
ハマーン・カーン歴代搭乗MS
ジオン公国、デキン・ザビ公王の側近であったマハラジャ・カーンの次女で0067年、サイド3、コア3コロニー出身。幼い頃よりカーン家はザビ家と懇意の間柄にあり、長女がドズル・ザビ中将の侍女として妻のゼナ、愛娘ミネバの世話役を務めていたこともあって、ハマーン自身も幼少の頃からドズルやキシリアといったザビ家の兄弟に可愛がられていたという。
一年戦争後期にはニュータイプの素質があったことから、稚児としてキシリア・ザビ少将に預けられた。この頃より頻度こそ低いが予知能力を発揮し、戦意高揚のフィルムから戦争の真の趨勢を読み取った程の能力を持っていたという。
フラナガン機関でも彼女の調査をしているがザビ家の側近の子だったことと、年齢的な問題から実戦投入されることはなく、この時は形式的なものだけで終わっている。
終戦直後、ハマーンは父マハラジャと姉妹と共に小惑星アクシズへ逃亡することを決意した。長女は父ドズルを失ったミネバと病弱なドズルの妻、ゼナの側についてハマーンも姉を手伝っていた。
しかし、アクシズへの逃亡行の途中で長女は病死し、到着後も長旅で衰弱しきったゼナ・ザビも失ってしまう。この二重のショックもあって、この時期のハマーンは情緒不安定にあった。ゼナの死を予知し、彼女の死を防げなかったという負い目もあったのだろうか、彼女は姉とゼナに代わってミネバの世話を引き受けていた。
この頃よりハマーンは王室護衛官の役につき、マハラジャの補佐役として頭角を現していたシャア・アズナブル大佐と出会っている。大佐はミネバの護衛官、ハマーンはその世話役という近さから二人は交際するようになり、生来の明るさを取り戻しつつあった。
同じ頃、ハマーンはMS操縦訓練を受け、パイロットとしての素質を見せはじめていた。シミュレーターでの訓練だけではなく、実機を使用しての軍事訓練やアクシズの区画拡張工事の作業に参加していた。
この時、彼女が搭乗していたのは白とパープルにカラーリングされたMS-09Rリック・ドムであった。彼女はアズナブル大佐に影響されたのか、ノーマルスーツを着ないで私服でMSを操縦していたこともあり、側近から度々注意されることもあった。この習慣は第一次ネオ・ジオン抗争時まで変わることはなかったという。
こうしたハマーンの献身的な態度に、アクシズ内部のザビ派は宇宙世紀のジャンヌ・ダ・ルクとして祭り上げ、ザビ派の胎動にアズナブル大佐は危険を感じていたという。
同時にザビ派もマハラジャの和平路線に反発し、マハラジャを支持し、発言力を持っていたアズナブル大佐は邪魔者でしかなった。そして、そうしたアクシズ内での暗闘に彼女は気付くことはなかった。
0083年8月9日、デラーズ紛争勃発直前にマハラジャ・カーンが死を遂げた。当初、後継者には側近であったアズナブル大佐が就任する予定であったが、軍人の立場であることと、ザビ派の胎動を察知して彼は辞退し、代わりにハマラジャの愛娘であったハマーンにその白羽の刃が立つことになる。
この前年、ミネバ・ザビ皇女のお披露目式を行った際に成り行きからハマーンが演説を行い、多くのアクシズ将兵や市民を奮い立たせて士気を向上させた実績から摂政に抜擢されたのである。しかし、これはハマーンの取り込みを行い、自分たちの勢力を拡大させるためのザビ派の策略でもあった。
だが、戦後も連邦政府の抑圧を嫌ってサイド3からアクシズへの移民団が殺到し、人口が爆発的に増加して物資不足と暴動に悩んでいたアクシズ首脳部にとって、強い印象を与えて市民を統治する指導者が必要だったのもまた事実である。その大役には、若干16歳のハマーン以外には出来なかったのかもしれない。
ハマーンは当面、ミネバ・ザビの後見人として宰相の地位についた。そして、ハマーンを味方につけたザビ派がアクシズ内で勢力を広げ、今までのマハラジャの和平路線は転換され、序々に地球圏への帰還と連邦政府との再戦という体制に傾いていった。ハマーンという後ろ盾を得たザビ派は反対派や和平派の粛清を行い、アクシズは右傾化していったのである。
