ジェガン系MS

 内訌戦後の地球連邦軍の新主力機として開発された新型MS。0084年制式のRMS-106ハイザック以降、連邦軍は主力MSの後継機開発を怠っており、新規開発機としてはハイザック以来となる。開発は第一次ネオ・ジオン抗争時よりAE社が行い、連邦軍の次期主力機を睨んで開発されたRGM-88Xジェダが原型となっている。内訌戦期のエゥーゴのMSA-003ネモ、ティターンズのRMS-108マラサイ、及びダカール宣言後に制式採用されたMSZ-006C1Zプラスを除き、AE社が開発から製造までを一貫して行った初の連邦軍量産型MSとなった。

 ジェガンの量産1号機がロールアウトしたのは第一次ネオ・ジオン抗争終結後の0089年10月であり、内戦とアクシズ侵攻によって疲弊した連邦軍の新戦力として期待されたが軍事費削減の憂き目にあい、ロンド・ベル隊やエコーズなどの一部のエリート部隊に配備が限定され、一般部隊への配備が本格化するのはシャアの乱が終息する0093年以降となる。

 第二次ネオ・ジオン抗争後の連邦軍ではジェガンのマイナーチェンジや更新工事を施しながら、0120年代半ばまで主力機として宇宙艦隊やコロニー駐留軍などに配備し続け、30年近くの長きに渡って連邦軍の主力作戦機として第一線に立ち、パイロットに親しまれたMSである。0090年代後半から0120年代におけるMSの代名詞とはザクやジムではなく、このジェガンと言っても過言ではなく、まさに連邦軍MS部隊の顔でもあった。

 その後、0120年から0122年に掛けて発生したオールズ・モビル紛争によって旧式化が指摘されはじめ、0123年のコスモ・バビロニア紛争時にはクロスボーン・バンガード軍の小型MSに性能的にも歯が立たなくなり、完全に旧式化した。以後はRGM-119ジェムズガン、RGM-122ジャベリンといった小型MSの後継機がロールアウトしたため、0120年代半ばにはほぼ前線からは退き、コロニー軍の補助戦力や警備用MSとして余生を送ったとされる。


 機種一覧

 RGM-88Xジェダ
 RGM-89Aジェガン
 RGM-89Bジェガン改
 RGM-89Cジェガン陸戦仕様
 RGM-89Dジェガン後期型(新機種追加!!)
 RGM-89Deジェガン(エコーズ隊仕様)(新機種追加!!)
 RGM-89EWACジェガン(新機種追加!!)
 RGM-89F重装型ジェガン
 RGM-89G高機動型ジェガン
 RGM-89Sスターク・ジェガン
 RGM-89STセンサーターレットガン
 RGM-89Jジェガン
 RGM-89Mジェガン
 RGM-89Rジェガン


 RGM-88Xジェダ

 グリプス抗争終結後、内訌戦で疲弊した地球連邦軍のRGM-79RジムIIRMS-106ハイザックに代わる次期主力機候補を睨んでAE社が開発した新型MSである。エゥーゴ指導下となった連邦軍への受注を本格的に見込んだ最初の機体でもある。

 AE社では0087年に勃発したグリプス抗争で自社が活動を支援していたエゥーゴが連邦軍の主導権を掌握したダカール宣言以降、次期主力機の受注を睨んで連邦軍向け量産型MSの開発が活発化しつつあった。
 ダカール宣言前までのエゥーゴの乱、賊軍と官軍の立場が逆転したダカール宣言後のティターンズの乱で組織が著しく疲弊した地球連邦軍は性能的に陳腐化しつつあったRMS-106ハイザックや、大戦中に生産された機体のマイナーチェンジであるRGM-79RジムIIといった旧式MSを早急に更新する必要性に迫られており、ティターンズ勢力を追い出した新生地球連邦軍はエゥーゴが保有する新型MSのポテンシャルの高さに着目し、エゥーゴで開発・使用されているMSに沿った次期主力機の選定を0087年末より開始した。

