羽毛の起源に関する考察 サイエンティフィック・アメリカン2003年3月号より 『鳥か羽毛か―――どちらが先?』リチャード・O・プラムとアラン・H・ブラッシュ筆 論文の概訳と注釈
(はじめに)

(これは、サイエンティフック・アメリカンにのった羽毛の起源に関する記事の概訳と注釈です。
訳者ははじめ、説の概要だけ簡単に説明して、自分なりに追跡調査をするつもりでした。
しかし、よりよく理解するために、自分なりに全文を翻訳するのが正解だと考えました。
全内容を把握してから文を起こしたので、論理そのものに関して誤訳はないと思いますが、日本語の通りのよさを再優先したため、完全なる意訳になっています。原文にある、『驚くべき』『すばらしい』『目を見張るような』などの形容詞は極力排し、論理や表現の重複を避け、簡明な表現を心掛けました。たとえば、『……という驚くべき結論に収束するのである』というような場合、『……ということがわかってきました』とするような具合です。
逆に、イメージしにくい部分は、かなりの言葉を補いました。
専門用語は極力使わないようにしました。自分が日常的に思い付く表現を使いたかったせいもあります。
以上の事を了承した上でお読みください)



髪の毛,うろこ,柔毛,羽毛―――
体をおおうそれら自然の発明品の中でも、羽毛は群を抜いてミステリアスです
―――強靭で,軽量で、複雑精緻。
進化論は、形質の大きさ、また形のバリエーションについてはある程度の答を与えてくれます。
しかし『羽毛そのものがどのように発生したのか』はうまく説明できません。
これは、羽毛のみならず、手足や指や、目なども同じです。

長い間、羽毛は『爬虫類のうろこが飛行という目的のために進化したもの』と思われてきました。
化石証拠が見つからなかったのも、その分野の研究を遅らせました。
私たちの知る最古の羽毛の化石は、
Achaeopteryx lithografhica (ジュラ紀後期、148 m.y.a.)、始祖鳥のものです。
しかしこの始祖鳥は、羽毛の発展に関して何の情報も与えてくれません。
なぜなら、その羽毛はすでに完成されていて、現代の鳥とあまり変わりがなかったからです。

最近の成果が、ようやくその問題に光を与えてくれました。
『進化を解き明かす鍵が、形質(この場合は羽毛)が現生の個体から発生して
成長するメカニズムの中にひそんでいるのではないか』
―――ということを、生物学者たちが提唱しはじめたのです。
この考えは進化的成長の生物学(evolutionary developmental biology)
という分野を生み出すことになります。(evo-devo)
続いて古生物学者が、始祖鳥より原始的な羽毛を持つ恐竜の一群を、中国から発掘しました。