アズナブル大佐も粛清の対象となったが、彼はいち早くアクシズの右傾化を憂い、ついにアクシズを捨てる決心をした。一方、地球圏ではデラーズ・フリートと連邦軍が戦火を交えていた時期であり、アクシズではデラーズ・フリート支援を決定。先遣艦隊派遣を行い、アクシズそのものの移動準備を開始した。
大佐はその中で地球圏への偵察と、アナハイム・エレクトロニクス社との交渉役として地球へ派遣されることが決定された。しかしこれは、ザビ派がハマーンから彼を引き離すための策略であった。大佐がアクシズを去った後、ザビ派の取り巻きはハマーンにアズナブルは自分からアクシズを去ったと告げ、彼がアクシズへ帰還する場所を失わせたが、大佐もまた、アクシズには二度と戻らないことを決意していた。
これを知ったハマーンはアズナブル大佐に対して遺恨を残すようになり、より、地球圏帰還と軍備再編へと傾くことになった。
時同じくして、0083年のデラーズ紛争では先遣艦隊を地球圏へ派遣し、デラーズ・フリートのバックアップを行っていた。この時のアクシズはジオン勢力でありながら地球連邦政府から中立勢力として見なされ、連邦軍の攻撃を受けることなく、デラーズ・フリートの将兵救出任務にあたることができた。
デラーズ・フリートを抱えていたのに加えて、アクシズというジオン勢力が突如、地球圏に飛来したことで連邦政府は一年戦争の二の舞を恐れて弱腰となり、アクシズの中立を認めてしまったのだ。これはハマーンの政治的判断も強く働いた結果とも言える。
連邦軍はデラーズ・フリートに加えて、戦力こそ少ないとはいえ、アクシズの先遣艦隊の二つの勢力を相手に戦闘を行う余裕すらなかったのだ。
しかし、中立故に戦闘行動そのものに関与することは出来ず、アクシズで試作された大型MA、AMA-02Xノイエ・ジール一機をデラーズ・フリートへ譲渡したことと、星の屑作戦終了後の将兵収容が先遣艦隊の主な任務であった。
アクシズ先遣艦隊は紛争中最大の戦闘となった星の屑作戦終了後、戦域から脱出したデラーズ・フリート将兵の救出にあたった。大戦後も地球圏で戦闘を続行していたデラーズ・フリート将兵は言わば歴戦の兵であり、実戦経験者が少ないアクシズにとって貴重な人的資産であり、後のグリプス抗争、第一次ネオ・ジオン抗争時において彼らは重要な役割を果たすことになる。
アクシズはデラーズ紛争後も着々と軍備増強を行い、艦隊の再整備、MS部隊の増強を行いつつ、アクシズの移動を開始させた。アクシズ本星に核パルスエンジンを取りつけ、アクシズごと地球圏への帰還船としたのだ。その一方で、アクシズ将兵を多数連邦軍に潜入させて軍内部での反ティターンズ感情を植え付け、連邦軍の勢力を殺ぐことも忘れてはいなかった。こうしたスパイはデラーズ紛争時、先遣艦隊によって地球圏の連邦に潜入していた。
そして、ハマーン率いるアクシズは三年かけて地球圏への帰還を実現させた。0087年中頃のことである。地球圏では地球連邦軍がついにエゥーゴとティターンズに分裂し、内戦が勃発していた。この混乱に乗じてアクシズが第三勢力として地球圏でその存在感を示すことに成功したのである。
混乱の極みにあった連邦政府は当然のことながらアクシズの出現に対応することすらできず、0083年の戦乱では中立勢力としてデラーズ・フリートに兵力すら送ることのできなかったアクシズはエゥーゴ、ティターンズ、双方の勢力から内応を求められるまでの存在となったのだ。これは連邦を徹底的に叩くチャンスでもあった。
ハマーンはこの時、エゥーゴのリーダーとなっていたシャア・アズナブル大佐と運命の再会を果たしていたが、すでにアクシズ時代の親しさはなく、両者の間には深い溝だけが残されていた。
その一方で、ハマーンはエゥーゴとの会見があるごとにアズナブル大佐にアクシズに戻るように伝えていたが、当然のことながら大佐はそれに応じず、まだ幼いミネバ・ザビを擁立してアクシズの団結を図るハマーンの政治的手法を激しく非難していた。
