絲山秋子の天才宣言(2001.7)

 文学というものが現代どういう状況におかれているかは大体把握しているつもりです。どんな本が売れているかもおよそ判ります。
 なぜ私が文学を志すのか、答えはとても簡単です。
 まず仕事に対する考えとして、人がやっていないことで私がやるべきことがある。
 文学に対する考えとしては、自分が読みたい作品がないから書きたい。
 その2点です。
 結果がどうであれ自分には才能があると信じます。

 生活との両立は難しい。一生貧乏だな、きっと。
 そういえば私の病気も生活を脅かすアイテムの一つではあります。

 これは文学や芸術だけの問題ではない、例えば政治家と作家は、日本の現状では「エゴ」という点で見て対極にあると思いますが、プロセスはよく似ています。
 私が小説を通してしたいことは、特定の行動を促すことではありませんが、読者の顕在・潜在意識に働き掛けることだと思っています。読者それぞれが持っている「何か」を改めて「伝える」のが仕事です。
 一方で経済について言えば、「お金」という「言語」を通して物事を翻訳する仕組みという面があります。

 だから芸術に限らず、同じような、人から見たら勝算のたたない闘いを自分の天職としてしている人は世の中に、或いは歴史的にいくらでもいます。無名のまま終わっていってもそれは仕方がない。相手のせいではない。時代のせいにしても仕方がない。ただ、そういう人々に私は共感するし、私自身も評価に媚びずに生きていきたいと思います。

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