金子 みすゞ の世界

 井戸ばたで

お母さまは、お洗濯。
たらいの中をみていたら、
しゃぼんの泡にたくさんの、
ちいさな お空が光ってて、
ちいさな 私がのぞいてる。

こんなに 小さくなれるのよ、
こんなに たくさんになれるのよ、
わたしは 魔法つかいなの。

何かいいことして遊ぼ、
つるべの縄に 蜂がいる、
私も蜂になってあすぼ。

ふっと、見えなくなったって、
母さま、心配しないでね、
ここの、この空飛ぶだけよ。

こんなに青い、青ぞらが、
わたしの翅に触るのは、
どんなに、どんなに、いい気持。

つかれりゃ、そこの石竹の、
花にとまって蜜吸って、
花のおはなしきいてるの。

ちいさい 蜂にならなけりゃ、
とても聞こえぬ おはなしを、
日暮れまででも、きいてるの。

なんだか 蜂になったよう、
なんだか お空を飛んだよう、
とても嬉しくなりました。




   さくらの木

もしも、母さんが叱らなきゃ、
咲いたさくらのあの枝へ、
ちょいとのぼってみたいのよ。

一番目の枝までのぼったら、
町がかすみのなかにみえ、
お噺のくにのようでしょう。

三番目の枝に腰かけて、
お花のなかにつつまれりゃ、
私がお花の姫さまで、
ふしぎな灰でもふりまいて、
咲かせたような、氣がしましょう。

もしも誰かがみつけなきゃ、
ちょいとのぼつてみたいのよ。

 

U-1

POEM BY KANEKO MISUZU
PHOTO BY 『Yukino's Room』 
           http://www17.tok2.com/home/MAMI/index.htm
MIDI BY   http://nocturne.vis.ne.jp/

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