スラブ派と西欧派

元来、西欧主義とスラブ主義とは19世紀ロシアに敵対した2つの精神的傾向であったが、それは西欧とロシアとの文化接触の所産であった。西欧派とスラブ派とはロシアに対してなされた西欧文明の挑戦に対する2つの異なる反応と応答を代表していた。しかもこうした精神的現象は、ロシア固有のものではなく、ドイツやイタリア、さらに日本を含めて後進的なアジア各地でも、西と東との文化的接触交渉の結果、国民的意識が覚醒され、そこに多かれ少なかれ類似する運動が、各国の文化的、社会政治的な特殊な歴史的諸条件に基づく制約と変容とを反映ながら発生したのである。1830年代以降のロシアに生起した両グループの思想的対立は、こうした世界史的現象を最も典型的かつ明瞭な形姿で表現していたといえる。