金 子 み す ゞ 詩集

POEM KANEKO MISUZU

(現代かな使い)

 喧嘩のあと

ひとりになった
一人になった。
むしろの上はさみしいな。

私は知らない
あの子が先よ。
だけどもだけども、さみしいな。

お人形さんも
ひとりになった。
お人形抱いても、さみしいな。

あんずの花が
ほろほろほろり。
むしろの上はさみしいな。

 

T-91


 お堀のそば

お堀のそばで逢うたけど、
知らぬ かおして水みてた。

きのう、けんかはしたけれど、
きょうはなんだか なつかしい。

にっと笑ってみたけれど、
知らぬ顔して水みてた。

笑った顔はやめられず、
つッと、なみだも、止められず、

私はたったとかけ出した、
小石が縞になるほどに。
 

T-104


  夕顔

蝉もなかない
くれがたに、
ひとつ、ひとつ、
ただひとつ、

キリリ、キリリと
ねじをとく、

みどりのつぼみ
ただひとつ。

おお、神さまはいま
このなかに。
 

U-51

 

  お花だったら

もしも私がお花なら、
とてもいい子になれるだろ。

ものが言えなきゃ、あるけなきゃ、
なんでおいたをするものか。

だけど、誰かがやって来て、
いやな花だといったなら、
すぐに怒ってしぼむだろ。

もしもお花になったって、
やっばしいい子にゃなれまいな、
お花のようにはなれまいな。
 

U-88


  さびしいとき

私がさびしいときに、
よその人は知らないの。

私がさびしいときに、
お友だちは笑うの。

私がさびしいときに、
お母さんはやさしいの。

私がさびしいときに、
仏さまはさびしいの。

 
 
U-112

 

  げんげ

ひばり聴き聴き摘んでたら、
にぎり切れなくなりました。

持ってかえればしおれます、
しおれりゃ、誰かが捨てましょう。
きのうのように、ごみ箱へ。

私はかえるみちみちで、
花のないとこみつけては、
はらり、はらりと、撒きました。
――春のつかいのするように。


U-157


  

空のあかるい
日のくれは、
いつも遠くで
声がする。

かごめかなんか
してるよな。
それとも
波の音のよな。
やつぱり
子供の声のよな。

なにかひもじい
日のくれは、
いつもとおくで
声がする。 
  

U-164

 

 
 井戸ばたで

お母さまは、お洗濯。
たらいの中をみていたら、
しゃぼんの泡にたくさんの、
ちいさな お空が光ってて、
ちいさな 私がのぞいてる。

こんなに 小さくなれるのよ、
こんなに たくさんになれるのよ、
わたしは 魔法つかいなの。

何かいいことして遊ぼ、

つるべの縄に 蜂がいる、
私も蜂になってあすぼ。

ふっと、見えなくなったって、
母さま、心配しないでね、
ここの、この空飛ぶだけよ。

こんなに青い、青ぞらが、
わたしの翅に触るのは、
どんなに、どんなに、いい気持。

つかれりゃ、そこの石竹の、
花にとまって蜜吸って、
花のおはなしきいてるの。

ちいさい 蜂にならなけりゃ、
とても聞こえぬ おはなしを、
日暮れまででも、きいてるの。

なんだか 蜂になったよう、
なんだか お空を飛んだよう、
とても嬉しくなりました。

V-47

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 お葬いごっこ

お葬いごっこ、
お葬いごっこ。

堅ちゃん、あんたはお旗持ち、
まあちゃん、あんたはお坊さま、
あたしは きれいな花もって、
ほら、チンチンの、なあも、なも。

そしてみんなで叱られた。
ずいぶん、ずいぶん、、叱られた。

お葬いごっこ、
お葬いごっこ。
それでしまいになっちゃった。

 

T-106

監修 POET-RING

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