 次期主力機が制式採用されるまで、連邦軍では旧式化しきっていたRGM-79RジムIIをRGM-86RジムIIIに更新して支援機とし、主力機にはRGM-86Rの設計を流用して新規生産する形で乗り切ることを決定する。これはRGM-88ヌーベルジムIIIとして結実し、予想以上のコストパフォーマンスの高さを示してダカール宣言後より調達数を順調に伸ばしていた。

 しかし、ティターンズ壊滅後、連邦軍/エゥーゴ最大の仮想敵となったアクシズ改めネオ・ジオン軍が擁するMSは高性能機が多く、大戦時のジムからの設計を引きずるRGM-86/88系列ではこれらのネオ・ジオン軍量産型MSに対して苦戦が予測された。
 一方、ネオ・ジオン軍でも耐久性で劣る数合わせの機体であったAMX-003ガザCを順次前線からは退役させ、発展強化型のAMX-006ガザDへの機種転換をコロニー制圧作戦終了にまで終えていた。同機は汎用MSとしても優れており、エゥーゴや連邦軍の主だった主力機にも充分に対抗可能なポテンシャルを有していた。
 更に汎用型MSを目指したAMX-008ガ・ゾウムや試作機AMX-107バウの量産化を進めていたこともあり、ハイザックはおろか、ネモやマラサイ、バージムといった就役1年となる第二世代MSでさえも苦戦するであろうことは想像にかたくなかった。ようやくヌーベルジムIIIでガザDクラスの機体と対等に戦える程度のものであり、それほどまでに当時の連邦軍MS部隊の疲弊は深刻化していたのである。

 グリプス抗争終結後より連邦軍は最前線となる衛星軌道上のパトロール部隊にMSZ-006Zガンダムの量産仕様、MSZ-006Cシリーズを限定的に配備し始めていたが、配備数は少なく、最低でも主力部隊ではネオ・ジオン軍の主力機となるガ・ゾウム、地球侵攻用に集積しているAMX-009ドライセン、AMX-102ズサ、AMX-103ガルスJといった汎用機とも対等に戦える汎用型MSの要望が高まりつつあった。
 そうした要望に答えるべく、AE社では次期主力機を睨んだ新型量産機の開発に着手した。既にグリプス抗争時に立ち上げられていたエゥーゴ次期主力機案を連邦軍次期主力機候補にスライドさせる他に、軍からの要請に応える形で新型MS開発も新規に立ち上げており、その中の一プランとして開発されたものがRGM-88Xジェダであった。
 連邦軍は先の内訌戦でMS開発・生産能力を有する拠点を軒並み失っており、内訌戦後の連邦軍のMS開発能力は著しく低下していた。そのため、軍上層部はAE社に開発を丸投げすることで開発時間の短縮と失われた開発能力をAE社にカバーさせようと考えていたのである。また、軍内部で発言力を増大させたエゥーゴ支持派将校団が積極的にAE社への開発委託を行うべきであると提言し、議会でも軍事費削減の一環として民間企業に兵器開発を行わせて、危険分子であるティターンズを生み出した連邦軍独力による兵器開発能力を削ぎたいという思惑が動き、軍のエゥーゴ派と軍を信用していない議会の思惑が一致した形となったと言える。

 RGM-88Xというナンバーは、同機がヌーベルジムIIIからの発展系であることを示す。これはムーバブル・フレームをヌーベルジムIIIのものを流用したためで、当時の連邦軍主力機として調達数を伸ばしつつあったヌーベルジムIIIとのパーツ共用を睨んだものである。基本となるムーバブル・フレームのみを共用し、装甲やジェネレーターを大胆にオプション化する構想は、生産効率を重視する民間企業であるAE社ならでは設計思想であった。
 元々、ヌーベルジムIIIは第一世代機と第二世代機の中間、限りなく第二世代機に近い第一世代機であるジムIIIの改修規格をほぼそのまま流用して第二世代機として再設計したMSである。基本性能はネモやマラサイよりも高いものの、やはりその場しのぎの急造機であることには変わりはない。装甲の設計も改修型ジムIIIのものをほぼそのまま流用したため、その他の同世代機よりも早い時期に性能の陳腐化を迎えることは明らかであった。
 そこで設計的に新規設計部分であるムーバブル・フレームのみを転用して、装甲とジェネレーターを一新したMSを開発して生産ラインに乗せ、コスト削減とパーツ共用向上による兵站上の負担を和らげることを、AE社は連邦軍に対して提案したのである。
 ネオ・ジオンの動向が掴めず、先の内戦でジャブロー、キリマンジャロ、ア・バオア・クーといった一大拠点を失い混乱していた連邦軍は独自に新型機を開発する時間も余裕もなく、AE社の提案に乗る形でジェダの制式化を決定した。

