シャッシャカー 魔法の歯ブラシ物語0
                     歯ブラシとの出会い
                                     加藤暖彩
  パパと買い物の帰り道、りょうくんは買ってもらった絵本を手に車に乗っていた。国道が混んでるときに時々通る裏道。いつも閉まっている店が、今日はめずらしく開いていた。古い店で派手な自動販売機が似合わなかった。
「あっ、あの店が開いている。めずらしいなー」
パパはそう言って車を止めると
「ちょっと、寄ってみるか」
そう言いながら自分のシートベルトをはずした。
「降・り・る」
りょうくんは叫んだ。パパは、
「しょうがないな」
りょうくんのシートベルトもはずしてくれた。
「いらっしゃいませ」
 小さな声が奥から聞こえ、小さなおばあさんが奥からおじぎをしながら出てきた。 パパは店の中を物珍しそうに見回して、大好きなバターピーナッツを見つけた。
「パパ、あの黄色い歯ブラシ買って」
りょうくんは、なぜか黄色の歯ブラシが気になりパパにせがんだ。
「なになに、『歯磨きが好きになる歯ブラシ   シャッシャカー』だって」
パパは手にとって包装してある紙の文字を読んだ。
「歯みがきが好きになるなら買ってもいいかなー」
りょうくんもパパも自分で商品を渡した。小さなおばあさんは、大きなそろばんでパチパチと計算した。

 家に帰ると洗面所に行き、さっそく歯ブラシを持ってみた。すると、
(ぼくは、魔法の歯ブラシ、シャッシャカー。一日三回五分間、七日続けて歯をみがき、願い事を言った後に「シャッシャカー」と呪文を唱えると、魔法でその願い事がかなうよ)
歯ブラシが心の中で教えてくれた。
(本当かな) うたがいながらも、その日から一生懸命歯をみがいた。

 しっかり歯みがきをした七日後、黄色い歯ブラシを右手でかかげ、
「ケーキが食べたい、シャッシャカー」
そう唱えると、おいしいと評判の近所のケーキ屋さんで、いつもおみやげを買ってきてくれる、蒲郡に住んでいるおばさんがやってきた。もちろんケーキを持って。
(本当に願いがかなうんだ)
りょうくんはケーキを食べながらそう思った。 そして、次の願い事をいろいろ考えながら、一日三回五分間、七日続けての歯みがきが、またその日から始まった。

 二日後、図書館でママと借りてきた絵本の中に、魔法使いがでていた。その魔法使いは、つえを使い、いろいろな魔法をかけていた。
(そーだ、魔法使いが持っているような、魔法のつえがあれば、何時でも何処でも何度でも、好きなときに魔法が使えるぞ)
次の願い事が決まった。

 ケーキを食べた日からやっと七日間過ぎた。
(今日は、魔法が使える日だ。よし、願い事を唱えるぞ)
りょうくんは歯ブラシを手に持ち、高くかかげて唱えた。
「魔法を何時でも何処でも何度でも使えるつえが欲しい。シャッシャカー」
しかし、なにもおこらなかった。イライラして、
「どうして願い事がかなわないの?」
そう歯ブラシに問い詰めると、
(つえをもらって、いつでも魔法がつかえるようになったら、りょう君は歯をみがかなくなるだろ)
こころのなかで歯ブラシに言われた。
  りょうくんは、包装してあった紙に『歯みがきが好きになる歯ブラシ シャッシャカー』と書いてあったのを思い出した。

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