象徴主義
symbolism

象徴主義とは自然おなかに与えられているさまざまの記号、社会生活のなかで習慣にしたがって現われるさまざまの言葉を、自分の手にとりもどして自覚的に意味と結びつけて表現しよういう芸術運動である。自然の美に対して人工の美をあげ、言葉と習俗に対して反習俗的な別の世界をつくろうとする。

アメリカ詩人ポーは、推理小説と詩とによって大胆に新しい象徴をつくりだす実作をのこすとともに、自分の象徴形成の方法を自覚的に書きのこした一連の評論をものこした。「構想の哲学」(The Philosophy of Composition, 1846)、「詩の原理」(The Poetic Principle, 1848-49)、「マージナリア」(Marginalia, 1844-49)、「ユーリイカ」(Eurika, 1848)は、いずれも、この後1世紀にわたる象徴主義の発展の前ぶれしているところがある。
彼は無名のうちに死んだが、その作品はフランスにわたってボードレールに愛され、ポーの全短編がその手で翻訳された。ボードレールの詩「万物照応」(Correspondances)に“象徴の森”という言葉のあることが、後に象徴主義という言葉がこの運動に冠せられる根拠になる。

ボーフォレール、ヴェルレーヌ、ランボー、マラルメらの詩を通してこの傾向が明らかになったころ、1886年にギリシア生れの詩人モレアスが「象徴主義宣言」を《Figaro》詩に発表した。その後ベルギーの詩人ヴェラーレンと劇作家メーテルリンク、ロシアの詩人ブローク、ドイツの詩人ゲオルゲ、イギリスの詩人シモンズ、さらにフランスのヴァレリーやジードなどの参加で、19世紀末から20世紀初頭にかけての国際的な文学運動となった。
その後、フロイトおよびユングの精神分析、バジュラール、シルロ、レヴィーストロースなどの文化人類学的研究と結びついて、この運動は文学以外の芸術の諸形式にも大きな影響を与えて今日にいたっている。