アクシズはエゥーゴ、ティターンズの双方と軍事同盟を結び、その場しのぎの危うい同盟でグリプス抗争に介入した。時にはティターンズと交戦し、情勢が変わればエゥーゴとも砲火を交えた。ハマーン自身もMS部隊を率いて度々戦場に出ている。主に搭乗していたMSはAMX-004キュベレイであり、元々持っていたNTの素質とMSパイロットの素質を活かしてキュベレイを操縦していた。
キュベレイは前大戦時のMAN-08エルメスのMSバージョンともいうべき機体で、七年間の間に小型化されたサイコミュとサイコミュ誘導兵器「ファンネル」を装備する。NTパイロットでなければファンネルを誘導させることすら不可能だが、強化人間ではない純粋なNTであったハマーンはそれを難なくこなし、敵MS部隊にとって脅威となった。
この軍事的駆け引きによってティターンズ、エゥーゴを含む地球連邦軍そのものの勢力を殺ぐことに成功しているが、これは一歩間違えれば分裂した連邦軍を対ジオンで再団結させてしまう危険性もあったと言えるだろう。これはハマーンの綱渡り的な政治的手腕によって回避されている。
抗争中、最大の戦場となったグリプスでの戦闘において、ハマーンはついにアズナブル大佐が乗るMSN-00100百式を追い詰めるが、彼を倒すことはできなかった。
大佐はこの時、有名無実となったエゥーゴを見限って離脱、行方をくらましているが、この時に御座艦グワダンから脱出したミネバ・ザビを救出、確保していたことが後世の調査によって判明している。グワダンの中に多数の「アズナブル派」が存在しており、彼らがグワダン脱出時に暗躍した結果だと思われる。
ミネバを巡ってハマーンとアズナブル大佐がどのような遣り取りがあったかは不明だが、ハマーンは結局、大佐にミネバを託す形となった。ミネバを政治的に利用されないためには、大佐に預けるしか方法はなかったのだ。
そして、ハマーンは本物のミネバと、アズナブル大佐の行方を連邦やアクシズに知られまいと、ミネバの影武者を利用してアクシズに留まり、戦いを続ける決心をしたのだった。
0088年3月、戦力を著しく疲弊したエゥーゴ、混乱の極みにある連邦を尻目にアクシズは漁夫の利を得る形で地球侵攻作戦を開始した。後世、第一次ネオ・ジオン抗争、またはアクシズ動乱と呼ばれる戦争のはじまりである。この時、アクシズは「ネオ・ジオン」と改名。ジオンの後継組織を標榜した。
ネオ・ジオンはこの戦争の第一段階としてサイド3、6を除く全サイトへ宣撫部隊を送り込み、エゥーゴや連邦軍の駐留部隊を鎮圧し、コロニー制圧作戦を進めた。
コロニー宣撫作戦の主旨は各サイドに存在するエゥーゴ支持基盤の切り崩しにある。そして、各サイドの住民が抱く反連邦感情を巧みに煽って利用し、連邦軍を掌握して有名無実となったエゥーゴからの離反を呼びかけた。
これは地球降下作戦を行うための準備行動であり、地球侵攻を行う上では必要不可欠であった。これを放置して地球侵攻を行えばコロニーにあるエゥーゴと、地球にある連邦軍の双方から挟撃され、敗北する可能性があったためである。
そして、各コロニーを制圧、エゥーゴ勢力の排除を行って土台を固めたネオ・ジオンはついに、地球圏の軍事的空白をつく形で地球侵攻作戦を敢行した。連邦やエゥーゴの抵抗はほとんどなく、ガンダム・チームをはじめとする一部の部隊が追撃、迎撃する程度であった。
ハマーンも地球に下りて、地球連邦政府の首都が置かれていたアフリカのダカールへ赴いた。この時に連邦政府首脳と会見したハマーンは正式に政府からサイド3譲渡を取りつけている。第一次ネオ・ジオン抗争ではハマーンはほとんどMSに搭乗して戦闘に出ることはなく、政治と外交に力を入れていた。
この時のハマーンや老獪な連邦政府高官や、打算だけで動く月やコロニーの政財界、ネオ・ジオン内のザビ派や旧ダイクン派といった人間たちと渡り合うことだけに力を注いでいたと言えるだろう。
ちなみにネオ・ジオン(アクシズ)はグリプス抗争の時点でエゥーゴ、ティターンズ双方からサイド3譲渡を条件に軍事同盟を持ちかけ、アクシズもそれに応じていたこともあり、連邦政府からの約束の取りつけはあくまで形式的なものでしかなかったようである。