このふたつの研究から,羽毛は、鳥の発生よりも飛行の発明よりも先に、
獣脚類の中で展開していたことがわかってきました。


********筒状形質******* 体毛、爪、うろこと同じく、羽毛は外皮の細胞活動がカロチン蛋白を生産して、 それによって皮膚をおおう形質です。 典型的な羽毛はレイキスと呼ばれるメイン・シャフトを持っています。 そのシャフトにはバーブと呼ばれるたくさんの羽枝(うし)が結合しています。 その羽枝自体もまた、フィラメント状の小羽糸(しょううし・訳者の訳語) (バーブル)を両側に枝分かれさせています。 主軸基部は筒(カラマス)となり、 皮膚にある鞘、小胞(ファリクル)につつまれています。 同じカラマスから、羽毛は定期的に生え変わります。 細かく観察すると、 主軸、羽枝、小羽糸のバリエーションには驚くべきものがありますが、 構造的には二種に大別できます。 典型的な大羽は主軸の両側に平面を形成しています。 シャフトから分岐した羽枝は小羽糸の特殊構造によって (ちょうどジッパーのように)くっつきあっています。 片側の小羽糸の先端には小さな鉤(フッケット)があり、 もう片側にのびた小羽糸にはちょうどそれがひっかかるような溝(グルーブ)があります。 これによって羽は『閉じた平面』となり、空気抵抗を生み出すことができます。 対照的に、綿毛の主軸は長くのびず、基部しかありません。 そこから羽枝がフサのように生え、 さらにそこから、からみあうように長い小羽糸が腕をのばしています。 それによって、綿毛は軽量で柔軟性のある断熱構造を形成します。 また、羽毛には、大羽の羽面と綿毛型基部を持つタイプもあります。 このようなバリエーションを持つにもかかわらず、 また、樹木のように枝分かれするにもかかわらず、 羽毛は、(先端が成長するのではなく)、毛髪と同様に基部から発生し、 栄養供給源である中核の皮膚髄質がひきおこす細胞活動によって全てが形成されていきます。 では、どのようなシステムがそれを可能にしているのでしょうか。 まず、外皮細胞にプラコードと呼ばれる隆起が発生します。 その隆起は筒型に長くのびて羽毛芽(訳注・これはFeather germに対する訳者の訳語)となります。 筒の根元はリング状にへこんで、まわりに溝を形成します。 この溝が羽毛基部をつつむ小胞(ファリクル)となります。 ファリクル内のカロチン細胞の成長によって、古い細胞は上に押し出され、 最終的な羽の形質が完成していきます。 具体的に大羽の場合を見てみましょう。 まず、皮膚にうまった筒内部(ファリクル内)に縦状の隆起が分岐していきます。 これが羽枝(バーブ)となります。 一点から発生した隆起は、筒芽の成長と共に、 らせん階段のように筒の内部をおりていきます。 同時に、隣り合った点から逆向きのらせんが発生し、 逆向きに筒をまわって反対側でもう一方と出会い、 融合して主軸の一部を形成します。 その間も新しいらせんのペアが生まれてまた筒を下ります。 これを連続的にくりかえして、主軸と羽枝は徐々に上に向かって完成していきます。
(訳注・理論展開からみて、このファリクル内の細胞活動で、羽枝から分岐した小羽糸の特殊構造もすでに完成していると考えられる)。


綿毛においては、この隆起はらせんを描かず、まっすぐに成長します。
いずれの場合も、羽枝、小羽糸ともに、発生点である一層の細胞壁から全て発生・展開していきます。


********エボ・デボから羽毛へ********


我々研究グループは、これらのことから羽毛先駆者の姿をうかびあがらせることができると考えました。

1999年に我々は次のような図式を提唱しました。
第一段階は筒型隆起の発生。分岐のないシリンダー構造。
これが最初に発展した羽毛の形であろうと思われます。
第二段階ではリング状のへこみが発生し、
筒の基部が皮膚に埋もれ、その基部内で変化が訪れます。
基部内部で羽枝隆起が発生し、外側はそれを保護するため、鞘を形成します。
内部で発生した羽枝は、中央で融合し、
空洞シリンダーであるカラマス(メイン・シャフトの基部)に帰属します。

段三段階にはふたつの可能性があります。
a 羽枝の融合が長いメイン・シャフトを生み出していく。
b 羽枝から小羽糸が分岐していく。
という可能性です。
どちらが先かがわからないのは、
羽毛の成長過程が、明確なヒントを与えてくれないからです。



(訳注・どちらが先かわからない、というのは、『現生鳥の大羽においてメイン・シャフトと小羽糸が同時的に発生していくから』ということだろうと最初は思ったのだが、発生の構造を考えれば、むしろ同時に発生するのは羽枝と小枝(小羽糸)でなければおかしい。『メイン・シャフトの発達の前に羽枝が発生した』という理屈は理解できる。が、小羽糸が同じ理屈で説明できないのはなぜだろう)

(むちなみにこのような提示の仕方は、『このふたつのメカニズムが進化の過程において同時に獲得できるはずはない』ということを前提とした書き方である。シンプルから複雑へ至るには段階が必要―――という点において論者は一貫している)

(ついでに言うと、bは、訳者の見たところ、綿毛の構造と同じである。論理的には、ここから現生の綿毛が発生してもおかしくない。しかし筆者は大羽の発展構造を論の主眼においている)


いずれにせよ、第四段階ではこの両者は融合し、初の二重分岐構造の羽を生み出します。

(訳注・羽枝と小枝があるのだから、厳密には第三段階のbがすでに二重分岐である。しかし論者は大羽の方を発展のモデルに選んでいるため(?)、無意識にシャフトからの分岐を中心に考え、このような表現になったのだろう)
この段階では小枝は(ジッパーの両側のような)特殊構造は持たないため、
羽枝は密着せず、『開いた羽面』を形成します。

第四段階における次なる変化は、『閉じた羽面』を形成するための、小羽糸の特殊化です。
ここまできて初めて、羽毛は飛行に適した羽などの、
さまざまな追加バリエーションを生み出す事が出来ます。