 新設計のガンダリウムγ合金製装甲に一新されたジェダは、外見こそガンダム系量産機であったが中身のムーバブル・フレームがヌーベルジムIIIと同規格であることは一見すると判別出来ない。フレームは流用したものの、事実上の新規開発機といってもいい程の完成度であった。
 また、ジェネレーターは稼動率の高いことで定評があるネモ系の物を改良したタイプを搭載することで、従来のヌーベルジムIIIよりも高性能で、なおかつ小回りの利く機体となった。この改良はヌーベルジムIII後期生産型にネモ用ジェネレーターを転用したことがヒントとなっている。

 バックパックはRX-178ガンダムMkIIのものと同規格で、これはRGM-86/87/88の各シリーズとも共通しており、またジェダがあくまでジムIII系の系譜上にあることを示す名残でもある。ジェダを元に更にコスト削減を含む改設計が施されたRGM-89ジェガンにおいてはバックパックも一新されているが、このRX-178の優秀なバックパックシステムを踏襲した設計となっている。

 武装は固定武装として頭部に60mmバルカン二門、バックパックにビームサーベルを二本装備し、オーソドックスな連邦軍MSの伝統を踏襲しているが、ジェダでは更に火力増強対策として腰部左右にグレネード・ランチャーを装備し、弟分とも言えるジェガンもこのレイアウトを装備した。

 手持ち武装は連邦軍・エゥーゴ製MSの量産機用武装であれば大半は装備が可能で、ジェダ専用のものは特に開発されなかった。武装は既にあるものを使うことでコストを下げる構想そのものは、RMS-154バーザムと共通している。
 ただし、0091年頃にロンド・ベル隊に配備されていた機体はスコープを強化した独自設計のビームライフルを装備していた。これはコロニー内MS戦用のもので、0091年に発生したスウィートウォーター襲撃事件時に確認されている。
 シールドはこれも連邦軍MSのものであれば大半は装備可能で、独自のものは設計されなかった。先述の通り、ジェダを一時的に配備・使用していたロンド・ベル隊ではRX-178と同タイプのシールドを装備しており、他の審査部隊で試用されていた機体も同様だったと思われる。

 ジェダの開発はグリプス抗争中にMSA-003ネモやジムIII改修キットの開発、ヌーベルジムIII後期生産型の改良を手掛けたAE社の第二開発局が手掛け、0088年12月に生産試作機がロールアウトした。
 この頃、既にネオ・ジオン軍は主流派のハマーン・カーン軍と叛乱軍であるグレミー・トト軍に分裂し、内紛が勃発した時期でもあり、ジェダのロールアウトは風雲急を告げる世界情勢に出遅れた感があったが、予定通り次期主力機査定のために初期生産分12機が納入され、審査部隊でのテストが開始された。
 ちなみに連邦軍とエゥーゴはサイド3・ムンゾを舞台にするネオ・ジオンの内紛については静観し、双方の勢力が弱体化しない限り一切の軍事介入はしないとの方針を示したため、第一次ネオ・ジオン抗争時におけるジェダの実戦投入記録は無い。

