あまりに自由で不自由、あまりに不自由で自由な

〜RAY-KUDRYAVKA X(レイ・クドリャフカ ゼクス)


作者:しろくま屋
配布場所:http://lovelove.rabi-en-rose.net/index_rk.php
使用ボタン数:7(PS用コントローラーとPC接続用アダプタ推奨)

システム:
ノーマルショット、レイ(ロックオンレーザー)、ブレードを使い分けて攻撃する。
ノーマルショットは同高度の敵にのみ有効で弱い。
レイは高度の違う敵にも有効で強力、しかもロックオンサイトは360度回転可能で自機からの距離も自由に変更できる。
ブレードは極近距離の敵に対して有効な超強力な攻撃。最大でノーマルショットの800倍に匹敵する威力。
レイやブレードで敵を倒すとオーバーウェポンゲージが溜まり、溜まってるときに攻撃ボタンのうちいずれか二つを同時押しすると特殊攻撃ができる。
機数制。当たり判定は極めて小さい。
参照(セミアルファ版#200のマニュアル)

独断と偏見によるこのソフトの特性表示

グラフィック特A
音楽特A
難易度特A
とっつきやすさD
中毒性特A
努力の必要性特A

独断と偏見で決める怪しいマトリクス

↑気合い↑
←派手
シブい→
↓戦略性↓


「コインいっこいれる」再び


 このゲームの原型たる「レイ・クドリャフカ」と出会ったのはいつごろだったろうか。
当時いろいろ変わったソフトを出していた(そして「偽春菜」でネットの一部の人たちを騒がせた)「黒井鯖人」氏のページでそのゲームと出会ったときには正直かなり面食らった。自機の兵器はレイフォースに「レイディアントシルバーガン」のソードを足したもの、しかも敵機は単色ポリゴンの一枚板。きわめつけはタイトル画面の「コインいっこいれる」(w

 やってみてさらにびっくり…キツい。難しいというよりキツいのだ。思いの外速い弾、放っておくと大変なことになる敵、そして不条理なまでに強くパターンが全く読めないボス。何度もやったし策をいろいろ考えた。音楽まで作って士気も上げた(指定の名前のwavファイルを作って置いとくとBGMにすることができた)。でも漏れは一度として一面のボスを倒すことができなかった。
 そう。あれは一種のトラウマのようなものだった。もちろんそのゲームが恐怖になったわけでも精神に大きな打撃を与えたわけではない。しかし、一面のボスですら倒せなかったこのゲームは漏れの心に深く食い込んだ。このゲームを熱心にやったのはほんの短い間だったが、その後も事あるごとにこのゲームを思い出した。トラウマという言い方がしっくりこないなら、心の奥底に刺さったトゲでもいい。とにかく「レイ・クドリャフカ」とは漏れにとってそんな苦々しさを持ったゲームだった。

 そしてまた漏れは「コインいっこいれる」と遭遇することになった。しかし二度目の遭遇は逆に心のトゲをほんの少し引き抜いてくれたような気がした。
 とあるサイトで「レイ・クドリャフカ ゼクス」(以下「ゼクス」)の事を知ったときは、復活を喜ぶ反面、というかほんのちょっと復活を喜びつつ「復活しやがったな、この野郎…」という気分だった。グラフィックがより強力になってるのを見ても、また部分的に斑○っぽくなってるのを見ても、笑みというか苦笑いの裏には固くこわばった何かがあった。

 プレイに先立って操作法を見たが、そのおかげで緊張感は急上昇した。今までやってきた(市販品含む)シューティングの中で一番複雑だ。自由自在に動かせるロックオンサイト、ブレードの豊富な動作、ダッシュ、特性の違う特殊攻撃、そして極めつけは全武器に必須なリロード。やる気を無くさないまでも、この煩雑さを見て漏れは心の中でこう叫んだ。
いやヤバいって、マジでマジで!