(訳注・原文にはなんの注釈もないが、これは『始祖鳥ないし現生鳥』の鳥類的に完成された(?)羽のバリエーションのことを念頭に語っているとしか思えない。進化の各段階において別の形態の羽毛が発展した、とはっきり言っているわけだから、第四段階のみを特別扱いする理由が不明である。現生の鳥の羽毛は、全て第四段階の後に成長するのだろうか? それに関するフォローが見当たらない。さもなくば、どう考えても無意識に飛行翼の完成に焦点があてられた表現である。)



*******論より証拠******


この論理は現生の羽毛の成長順序に依拠しています。
例えば、単純な筒状羽毛は羽枝のある羽毛より前に展開しなければなりません。
なぜなら、羽枝は筒の中の細胞が枝に分岐していくことで形成されるからです。
同様に,綿毛状に広がった羽枝は、大羽の主軸より前に存在したはずです。
なぜなら、大羽の主軸は羽枝の融合によって初めて成長を始めるからです。

論拠は現生鳥の羽毛のバラエティからも得られます。
現代の鳥は、各段階を代表するさまざまな形の羽毛を身にまとっているからです。
発展の過程で発生したものの縮図といえるでしょう。
それらのバリエーションは、始祖鳥の前に展開していたに違いありません。

(訳注・Support for the theory comes in part from the diversity of feathers among modern birds, which sport feathers representing every stage of the model. Obviously, these feathers are recent, evolutionarily derived simplifications that merely revert back to the stages that arise during evolution, because complex feather diversity (through stage 5) must have evolved before Archaeopteryx. この部分は、訳者には謎である。訳者に大きな見当違いはないと思うのだが,論理の流れがいまいちピンとこない)


現生羽毛は、これら各段階が筒基部(ファリクル)の生産能力の範囲で説明がつけられることを示しています。
従って、羽毛の全てのバリエーションの発生原因を説明するための論理をさぐらずとも、
この羽毛進化論は成立してしまうのです。

また、デボ・モデルの最初の三つの発展段階を支持する、分子生物学からの発見もあります。
ウィスコンシン大学のマシュ―・ハリス、ジョン・F・ファロンと我々のひとりであるプラムが、
脊椎動物の手足,指、また、毛,歯、爪などの形成に
深くかかわるふたつのパターン形成遺伝子
―――(通称)音速ヤマアラシ(ソニック・ヘッジホッグ)(Shh)と骨形成蛋白2(Bmp2)を研究した結果、
両者はさまざまな用途に使える電子部品のように、
羽毛の成長の過程を通し、
信号を発するペアとなってくりかえし活動しているのをつきとめました。
Shhは細胞の増殖をひきおこし、
Bmp2蛋白はその範囲を規定、細胞の区別化を促します。

両者は、羽毛隆起(プラコード)形成の段階から、
前後に分極しながら発生しているのが観察できます。
そして、ShhとBmp2は筒状羽毛がのびていく過程で先端部分で発動、
さらに羽枝形成時にも皮膚組織の中で活動します。
大羽の場合は羽枝のらせん状パターンを導いていき、
綿毛の場合はシンプルなパターンを導きます。
そして羽毛が最終形態に達するまで、
くりかえしさまざまな信号を発しながら活動して行きます。

このような分子レベルの活動は、
羽毛発展のメカニズムが、段階的に進行する階層構造を持つ事を示しており、
第一段階から第二段階、そして第三段階a に至るまでの、我々のシナリオと見事に一致するのです。

(訳注・羽毛の最終形態に至るまでShhとBmp2の活動が観察できるのならば、なぜ論者はステージ3a までを支持する、という非常に具体的に限定された記述にとどめたのだろうか。この時点ではまだ確実な研究が進んでいないか、ないしはここでは論じきれないような複雑な要素がかかわってくるのかもしれない。ついでにいうと、訳者の見たところ,この発見は単にエボ・デボのデボの部分(?)をなぞっただけで、ShhとBmp2の活動とエボ構造の関係が示されなければ、羽毛段階進化説の積極的なサポートにはならないと思うのだが。もしかしたら訳者の知らない背景があり、それを知れば納得できるのかもしれない)



