
金子 みすゞ の世界
金魚
月はいきするたびごとに
あのやはらかな、なつかしい
月のひかりを吐くのです。
花はいきするたびごとに
あのきよらかな、かぐはしい
花のにほいをはくのです。
金魚はいきするたびごとに
あのお噺の継子のやうに
きれいな寶玉をはくのです。
金魚のお墓
暗い、さみしい、土のなか
金魚はなにをみつめてる。
夏のお池の藻の花と、
揺れる光のまぼろしを。
靜かな、靜かな、土のなか、
金魚はなにをきいてゐる。
そつと落葉の上をゆく、
夜のしぐれのあしおとを。
冷たい、冷たい、土のなか、
金魚はなにをおもつてる。
金魚屋の荷のなかにゐた、
むかしの、むかしの、友だちを。U-101
POEM BY KANEKO MISUZU
PHOTO BY 東京都水産試験場