漏れは操作法に圧倒されつつも、落とし終わったファイルを展開してプレイした。

ワラタ。しかも大爆笑だ。体の奥底のどこかから得体の知れない笑いがどくどくとこみ上げてくる。
この大爆笑が何のせいなのか…異常なまでクオリティの高い音楽のせいか、60fpsでヴァリヴァリに動く美麗なポリゴン背景のせいなのか、期待を裏切らない内容のせいなのか、Easyでも必死にならざるを得ずしかもすぐ死んでしまうような難易度のせいなのか、ょぅι”ょのせいなのか(w)…漏れには分からなかった。しかし、とにかくすごい、すごいことだけは強烈に実感できた。

 あとでわかったことだが、あの奇妙な笑いの原因は
「自機がちっとも自由自在に動かせなかった」
ことにあった。もちろん方向ボタンを押せば縦横斜めに動いてくれるし、弾は撃てるし敵も倒せる。ふつうならこれで事足りてしかもお釣りが来るくらいだが、しかしこのゲームではそれだけだと依然として不自由なままなのだ。
 つまりこういうことだ。君はロボットを操って、ロボットの目の前に置かれているリンゴを取ろうとしている。ロボットは人間と同じく指が曲がり肘が曲がり肩も自由に回ることができる。歩くことだってできる。君はロボットの腕がそういう風にできているのを見てそれを知っている。しかし、君はリンゴを上手く取ることが出来ない。腕の長さの距離にあるリンゴはいとも簡単に取れる。しかし、腕の長さより近くにあるリンゴはなかなか取ることが出来ない。肘を曲げれば取れるけれど、肘を曲げるスイッチがどこにあるのか混乱してしまう。しかも肘を曲げるスイッチは二つか三つある。それを細かく調整しつつ曲げていけば何とかなるが、慣れないせいでどれをどうやればいいのかわからなくなってしまう。

 不自由なのは、自機が元々不自由にできているからではない。操作法を体にたたき込めば恐ろしく自由に動かせるし、そうすればかなり強い。それは分かっているのにその自由さ、自由に動かせるはずという思いに囚われて逆に何に対してどう対処すればいいのか混乱し不自由になってしまう。あるいは、(そんなに操作が複雑なら自由でも何でもないだろと)自由自在に動かせることを否定して普通に数種のショットと移動だけを使い不自由になってしまう。自機の動きを不自由なものと感じさせるのは激しい敵の攻撃だけではない。いや、むしろ余計な自己規定や先入観が自機を拘束してしまうのだ。
 漏れは何故笑ってしまったか。それは自由であるはずなのに、自由であることは知っているのに全く自由ではなくなってしまうことが現実のパロディであるかのように見えてしまったからではないのか。それは漏れが現実世界においてあんまし要領の良くない人間であるから(w)、というだけの理由ではない。多数の人間が暮らす現実世界、特に近代社会というものはそういう性質を帯びている。その話をすると横道にそれていってしまうのでやめておくが、とにかくこのゲームでは自由であり自機はかなり強いものの、それを意識してプレイすると罠に陥ってしまうのだ。何もできずにやられてゆく自機の姿は、自分の「自由さ、強さ弱さに対する幻想」により作動する罠に落ちた自分そのものではないだろうか。それを見ている自分はその姿が滑稽で不甲斐なく、可笑しくてたまらない。しかしそれだけではない。それがあたかも自分の分身、いや鏡写しの姿に見えるから奇妙でブラックな笑いになったのだろう。そんな感じじゃなかろうか。