 ジェダは性能的には同期に連邦軍次期主力機として査定され、先立ってα任務部隊に配備されてペズンの乱において実績を挙げていたAE社製MSA-007ネロには遠く及ばなかったものの、軍の要求を充分に満たした。しかし、0089年に連邦軍・エゥーゴの同盟軍最大の仮想敵であったネオ・ジオン軍が内紛によって自己崩壊を起こして戦乱が終結したこともあり、軍の再建計画は大きな修正を余儀なくされることになる。

 当初、対ネオ・ジオン戦争需要を睨んで連邦/エゥーゴ向けの高性能量産機の開発を行っていたAE社であったが、戦乱終結によって大半のプランを凍結・廃棄せざる得なくなった。それでも連邦軍は内訌戦やネオ・ジオン侵攻によって疲弊しており、戦力の再編成と次期主力機の査定は続けられたが、主だった戦乱が終息した0089年の時点では高コスト高性能機より、低コストでそれなりの性能を出せる整備性の高い機体、さらに汎用兵器としてのMSの原点に立ち返ったものが求められることなった。

 ジェダは数ある次期主力機候補の中では低コストという条件に適合していた唯一の機体だったが、軍はジェダの性能に満足せず、更なる改良をAE社側に指示している。この時点で軍は次期主力MSを長期間に渡って使用することを考慮して、低コストの他に高い整備性、長期配備を見据えた拡張性の高さを求めていた。
 前作のハイザックが政治的思惑に振りまわされた結果、性能的に中途半端となり早期に生産が終了して、ポスト・ジムとして失敗を経験していたことも関係しているのだろう。ジム・シリーズ、ハイザックに続く連邦軍の三代目主力MSは平凡だが、長期使用が可能で財政を圧迫しない機体が求められたのである。。
 そして、軍からの要求に応えるべくAE社は更にジェダの設計を整理して、生産性と整備性を高めるべく改良を施した。それがRGM-89Aジェガンとして結実する。

 戦乱終息による世界情勢の変化によって制式採用が適わなかったジェダは、12機が連邦軍に納入されてジェガン開発のためのテスト運用が続行されたがその後、0090年に結成されたロンド・ベル隊に6機が配備されたが、これはロンド・ベル隊の主力MSとして配備が開始されたジェガンの不足数を補うための処置であった。結成初期のロンド・ベルはジェガンの配備数が不足しており、まだ実戦経験が浅く、パイロット訓練や慣熟飛行を行うためジェガンの特性に極めて近いジェダを運用して慣熟飛行訓練が行われた。

 訓練が終了した後もしばらくの間はジェガンの配備数が足りることが無かったため、訓練用として配備されたジェダはロンド・ベル隊MS部隊の重要な戦力として、0092年頃までジェガンと混成使用されていた。
 0091年のスウィート・ウォーター襲撃事件時にはロンド・ベル隊所属の重巡洋艦ラー・ザイムに4機が配備され、スウィート・ウォーターに潜伏するジオニスト討伐のために動員され、同地で再興ネオ・ジオンの下部組織となっていた過激派組織「エグム」のMS部隊と交戦した記録が残されている。
 この遭遇戦ではコロニー内で警備飛行にあたっていたジェダ1機がエグム所属機からの攻撃を受けてバランスを崩して居住区に墜落し、コロニー内の連邦感情を悪化させただけで、さしたる戦果は残していないまま撤退している。エグムが動員したMSは旧式のMS-06Fザクや、作業用モビルワーカーに武装を施しただけの戦力としてはかなりお粗末な内容だったが、地の利を活かしてコロニー内ゲリラ戦でロンド・ベル隊に対して優位に立った。

 その後、0092年後半にシャア・アズナブル総帥率いる再興ネオ・ジオン軍MS部隊との戦闘が激化するとジェガンの配備数も増えたため、ジェダは順次、新品のジェガンと入れ替わるように後方へと下げられ、ロンド・ベル隊から姿を消していった。

 第一次ネオ・ジオン抗争に間に合わず、その後の査定でも更なる改良を指示されて制式採用されず、少ない実戦投入でもさしたる結果を残すことなく終わったジェダであったが、その後の成功作であるジェガンの礎となった意味では重要なファクターを担った機体だったと言えるだろう。

