
金 子 み す ゞ 詩集
POEM U KANEKO
MISUZU
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闇夜の星
闇夜に迷子の
星ひとつ。
あの子は
女の子でせうか。
私のやうに
ひとりぼつちの、
あの子は
女の子でせうか。U-28
- 水すまし
一つ水の輪、一つ消え、
三つまはれどみな消える。
水にななつの輪を描けば、
魔法は泡と消えよもの。
お池の主に囚はれの
今の姿は、水すまし。
きのふもけふも、青い水、
雲は消えずに映るけど、
一つ、二つ、と水の輪は、
一つあとから消えてゆく。U-35
杉と杉菜
一本杉はうたふ。
あの山のむかうの
大きな海のなかに、
蝶々のやうな、
白帆を三つ、みたよ。
一本杉はうたふ。
あの山のむかうの
大きな町のなかで、
青銅(カラカネ)の豚が、
水をふくのをみたよ。
一本杉の下で
杉菜がうたふ。
私もいつか、
あんなに伸びて、
遠くの遠くをみようよ。
U-36
- 風
空の山羊追ひ
眼にみえぬ。
山羊は追はれて
ゆふぐれの、
曠野(ヒロノ)のはてを
群れてゆく。
空の山羊追ひ
眼にみえぬ。
山羊が夕日に
染まるころ、
とほくで笛を
ならしてる。U-39
- 畠の雨
大根(ダイコ)ばたけの春の雨、
青い葉つぱの上にきて、
小さなこゑで笑ふ雨。
大根畠の晝の雨、
あかい砂地の土にきて、
だまつてさみしくもぐる雨。U-41
- ゆびきり
牧場の果にしづしづと、
赤いお日さま沈みます。
柵にもたれて影ふたつ、
ひとりは町の子、紅いリポン、
ひとりは貧しい牧場の子。
「あしたはきつと、みつけてね、
七つ葉のあるクローバを。」
「そしたら、ぼくに持つてきて、
そんなきれいな噴水(フキアゲ)を。」
「えええ、きつとよ、ゆびきりよ。」
ふたりは指をくみました。
牧場のはての草がくれ、
あかいお日さま、ひとりごと。
「草にかくれて、このままで、
あすは出ないでおきたいな。」U-46
- はだし
土がくろくて、濡れてゐて、
はだしの足がきれいだな。
名まえも知らぬねえさんが、
鼻緒はすげてくれたけど。U-47
- 土と草
母さん知らぬ
草の子を、
なん千萬の
草の子を、
土はひとりで
育てます。
草があをあを
茂つたら、
土はかくれて
しまふのに。U-48
- 薔薇の町
みどりの小徑(コミチ)、露のみち、
小みちの果は、薔薇の家。
風吹きやゆれる薔薇の家、
ゆれてはかをる薔薇の家。
薔薇の小人はお窓から、
ちひさな、金の翅みせて、
おとなりさんと話してた。
とんとと扉(ドア)をたたいたら、
窓も小人もみな消えて、
風にゆれてる花ばかり。
薔薇いろのあけがたに、
たづねていつた薔薇の町。
その日
わたしは蟻でした。U-49
- 夕顔
蝉もなかない
くれがたに、
ひとつ、ひとつ、
ただひとつ、
キリリ、キリリと
ねぢをとく、
みどりのつぼみ
ただひとつ。
おお、神さまはいま
このなかに。U-51
- お日さん、雨さん
ほこりのついた
芝草を
雨さん洗つて
くれました。
洗つてぬれた
芝草を
お日さんほして
くれました。
かうして私が
ねころんで
空をみるのに
よいやうに。U-53