地球侵攻作戦は地球上の連邦軍やカラバの戦力を殺ぎ、信用ならない連邦政府高官とエゥーゴ上層部に対する恫喝と、世界各地でエゥーゴやカラバを支持する市民にネオ・ジオンはジオン公国時代よりも少ない戦力で、地球を侵攻・制圧することが可能であるということをアピールする対外的な要因が大きかった。
また、アフリカ大陸で戦闘を続行していた旧ジオン公国軍部隊の収容や、エゥーゴ支持に回った連邦政府や軍を見限った旧ティターンズ将兵をネオ・ジオンへ吸収するなどの政治工作も欠かさなかった。
連邦からサイド3譲渡を改めて確認すると、ハマーンはすみやかに地上から部隊を撤退させ、ついにサイド3への凱旋を実現させた。だが、この頃からハマーンはザビ派と距離を置き始めていた。当初、ネオ・ジオン政府をかつてのザビ政権が置かれていたズム・シティーに置くべきであるとの声を押しのけ、自分の故郷であるコア3に政府を置いたのである。これはザビ派との決別を意味していた。
また、地球からの部隊撤退に対しても、地球本土にネオ・ジオン軍を駐屯させるべきとのザビ派の主張に対し、ハマーンは艦隊戦力の全てを撤退させる命令を強行させた。この指揮系統の混乱によってヨーロッパを中心にMS部隊が取り残され、0090年半ばまでカラバと連邦軍による掃討作戦が続いた。
こうしたハマーンとザビ派の乖離によってネオ・ジオンは序々にではあるが、宰相ハマーン・カーンと、ザビ家の六男、グレミー・トト(グレミー・ザビ)派に二分されることになる。
ハマーンのコントロールが利かなくなったと判断したザビ派は、次なる傀儡としてグレミーを担ぎ上げ、反乱を唆したのである。ザビ派は第一次ネオ・ジオン抗争勃発当初から、ザビ家直系のグレミーを支持する姿勢を見せていたことから遅かれ早かれ、分裂は避けられなかったものと思われる。
そして、ザビ派はハマーンが密かにミネバをアズナブル大佐に引き渡したことを察知しており、不信感を募らせていたのだ。
ミネバ・ザビはメールシュトローム作戦終了以降、ザビ家の血の繋がりのない影武者であり、それを擁立するハマーン・カーン政権に正当性はない。これがザビ派の言い分であった。
ハマーン軍はサイド3の旧共和国軍の戦力と、ハマーンに忠誠を誓うネオ・ジオン部隊で構成され、アクシズ本星の戦力を糾合したグレミー軍との戦闘を開始した。
連邦軍とエゥーゴはこれ幸いと両者が弱体化するまで静観の姿勢を示したが、その中でガンダム・チームがサイド3侵攻作戦の予備行動として独自に行動を開始。当面の間、ガンダム・チームはグレミー軍を敵とし、ハマーン軍とサイド3内の反ザビ派レジスタンスを支援する形で戦闘に介入した。
当初、戦力的、求心力的に不利であったグレミー軍はアクシズ本星そのものを質量爆弾化し、コア3に激突させて戦況を有利に働かせた。しかし、皮肉なことに衝突前に反乱軍総司令グレミー・ザビが戦死。傀儡を失ったザビ派はその力を失い、瓦解した。
そして、コア3にアクシズが激突した衝撃波によってコア3防衛のために展開していたハマーン軍艦隊の大半が壊滅し、周辺のコロニーにも甚大な被害を及ぼした。
主だった艦隊戦力と生まれ故郷を失い、追い詰められたハマーンはかつての愛機であったAMX-004キュベレイに搭乗して出撃したが、MSZ-010SZZガンダムとの戦闘で撃破され、行方不明となっている。
ハマーン搭乗のキュベレイは撃破確認が不充分だったために、その生死は未だに不明である。ZZガンダムのパイロットであったジュドー・アーシタが正確な証言を行わなかったのが不充分とされた理由であった。
一説によればハマーンを乗せたキュベレイは大破しつつも戦域から離脱したとの目撃証言もあり、戦後もハマーン生存説が根強いが、連邦政府の情報部やエゥーゴは形式的な調査を行っただけでハマーン機の捜索が行われることはなかった。
戦闘に加わったアーシタ少年やガンダム・チームのメンバーも連邦やエゥーゴに対して不信感を抱いていたために口を噤んでおり、これ以上の調査は不可能だと判断された。
0089年、ハマーン生死不明、グレミー・ザビ戦死という結果で第一次ネオ・ジオン抗争は終結し、地球圏に束の間の平和が訪れた。しかし、この平和も長く続くことはなく、ジオンの名を標榜した組織による戦いは0099年まで続き、連邦を悩ませることになる。
