クロスレビュー企画  「もえたん 萌える探偵小説」

 第4回お題その1
   『快傑!トリック☆スターズ』 桐咲了酒 (ファミ通文庫)

海上美術館である豪華客船を舞台に、名探偵と怪盗が激突!?
探偵サイドは、天然ボケの眼鏡っ娘(名探偵?)、銃器と格闘に精通したぱわふる姉さん、普通の少年(語り手)の3人。 対する怪盗サイドも、二代目怪盗・右京、メイド少女(暗殺者)、サムライの3人。  そして、探偵たちの目の前で絵画が消失。怪盗サイドの仕業なのか。そのトリックは? 消えた絵画の行方は…

   NITRO@ジェット機・リー

 探偵チームと盗っ人チームが3人ずつ出てきて、それぞれのキャラを魅力的に見せようとして無理矢理萌え要素を入れちゃいました、みたいな。 そこまでしなくてもといいと思ったし、何なら盗っ人チームを1人にしてしまえば、もう少しすっきりしたスマートな作品になったと思います。 なんかいっぱい詰め込みすぎでゴチャゴチャしてるのと、へたっぴな萌え描写が鼻について、読むのがつらくてしょうがなかったです。 ぶっちゃけこの作者はライトノベルに向いてないんじゃないでしょうか。 普通にミステリ書いたほうが面白い作品になりそう。ということで、残念賞。

   NAO@エッグ・スタンド

 正直なところ、1点を付けようかと考えました。 でも、脳内で「反対、反対、絶対反対! 本当の地雷以外に1点を付けるのは間違ってると思います」と由乃さんに言われたので、 2点ということにします(笑)  といっても、恐らく、この作品をこんなに貶しているのは今回のレビュでは私だけだと思います。 個人的に生理的嫌悪と表現していいほど受け付けない小説でした。その理由は文体にあるのではないか、と思っています。 これはもう文章が下手だとか、そういうのではなく理屈抜きで駄目でした。
 ミステリ的にも評価できない、と感じました。 メイントリックは確かにインパクトはあるけれど、見せ方やそれまでの描き方も関心しません。 <探偵>対<怪盗>というありがちだけど魅力的な設定をもうちょっと活かせていれば……と思わずにはいられません

   菊地@SNOW ILLUSION

 探偵団と怪盗団が出てくる、どことなく懐かしい雰囲気を持った作品。 ミステリ要素より冒険活劇やキャラクター性などの要素が強い「探偵小説」。
 探偵側・怪盗側共にメリハリの効いたキャラが揃っているので、会話やアクションなどのテンポが小気味いい。 可愛いタッチで描かれたイラストが、漫画のような作風のこの作品にマッチしていた。メイドさんはロマンです。 新聞風に作られたキャラクター紹介なども面白い試みだと思った。 ただし、謎解きの中心になる「絵の消えた部屋の謎」がイマイチ。 「過去に警察が綿密に調べた」という前提の元にあるトリックだけに、さすがに弱過ぎるのではないかと。 こういったミステリ部分に多少の不満はあるものの、全体的には良質な探偵冒険活劇ものとして楽しめた。
 評価点はミステリとしてより、冒険活劇ものとしての高評価。 ミステリ要素を重視するともう少し下がるかも。

   キセン@D4D

 一言で言えば、空回りしている。
ミステリとしては特に何も感想はない。及第点ではないだろうか。 ただ、視覚的なトリックを使っているのだから、図版を使ったほうがカタルシスをより引き立てることができるのではないか、と感じた。 この作品の欠点は他にあると思う。例えば、立ち上がりの遅さ。始めに設定の羅列をしてしまっていて、それが作品世界の没入を妨げてしまっている。 他にも例えば、クライマックスのバトル。 読者をその気にもっていく手続きが省略されているので、 作者とキャラクタのテンションのみが一方的に上昇し、読者に違和感を抱かせる結果に終わってしまっていると感じる。 そのほかにも、キャラクタの肉付けが表面的なところにとどまっている点、作中での主張の陳腐さ、 それらが(あるとすれば、の話だが)作者の思惑とは別の方向に作用してしまっている気がする。 今作ではこれ以上の点はつけられないが、上手くいけば、いい作品をものす可能性はあると思う。

