読みやすい小説系サイトを目指して

著者:一色秋人さん

第4章 アクセス向上に関するちょっとした誤解

 ■はじめに
 ■訪問者層を考える(1)
 ■訪問者層を考える(2)──体験談
 ■カウンタに関する誤解
 ■宣伝はしない方が良い?
 ■「客寄せパンダの功罪」──体験談
 ■陥りがちな落とし穴(1)──体験談
 ■陥りがちな落とし穴(2)
 ■まとめ

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はじめに

「ネット小説研究室」の各ドキュメントや「平成徒然草」の中で、僕はしばしば自分の小説系サイトに言及しています。もちろん、これは論を進めるに当たって具体例として挙げたものであって(僕は検証のない議論はあまり好きではありませんから)、宣伝のために言及したわけではありません。
 ところで、今、「それは言い訳だろう」と思ったり、常々この言及について「『鉄琴銅剣楼』を使った集客行為ではないか!」と思っていたりした方(もしくは憤っていた方)、いらっしゃいますか?

 もし少しでもそう感じられた方は「アクセス向上」に関して誤解しています。もしくは、極めて表層的な(ある意味、純朴な)解釈をしてらっしゃいます。

 今回は、この点についてお話したいと思います。

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訪問者層を考える(1)

 結論から云うと、ここでの「DarkSide」や「LightSide」への言及はほとんど宣伝として機能しません。なぜなら、

 ■「訪問者層がまったく異なるから」

 です。「鉄琴銅剣楼」の訪問者層と「DarkSide」や「LightSide」の訪問者層とはあまりにも違いすぎます。

 前者の「鉄琴銅剣楼」は「小説系サイト管理人(だいたいが開設したばかりの方)」を主な訪問者層としています。熟練した管理人、あるいは、ホームページ全般について充分な知識を有している方にとっては、「鉄琴銅剣楼」の内容はあまりにも浅薄でつまらないからです。具体的なタグを紹介するなど、実践面での指摘も少ないので、物足りないはずです。

 僕は「鉄琴銅剣楼」の訪問者層を

 文系でホームページ全般に関する知識がまだ充分ではない
(多くの方はタグを直打ちせず、HTML作成ソフトを利用している)
 ネット上に小説を公開したばかりで、何をして良いのかわからない
 自己評価をするにも、経験の薄さから、どの点を基準にして評価して良いのかわからない
 サイトの設計(デザイン)をあまり意識していない

 という「文系のホームページ管理人(多くは初心者)」と考えています。要するに「僕と同じ悩みを共有している方」です。サイトのコンセプトは「これまでに僕が学んだ点を皆さんにお伝えします。一緒に勉強していきましょう」になります。

 ところが、「DarkSide」や「LightSide」は、オリジナル小説をメインコンテンツとし、ほかには日記(「ワリミス」)や掲示板しかない、といった超直球派小説系サイトです。訪問者層は必然的に「オリジナルの小説をネット上で見つけて楽しみたい読者」に絞られます。

「鉄琴銅剣楼」の訪問者層は「作者」、「DarkSide」や「LightSide」の訪問者層は「読者」。両者はある程度重なるとは思いますが、あまりにも違いすぎます(想像してみて下さい。「どうしたら読者を獲得できるんだろう」と悩んでいる「作者」が、「DarkSide」への言及を見て「へぇ、オリジナルミステリかあ、面白そう。読んでみよう」といきなり「読者」に変わると思いますか?)。

 また「鉄琴銅剣楼」は、ネット上に作品を発表している方であれば、ジャンルに関係なくターゲットになります。ところが、「DarkSide」や「LightSide」は、ある特定のジャンルを楽しみたい方(前者はミステリ、後者は青春物)しかターゲットにできません。こうなると、「作家」と「読者」がある程度重なると云っても、ジャンルによって制限されるわけですから、「鉄琴銅剣楼」と「DarkSide」「LightSide」両方とも好んで下さる訪問者というのは、極めて数少なくなります。

「鉄琴銅剣楼」で「DarkSide」や「LightSide」にいくら言及したところで宣伝としては機能しない、としたのは、そのためです。これはサイト内移動分析からも明らかです(「DarkSide」総訪問者数の0.01%未満と推測されます。あまりに少ないので、ほとんど記録に残りません)。

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訪問者層を考える(2)──体験談

 体験談をひとつ。

「DarkSide」では合計十一の話を公開しています(00/11/22現在)。このうち九つが同一シリーズ(登場人物と舞台が同じ)の話です。

 この九つの話は

 個性的なキャラクタを意識した話(コメディタッチ)……四本
 グロテスクな強烈な暴力描写がある話(サイコタッチ)……二本
 アクションなどその他の話……三本

 という内訳になっています。おおむね好評なのは、(1)のコメディタッチの話。次に(2)のサイコタッチの話と続きます。アクセスが最も多いのはこの(2)の方で、多くの方が「DarkSide」を訪れると、まず(2)の『魔刻』という長編(連載中)を開くようです。