******主役登場*******


新しい理論と最新技術によって、
羽毛に命と形を吹き込む細胞の活動の一環を我々は垣間見る事ができるようになりました。
しかし最も劇的な発見は、昔ながらの化石発掘という分野からもたらされました。
中国,合衆国、カナダの古生物学者たちは、
化石の宝庫である中国北部のリャオニン圏(Liaoning Providence)の白亜紀前期のイーシャン地層(Yixian formation, 128-124 million years old)から、
太古の有機物―――最古の胎盤哺乳類や、最古の花植物、多くの太古の鳥たち、
そして鮮やかに細部の痕跡を残すさまざまな獣脚類を発掘しました。
そのいくつかは現代的な羽毛や原始的な羽毛の構造を残しています。
このことから、結論は明らかです。
羽毛は、鳥あるいは飛行の出現以前に、肉食恐竜である獣脚類が発達させ、
現代的な様式に進化させたのです。

(訳注・いくらなんでも翼竜の前に恐竜が羽毛をつけていた、ということを断言しているわけではないだろう。飛行する生物は他に存在していた。しかしここでは恐竜の進化だけにしぼって話をしている。つまり厳密には、『恐竜が始祖鳥のような完全な鳥の形態を獲得する前に』ないしは、『恐竜が羽ばたき運動などによって飛行能力を獲得する前に(飛ぶ恐竜という特殊定義が存在しうるかどうか知らないが)』ということが言いたかったのだろう)


最初に発見されたのは、チキンサイズのcoelurosaur(Sinosauropteryx)です。
小さな筒状と、おそらく枝分かれした構造が皮膚から現れています。

(訳注・it had small tubular and perhaps branched structures emerging from its skin. 曖昧な表現である。証拠が曖昧だからかもしれない。


次に古生物学者は、ターキーサイズのオビラプトル種(Caudipteryx)を発見しました。
現代的な大羽が、尻尾先端と前肢にはっきりと残っています。
一部の懐疑論者は、Caudipteryxは単に初期の飛ばない鳥であると主張していますが、
多くの系統進化分析はこれを獣脚類に位置付けています。
続いて最も鳥に近親であるとされる種、dromaeosaursの羽毛が発見されました。
最終的に学者たちは、ダチョウサイズのtherizinosaurであるBeipiaosaurusや、
Microraptor、Sinornithosaurusを含むさまざまなdromaeosaursなど、
1ダース以上もの非鳥類恐竜から羽毛の痕跡を見出したのです。

(訳注・『非鳥類恐竜』=nonavian dinosaur……論者は『明らかに鳥ではない』と定義している。が、一部の恐竜はあまりにも鳥に近いため、『鳥』と呼ぶ人もいるようだ。両者を明確に区別するのは『飛行できるかどうか』という一点だけなのではないか、という意見もある。実際、論者もこの後、『今後、化石の発見で鳥と恐竜のギャップが埋まっていけば、鳥類を定義するのも難しくなるだろう』と語っている。しかし、『鳥になる以前に獣脚類は羽毛を発達させていた』という論点を明確にするため、ここでは『恐竜』と断言する必要があったのだろう。その方が『らしく』みえることは確かだ。が、別に発掘された恐竜の一部が『鳥』と呼ばれても、獣脚類の一種であるという、その本質には変わりはない。裏を返せば、『恐竜』と呼ばれても『鳥に近い』という本質には代わりはないわけだ。発掘された恐竜を鳥類から切り離そうとする原文の強調の仕方(訳では多少割愛してある)には、真実のみならず多少のレトリックも含まれている)

(さらに、ここには大きな謎が存在している。なぜなら始祖鳥はこれらの恐竜より古い地層から発見されているからだ。その部分だけをみれば、『鳥の方が先にいた』というのは、非常に最短距離な解釈である。論者はこの有名な始祖鳥パラドックスには一言もふれていない。For many years the earliest bird fossil has been Archaeopteryx lithographia『始祖鳥は長い事最古の鳥でありつづけている』という表現が初めの方にあるのみで、何のフォローもない。進化的成長理論は非常に整合性があるように見えるが、羽毛の各段階が時代を追って展開していったのが証明されなければ、真の直接証拠とはいいがたいのではないだろうか?)