 RGM-89Aジェガン

 内訌戦後、AE社が次期連邦軍主力機として提案したRGM-88Xジェダの発展型で、更なる生産性と整備性の向上によるコストダウンがなされたモデルである。地球連邦軍史上、開発から生産まで全て民間企業であるAE社が手掛けた初の機体となる。

 当初、前段階の機体であるジェダの制式採用を見込んでいたAE社ではあったが、軍サイドからはジェダをベースに更にコストダウンのための改良をするよう要請を受けたため、ジェダは12機が生産されたのみで終わった。ヌーベルジムIIIのムーバブル・フレームを引きずっているジェダでは戦乱終息後の軍縮による長期配備に耐えれない設計であり、早晩、旧式化することは目に見えていたからである。

 主だった戦乱が終結した以上、政府の予算委員会では先の内戦時に肥大した軍備は縮小し、経済復興に予算を振り分けるべきであるとの声も強く、先の内戦でティターンズの暴走を止められず、政府からの信頼も低下していた軍上層部はこれ以上の予算獲得は無理であると判断し、現時点の有望株であるジェダを更にコストダウンさせることで何とか予算獲得を得ようとしていた。
 これを受けてAE社ではジェダの改良、主に生産性、整備の省力化を含めたコストダウンを進めることなるが、元々がヌーベルジムIIIがベースであるジェダでは既にコストダウンも限界に近づきつつあった。AE社ではジェダの設計を踏襲しつつ要求されるコストダウンのためにフレームレベルでの改良を行った。
 改良の要点は生産コストを下げ、次に規模の小さい部隊でも運用可能な整備の簡略化と省力化である。予算が削られるということは、部隊や基地の統廃合や縮小も有り得る。それを見越しての改良であった。

 その一方で、容易にマイナーチェンジや配備地区の状況に合った改良や性能向上が施せるように拡張性の高い設計とした。これは予算が削減された場合、新機種や後継機種の代替ペースが鈍化することが予測されたためで、軍では最低でも15〜20年程度、ジェダの次の機体を継続使用することも考えていた。実際にはジェガンはマイナーチェンジや更新工事を受けながら30年近くに渡って使用されたが、0089年の時点でMSが連邦軍で主力兵器として使用を開始されてから10年と少しの期間しかなく、同じ機種を20〜30年使用することは0089年の時点では予想もつかなかったのだ。
 そして突発的な有事の際には小改良やモジュール追加だけで性能向上が図れ、次の後継機が戦力化するまで現有戦力のみで乗り切る。これが予算削減の憂き目にあった内訌戦後の議会と国民からの信頼を失った連邦軍の生き残る道であった。

 第一次ネオ・ジオン抗争終結後の地球連邦軍は、先の内戦でエゥーゴ・カラバ・ティターンズがそれぞれ独自に開発・生産した機体が戦後のMS不足のためそのまま配備され続けたこともあり、連邦軍の主力部隊では互換性の低い、規格の異なるMSを混成使用するという事態となっており、これが兵站上において大きな負担となりつつあった。
 整備・兵站上の混乱を是正し、コストを削減するには第一に主力部隊に配備されている機種を統一すること、第二に機種間のパーツ共用度を高めること、第三に互換性の低い機種を早期に退役させることであった。こうした非効率的なMS運用をいち早く是正することは急務でもあった。