ザビ家の生き残りであるミネバ・ザビは行方知れずとなり、ミネバが政治に利用されることも、再び歴史の表舞台に立つことは二度となかった。これはハマーン、そしてアズナブル大佐が望んでいたことであった。
◆ハマーン・カーン搭乗機種一覧
●アクシズ時代
MS-09Rリック・ドム
MAN-09G-3
AMX-000プロトタイプキュベレイ
●グリプス抗争/第一次ネオ・ジオン抗争
AMX-003ガザC
AMX-004キュベレイ
●未確認
AMX-103Aワルキューレ
MS-09Rリック・ドム
大戦後期におけるジオン公国軍の主力機。元は陸戦機であったMS-09ドムに空間戦能力を付与させた機体で、高い機動力を持つ。戦後も多数の機体がアクシズに持ち込まれ、初期のアクシズ戦力となった。
ハマーン専用機は白主体のカラーリングにパープルのアクセントという独特のカラーリングが施されていた。これは後のAMX-004キュベレイのカラーにも引き継がれており、彼女のパーソナルカラーだったと思われる。
当時、14歳だったハマーンは愛機リック・ドムを自在に操縦して、アクシズ周辺の警備任務や住居区画の拡張工事作業、サイド3からの移民船の誘導などの補佐的な任務をこなしていた。
0082年の連邦軍艦隊遭遇事件の時にもリック・ドムに搭乗して出撃したが、この時、テスト的な意味合いもあったのかサイコミュ誘導兵器の基盤と端末がセットになったウェポンコンテナを牽引して出撃しているが、この時はサイコミュ兵器による成果は出せなかったようである。
MAN-09G-3
大戦末期、MAN-08エルメスの改良型として開発が進められていたNT専用MA。小型宇宙艇の様相を示しているエルメスに比べて小型化され、四肢を持ち、MSに近い機体である。
G-1がMAN-03ブラウ・ブロ、G-2がMAN-08エルメスとなっており、これらのサイコミュ型MAの第三段階がG-3である。戦後、アクシズに持ち込まれて開発が進められていたもので、0082年頃にロールアウトしている。
腕部にはビーム砲が内蔵され、本来のマニュピレーターとしての役割はなくも、ビームサーベルに握れる程度のものである。また、同様に脚部も歩行性能は低く、着艦時のランディング・ギアとAMBAC肢に性能を特化した形となった。
腕部と脚部は折り畳んで巡航形態を取ることが可能で、これはAMX-004キュベレイの肩部バインダー・アーマーに腕部を収納する巡航形態に受け継がれた。
誘導兵器ビットは後腰部コンテナに収容され、このレイアウトは後のAMX-003キュベレイにも引き継がれている。また、腕部、肩部をはじめとして機体各部にビーム砲を装備し、高い火力を持つ。前段階のエルメスの武装がビームキャノン二門だけで接近戦闘に持ち込まれた時にはほぼ無防備だったことから、次のG-3では対MS戦闘や接近戦に対応させるために多数のビーム砲を装備する形となった。
ハマーンは最初のサイコミュ適応テストにロールアウトしたばかりのG-3に搭乗して、各種データの採取を行ったとされる。この時に得られたデータは後のAMX-000、AMX-004に活かされた。ハマーン搭乗のG-3は白とパープル系のカラーリングは施されておらず、搭乗していた期間もごく短かったものと思われる。
AMX-000プロトタイプキュベレイ
MAN-09G-3の次の段階のMSで、MAN-08エルメスとAMX-004キュベレイの中間的なMS。G-4と呼ばれることもある。サイコミュ・システムの小型化検討モデルで、0084年頃にロールアウトした。
この機体で試された技術はAE社との裏取引で入手したリニア・シートやムーバブル・フレーム、Eキャップ技術などでそれぞれ、完成形となるキュベレイに引き継がれた。ムーバブル・フレームは四肢などごく一部に採用されているのみで、全身への採用は技術的問題から出来なかったようだ。
全高は25mで、一般的なMSより大型となっている。数々の新技術を投入しているものの、アクシズ側の技術が追いつかずバランスは悪い。これを元に更なる再設計と根本的な改良を施した完成形がAMX-004となる。
