東野圭吾
名探偵の掟
怪笑小説
毒笑小説
仮面山荘殺人事件
悪意
名探偵の呪縛

名探偵の掟 講談社文庫 2000/11/26
完全密室、時刻表トリック、バラバラ死体に童謡殺人。フーガニットからハウダニットまで12の難事件に挑む名探偵・ 天下一大五郎。すべてのトリックを鮮やかに解き明かした名探偵がたどり着いた、恐るべき「ミステリ界の謎」とは? 本格推理のさまざまなお約束を破った、業界騒然・話題満載の痛快傑作ミステリ。
としえ:最高!面白すぎ!電車の中で笑いを堪えるのが大変だった・・・・。
K:同じく。
としえ:本書をぜひ読んで欲しい人は、ミステリーをよく読む人。ミステリーに飽きてしまった人。2時間サスペンスで配役で犯人を当てられる人。ミステリー嫌いな人。絶対読むべき!
K:普通どれかに当てはまるんじゃないの・・・・・。
としえ:名探偵「天下一」とその相棒(?)警部の「大河原」の二人が事件を解決していく、ありきたりな設定なんだけど、 各章に一つのミステリー特有の<お決まり>があって、それを二人が途中小説世界を抜け出して、論じるのが面白い!
K:お題ってのは、<密室トリックについて><アリバイについて><アンフェアについて>etc・・・・。 最近のミステリーのお決まりを登場人物を通して皮肉ってるんだね。
としえ:え〜・・・。私は読者のミステリーを読む態度を皮肉ってるんだと思った。<配役で犯人を当ててる>とか <あまり、トリックの解説を読んでない>とか・・・。結構私自身笑いながら反省した点は多かったよ。
K:そっかな〜。確かに最後の方ではトリックを暴く気の無い受身だけの 読者を批判はしてたと思うけど、大部分はミステリー批評だよ。特に2時間サスペンスとか。
としえ:フムフム。それも一理あるかも。ああ・・・。2時間サスペンス批評・・・。面白かった・・・。
K:まさか、犯人が一番ドラマ化で損してるとは思わなかったよ。 複雑な動機がただの恋愛のもつれになっちゃったり、トリックもちゃちくなったり。
としえ:誰もが思っていた事をズバっと書いてるよね。しかも登場人物に言わせてるのが 上手い。東野圭吾ってコメディーでも十分いける作家だよね。笑いのツボを押さえてる。
K:うんうん。<密室宣言>も面白かった。登場人物にとって いかに<密室>と言う言葉が恥ずかしいモノなのかがよくわかるよ。 あと、全体を通してコメディータッチだけどミステリーとして読者を唸らせるポイントは結構あったと思う。
としえ:うん。最後の最後もね・・・。それにしても、ミステリーの登場人物って大変なんだね・・・・・・・。


怪笑小説 集英社文庫 2000/12/06
年金暮らしの老女が芸能人の”おっかけ”にハマり、乏しい財産を使い果たしていく「おっかけバアさん」、”タヌキには超能力 がある、UFOの正体は文福茶釜である”という説に命を賭ける男の「超たぬき理論」、周りの人間たちが人間以外の動物に見えてしまう中学生の悲劇 「動物家族」・・・etc.ちょっとブラックで、怖くて、なんともおかしい人間たち!多彩な味付けの傑作短編集。
としえ:東野圭吾って本当は本格ミステリー作家なんだけど、これも<名探偵の掟>同様、コメディータッチだよね。 しかも、短編小説だから、サクサク読めるし、題名通りちょっと複雑な笑いを起こさせる。
K:複雑な笑いか・・・。電車の乗客達が自分の鬱積を他の乗客に 心の中でぶつけるんだけど、それが次々と視点が変って物語が進行する<鬱積電車>読んでる時、 俺電車乗ってたからな〜。自分が笑ってるって(密かに)気付いた時に、 本当に笑っていいものか複雑な気分だったよ。
としえ:うんうん。書き方が上手かったよね。死体の処理に悩む<しかばね台分譲住宅>は文句なく その奇妙なやり取りに笑えたし。あと、個人的には<アルジャーノンに花束を>が大好きだから、そのパロディー <あるジーサンに線香を>が凄く好きだな。パロディーと言っても、原作同様にしっかりと考えさせられたよ。
K:俺も<あるジーサンに線香を>は良かったと思う。終わり方が好きだな。 俺としては、物語がプツッと切れたようなあの何とも言えない余韻が良いな。<怪笑小説>と<毒笑小説> のどっちが面白いかと言うなら<怪笑小説>だな。結構名作ぞろいだと思う。
としえ:そうだね。私も<怪笑小説>の方が面白いと思うけど、この2冊は対だよね。両方読みたくなるよ。