 RGM-89Aジェガンは、そうしたRGM-86/88系に代わる新生地球連邦軍の主力機として期待がかけられていた。AE社では母体となったジェダをベースに、ムーバブル・フレームに改良を加えて生産性を向上させることに成功した。フレームの基礎設計はジェダから変わっていないが、技術進歩によって性能を落とすことなく大幅な簡略化とスリム化を実現しており、結果として製造コスト削減を実現している。また、拡張性も高く局地戦仕様への換装や改造も比較的簡単に行えた。
 ジェネレーターもヌーベルジムIII、ジェダに引き続いてネモ系のものにさらに改良を加えた新型のものを採用。優秀な稼働率と廃熱の少なさに定評があり、これによって胸部廃熱ダクトを小型化させることに成功し、連邦軍MSのウィークポイントであった胸部の防御力の弱さをカバーしている。
 背部バックパックは新規設計とされ、推力は大幅に向上して機動性能は高い。逆に装甲材質はジェダに採用されていたガンダリウムγ合金から、在来のチタン合金・セラミック複合材に後戻りしているが、ガンダリウムγ合金の精錬技術をフィードバックさせることで在来のチタン系合金の改良が可能となったため、ジェガンに採用されたチタン系合金製装甲はガンダリウムγ合金の量産素材と同等のスペックと特性を持つ。これもコスト削減の一環である。ちなみに後のアップデイト型となるJ/M/Rの各タイプでは一部装甲部材にガンダリウムγ合金も使用している。
 また、胸部廃熱ダクトが小型化されて胸部の防御力強化を果たしたのと対照的に、腰部スカート・アーマーが省略された。これは同様に腰アーマーを持たないMSZ-006A/C系列やα任務部隊で運用されたMSA-0011Sガンダムの戦訓が生かされた形となり、スカート・アーマーが省略されたことで股関節部の抵抗が減り、軽量化されたため運動性は向上している。防御対策については太腿ユニットに増加装甲を取り付けることで対応したが股関節部が露出し、耐弾性低下が懸念された。そのため、場合によっては腰スカート・アーマーを追加装備も可能なように拡張性を持たせている。

 頭部ユニットはジェダを踏襲しているが、より簡略化されている。左側面にはRX-178ガンダムMkIIで採用された外装式のバルカン砲を一門、装備している。従来の連邦系量産機は左右に60mmバルカンを装備するケースが多かったが、ジェガンでは片側に一門のみに留まっている。これはバルカン砲をあくまで威嚇砲撃用として割り切って、重要なセンサー部を持つ頭部ユニットを分離させることで双方の信頼性を上げたいという設計思想が見て取れる。これは先述のRX-178RMS-154系、またはMSA-007系でも試されたものである。

 武装面では新設計のビームライフルが用意されたが、在来の連邦軍MSが装備する各種ビームライフルの装備も出力を圧迫しない限りにおいては可能で、ジムII/ネモ用からハイザック用、ネロやバーザム用のライフルも装備は可能であった。しかし通常はかつてのRGM-79RジムIIMSA-003ネモが装備していたタイプを元にEパック換装式に改良したジェガン専用のものを携行することが多かった。
 シールドも新設計となり、接近戦闘を目的としたグレネード・ランチャーを装備する攻防一体の装備となっている。裏面には予備のEパックを装備することも可能で、シールドというよりもウェポン・ラックに近い。当初はジェガン用に開発されたシールドであったが、第二次ネオ・ジオン抗争後はRGM-88Bヌーベル・ジムIIIも装備することも多かった。
 その他の固定武装は腰部左右にウェポン・ラックを持ち、通常装備として左部にグレネード、右部にビームサーベルを懸架することが多い。ビームサーベルはジムIII系の二本差しから一本のみに戻っているが、軍内部では最後まで量産機に一本か予備の二本を装備させるか迷っていた節が見られる。一回の戦闘で発生する格闘戦を鑑みた場合、予備サーベルを使用する局面があるのかという面を含めた結果、初代ジムと同等の本数に立ち返ったものと思われる。
 