ハマーンはビットにEキャップ技術を導入した改良型「ファンネル」の微調整のために、プロトタイプキュベレイに搭乗していたことがあったが、G-3と同様、テストだけの搭乗でこれによる実戦参加の記録はない。
プロトタイプキュベレイそのものは、MAN-08エルメスのララァ・スン少尉機と同様のエメラルド・グリーンにカラーリングされていた。
AMX-003ガザC
0087年のグリプス抗争時において、エゥーゴ艦隊との接触時に搭乗していた機体。アクシズの主力MSで、ハマーンが搭乗していた機体は一般パイロット用のものと変わりはない。この時点ではまだ秘密兵器であったキュベレイの存在を隠すために搭乗していたものと思われる。
ハマーンはガザCで構成された部隊を率いて、エゥーゴの旗艦「アーガマ」と接触し、エゥーゴからの使節団を迎えた。この時、ハマーン機のガザCは使節団を乗せたランチに急速接近して、示威行動を取ったという。
ハマーンがガザCに搭乗したのは、この時だけである。
AMX-004キュベレイ
MAN-09、AMX-000と続いて開発されたNT専用MS。MAN-08エルメスのMSバージョンとも言える機体で、開発当初は「エルメスII」と呼ばれていた。機構試作機であるAMX-000プロトタイプキュベレイをベースに、ムーバブル・フレームとガンダリウムγ合金製装甲を導入し、徹底した再設計とシェイプアップを行った機体がAMX-004であった。
0087年頃にロールアウトしており、グリプス抗争時においてハマーン搭乗の一機のみが実戦投入された。
G-3、プロトタイプに比べると全高が18m級となり、武装もファンネル以外はビームガン兼用のビームサーベルとシンプルとなっている。前大戦時、大型MAでなければ搭載できなかったサイコミュも七年の時を経て小型化と高性能化を果たしており、サイコミュも引き続き搭載している。
サイコミュ誘導兵器にはビットの改良型である「ファンネル」を装備している。これはビーム稼動用の核融合炉の代わりにEパックシステムによる稼動となり、小型化に成功している。プロペラント補充・充電時には腰部に装備されているファンネルコンテナで行われ、ローテーションさせて常にオールレンジ攻撃をさせることが可能。
NTであるハマーンは難なく、キュベレイの操縦とファンネルの稼動を行っていた。操縦系統はサイコミュに依存しておらず、サイコミュが担当するのはファンネルの誘導だけである。
ハマーンは白とパープルにカラーリングされた試作機に搭乗し、アクシズMS部隊を率いて戦闘に参加した。ファンネルでの変幻自在の攻撃でエゥーゴやティターンズのMS部隊は度々翻弄された。
グリプス抗争終結後、ハマーンは第一次ネオ・ジオン抗争におけるコア3会戦時までキュベレイに搭乗して戦闘に参加することはなかった。コア3会戦時の機体はAMX-004-2/3と同仕様に改修されており、性能は向上していた。ハマーンは単機で出撃し、ガンダム・チームのMSZ-010SZZガンダムと交戦。最終的には腰部を切断され、撃破された。
しかし、この時、腰部を切断されたにも関わらずキュベレイは上半身だけで稼動していたことから、優秀なムーバブル・フレームを持っていたことが分かる。
AMX-103Aワルキューレ
ハマーンが搭乗していたか不明だが、白のカラーリングの機体が存在したことからここに挙げておきたい。この機体は後の第一次ネオ・ジオン抗争時に投入されたAMX-103Sハンマ・ハンマの母体となった機体である。ハンマ・ハンマはマシュマー・セロ大尉搭乗の「騎士専用MS」であり、その母体となったのはワルキューレであった。
ワルキューレはMSN-00キケロガやMSN-02ジオングの系譜上にある機体で、有線式の攻撃端末を持つ。高機動と腕部の有線ビーム砲で敵部隊を翻弄するもので、AMX-004キュベレイ同様、サイコミュを搭載している。有線式であるため、無線式のビットやファンネルよりも信頼性そのものは高いが、柔軟な攻撃ができないという欠点も持つ。
