読みやすい小説系サイトを目指して

著者:一色秋人さん

第2章 人気サイトの条件とは?

 
ネット小説はそもそも稚拙?
 
人気サイトの条件とは?(1)
 
大人気作品はどう作る?
 
人気サイトの条件とは?(2)
 
読者はどのようにして信頼できる作品を選ぶのか?

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■ネット小説はそもそも稚拙

 「あまりにもひどいものが多すぎて、オンライン小説なんて読む気がしない」
 こういう感想がさゆさんのもとに届けられたそうです。

 ネット小説が稚拙なのは、ある意味、当然ですね。

 プロ作家の多くはプロになるまでに何かしらの賞を受賞しますが、このとき多くの人間にチェックされます。またプロデビューした後も、その作品は出版前に編集者の厳しい眼でチェックされますから、稚拙な作品はその段階で淘汰されます。

 というわけで、プロになるまでに稚拙な作家は淘汰され、プロになってからも稚拙な作品は淘汰されるわけですから、一定の水準を満たした作品しか市場に流れていないことになります(原則として)。

 一方、ネット小説はまったくチェックされていません。また作品の完成度に関する意識や読者に対する意識もないまま、好きなように書かれているものがほとんどのはずですから(好きなようにやるのがホームページの基本です)、稚拙な作品が溢れるのも当たり前ですね。

 そのため、ネット小説は読者を失っています。読者の多くはあまりに多い稚拙な作品に飽きていて、「これは!」と信頼できる作品しか読もうとしません。

 それでは、読者はどのような基準で「信頼できる作品」を選択するのでしょうか? この点に、人気サイトの条件が深く関係してきます。

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人気サイトの条件とは?(1)

 人気の小説系サイトは僕が見たところ、
  ・綺麗なイラストが豊富
  ・特定の作家のファンページを兼ねている
  ・それどころか、現役プロ作家自身が運営している
  ・現役作家ではなくとも、
   同人誌活動等で既に名前を広く知られている方が運営している
  ・大人気(有名な)作品がある(もちろん優れた作品です)
 これらの条件のうち、どれかを満たしているようです。複数満たしているサイトも多くあります。まず一番目の条件から少し分析してみましょう。

 一番目の条件は、インターネットの特性をフルに活かしたもので、市販の文庫本ではなかなか真似のできないものです。最近はイラストが豊富な文庫も増えてきましたが、僕くらいの年齢の人間には手にすることもできない雰囲気を漂わせています。しかし、そうした文庫の人気が高いのは、月々の新刊数や創設された文庫の数からも明らかです。

 イラストの多い小説の特長は、文面からは思い起こせないような各種イメージを、イラストの力によって容易に読者に与えてしまうことにあります。しかしその反面、そのイラストから喚起されるイメージに抵抗を感じる人間は、いきなり拒否反応を起こしてしまいます。そして、拒否反応を起こすような人が周りに多いと意識する人間は、それだけで、興味は持っていても手を伸ばせなくなってしまいます(「平成徒然草」の「イラストって」も見てみて下さい(^^) 別窓で開きます)。

 僕にとっては、小野不由美の「十二国記シリーズ」がそれにあたります。雑誌等での評価が高いので、一読してみたいとは思うのですが、いかんせん「十二国記シリーズ」が並んでいる棚に、近付くこともままなりません。妻の目も気になります。

 そうしたわけで、イラスト豊富な小説がそもそもかなりの数の読者層を獲得しているのに加えて、通常は手にできない人間も、匿名性の高いインターネット上であれば容易に閲覧しようとするでしょうから、イラスト豊富な小説サイトは人気があるのでしょう。またイラストが豊富だと、それだけ気楽に構えることができます。マンガを読むときのような気楽さですね。この点も人気の秘訣だと思います。

 次に、二番目の条件もかなり納得のいくものです。ある作家のファンになった人は、その作家の情報に飢えていますから、ネット上で情報収集を図ります。特定の作家のファンページには、そうした人々がまず訪れます。

 ファンページを兼ねた小説系のサイトの強みは、そうしたファン層を取り込むと同時に、その作家のパロディ小説を自分で書けるところにあります。

 赤川次郎や西村京太郎でもない限り、作家が出版する作品の数は年に数本が限度ですから、ファンはほぼ常に飢えていることになります。パロディ小説はそうした読者の飢えを癒してくれます。そればかりか、期待してもなかなか作者が書いてくれない展開を、パロディ小説では実現することもできます。(同人誌にこうしたものが多いようです。読んだことはないですが。)

 とにかく、そうしたわけで、ファンページを兼ねた小説サイトは、かなりのファンの需要を満たします。

 次に、現役プロ作家のサイト、という三番目の条件は、これはもう当然ですね。その作家のファン層が見に来ますから。もうものすごいことになってます。

 四番目の条件は二番目の条件とかなり重なります。パロディ小説の同人誌を発行している人のサイトは、すごい人気ですね。パロディの種にされている作家のファン層と同時に、その同人誌作家自身のファン層も訪れますから、これはものすごいです。とある有栖川有栖の同人サイトは、十万カウントを越えていました。なんと六桁です。

 さて、五番目の条件。正統派直球勝負の小説系サイトにとっては、この条件が最も重要ですね。

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大人気作品はどう作る?