   リッパー@鍵の壊れた部屋で見る夢

 メイントリック自体には特にこれといって言うべきことはないけど、唐突に訪れるとある場面がミステリ部分に関わっていたのは面白かった。 いかにもライトノベル的な読者サービスかと思わせておいて実は伏線だった、というのにちょいと驚きました。 でも、ミステリとしては薄め。怪盗対探偵なんて趣向のわりに、対決そのものが盛り上がらないのが残念。 ていうか、おまえら仲良くしすぎ。
 個々のキャラクタを取り上げてみれば、ライトノベルにおけるキャラ萌えコードをそれなりにおさえてはいるのだけど、 どうもライトノベル的な美少女萌えを描くには作者の力量が足りてない感じ。メイドってだけで萌えられると思ったら大間違いじゃよー。 個人的には怪盗君がいまいち魅力的でない気がするので、怪盗がメイド少女(変装、ホントは男の子、主人公を誘惑するとかw)だとか、 サムライあんちゃんとのボーイズラブ風関係があれば良かったのに。←より濃くしてどうするよ。探偵役の天然ボケ眼鏡っ娘は良いと思いました。

平均 4.0


 第4回お題その2
   『GOSICK』 桜庭一樹 (富士見ミステリー文庫)

舞台は第一次大戦後の西欧。留学中の九城少年は少女・ヴィクトリカとささやかな交流をしていた。 授業にはまったく顔を出さず、日がな一日図書館の最上階にこもり独学で知識を学ぶヴィクトリカ。彼女の明晰な頭脳はときとして難解な事件を解きほぐす。 関わった事件をきっかけとして、久城少年とヴィクトリカは2人でとある客船に乗りこむことになるが…。船上での陰惨な殺戮劇が幕を開ける。

  10  NITRO@ジェット機・リー

 「萌える探偵小説の真髄が、ここにある」

 見た目の愛くるしさと裏腹に、高圧的な物言いや理不尽な命令でワトスン役の九城くんを振り回すヴィクトリカたん。 二人の会話が楽しい。SとMなんで相性バッチリです。 物語としては、現在と10年前の事件が交互に進んでいく形式で、最初はぼんやりしていた輪郭が徐々にはっきりしていくにつれてぐいぐい惹きこまれていきます。
 イラストも秀逸。ほんとヴィクトリカたんがかわいく描かれてて、特にほっぺたフェチにはたまらん出来ではないでしょうか。 萌える探偵小説という意味では最高の出来ですね。ということで、星10個でございます。

   近田鳶迩@ざ・ねば〜・えんでぃんぐ・みすてり〜

 奇しくも『快傑☆トリックスターズ!』と同じ豪華客船モノ。 有名なメリーセレスト号事件を題材に、ミステリよりもゴシックホラーとしての雰囲気作りに重点を置いた作品。 ヴィクトリアと九城少年の何とも微笑ましい主従関係パートも良いが、 個人的には過去パート、豪華客船で起こった忌わしき事件の描き方にかなりの緊迫感があって、とても興味深く面白く読めた。 ジュブナイルホラーとでも言うのだろうか、未来ある少年少女たちが次々と降りかかる理不尽な恐怖に翻弄される様は非常に居た堪れないものだが、 同時に惹きつけられる妖しい魅力がある。 真相の方は相当な大風呂敷ではあるが、不思議と難癖をつける気にならなかった。 ライノベミステリでこういう路線はちょっと珍しいように思うので、是非とも継続してもらいたい。

   秋山真琴@雲上回廊

 サスペンスあり、ミステリあり、ラブあり。 常人を凌駕する天才性を有するヒロインだがしかし、彼女は鳥篭の中に閉じこめられている。萌えもあると言って差し支えないだろう。 端的に言って、本書はライトノベル読者向けに書かれたミステリとしては、申し分ない。 地雷揃いの富士見ミステリー文庫の中にあって、その存在は一際輝いていると言っても構わない。 けれど――これは自分の求めるところではない。  秋山がライトノベルに求めているのは、ミステリでも萌えでもなく、既存のジャンルに囚われない革新的な新しささだ。 この作品の完成度は確かに高いが、あまりに保守的になりすぎている。もっと挑戦心を!

   NAO@エッグ・スタンド

 ヴィクトリカ萌え〜。いやぁ、作者は狙ってるんだろう、と予測しながらも萌えてしまいます。 武田日向さんが描く金髪美少女のイラスト、それからあの言葉遣い。 それらが見事に相俟って、光り輝く萌えパワーを発しております。 読んでいくうちに、本格ミステリの部分より、キャラクター小説的なファクターが上位に来ていることがわかるので、 「全然本格じゃねーじゃん」と憤ることもありませんでした。 読者を萌えされる場面が、がんがんと盛り込まれているのも評価できるポイントでしょう。 クラシカルな雰囲気と萌え。美しいイラスト萌え。 ……私的にはもうミステリに囚われず「萌え小説」としてシリーズを続けてもらいたい。 あとがきもまた良し