毒笑小説 集英社文庫 2000/12/06
塾にお稽古に家庭教師にと、VIPなみに忙しい孫。何とかゆっくり会えないものかという祖父の訴えを聞いて、麻雀仲間の爺さん たちが”妙案”を思いつく・・・。前代未聞の誘拐事件を扱った「誘拐天国」をはじめ、毒のある可笑しさに満ちた傑作が1ダース!名作「怪笑小説」に 引き続いて、ブラックなお笑いを極めた、改心の短編集。「笑い」追求の同志、京極夏彦との特別対談つき。
としえ:<怪笑小説>の次に発売された、同じ形式のコメディー短編集。これも面白いね。
K:<怪笑小説>の方が面白いとは言ったけど、何個か捨てられない短編もあるな。 天使の姿に酷似した新種の海洋生物”エンジェル”をめぐる人間達の行動を皮肉った話<エンジェル>。自然に対する人間の 勝手な価値判断、さらにそれに対する勝手な価値批評・・・・・。これは考えさせられたな。
としえ:そうだね。読んでて、K君は<エンジェル>に対して何かしら感じるだろうなと思ったよ。 生態系に興味あるもんね。私は<つぐない>が好きなんだよね〜・・・。仕事一徹だった中年男性が ある男に対する償いの為にピアノを弾く話。最後・・・。いや〜・・。今思い出しても、目が潤む・・。 あと、<本格推理関連グッズ鑑定ショー>も好きだな。これって<名探偵の掟>の第一話<密室トリック> の続編と言うか、番外編と言うか・・・。知ってる人にはたまらない面白さだと思うよ。
K:いや〜。<本格〜>は俺はそこまで面白くなかったな。それよりも <殺意取扱説明書>の方が面白かった。作品の中で殺意をまるで電気製品と同じように扱ってるのが 良かった。特に終わりでそれを感じたな。
としえ:うんうん。最後のオチで思わず『フフフ』と笑ってしまうよね。ホント、説明書って用語が難しいんだもん。
K:あ!これを忘れちゃいけないよ。最後に京極夏彦と東野圭吾の対談が 載ってるんだけど、これが写真つきなんだ・・・!!凄いって京極夏彦!
としえ:ちょっとビックリだったよね・・・・。さすが京極堂の生みの親。オーラ出てます。
K:確かにテレビ版京極堂が出来るなら京極堂役は京極夏彦しかいないよね。 そのオーラがぴったりって感じだもんね。でもな、皮手袋はどうかな・・・・。(見ればわかります)


仮面山荘殺人事件 講談社文庫 2001/03/28
八人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡が断たれた八人は脱出を試みるが ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに一人が殺される。だが状況から考えて、犯人は 強盗たちではありえなかった。七人の男女はお互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった・・・。
としえ:凄いラストだと思うよ。うん。凄い凄い。この結末には驚いたよ。
K:ふんふん。俺は例によって<孤立もの>を求めて読んだんだよね。
としえ:ふふふ・・・・。でもK君の思惑のような<孤立>じゃなかったね・・・・。
K:この作品ではそこがポイントなんだけどね。
としえ:ラストが・・・・。こう来るか・・・・。私は驚いたけど、K君あんまり驚いてないね。
K:確かに驚いたけど、なんて言うかな・・・・。正直俺にとってミステリのトリックってどうでもいいんだよ。 トリックは味付け程度なんだよね。いるんじゃないかな?俺みたいな人。
としえ:何!?ダメじゃん。実は私もそうだけど・・・。でもやっぱり驚きは驚きだよ。 じゃあ、この作品はトリック勝負だからあんまりお気に召さなかった?
K:いやいや・・・。暇つぶしにはいいと思うよ。
としえ:なるほどね。私にとってはラストは拍手ものだけど、動機がダメ。某ミステリ小説と全く同じ動機。興ざめ。またこれ?って思った。
K:ついに正体を表わしたな・・・・・。まぁ気持ちはわかるけど。ミステリにおける動機ほど微妙な物はないよね。 単純すぎてもダメだし、複雑すぎると気が重いし。
としえ:意外にミステリ作家にとって一番頭を悩ますのが<動機>かもね・・・・。