 上に挙げた五つの条件。
 イラストは画才がないと難しい。ファンページはよほどその作家に対する愛情がない限り難しい(客寄せのためのファンページなら、はじめから作らない方がましです→「ここでも陥りがちな落とし穴」参照)。第三・第四の条件に至っては、人気サイトのためにプロ作家や人気同人作家になる必要があるから、目的と手段が入れ替わっているような気がする……。

 イラストもなし。ファンフィクションもなし。掛け値なしの創作小説だけを根幹に据えた正統派小説系サイトなら、もう五番目の条件しか残っていません。

 そこで、この条件が最も重要になってくるのですが、いかんせんこの大人気作品、ただ作品が優秀なだけでは大人気作品にはなりません。

 「大人気作品」になるためには、まず広く知られる必要があります。当たり前ですね。いろいろなところでその名前を見るからこそ、「大人気作品」なのです(もちろんその作品が優秀であることは必要不可欠の条件です。いくら知られていても、読者が読んで失望するなら人気作品にはなりません)。

 このときポイントになるのは、自分の手でいくら宣伝したところで、それは単なる手前味噌なのであって、「大人気作品」につながる「前評判の獲得」には至らないと云う点です。上述のように、ネット小説のほとんどが稚拙ですから、読者はあらゆる作品を「これ、どうせカスでしょ」という疑いの目で見ています。そんななか自分の手で自分の作品を宣伝しても、やはり「どうせ嘘でしょ」と疑われるだけです。これは作品を面白いと思わせるような巧みな宣伝であればあるほど、読者に信じられなくなります。なぜなら「そんな面白そうな作品はネット小説には存在しない」から(少なくとも読者の多くがそう思っているから)です。

 ですから「大人気作品」を作るためには、あちこちで他人の手によって紹介されなくてはなりません。

 それは「楽園」で上位にランキングされることでも、単に友人のサイトで紹介されるだけでも構いません。とにかく、あちこちで他人の手によって紹介されなくてはならないのです。

 ただポータルサイト(「楽園」など)のランキングは今や信頼を失いつつあります。これは共同研究室(掲示板)の書き込みを見ていると明らかですね。多くの方がランキング上位作品に失望させられています。

 読者はもはやネット小説の中から優秀な作品を探す手段を失った、と云っても過言ではありません。

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人気サイトの条件とは?(2)

 先に五つの条件を挙げました。そのほかに容易に想定できる条件としては、
 ・小説以外のコンテンツが充実している
 ・文章がプロ並みに巧い
 ・小説のテーマに広く需要がある
 を挙げることができるでしょう。

 一番目の条件は当然です。他のコンテンツが面白くて人を集めているのですから。ただ小説が読まれているかどうかは確認できないですね。この点は「アクセス向上に関するちょっとした誤解」でまた触れます。

 二番目の条件を満たしていれば、これはすごいことです。出版依頼が来ます。何せプロ並みですから。ただ読んで貰えないと、その巧さを伝えることができません。優秀なだけでは人気サイトになれないのは、上で述べたとおりです。

 最後に三番目の条件、これは人気サイトになるための必須条件のようです。というより、需要のないジャンルの小説は、ただそれだけで閑古鳥を決定づけてしまいます。例えば、難解な純文学ばかりを扱っているサイトというのは、それはそれでとても面白いですが、訪問者層が実に限られてきます。

 体験談を一つ。

 僕は「NOVELING」というウェブリングに参加しています。このウェブリングに正式に登録されてから二週間くらい、僕のサイトには誰も来客がありませんでした。アップロードの度に動作確認をする僕だけが、カウンタを回していました。僕のサイトはロボット式の検索エンジンにすら登録されていないので(これは00/04/04の話。なおgooには00/08/22の段階でも登録されていません)、このウェブリングだけが頼りでした。しかし誰も来ません。ランダムリンクで来る人すらいません。

 まあはじめは誰もがそうなのだろうと、高を括っていたのですが、ある日、僕より一週間後に登録されたサイトが、すでに三百人を越す来客を得ていることに気付きました。これで、僕のサイトに重大な欠陥があると思い知らされました。

 そこでまず自分のサイトの紹介文を見直すと、「春秋戦国時代」「中国古代思想」「孫子」などと堅苦しいキーワードが並んでいます。それに比べて他のサイトは、大部分が「ファンタジー」「イラスト」「パロディ」というキーワードを並べていました。完全に場違いです。誰も来るはずがありません。小説を求めてウェブリングに来る人が、「孫子」とか「思想」とか書いてあるサイトに来るはずがありません。これは完全に間違いでした。