   トラック@コズミックサーフィン

 取り立てて慌て過ぎず、されど落ち着き過ぎず―― 隅々に手が入りしっかりと組み立てられた物語の構成と丁寧な筆致から、そんな印象を抱きました。 そんな本書の舞台となる、船内にて繰り広げられる事件への導入が、 九城とヴィクトリカの一方的でもあり漫才的でもある掛け合いによってすんなり入り込め、 あとは流れに任せて作中の雰囲気を存分に味わいました。 そういった意味に於いて自分は中盤まで、本書をミステリとしてではなく船外へ脱出するサスペンスものとして捉えていましたが、 ラスト付近で明かされる真相には、見え見えながらもその精緻さに驚かざるを得ませんでした。 こつこつと、そして周到に張られた伏線を綺麗に昇華させた手堅さに脱帽です。 そして、エピローグでヴィクトリカにまつわる諸々の事情が発露された時、本書がいじらしい作品となりました。実に善いです。  ……ちなみに、本書で一番気にいったキャラはプロローグとエピローグに登場するアブリルで、拗ねた時の様子がたまりません。再登場希望です。

   菊地@SNOW ILLUSION

 序盤は安楽椅子探偵、後半は漂流船ものと、一粒で二度美味しいミステリ。
現在の話の合間に、過去の事件が同時並行的に挿入されるという構成で、二つの事件が一つに収束して行く流れが素晴らしかった。 事件の元凶とも言える部分で大風呂敷を広げているが、それをトンデモにならない程度に上手く畳んでいる点も評価出来る。 ミステリとしての完成度は非常に高いレベルでまとまっていた。 個人的な好みで言えば、漂流船で関係者が一気に減ってしまったことが残念。もう少し順を追って減らしていって欲しかった。
 一方でキャラクターも非常に魅力的。世間知らずなヴィクトリカが凄く可愛い。 イラストの相性もばっちりで、「ゴスロリ万歳」と叫びたくなるくらい萌え。 「萌え」と「ミステリ」のトータルバランスが非常に高い作品だった。

 余談。  後書きが読み物として異常に面白かった。 こんなに長くて笑える後書きは滅多にないかと。

   キセン@D4D

うまく文章にできないので、感想を分断してばらばらに記す。

  • 冒頭は鮮やか。
  • 密室がしょぼい。捜査陣の能力を低く設定しすぎでは?
  • ヴィクトリカたんが萌える。
  • イラストが素晴らしい。
  • しかし苦手である。 
  • 少年少女サバイバルが苦手なのだ。
  • 特に、見え隠れする一種の浅はかさが、読んでいてこたえる。
  • もうひとつ付け加えるなら、ラストを読んでもやもやとした違和感を覚えるのを抑えることができなかった。
  • ほんとうにそれでいいのか? というような。
  • 完全に主観的な感想だが、僕が読んだのだから点に加味しないわけにはいかない。
  • ミステリ的には上等だと思った。
  • 伏線がややあからさま過ぎるかな、と思わないでもなかったが、上手くまとめたと感じる。
  • しかし、実際この話はもっと新本格っぽいゲーム性豊かな作品で見たかった。
  • 繰り返すが僕のネガティヴな意見はすべて主観による。
  • 一般的には「秀作」ということになるのだろう。
  • 続篇はヴィクトリカたんの日常を描くほのぼのミステリを希望。
  • 駄目ですか。駄目ですね。もう出てるし。
   リッパー@鍵の壊れた部屋で見る夢

 無茶を承知でこう宣言しよう。 「『GOSICK』は富士見ミステリー文庫のディクスン・カー! ヴィクトリカたんは美少女版ヘンリー・メリヴェール卿」だと。

 ライトノベルの魅力はそのままに、古典ミステリの味わいがうまくブレンドされた、極めて完成度の高い作品。  これは何よりも舞台設定の勝利じゃないかなあ。黄金時代本格と呼ばれる海外ミステリのようなクラシカルな舞台を背景にすることで、 ミステリ的にはやや初歩ともいえるトリックやネタを効果的に扱うことができる。前半にある密室殺人は、まるでカー作品を読んでいるかのよう。 さらに、船上での殺戮劇、過去の悲惨なサバイバル、壮大さを感じさせる事件の背景と、やはりこの時代設定であるからこそ成り立つ物語でありミステリであると思います。
 キャラクタの立て方は文句なし。ヴィクトリカの萌え少女っぷりは素晴らしいことこの上ないし、主人公の九城君も爽やかで好感の持てる性格。 ほんのちょい役なんだけど、アブリルという女の子の印象もすこぶるよろしい。 作者はキャラ萌えの何たるかをよーく理解している模様。九城君とヴィクトリカが旅に出るあたりのくだりは頬が緩みまくりになること間違いなし。 それと、絵師にも恵まれたようで、イラストが作品の魅力を大きく押し上げてます。 前時代的な設定のおかげでヴィクトリカたちはゴスロリな恰好をしてるのだけど、そのへんの魅力を余すことなくイラストで表現されてるとあっては、もう萌えるしかない。

平均 7.5


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