 ここで問題なのは(1)と(2)の読者層が分離している、という点です。

 (1)を気に入って下さった方から(2)に対して苦情が来ることがしばしばあります。内容は「こんな話だとは知らなかったので驚いた」です。((2)を気に入って下さった方から苦情が来たことは今のところありません。)

 このように、対象読者層が異なる作品を載せた場合、(1)で(2)の読者を失い、(2)で(1)の読者を失うことになるようです。(1)を気に入って(2)を読んだ方は「何! こんなグロテスクな話も書くの! 最悪!」と怒るでしょうし、(2)から(1)へ進んだ方は「何、これー。ものたりなーい。もっとすごいのないのー」と不満を覚えるでしょうから。

 まして、同じ「オリジナル小説」だからといってサイコホラーの『魔刻』と青春小説の『雨の上がったその後に』を同じサイトに載せてしまったら、リピータを失うのは目に見えています。確かに、両方の小説で集客できるのでカウンタは伸びると思います(両サイトの一日平均アクセス数はこちらをご覧下さい。この合計がアクセス数になると予想されます)。しかしその伸びはすぐに収まるでしょう。

 どうやら、サイトへの訪問者層を意識することが重要な要素になってきそうです。人気小説系サイトの多くが数作の看板小説しか持たず、作品間でジャンルの幅が少ないのは、ターゲットを絞るという戦略で成功しているから、かも知れません(意識的かどうかは別として)。

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カウンタに関する誤解

 さて、上で「カウンタは伸びると思いますが、しかしその伸びはすぐに収まるでしょう」と指摘しました。
 カウンタに関しては「カウンタ数=訪問者数=読者数」あるいは「カウンタ数=人気度」と単純に考えられがちです。その結果、「とにかくカウンタを伸ばそう」と精一杯努力したりします。

 中には、複数のテーマで複数のサイトを作成し、それぞれにカウンタを付け、その合計数で「カウンタを伸ばす」という、あまりにも迂遠な戦略を採っている方もいます。

 広告料稼ぎのための戦略なら、それでも良いでしょう。単純にアクセス数さえ上げれば、広告バナーをクリックされる確率は高まりますから。しかし小説系サイトにとっては、こうした単純なアクセス向上戦略は無駄な努力になることがあります(云うまでもありませんが、アクセス向上自体が目的でなければ問題ありません。例えば、僕は「鉄琴銅剣楼」のほかに「平津館」なども運営していますが、好きでやっているだけです。アクセス向上のためではありませんし、一日平均アクセス数は5くらい(^^)ですから、まったく貢献しません)。

 皆さんがホームページを開設した動機は恐らく「自分の作品を多くの人に読んでいただきたい」からだと思います。それに加えて「感想や意見をいただきたいから」というのもあるでしょう。ですから、単純なカウンタ数の回転では、まだ不足しています。

「訪問者」と「読者」「感想を残す方」との関係は、

 訪問者総数 > 読者数 > 感想を残す方(←わずかです)

 という等号関係になります。

 したがって戦略は、

「訪問者総数」を上げる
「訪問者総数」と「読者」との開きを縮める

 の二つになります。(1)の戦略にだけ意識を集中すると、(2)で大きな失敗を犯すでしょう。例えば、「鉄琴銅剣楼」で「具体的事例」として「DarkSide」に言及したとします。確かに、具体的事例を見るために訪問する方はいらっしゃるでしょうから、「訪問者総数」は増えるでしょう。しかしその方は「事例」として見るのであって、「作品」として読むわけではありませんから、「読者」ではありません。集客にするにしても、「読者」を集めないと意味がない、というわけです。

 次に注意すべき点は「読者」を集めたとしても、「新規訪問者はまだそのサイトを気に入ったわけではない」という点です。以前、共同研究室で「即バック論」というのをやっていたことがあるのですが、カウンタを回した方でも「サイトのセンス(レイアウト、配色などのデザイン)が気に入らない」「どこに何があるのかわからない」「なかなか小説に到達できない」といった意外に簡単な理由でバックキーを押してしまうようです。

 ですから「カウンタ数=読者数」とは単純にはいきません。カウンタが一時的に伸びても、継続的に伸びない場合(=アクセス数が不安定な場合)はやはり、戦略としてはミス、と云わざるを得ないでしょう。

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宣伝はしない方が良い?

