本。好きだった男に「妹にしか見えない」と言われ振られた女性の、振られたその日に家に帰るまでを描いた掌編だ。
文体は非常に柔らかく、それが主人公、桜木の年代に自然にマッチしている。また細かい部分になるが、桜木の思考の中にはところどころに皮肉なひねりが加えられており、短いながらも読んでいて心地よい。

また、物語の後半には桜木の隣の家に住む「ゆうやさん」が登場し、彼と桜木の仄かな感情の交差が覗われる。個人的にはこの部分の桜木の自分の感情の分析とゆうやさんへの考察がとても気に入っているが、僅かながらでも酔っているにも関わらず、ここまで考えてしまう主人公には違和感を覚える方もいるかもしれない。

他の「おにいさん」とは違う、と桜木が思っている(同時に一部それを否定している?)ゆうやさんとの今後も少し気になる、不思議な掌編だ。2005.4.16



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となりのおにいさん
http://prankish.pandora.nu/trois/short/20050318.html

天ノ ちはれさんのサイト
troisieme
http://prankish.pandora.nu/trois/



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heart×heart

読了時間……約5分程度(一話)
ジャンル……現代・掌編シリーズ
話数……全5話
原稿用紙換算……合計35枚
DL版……無
人称……一人称



今回紹介するのは、独特な視点の繋がりが面白い、ねこさんの掌編シリーズ作品。

舞台は現代日本。
ある喫茶店のやりとりを起点に、各話ごとに語り手がどんどん変わり、リンクしていく面白い手法の取られている作品だ。
全五話なので、語り手も当然五人となる。語り手になるのは二十代中盤ほどの、社会に出て数年ほど経った女性や男性であろうか。それぞれが過去と現在に何かしらの繋がりを抱えており、それが文中で吐露されながら話は展開していく。

文体は一人称で、各話ごとに変わる。各話ごとに一人の語り手が語り、話の途中で切り替わったりということはない。
文章の硬さは硬すぎもせず柔らかすぎもせず、自然に物語に感情移入出来る。登場人物の年齢にも文章の感じがあっているのと、展開の動かし方が自然、自然にとなっているせいもあるだろう。不自然さが感じられない物語の展開の仕方には好感が持てる。

少し残念だったのは、各話で語り手が変わること(舞台も時間帯も変わるので尚更)が少し分かりずらく、数話読んでから気付くところだろうか。もう少し前の語り手の人物との関係などが明記されていると、すんなり理解が出来た気がする。

さて、前に展開の仕方が自然だったと書いたが、物語の内容は、ほとんどが平凡な日常の1コマの中に、語り手の少しピリっとする思考が織り交ぜられる形になっている。
過去と現在についてなど、少し意外とも思える思考が綴られ、目から鱗という方もいるだろう。

人の人のかかわりにじわりと温められ、語り手の思考に優しく今までの固かった観念をほぐされるそんな作品だ。2005.4.9


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heart×heart
http://smile.poosan.net/transparent/puzzle/heart-thanks.html

ねこK・Tさんのサイト
TRANSPARENT HEART
http://smile.poosan.net/transparent/



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