二人ともそこらにゃいない、イイ男なンだけどねぇ

002:喧嘩野郎
[歳サン、湯の用意は出来てるンかい?]
目を爛々と光らせた男たちを見て
これはどうやら避けられないことを八郎は今更ながら悟った。
[総司のやつがしてくれるさ。]
[総の坊やはむしろやりたがるンじゃないのかぇ?]
これをさ、と八郎が自分の刀をつつくと
歳三はにやりと形のいい唇を歪めた。
この男の癖である。
追いつめられればられるほど、興奮するらしい。
(変わった男だ)
まぁ普通の男なら吉原の、それも花魁に惚れられた上に
花魁の上客の駒とこんな所で喧嘩など始めようとはしないだろう。
だからこそ自分と馬が合っているといわれればそれまでだが。
すいと相手の肩越しに自分の幼馴染を探す。
どうやら本山小太郎の姿はなさそうだ。
仲裁役の小太郎がいないとなればやるしかない。
喧嘩は嫌いではないが、後始末が面倒で避けてきたのだが。
八郎はやれやれというように肩をすくめた。
向こうは七人、こちらは二人。
[歳サンは一生喧嘩するつもりかい?]
[さァな]
男たちはじりじりと間合いを詰めている。
それを歳三はスッと目を細めて嬉しそうに見た。
相手に不足なし、というか分は悪い。
ああ、でも自分とこの男が組んで負けるのは想像できねェや