ニヒリズム
nihilism

ラテン語のnihil(無)からきて、究極的には何ものも存在せず、何ごとも認識できず、何の価値ももたないとして、一切を否定する思想。虚無主義と訳され、思想としてすでに老子、荘子、仏教、古代ギリシアのソフィストなどに見られるが、このニヒリズムという概念は近代以降のものである。ニヒリズムの語を最初に利用したのはヤコビであり、ニヒリズムを問題としてとり上げ、批判したのはバーデルである。しかし、この語が普及したのはツルゲネフの「父と子」(1862)による。 さらに、ニヒリズムをもっと積極的に意味づけ、評価しようとしたのがニーチェである。ニーチェのいった「神は死んだ」という言葉に、キリスト教への反抗から生みだされたニヒリズムの思想が凝縮されている。 ニーチェ以後、実存主義思想のなかでニヒリズムはとくに重要な思想となった。ハイデッガー、ヤスペース、サルトルなどに代表される現代の実存主義では、ニヒリズムのなかに人間の問題における真理性が含まれているという認識が共通の見解である。しかし伝統的なキリスト教思想は、ニヒリズムを罪や悪の問題として、それらの救済や克服を主張する。また、マルクス主義のような社会的な思想においては、ニヒリズムは資本主義社会における搾取と抑圧の結果であり、その克服は社会的条件の変革なくしてはありえないという。