 こうして、第一次ネオ・ジオン抗争も終息した0089年10月、オーバーロード作戦とその直後に発生したスウォンジー事件後に量産1号機がロールアウトしている。国防族である連邦政府議員、ジョン・バウアー氏の後押しもあって制式採用を勝ち取ったが、連邦政府が軍の再建には消極的だったこともあり新型機でありながら調達数は伸び悩んだ。コスト削減を命としたジェガンですら大量受注を受け取ることすらAE社は出来なかったのである。そして一般部隊では未だに機種統一という命題を果たせず、エゥーゴやティターンズが使用した機体を使い続けるという状況がジェガンロールアウト後、0091年頃まで続いた。
 0090年3月、エゥーゴ・カラバの正式解散と入れ替わるように結成された連邦軍の外郭新興部隊「ロンド・ベル」ではその任務特性上から、最新装備である必要に迫られ、一部の審査部隊でテスト運用が続き、実戦を経験していなかったジェガンの配備がようやく決定した。それでも部隊編成初期はジェガンの定数が足りず、RGM-88Xジェダで足りない分を補って陣容を整えるという有様であった。また、同時に編成されたエコーズでもジェガンを受領していたもののロンド・ベル以上に配備数は少なく、編成当初はRGM-88BヌーベルジムIIIと混成使用されていた。エコーズのMS部隊がジェガンに統一されるのは0093年、第二次ネオ・ジオン抗争後のことである。

 ジェガンは0090年以降、スローペースではあるが量産も開始され、少しづつではあるがロンド・ベル隊に優先配備されていった。政府議会は第二のティターンズ化を恐れて必要以上にロンド・ベルの増強をしなかったものの、ジェガン採用を後押ししたジョン・バウアー議員や、連邦軍内の旧エゥーゴ閥の長であったマノフ少将の尽力によってロンド・ベル隊はAE社フォン・ブラウン工場でロールアウトしたばかりのジェガンを軒並み受領することが出来たのである。
 0092年末にはほぼジェガンによる機種統一を果たし、第二次ネオ・ジオン抗争における空間戦闘においてジェガンはほぼ、ロンド・ベル隊で集中運用されていた。そのため当時はジェガンはロンド・ベル隊専用機という印象が強かった。ちなみに一般部隊への配備が本格化したのは0093年以降のことである。

 ジェガンは敵対する再興ネオ・ジオン軍のAMS-119ギラ・ドーガに比べて火力不足と防御力不足が指摘されたが高い運動性と整備性、そして信頼性の高さが評価を受け、先年の連邦軍内戦期におけるMSの恐竜的進化を反省し、汎用兵器としてのMSの原点に立ち返ったジェガンはシンプルながらも30年近くも現役の座につくことになった。
 それは第二次ネオ・ジオン抗争以降は大きな戦乱が発生せず、ジェガンを過酷な戦場に駆り立てるような戦闘が発生しなかったことも、同機を長きに渡って主力機の座につかせた一因だと言える。取り立てて高性能機ではなく、コスト優先の機体であったがそのシンプルさと平穏な世界情勢が生きながらえさせたのだ。

 RGM-89Bジェガン改

 RGM-89Aジェガンの性能向上型。シンプルに立ち返り、膨脹する軍予算を削減できる救世主として開発されたジェガンであったが、性能が平凡過ぎたためジェガンを運用するロンド・ベル隊、エコーズといった用兵側はその性能に必ずしも満足していなかった。
 そうした用兵側の声を受けてA型のロールアウトから早晩、性能向上型の開発が開始された。B型は局地戦用MSとして準生産されたMSN-00100R量産型百式の設計を再検討し、それを導入することで性能向上を目指した試験機である。

 ムーバブル・フレームこそA型と共通しているが、機体全体に大きく手が加えられておりA型に比べて大幅な性能向上が図られている。これは量産型百式との機種統合を目指したものであったが実際には本格採用には至っておらず、改造された機体の大半はデータ収集機としてその任務をまっとうした。

 B型はグラナダ基地をホームとする連邦軍の審査部隊「アラハス隊」に3機が配備され、ロンド・ベルやエコーズに配備が開始され、現在稼働中のジェガン改良のためのデータ収集任務にあたり、後のD型F型、G型、S型といった性能向上型や局地戦型の開発に寄与している。
 ちなみにアハラス隊に配備されたB型はコクピットが試作仕様となっており、0090年代に開発・製造されたMSとしては珍しく全天モニターを装備していなかった。これは従来の全天モニター方式と、新型の簡易型モニターシステムの比較試験の意味合いもあったが、これについては後発機に普及することはなく、結局は全天モニターとインジェクション・ポッドに軍配が挙がったようである。