悪意 講談社文庫 2001/09/30
人気作家・日高邦彦が仕事場で殺された。第一発見者は、妻の理恵と被害者の幼馴染である野々口修。 犯行現場に赴いた刑事・加々恭一郎の推理、逮捕された犯人が決して語らない動機とは。人はなぜ、人を殺すのか。超一流のフー&ホワイダニット によってミステリの本質を深く掘り下げた東野文学の最高峰。
K:うん。まぁまぁでしょ。
としえ:まぁまぁ!?最高じゃん!私は感動したよ。この作者の挑戦に。
K:挑戦ってどう言うこと?
としえ:そりゃ、この新しい手法にだよ。今までの『事件⇒調査⇒解決(びっくりトリック)』のワンパターンからの脱出!しかも、前に私が散々愚弄した動機が、こう料理されてるとはね。
K:上手い説明だね。驚愕のトリック系は満足しないケースが多いからね。今回は見事なコンセプトと言うか・・・。 上手いよね。
としえ:内容的に感動したとか、文学的にどうこうってのは無いけど、いいね。これこそ、文章のみで楽しむミステリー! もう、べた褒めしちゃう。
K:しかも、今回は、それだけじゃないもんね。『悪意』・・・・これ無しではここまで面白くなかったんだよな。
としえ:そうだね、実は本当の動機が一番どの動機よりも、私は納得がいくかも。『悪意』。本当の悪意はこんなところから 出るのかも。
K:動機か。動機自体を扱おうってのが珍しいよね。結構ミステリー作家って動機に悩んでるかもしれないし。
としえ:と同じ事言ってるな・・・。でも、確かにミステリーの動機はお決まり化しているよね。その点に関しても挑戦だね。
K:うん。まぁ、所詮殺人の動機だから良いものなんてありゃしないんだけどさ。
としえ:とにかく、この無駄の無い文章!全てが計算し尽くされてるよ。驚愕はしないけど、絶対に誰もが無意識に引っかかる トリックが密かに用意されていたところが憎い!!
K:トリックの為のトリック・・・・。あんまり言えないけどね。
としえ:一発トリックじゃないから高得点。もう、私の中では、ミステリー第一位!


名探偵の呪縛 講談社文庫 2002/07/14
図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。次々起こる怪事件。だが何かがおかしい。じつは そこは「本格推理」という概念の存在しない街だったのだ。この街を作った者の正体は?そして街にかけられた呪いとは何なのか。 『名探偵の掟』の主人公が長編で再登場
としえ:随分、センチメンタルな作品だなぁというのが率直な感想。ある意味私小説
K:うん。その通りだね。『名探偵の掟』とは全然意味合いが違う作品だね
としえ:んー、ま、結局、東野圭吾は推理小説(ミステリー)が好きでたまらないってことかな。いつも彼はトリック以外のネタを 使ったひねりにひねった真相と、それ以外で読ませるポイントを用意してくるけど、原点はここなんだろうね
K:あのミステリー観に行き着くまでには色々あったってことかな、彼が意識しないうちにも
としえ:なんかさぁ、内容はミステリー小説なのに、感想はどうしても作者東野圭吾の想いにいっちゃうね
K:作者にとってはいいかわからないけど、この作品は内容どうこうより、東野圭吾自身を意識せざるを得ないよね。 本書ほど、書き手を意識する作品はなかったね
としえ:自己主張の塊だったからね。その点では、内容は全然関係ないけど、『名探偵の掟』とセットで読んだ方がいいかも
K:うん
としえ:本書の内容は、普通の別段面白くないミステリーってことで。所々ユーモアがあるけど