 わざと極端な小題を付けてみました。これは「宣伝で集客した結果、多くの方に嫌われてしまった」という最悪の事態を迎えた場合です。まさに「宣伝しなければ良かった」というケースです。
 実に簡単な原則で「目立たない人間は好かれもしないが、嫌われもしない」です。

 もし(1)の「訪問者数を上げる」戦略が大成功し、数多くの方がそのサイトを訪れたとします。そこで、もしそのサイトが訪問者に悪い印象を与えたとしたら、当然のことながらリピータを獲得できませんし、将来リピータになる可能性を持つ人たちをも失ってしまいます。ひとたび悪い印象を持てば、忘れていない限りは二度と訪れたくないでしょうし、忘れていても再訪すればすぐに思いだし、二度と訪問しないでしょう。

 ですから、サイトが未熟でまだ悪印象しか与えないうちは、過剰な宣伝は逆効果になります。

 それでは、どういう場合が悪印象を与えてしまうのでしょうか? 簡単な原則としては「期待を裏切られたとき」になるでしょう。宣伝文句とサイト(小説)との間に大きなギャップがある場合です。

 例えば、「市販小説に負けないレベル」と宣伝にあったものの、中身を読んでみたら句読点の使い方すらしっかりできていなかった、とか(そもそもそんな宣伝文句にはつられませんが)。「オリジナルミステリが長編・短編ひっくるめて多数あります」とありながら、三つか四つしかなかった、とか。「名探偵が華麗に解決する本格推理!」とありながら、推理にめちゃめちゃ無理がある(華麗じゃあない)、とか……。

 そもそも「小説がない」(!)ときもありますね。これは問題外です。同じように、工事中だらけの場合もかなりげんなりします。「こんな状態で宣伝すんな!」と呆れます(そうした呆れたサイトを集めたリンク集もあるそうです。何だか面白いですね)。

 ですから、ここで大切なのは、

 サイトとギャップのある過剰な宣伝文句(煽り文句)は避ける
 サイトの内容が整備されていない段階では、過剰な宣伝は避ける

 の二点になるでしょう。「宣伝をしない方が良い」状況もあると覚えていた方が良いようです。


 ※「掲示板への書き込み=宣伝」と見る方もいますが、「掲示板への書き込み=コミュニケーション」ですから、基本的に「宣伝」にはなりません。掲示板への書き込みが「宣伝」に類する効果を発揮するのは確かですが、その効果はそもそも微々たるものです。想像してみて下さい。「こんにちは! お久しぶりですー。新作アップされていましたね。さっそく読みますねー」と書き込みがあったところで、その書き込んだ方のサイトに興味を持ちますか? ですから、サイトの内容に関係なく、「書き込みはがんがんするべき」だと思います。ただし文脈無視の宣伝書き込みはその掲示板を見ている不特定多数の方に不快感を与えますから、確実に逆宣伝になります。このあたり、ちょっとテクニックが必要ですね。今度、改めて文書にします。

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■「客寄せパンダ」の功罪──体験談

 体験談をひとつ。

 引きこもり少年による少女拉致監禁事件を題材にした「飼育日記」という小説を、以前、「DarkSide」に載せていました(現在はトップページから削除)。題材の関係上、露骨な描写(性・暴力)が含まれるので、ジャンルとしては「成人向け」に登録しました(もちろん実験も兼ねています)。

 その結果、一日に300名近い集客数を得られ、その後も漸減しつつ継続してアクセスを得たことは「ジャンル『成人向け』の集客効果」でお伝えしました。ちなみに現在(00/11/22)も一日平均15のアクセスを得ており、六月初旬の登録以来、累計でのべ一万名弱の方がこのファイルを開きました(UltraRanking調べ)。

 さて、この小説のお陰で、「DarkSide」へのアクセス数は最高で190を記録し、その後も約三週間に渡って50-90アクセスを維持しました(その後、更新停滞とともにアクセス数は漸減し、一日約15名にまで落ち込みました)。この点で、「成人向け」小説は「DarkSide」のアクセス向上に絶大な効力を発揮したと云って良いでしょう。

 しかし問題は「DarkSide」に来て下さった方のほとんどがまず「飼育日記」を読む、という点にありました。

「飼育日記」を求めて「DarkSide」に来て下さった方は、ほとんどの方が監禁を題材とした「成人向け」小説を求めて来て下さったことになります。このうち何割かは「飼育日記」に幻滅してリピータになるのをやめ、何割かは「飼育日記」と同じような小説を求めてリピータになって下さったと思います。

 ところが、僕が書きたい小説は「ミステリ」「ホラー」です。もしくは「ファンタジー」か「青春小説」も書きたいと感じていました。「飼育日記」を目当てに来て下さった方は、「ホラー」ならその求めているものに近いかも知れませんが、「ミステリ」「ファンタジー」「青春小説」ならかなり遠いと云わざるを得ません。

