書評の小箱
ここでは、管理人みもんの読んだオンライン小説を紹介していきます。

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読了時間……約10分
ジャンル……現代不思議・掌編
原稿用紙換算……約10枚
DL版……無
人称……一人称



どこか恐ろしく、またどのような展開なのかという好奇心を刺激され、最後は意外なユーモアさに思わず笑みがこぼれる三家原 優人さんの現代掌編。

舞台は現代日本。女性会社員の「私」が、帰り道にアスファルトに埋もれた一本の「腕」を見つけ――というストーリー。物語はその一晩だけでなく、その後の「私」の身に降りかかる異変、そして「腕」との奇妙な生活にも触れていくことになる。

文体は一人称。必要な部分だけを簡潔に描写し、敢えて想像せずとも状況は掴むことが出来る。ただ逆に、詩的な比喩や表現は少なく、その辺りが物足りない、という方もいるかもしれない。
もう一つの特徴としては、「――」を使った、会話文調の心理表現が全くないことだろう。心理描写は客観的な描写と、主人公の独白という形で表現されている。だが、気をつけないと気付かないので、ここがひっかかる人などはいないのではないだろうか。

最初の登場シーンからインパクトたっぷりの「腕」だが、最後のオチもお茶目に、主人公と絡んでくる。不思議な話だがホラーではないので、怖い話が苦手な方も是非読んでもらいたい。2004.4.27



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http://mikehara.com/novel/sakuhin/24.htm

三家原 優人さんのサイト
LEVEL 3
http://mikehara.com/



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太陽は沈まない

読了時間……約二十分
ジャンル……ファンタジー・掌編
原稿用紙換算……15枚
DL版……無
人称……一人称



人間関係を円滑にする軽口と、壊してしまう軽口。軽口を叩くのが好きな、一人の男の物語。瑞沢史也さんの作品。

分類は便宜上ファンタジーとしたが、実際は分からない。中世かもしれないが、恐らく現代ではないだろう。だが時代・世界設定はこの作品の場合は特に内容に影響を与えるものではないので、ファンタジーが苦手、という方にもオススメだ。
さて、物語は酒場で働く青年、ジェイクを主人公に、彼の日常を描いている。人を軽口で楽しませるのが自分の楽しみでもある彼が、小さな行き違いから一つの人間関係を壊してしまう、そんな物語だ。

文体はジェイクの一人称。比喩などは少なくストレートで分かりやすいが、反面、飾りの多い文章を楽しみたい人には不満があるかもしれない。ストレートと書いたが、物語の核となる(と私が思っている)部分については具体的な心理描写などは避け、やや曖昧な描写となっている。この曖昧さが、作品に味わいを持たせているのだろう。

優しいが、世間知らずな修道女のマリア。酒場で働き、世間を知ったジェイクには、彼女の一方的な思い込みの一言が、我慢できなかったのだろう。そう考えると、どこかやりきれなさも感じる作品であった。2005.4.28



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太陽は沈まない
http://pierino.nobody.jp/zi/uso.html

瑞沢 史也さんのサイト
ピエロのへや
http://pierino.nobody.jp/



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じつは、実は、ジツハ。

読了時間……約15分
ジャンル……現代不思議・掌編
原稿用紙換算……12枚
DL版……無
人称……三人称



突然自分の身にこんな事が降りかかったら。「父」に同情せずにはいられない、三家原 優人さんの現代掌編。
舞台は現代日本。妻と一人の娘を持った、ある一家の父が主人公。変わらないはずの彼の日常に、とんでもない『じつは』が次々と訪れる物語だ。とても一般的な家庭を描いているだけに、リアルさとその『じつは』の衝撃さが増している。

文体は三人称。父よりの三人称だが、私は最初「父」としか説明されない描かれ方に、少々戸惑った。彼は、というような描き方もほとんどないが、しかし彼よりの視点なせいなのかもしれない。それ以外は、作者の他の作品と同じく、簡潔な描写で状況の把握がしやすく、読みやすい文章だ。

さて、少々ネタバレになるが、最後にして最大の『じつは』は明らかにされない。一日にしてドン底に突き落とされてしまった父の、その後が気になってしまうが、敢えて明らかにしない終わり方は想像力を刺激され、面白い終わり方になっている。

最初から最後まで、いくつもの「じつは」が非常にテンポ良く最後まで読ませてくれる作品だ。2004.4.28


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じつは、実は、ジツハ。
http://mikehara.com/novel/sakuhin/43.htm

三家原 優人さんのサイト
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猫のいる風景〜黒猫

読了時間……約十分
ジャンル……現代日常・掌編
原稿用紙換算……10枚
DL版……無
人称……三人称



日常もの。ほとんど波はない。なのに、読んでいてとても心地よい、ほたるさんの現代掌編。穏やかな気分で小説が読みたい時にオススメの一編。

舞台は現代。五十代の初老の大学教師、望月教授の日常と、ある黒猫との触れ合いを描いた作品だ。この望月教授が非常にリアルで、彼とお見合い結婚した妻の和枝とのやりとりなどが、他人行儀ではあるが、どこか心温められる。
思い通りにならないことがあっても「ふむ」の一言で片付けてしまう穏やかさや、少し子供っぽさを残した好奇心の片鱗。それらが、この教授をリアルでありながら、魅力的な初老のキャラクターに仕上げているのだろう。