これら恐竜羽毛の不均一性は、我々の理論を強く支持するものです。
Sinosauropteryxの単純な筒型は第一段階にぴったり符号しますし、Sinosauropteryx、Sinornithosaurus、
そして他の非鳥類恐竜の羽毛は房状でレイキス(主軸)を欠いており、第二段階にあてはまります。
また、明らかに進化した小枝と羽面を持つ第四段階の羽毛もあります。

従って羽毛は獣脚類の中で発生、発展し、それらの中で、
特殊化した上肢や尻尾の助けを借り、
羽毛で飛行する能力を身につけたグループが鳥ということができます。
Caudipteryx、Protopteryx、dromaeosaurs の尻尾の先には羽毛で形成された顕著な扇があり、
現代鳥にみられる綿毛の一部が発展した可能性すらあります。
こう考えるならば、TyrannosaurusやVelociraptorなど、最もカリスマ的でシンボル的恐竜たちも、
おそらく羽でつつまれた皮膚を持っていた事でしょう。
しかし彼等はなお、鳥ではありません。

(訳注・very likely to have had feathered skin……非常に強い表現である。この場合のvery likelyはmost likelyよりも強い。most likelyはさまざまな可能性の中で一番ありそう』という多岐選択であるが、very likelyはyes/noの二極選択だからだ。獣脚類は、鳥になるかなり前から羽毛を展開させていた、というのが正しければ、相当に早い段階である。つまり、特に鳥に似ていなくても、同じ獣脚類である以上、Tyrannosaurusも羽毛を持っているだろう、という理屈なのだろう)



******新しい視野*****


羽毛がうろこから発達した、という伝統的な論理によれば、
まずうろこは長くなって羽毛となり、次にきざきざの縁を持つようになり、
最終的には鉤と瓦状の糸枝を持つようになります。
しかし、今まで見てきたように、羽毛は基本的に筒です。
横に広がる羽面は、筒状の鞘から現れたときにはじめて、その姿を現します。
対照的にうろこの表と裏は、はりだした上下の細胞によって形成されるのです。

(訳注・はりだした上下の細胞……論者はおそらく、魚の鱗のような形状を念頭に語っているのだろう。だが、同じ SCIENTIFIC AMERICAN 刊の書物によれば、現在痕跡が残っている恐竜の皮膚は、『オーバーラップしていない』うろこでおおわれていることがわかっており、『円錐形のものが混じっている』とのこと。また、ネットで収集した情報によれば、『うろこが羽毛に変化する途中の化石』もあるとのことである。さらにつけくわえるなら、訳者がワシントンで入手した爬虫類マガジンには、イグアナの背中のトゲトゲはうろこの変形であるという記述がある。それらを考え合わせると、この、『上下の細胞によって形成される』というのが、具体的にどのような本質的差異となっているのかが気にかかる)

また、羽毛は基本的に飛行のために発達した、との考えも修正を余儀なくされるでしょう。
羽毛が空を飛ぶために発生した、
というのは指がピアノを弾くために発生した、というのと同じようなものです。
非常に発達した,空気抵抗を生み出す閉じた羽面を持つ非対称羽毛、
つまり第五段階に達した羽毛のみが飛行を可能にするからです。
従って指と同様、羽毛も別の目的で発生し、別の利用をされていたにちがいありません。

保温、求愛、水よけ、カムフラージュ、あるいは防御など、
羽毛の初期の目的としてはもっともらしいものが多くの人によって提唱されています。
しかし、いくら新しい古生物学のデータが蓄積されようと、そのどれが正しいのかはわかりそうもありません。
代わりに我々は、羽毛は、発展の段階で別の機能を担っていたかもしれない、
ということを強調するにとどめます。
初期の筒型なしに羽毛はありえないし、
また、それが何らかの形でその時々の生存の役に立ったからこそ,発展したにちがいありません。

羽毛は長い間、霊魂創造説者や進化論懐疑論者の恰好のターゲットでした。
うろこと羽毛の間には中間型がないと主張し、
なぜ自然淘汰が飛行のために最初に長いうろこを選び出し、
そのあとにそれらをまた『編んで一緒にする』という煩雑で新しいメカニズムを発展させたのか、と問いました。
皮肉なことに今や、羽毛は進化の世界をより深く探求するための輝かしい実例です。
新しく発現した形質の理解、それが現生の器官においてどのように造形されるのか
―――進化生物学は多くの謎をこれからも解き明かすことでしょう。

私たちの心に翼あれ。

SCIENTIFIC AMERICAN, MARCH 2003
Translated by DARKZONE (DEEP HORIZON) 

(訳者感想・不明な所も多いが、現段階では非常に説得力のある論だと思う。もしかして獣脚類は発生の段階から羽毛を持っていたのか? ということをも想像させる)


追加資料

DARKZONECITY