
ピアノ
ピアニストになりたいと思ったことがある。
実は、ごく最近のことである。大学に入ってからだ。
名古屋芸術大学音楽学部の一年生ということで、学校を歩き回っていれば自然といろんな音にめぐりあえる。
ちなみに、僕は、音楽学部弦管打専攻音楽総合選択コースということで、実はピアノ科じゃない。
しかし、昼休みなどにピアノの練習室を予約して練習していたり、時には一室しかないグランドピアノソロの部屋(連弾の部屋は2つある)をずうずうしくも陣取って練習していたりする。
副科でジャズピアノのレッスンを取っているが、有名な先生のため、週に10〜15分ほどのレッスンだ。たいして練習する内容も多くはないだろう。
なぜピアノのレッスンを取っていないかというと。
ただ単純に、「あまり好きではなかった」のだ。
しかし、感情に少し変化が起きた今、家で自分で電子ピアノを買い、もくもくと練習していたりする。
しかし結論から先に言えば、僕は、ピアニストにはなれない。
なぜか。
実は、怪我をしているのだ。手に。腱鞘炎というのが、ずっと治らないでいる。最近だって、一週間も根詰めて練習すれば、手が痛くてピアノが押せないという状況。休み休み弾かなければならない。
それにも、限度というものがあり。
上達が遅すぎるのだ、練習ができないせいで。これで、ピアニストになって、リサイタルで2時間弾くなんてことをしたら、どうなるか。最初の30分でリタイアするのは目に見えている。
なんとか治らないものか。
今でも僕は、治療法を探してる。
諦めたわけじゃ、ないから。
そういえば、もう一つ。困ったことがある。
それは、ピアノのコンクールの出演料だ。
コンクール出演の依頼というか、申し込みの紙というのは、さすが音楽大学、そこにいってもかなりの枚数置いてあるわけで。それも、下手をすると期限が切れたものまで置いてあったりする。
それを先日、一通り見比べようと、いただいてきた。
ピアノのコンクールの出演料(審査依頼料とも言うことがある)はだいたい大学生で1万5000円以上。なんて高いんだ。
所詮、以前友人に言われた嫌味のように、「音楽なんて金持ちの道楽」なのだろうか。「貧乏人にはとてもじゃないけどできないこと」なのだろうか。僕は、金持ちの令嬢でもなんでもないのだけれど?
そんなことは言われたくない。けれど、そう言いたくなってしまうような『現状』というものがあって、少しくっと爪を噛んだ。
その中で一枚。
「参加料:無料」
「イベント」だということだろう。なんて単純。でも、これはこれで人が集まるのだろう。お金のかかるコンクールに出られない人が。
応募の期限は過ぎていた。これが、過ぎていなかったら、おそらく僕は出ていた。
上達の遅い、まだまだ下手なピアノを、必死に練習して。
ある意味での『階級』というのが根強く重視される、音楽世界。どうして僕は、そんな世界に入り込もうとしているのか、そんな世界の扉の前に立っているのか。
それでも、音楽に魅せられたから。