文体は完全な三人称。
描写の対象はほとんどが望月教授ではあるが、教授よりの描写というよりは、教授の生活を見ている第三者的な視点で、必要な部分だけ教授の内面をのぞいている、という印象である。

若い人間には出せない、人生を達観した大人だけが出せる、穏やかさの中にある少しのポジティブさ。穏やかな気分になりながら、最後には少しだけ心を動かされる。読み終わった後には、お疲れ様でした、教授、と言いたくなるかもしれない。2005.4.27


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猫のいる風景〜黒猫
http://homepage2.nifty.com/jiyu-cho/b-cat.html

ほたるさんのサイト
彩色分光
http://homepage2.nifty.com/jiyu-cho/index.html



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犬 ― The Dog

読了時間……約4分
ジャンル……現代・掌編
原稿用紙換算……3枚
DL版……無
人称……三人称



具体的には言及されていないのに、何故ここまで切ないのか。今回は三家原 優人さんの、ある一匹の忠犬の物語を紹介しよう。

舞台は恐らく現代。朽ち果てた一本の柱に寄り添う、一匹の雌犬の現在と過去、そして未来を描いていく作品だ。

文体は完全な三人称。やや雌犬よりで、丁寧なですます調の文章は童話を思い起こさせる。
重要な部分をわざとぼかして描写する事が、読者に情景を想像させ、物語を味わい深いものにしているのだろう。重要でない部分は比喩などはほとんど使わず、必要最低限の描写に留めている。その辺りもまた童話的だと、私には感じられた。

切ないまでに主との約束に忠実な、一匹の犬の物語。真実を知らない彼女は、最後まで幸せだったのだろうか。考えを巡らせると、更に切ない気分になるかもしれない。2005.4.28



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犬 ― The Dog
http://mikehara.com/novel/sakuhin/27.htm

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白い魚

読了時間……約20分
ジャンル……現代不思議・短編
原稿用紙換算……21枚
DL版……無
人称……一人称



爽やかな初夏。そんな印象を受けた、ほたるさんの不思議な短編。ゆったりとした雰囲気の中に、白い魚の醸し出す期待感がほどよくミックスされている。

舞台は現代。安アパートに住む絵描きの卵の『私』が主人公だ。日当たりだけはいい彼女の部屋に、ある日不思議な少年が訪ねてくる。彼は日当たりが悪いせいで真っ白な魚を、色が出てくるまでこの部屋に置かせてくれ、と申し出て――というストーリー。

少年とはいえ初対面の人間にそんなことを言われて、思わず頷いてしまう彼女に違和感を覚える人もいるかもしれないが、その後の展開はとても清々しく違和感もないので、是非読み進めてもらいたい。

文体は『私』の一人称。短編ではあるが非常に描写が丁寧で、しっかりと細部まで情景を思い浮かべる事が出来る。またなんともいえない、微妙なものに対する例えが非常にユニークかつリアルで、「ああ、なるほど」と頷けるものが多いのも特徴の一つかもしれない。

結局、白い魚は何色に染まるのか――是非、あなた自身の目で確かめてもらいたい。2005.4.28


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白い魚
http://homepage2.nifty.com/jiyu-cho/w-fish.html

ほたるさんのサイト
彩色分光
http://homepage2.nifty.com/jiyu-cho/



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ハマチ

読了時間……約3分
ジャンル……現代・掌編
原稿用紙換算……約3枚
DL版……無
人称……一人称



まるで小噺を聞いていたかのような読後感の、三家原 優人さんの現代掌編。

舞台は現代日本。ある高級寿司屋でのお話だ。主な語り手は、これまで高級寿司を食べたことのなかった「俺」。三ヶ月の苦労の末にとうとう高級寿司屋にやってきた彼が、奇妙な客を見つけることから物語が展開する。自称貧乏人の彼が、高級寿司屋のシステムに戸惑いつつも、密かな優越感に浸るところなど、実際にありそうで非常にリアルだ。

文体はほとんどが「俺」の一人称。文章は「俺」の独白を中心に、適度に情景描写を絡める形で展開されている。作中彼がセリフを発することは一度もないが、その分は地の文に会話文調の心理表現で表されており、私にはこちらがしっくりときた。こちらの方が、黙って寿司を食べる、という高級寿司屋の雰囲気にもマッチしているのかもしれない。

最後のオチが全く予想していなかったもので、こんなオチなのか! と驚いてしまうこと請け合いの今作。落語のような笑いを求める方には、是非読んでもらいたい。2005.4.28



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ハマチ
http://mikehara.com/novel/sakuhin/26.htm

三家原 優人さんのサイト
LEVEL 3
http://mikehara.com/

--この作品への雁乃さんの感想--


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