試作機は三機が製作され、そのうち一機だけが白とパープルの「ハマーン・カーンカラー」が施されていた。NT能力が高いハマーンが率先してアクシズのNT用MSの調整とテストを行っていたことから、このワルキューレに搭乗していた可能性は高い。
その後、ワルキューレは量産化が断念されたが、そのうち、白とパープルの試作機はマシュマー・セロ大尉専用機として改修されることが決定され、サイコミュの微調整がなされた後、AMX-103Sハンマ・ハンマとなった。
セロ大尉はハマーンに心酔していた若手将校の一人であり、ハマーンから下賜された機体を騎士専用MSとして搭乗していた可能性は高いだろう。
ちなみにセロ大尉機のデータをベースに、AMX-103G量産型ハンマ・ハンマが数機、先行製作されていたがこれも本格生産には至っていない。
(付記)セラーナ・カーンについて
カーン家の三女、セラーナ・カーンはハマーンの実妹である。彼女はハマーンと共に地球圏に帰還するが、武力闘争に明け暮れるハマーンと袂を分かち、アクシズに残る穏健派を率いて地道な和平交渉を行っていた人物として知られている。父マハラジャの影響を受けたのと、ザビ派の傀儡となりシャアを失って頑なになったハマーンを見ていたのか、和平を積極的に推進したことで知られている。
0088年のコア3沖会戦後、サイド3が連邦の占領下に置かれず、引き続き共和制が維持された背景には彼女がエゥーゴや月の政財界と秘密交渉を行ったためである。
彼女は、ハマーン死後も連邦軍やエゥーゴと戦闘を続行するネオ・ジオン残党の説得を行い、アクシズ出身の一般市民をサイド3へ帰国させる運動を推進し、ミネバ・ザビ皇女が行方知れずとなった第一次ネオ・ジオン抗争後、ネオ・ジオン唯一の希望となっていた。ハマーンが強硬策を取り続けた女傑だとしたら、妹セラーナは地道に、なおかつ粘り強く和平への道を模索する聖女として、静かな支持を集めつつあった。
セラーナは特に旧エゥーゴ系議員やそれらと深い繋がりのある月の政財界人との人脈を築き上げており、ハマーン死後、唯一の連邦とネオ・ジオンを結ぶ窓口となっていたのだ。
故に武力闘争を続けるザビ派に命を狙われることも多く、彼女が率いていた穏健派も、0090年頃を境にシャア・アズナブルを密かに迎え入れ、急速に勢力を拡大しつつあったダイクン派に迎合し、武力闘争続行を支持したことで結局、彼女はネオ・ジオンから追放された。
アズナブルと対立していたハマーンの実妹であったことが、かつてのザビ派の粛清を進めていたダイクン派にとって、ザビ家縁である彼女の存在は邪魔者でしかなかったのだ。しかも彼女は連邦(エゥーゴ)との和平を進める太いパイプもあった。名目こそザビ派の粛清にあったが、実際は外交面で巻き返しを図ろうとする和平派の排除でしかなったのだ。ダイクンの実子アズナブル大佐擁立後の再興ネオ・ジオンの矛盾がここに現れていたとも言える。
先のハマーン時代に内部紛争の種を振り撒き、シャア・アズナブルがアクシズ離反を決意する原因を作ったザビ派の粛清や排除を行うのは新生ネオ・ジオンを成立させたダイクン派にとっては至極当然のことではあったが、セラーナはザビ派と一線を画くした活動して、それなりの成果を挙げていたことを無視することはできない。
ネオ・ジオンを追放された彼女は主戦派に命を狙われ、結局は連邦に亡命することになる。その後、連邦議員に選出されて、サイド3との交渉団団長を務めてネオ・ジオン残党問題に取り組むことになった。
0099年の「月面危機」事件時には彼女はサイド3で共和国国民に対して冷静を呼びかけ、また月面危機の首謀者であるベルム・ハウエル元公国軍中将の軍事行動に呼応するように決起を画策したジオン共和国軍の若手将校らの説得にあたってジオンの名のもとに戦禍が拡大するのを防いだことでも知られている。
こうした活躍から次期ジオン共和国首相の声も大きかったが翌年、ジオン共和国は50年近くに渡る戦乱の責任を取る形で自治権を放棄と連邦政府への帰属を宣言。セラーナ・カーンは引き続いて連邦議員を務めることになった。