オンライン小説紹介


 サーチエンジンで「オンライン小説」「オンラインノベル」と打ち込めば、それこそ星の数ほどのサイトがひっかかるでしょう。だがその中からいい作品を見つめるのは結構難しい。もともと、ウェブページは長時間見るには向いていません。印刷するという手はあるけど、時間と紙代がかかります。
 そういう手間を惜しまず読める作品の条件とはどんなものでしょう。これは、やはり普通の印刷物などと同じことだと思います。文章の構造がかっちりしていて、読み手を引き込む描写があって、細部に起伏を持っている。ここまでこぎつければ、あとはネタの良さにかかってくるでしょう。内容や発想がうまければ、ページの体裁はそう気にならなくなります。
 さて、ここではそういう条件の整った作品を紹介したいと思います。今のところ二作品だけですが、これから増やしていきたいところです。


作品名 著者 アドレス 更新状況
巡察使 〜バクラントの黒い薔薇〜 上原 友里 詩人ゆうりの世界 完結
 商業の中心地として栄えながら、裏では犯罪の温床として知られる自由都市クーイー。この地で暗殺を生業にする男ハダシュと、何ゆえか彼を欲する女暗殺者<黒薔薇>。自称敏腕巡察使ラトゥースは、彼女のゆがんだ企みを阻止できるのか。愛憎渦巻く人間模様に、陰謀とアクションが映える中編。

 暗殺者というと、もはやファンタジーではおなじみの職業にまでなった感がある。もちろん、その手を血に染めたこともない(自分でうっかり切った場合は除く)我々にはその実態はうかがい知ることはできない。傭兵、剣闘士、剣豪など、人殺しがまるでヒーローのように扱われ、軽々しく描かれている中、この作品は業深き男の迷走を見事に活写している。

 登場人物が抱えるねじまがった憎悪、これでもかと言わんばかりに出てくる血の描写。それはとても胸躍らせる代物ではなく、我々をどうしようもないやるせなさに陥らせてしまう。

 それでいてすっきりした読後感を残すことができるのは、作者の技量以外の何物でもないだろう。他人を真っ直ぐに信じることのできる少女ラトゥースを配したのはまさに絶妙のキャスティングである。

 短いやり取りを主体にした会話はテンポがよく、クライマックスこそやや盛り上がりに欠けるものの、全体的に読みづらさのない仕上がりとなっている。影のあるヒーローに酔いしれたい方に勧める作品である。

※現在、加筆増補版「血と薔薇のシャノア」が連載されています(04/6/11)。
作品名 著者 アドレス 更新状況
カルテット CALTET zero-zero TEAR DROP 更新中
 大陸において最も古い血統であると言われるエルフ族。彼らは大きく四つの部族国家に分かれ、あまりにも長い争いを続けていた。全ての種族を支配する神聖神殿の命により、果てなき戦いに終止符は打たれる。停戦の条件は、各部族の王族の男子を人質として差し出すというものだった。こうして、生い立ちのまるで異なる四人の少年が、山エルフの士官学校に集められることになった…。

 ファンタジー、特に中世ファンタジーを舞台にした作品は数多い。しかし、世界の成り立ちや魔法といったギミックに他にない独自性を持たせようと腐心する結果、余りにも人間味が薄くなるという失敗を犯しているものが少なくない。

 架空世界と言えども主役はキャラ(人間、デミヒューマン、動物、人工知能など)であって世界そのものではない。登場人物に共感あるいは反発できてこそ小説や戯曲、漫画は面白いのである。そして感情移入できるという点において、この「カルテット」の右に出る作品はそうそうないだろう。

 まず主役級の四人の書き分けが見事になされている。出自、性格、過去、特技、様々な面から彼らが浮き彫りにされ、読み手に印象づけることに成功しているのだ。四者四様の人間模様が浮かび上がる描写は、おいそれと真似のできるものではない。どの二人をとっても面白いコンビが出来上がるのだから。

 学院の中、主役が少年たちという制約ゆえか、ストーリーに派手さは少ない。むしろ日常のささいなひとこまや心理描写の一つ一つが見せ場なのではないだろうか。純粋に楽しむこともできれば、登場人物の言動に考えさせられることもある、希有な小説である。



トップページに戻る