 もともとシューティング、いやゲーム全般には「自機=自分」という投影関係というか対称関係がある。画面の中の自機と自分はコントローラーなりコンパネなりのインターフェイスを通じてシンクロしてる、ということになる。普通シューティングのインターフェイスはボタン1つから3つくらい+レバー・方向ボタンでごくごく簡単なものだが、それはシューティングが根本的には「弾を避け、撃つ」という単純な動作の繰り返しになっているからというだけではない。  そこには「いかに感覚とのシンクロ率を上げるか」、「いかに簡単な動作でプレイヤーにヒロイックなフィードバックを与えられるか」という理由もある。インターフェイスが簡単であればあるほどより感覚を伝えやすいし、危機的な状況も切り抜けられるはずだ。それでプレイヤーがかっちょいいプレイや過酷な状況を切り抜ける感覚を味わうことができればよりシンクロ率は上がるしより熱心にプレイするだろう。その結果として、シューティングは「簡単に自分が強いものと一体化できるゲーム」になっている。
 漏れが思うに、ゲームというものの存在意義は「自分が自機を通じてかっちょいいプレイをしたり壮絶な体験をすることで現実でのシンクロ率の低さをカバーする」(=現実では味わうことのない感覚を通過して充実感を得る)というところにあるのではないか。
 そして、シューティングゲームにおける自機とは自分の「影」ではないだろうか。影は自分の動きが反映されるだけではない。光源の位置などでいとも簡単に影を大きくしたり異なる形に変えることができる。すなわちシューティングの自機に投影された自分は自在に変形する、ゆがんだ虚像であるということである。
 「ゼクス」の場合、自機とプレイヤーがまるで鏡写しのような関係になっている。画面の中に反映されてるのはあくまで等身大の姿であり、それを普通のシューティングのように「強いものと一体化したゆがみのある虚像」として捉えようとすれば失敗する。挙げ句の果てに鏡に映る間抜けな自分に驚愕してしまう。しかし、自らの鏡写しの姿をきちんと捉えられれば、後はなんとかなるだろう。

 …って何ともならねえか。ここまで書いててもよくわかりません。
ここまで異常なまでに気合いが入ってるというよりただのんべんだらりと文章を垂れ流してきたけれど、疲れたし結局何がいいたいのか分からなくなってきたのでやめます。
 とまあ、いきなりこんな文章を書かせるわけだからこのゲームはすごいです。前作はその不条理なまでの難しさに泣きましたが、これはいきなり違うとこで泣きましたね。グラフィックと音楽に…だっていきなりすごいですもん。特に音楽のクオリティはオンラインゲーム、いや下手な商用シューティングより高いんじゃないでしょうか。きちんと燃えるツボを押さえてるとこがナイスです。グラフィックもヴァリヴァリ60fpsで動いてくれますし(そのかわり敵が板だったり箱だったりするけど)、背景が結構ギュンギュン回ってくれるところもポイント高いです。
 で、書いたとおり操作はすごい複雑、というか初めて見たらムチャクチャと思うこと間違いなしです。だってシステムが「(レイフォース+宇宙戦艦ゴモラ)+シルバーガン」な感じだし、しかもリロードがあんのよリロードがよぉ! ショット打ちっ放しにするとすぐ弾切れこくし、ブレードなんて一回斬ったら使えなくなることもあるし。でもやってみると…これが快感なんスよね。特にブレードのリロードが(・∀・)イイ! ブレードをリロードすると「バンッ!」って言わしながら古いブレードを投げ捨てるんですよ。なんかサムライが斬って斬って斬りまくって切れ味が悪くなった刀を放り投げるみたいな感じ(ってサムライが刀を捨てるなんてあるのか? 余談ですが日本刀は時代劇みたいに人を斬って斬って斬りまくるなんてできないらしいですよ。すぐに人の脂や刃こぼれで切れなくなるから)なんですよこれが。ショットやレイのリロードとかも、敵の攻撃の切れ目に「くっ、弾切れか!」って独り言言いながら(w)「カシッ」ってやると意外とその気になっちゃったりしてこれもまたナイスです。
 ただ、その気になるほど慣れるまでが大変です。漏れももちろん必死こいてやりました。Easyだけど。そして何とかちょっとずつ慣れてきて面白くなってきましたよ。やっぱりシンクロ率が高くなってくると操る実感が感じられていいですね。気分は「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ、目標を…」ですねって何か違いますか、こりゃ。でもそんなこと言ってる割にはまだロックオンサイトを回しながらロックオンしてレイを撃つことくらいしかできませんが何か?(w
 ともあれ、「ゼクス」というのはあらゆる意味で「レベルの高い」ゲームです。レベルの高さ故プレイする人間を選ぶんじゃないかと思われるかもしれませんが、思い切ってやってみましょう。出来るか出来ないかは別にして…


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