 したがって、ここに「訪問者層のずれ」が生じます。僕が書きたいものと訪問者が求めているものとの間に大きな「ずれ」が生じているんですね。ここで、僕にとって不都合な点がいくつか生じます。

 訪問者は「飼育日記」のイメージで「DarkSide」を見る
 したがって他の小説も「飼育日記」に類するものとのイメージを持つ
「飼育日記」に幻滅した方は他の小説を読まない
「飼育日記」を気に入って下さった方は他の小説を読んで幻滅する(あまりにも違うから)

 どう転んでも不都合なことばかりです。ですから「成人向け」小説での集客は、目先の効果はあるものの、戦略的には失敗だと云わざるを得ません。

 ここで述べてきた体験談はかなり極端な例だと思います。しかし自分が本来サイトで展開したい内容と、集客のために設けたコンテンツとの間に「ずれ」が生じていた場合、これと類似の結果に帰結する可能性はきわめて高いと云えるでしょう。

 気を付けるべきはそのコンテンツが集める「訪問者数」ではなく、「訪問者層」です。

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■陥りがちな落とし穴(1)──体験談

 さて、上で「訪問者数ではなく、訪問者層に注意すべき」と述べました。
 これはサイトのコンテンツ編成にも関わる重要な点です。

 例えば、「鉄琴銅剣楼」は、以前、オリジナル小説を発表する「MysteryLab」、今のメインコンテンツである「ネット小説研究室」、中国古代を真摯に扱った「平津館」、文系の受験を応援する「寺子屋オンライン」など、雑多なコンテンツを含んでいました。これは趣味が赴くままにコンテンツを付け足したからです。

 しかしそのままでは「訪問者層」に差がありすぎました。「平津館」を気に入って下さった方にとっては、「MysteryLab」といった趣味系コンテンツは不純なものに見えたでしょうし、「ネット小説研究室」を気に入って下さった方にとっては、「平津館」などはまったく興味を抱けないコンテンツだったでしょう。

 したがって総合で一日100以上(最大で300くらい)のアクセスはありましたが、それぞれのコンテンツに振り分ければ、30程度に収まったと思います。また掲示板の話題は定まらず、小説ネタのときもあれば、中国ネタのときもありました。これは書き込みしようとした人に大きな負担をかけていたはずです。

 そこで、思い切って「ネット小説研究室」だけにコンテンツを絞りました。当時、「ネット小説研究室」がもっとも集客しており、もっとも反響があったからです。

 この再構築で、アクセス数はいったん下がりました。しかしコンテンツが定まったことで、「楽園」や「真・小説げったあ!」といったポータルサイトからリンクを張っていただくことができ、アクセス数は安定して伸びました(感謝しています)。現在は宣伝は一切なしで、一日平均90-100アクセス(土日除く)を得ています。

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■陥りがちな落とし穴(2)

 幅広いコンテンツ自体には何の問題はありません。しかし、あるサイトが提唱したような「複数のコンテンツで集客して読者する」という戦略を採用した結果、幅広いコンテンツになったのであれば、否定的に評価するしかありません。なぜなら、

 他のコンテンツと小説系コンテンツとの間に「ずれ」がある場合、他のコンテンツの訪問者が読者になる可能性は少ない→効率が悪い
動機が不純なため、「質」と「更新頻度」が確実に劣化する→集客できなくなる
サイトの主旨が曖昧になり、評価されにくくなる→サイトの悪印象=リピータ獲得率の低下

 といった不具合が生じるからです。

 またコンテンツだけではなく、小説のジャンルについても少し注意した方が良いようです。

 上で詳述しましたが、サイト内の小説間に大きな差がある場合、一方を気に入って下さった読者はもう一方に幻滅する、という不都合が生じます。ですから、例えば、少女の切ない心を描いた恋愛小説と、乗っ取りから会社を守るためにサラリーマンが奮闘する経済小説とは、同じサイト内に置くべきではないと思います。しかしそれでは更新頻度に「見かけの空き」が生じてしまうのも確か。そこで仕方なく置く場合は、小説間にギャップがあることが明確にわかるよう表示し、読者が困惑しないよう最大の配慮を払うべきでしょう。

 もちろん、集客のためだけに書きたくもない小説(「成人向け」や「ファンフィクション」など集客効果を望めるもの)を書くのは、避けた方が良いと思います。本来書きたい話との間にギャップが生じてしまえば、僕が体験したような不都合が生じるからです。

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まとめ

 カウンタ数が表示するのは「訪問者数」に過ぎません。この見かけの「訪問者数」を増やすためだけに採られる手段の多くには、戦略的に見て失敗と云わざるを得ないものが多々あります。
 ですから、アクセス向上のために手段を講じるさいには、その手段が集める「訪問者層」に注意し、その手段が効果的なのかどうか一度じっくりと考えるべきだと思います。


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