「アロハシャツ」
喜多嶋作品では重要な位置を占めるアロハシャツ。
実際アロハシャツを題材にしたものもあり、登場人物の魅力的な着こなしなどその描写もすばらしいものがあります。
氏自身アロハシャツの愛用家であり、冬などはフリースの上からでも羽織ることがあるらしい。
(窯猫もやったことがありますがなかなかかっこいいぞ!!!
でもそのかっこで出歩いたら「なんだ!なんだ!」という目で見られたぞ。
アロハシャツが印象的な作品として。
アロハシャツ ―喜多嶋作品から考える― |
アロハシャツ。いわゆるハワイアンシャツですがその歴史は意外と新しく
「アロハシャツ」という名前を商標登録した最初の人物はエラリー・チャンという中国人だそうです。
しかも1933年。
↑これがエラリー・チャンだ 〜 「定本 ハワイアンシャツ」 〜より
起源として良く知られている説は、昔ハワイイの日系移民が着物をばらして仕立て直した和柄だというものがありますが、その可能性は低いようです。
。
むしろ反物、それも浴衣用の生地から仕立てられた物が変化したのではないかという説が有力です。
今でも「和柄」は人気が高いのですがヘタに着るとあまり素性の良しくない方に見えてしまいましょう。
明るい和柄は女性によく合い、日本でも時々「おぉぉぉ」と目を見張ることがあります。
まあ男女とも色白ではあまり映えませんね。
日本でも夏の定番としてすっかり市民権を得たアロハシャツですが窯猫がずっと探しているアロハの柄があります。
他のページのも書いたのですが喜多嶋作品「海辺のロンリー・ハート・ガールズ」の短編
「虹を着ていた4人のロコガールたちの短い物語」に出てくる「レインボーシャワーツリー」柄のアロハシャツです。
アロハシャツはハワイイの風俗や自然を柄にした物が多くあり、草花、魚、木などもモチーフとして存在します。
ヤシの木は当然、ハイビスカス、パイナップル、アンセリウム、プルメリアなど等々
。
しかしシャワーツリー柄だけはどうしても見つかりません
。
最初は日本のショップや本などを探したのですが手がかりすらつかめませんでした。珍しい植物なのかとも思いましたがハワイイではメジャーらしくボーダー柄として取り入れられても不思議ではない形のものです。
ないわけはない。。。
ましてやあの秀逸な短編を書いた喜多嶋氏が想像だけであの柄を作ったとは思えない
。。。
男前を目指す窯猫ハワイイに飛びました。
初日からビーチにも行かずひたすらショップを回りました。
どんな小さな店でもシャツを置いてありそうな店には入り「レインボーシャワーツリー柄を・・・」と捜しました。
アンティークを扱うバカ高い店にも聞いてみましたが「アロハシャツの柄は時代によって流行がある。
もしかしたら昔ほんの一時流行った柄ではないか。。。オレは見たことねーけど。。。」と
なんのヒントにもならないありがたいお言葉をいただいたのみ。
探し物が見つからないとなると俄然燃える窯猫、レンタバイクを借り遠出を試みました。
またスワップミート(喜多嶋ファンなら説明不要ですね)も回ってみましたが空振り。
これは手強い。今までにない強敵だっ。。。。。。
しかし実は作品中に大きなヒントがあったんですね。何気なく読み飛ばしていたのと柄にこだわり過ぎて見逃していました。
喜多嶋氏はメーカー名を書いていたんですね。
KIHI KIHI
↑これが「KIHI KIHI」のラベルだ。
<KIHI KIHI>は1937年から衣料の卸をはじめ1951年からスポーツウェアを製造していたらしい。
やはり答えはビンテージ。メーカーが解ればこっちのもんだぁぁ。
しかし世間の風は冷たいもんです。(ハワイイの風は暖かく乾いてるんですけどね)
アンティークを捜してもKIHIKIHI自体なかなか見つかりませんし店員に「KIHIKIHIを。。。」といったところで相手にされません。まあ売っているものがたまたまアロハシャツだというだけで専門家というわけではないのですから。。。
接客で親身になってくれるのは日本だけかもしれません。
それでも何点か見つけることができましたがお目当ての柄ではなく手がかりもそこまで。
そして滞在最終日となってしまいました。
その日も良い天気でしたがビーチに行かずレンタバイクで走っていました。
右手に真っ青な海を見ながら走っていると前方に雲が流れるのが見えます。
それでも男らしく突っ込んで行くとけっこうな雨。
「シャワーだぁぁぁ」
ずぶ濡れになりながらも走りつづけます。雲は短時間で消え。。もとの青い空。
カラリと乾いた風と強い太陽でぬれたものもどんどん乾いていくのを感じます。
濡れてへばりついていた髪やシャツが乾き、体にまとわりつくのをやめたのを感じたとき
ものすごい開放感が吹き抜けました。。。
「アロハを着ることは風を着ることだ」
その瞬間に探し物は頭から消え去りました。