 ウェブリング上の紹介文を変更したものの、効果はないと判断し、自分の作品を「HONなび」というネット小説のポータルサイトに登録することにしました。「3days:凍てついた風」という中編ミステリです。運良く新着情報のトップに並んだためか、その日、その翌日と、日に60名近い人が訪れてくれました。しかし小説への反応はありません。掲示板も真っ白です。これで、自分の作品は読まれていないのではないか、と不安になりました。

 まあ、とにかく、訪問者は増えたのですから、これに気を良くして、その翌日、三本の超短編小説を登録しました。しかしカウンタの動きは「3days」のときほど飛躍的に伸びません。その反面、反響はすぐにありました。僕の作品を読んでもらえたのです。これには感動しました。

 ここで学んだことは二点です。

 一点目は、「ファンタジー」や「ミステリ」といった人気があるジャンルの作品には、それだけで多くの反響がある、ということです。とにかく人は来てくれます。しかし興味を持ってもらえるのは事実ですが、読んで貰えるかどうかは別の問題です。「3days」はほとんど読まれていない、と推測されます。その理由は後述します。逆に「その他─短編」という地味なジャンルに登録した超短編小説は、人を集めることはあまりできませんでした。

 二点目は、長編は読んでもらえない、ということです。「3days」は中編と銘打っていますが、他のネット小説と比較すると、大長編の部類に属します。この長編小説には何の反響もありませんでした。しかし超短編の方には反響がありました。考えるまでもなく、余程面白くない限りは長々と人の文章を読んだりしません。少しでも誤字脱字があろうものなら、早々と読むのを断念してしまいます。その小説を高い値段で買ったわけでもないので、苦痛に耐えてまで読む必要がないからです。恐らく、長編と気付いた段階で読むのを断念する人も多いと思います。しかし短編は違います。直ぐにゴールは見えているのですから、詰まらなくてもとりあえず読了してもらえるようです。僕も短編は余程のことがない限り最後まで読みます。

 というわけで、長編は読んでもらえないようです。

 ただ長編が読まれにくい点は紛れもない事実ですが、すべての長編が長編という理由だけで読まれないわけではないようです。この点は「長編はほんとに読まれない?」で詳しく考察したいと思います。

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■読者はどのようにして信頼できる作品を選ぶのか?

 ここであらためて読者がどのような基準で信頼できる作品を選択するのか考えてみましょう。
 まず前評判が高い作品を選ぶと云うことは容易に想像できます。つまり口コミですね。あちこちで名前を聞く作品なら、「これは大丈夫じゃないか」と安心して一行目を読めます。

 次にランキング上位作品。「多くの人が選んでいるから」という理由ですね。ただしこのランキングが信頼を失いつつあることは上で述べました。例えば、そもそも「楽園」のランキングは、「楽園」から小説ページを辿った人が母体となっているわけではありません。「楽園」からリンクを辿った人に加えて、その小説ページがあるサイトの訪問者(リピータ)も母体になります。すべてのサイトで前者が後者を大きく上回っているならランキングも信頼できますが、現状では後者が前者を大きく上回っているサイトが圧倒的に有利です。ですから、「楽園」ではじめて宣伝を行うようなサイトでは、思うように票を稼ぐことができないでしょう。そのほかにもいろいろとトリックはありそうですが、思い浮かびません。

 そのほかサイトの雰囲気も作品を信頼する大きな要素になるようです。そうした意見が共同研究室(掲示板)に寄せられていました。とりあえず訪問してみて、そこが自分のフィーリングに合ったデザインなら、小説も読んでみる、という意見です。逆に、雰囲気が自分の趣味に合わないと小説は読まないという意見もありました。

 最後に、小説の出だし数行が重要になると思います。僕の予想としては、特に短編(エッセイ・日記)の出だしが重要になると考えられます。

 新規の訪問者の多くは、そのサイトにある小説が読むに値するかどうか、まずは短編やエッセイ・日記などの軽い読み物で試すでしょう。そこで面白い文章に出逢えば、「この作家の文章は読むに値する」と作品に対しても信頼を寄せるはずです。

 以上をまとめると、

 ・前評判が高い
 ・ランキング上位作品
 ・サイトの雰囲気が良い
 ・軽い読み物の文章が面白い

 の四点になります。このうち第三と第四は最も気を付けなくてはならない点ですね。第四の条件で云えば、あまりに稚拙な文章は人目に付かない位置に移動させるか、撤去した方が良いでしょう。また小説の並び順はアップロード順ではなく、自信のある作品順にした方が良いですね。どれから読むか迷ったとき、読者の多くは並び順で一番上に来る作品から読み始めると予想できるからです。あるいは、「まずは○○から読んでみて下さい。私の自信作です」と作品を指定するのも効果的です。

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