 アラハス隊所属機は0090年に再興ネオ・ジオンと連携する反政府テロリスト組織「NSP」の討伐作戦においてモノトーン・マウス社の作業用MSと共に実戦参加した記録が残っており、再興ネオ・ジオン軍の先遣部隊やNSPのMS部隊と交戦し、高いポテンシャルを示した。また、0091年には試験的にロンド・ベル隊に1機が配備されたがこちらは短期間で引き上げられている。

 RGM-89Cジェガン陸戦仕様

 RGM-89Aの陸戦仕様。陸軍や宇宙軍地上部隊では従来のRGM-86RジムIIIや、カラバが主力機としていたMSK-003ネモといった陸戦MSを代替する目的に、ジェガンを元に陸戦装備を施した機体である。0089年末よりアフリカ戦線に配備が開始された。

 第一次ネオ・ジオン抗争終結後、地球上には前年のネオ・ジオン軍による地球侵攻作戦で地上に降下したネオ・ジオン軍部隊が残留しており、摂政ハマーン・カーンの死後の混乱もあって、宇宙への帰還もままならず取り残されていた。
 連邦軍はこうした「残留ネオ・ジオン軍」の存在を危険視し、コア3沖海戦後よりネオ・ジオン残党の武装解除と討伐作戦を開始した。帰るべき故郷を再び失い、追い詰められた彼らはハマーン死後も連邦軍やカラバの前に降伏することなく、徹底抗戦の道を選んだのである。

 膨大な戦力を動員する連邦軍・カラバの同盟軍に対して、宇宙上の残党軍艦隊との連携が絶たれた地上の残党軍は補給もなく絶望的な戦いを強いられていた。しかし彼らネオ・ジオン残党軍は連邦軍に対して善戦した。連邦軍は内戦からの痛手から完全に立ち直っていないこともあり、逆に残党軍に押されるという局面も度々見られたのだ。
 またMSも在来のRGM-86RジムIIIが主であり、カラバから合流したMSK-003やMSK-099といった機体も存在したがこれらは少数派であり、ゲリラ化するネオ・ジオン残党軍のMS部隊に対して性能的に対処できない局面も出てきたのである。

 残留ネオ・ジオン軍討伐に担うことになった連邦陸軍や陸軍のフォローに回る宇宙軍地上部隊では、ジムIIIに代わって宇宙軍での採用が内定していたジェガンを地上部隊へ回すよう参謀本部に要望を出していた。
 当初、参謀本部側は難色を示したもののアフリカ戦線における苦戦が地上部隊への配備と陸戦仕様の開発を後押しさせた。アフリカ戦線ではジムIIIすら不足し、予備兵力として保管されていたRGM-79Nジム・カスタムやティターンズから接収したQ型までをも動員して戦わなければならないという状況にあり、最早逼迫するアフリカ戦線を無視することは出来なかったのである。
 こうした完成したのが、陸戦仕様のRGM-89Cである。全領域仕様のA型に比べて全体的に重装型となっており、腰部にはスカート・アーマーが追加され、アフリカ地区での投入を見据えて胸部ダクトは再び大型化して廃熱効率を向上させているのが特徴的である。スラスターも熱核ジェット・エンジンを装備し、地上での運用効率を上げている。
 また、肩部には輸送ヘリによる吊り下げ輸送を行えるようにフックが設けられた。そして最大の変更点はバックパックをRGM-86RジムIIIと同一仕様に換装されていることである。これはアフリカ戦線で戦う部隊の主力機がジムIIIだったこともあり、兵站上の理由からバックパックは共用化されたようである。これによりC型はむしろRGM-88Xジェダに先祖帰りしたような設計となった。

 0089年末には3機がアフリカ戦線に配備され、ジムIIIで構成される主力部隊の隊長機として使用された。C型はロンド・ベルに配備されたA型以上にスローペースの調達であったが、0092年末までに10機が生産され、陸軍部隊に配備されている。しかしこの頃、すでに戦闘の中心は宇宙に移りつつありロンド・ベル隊へのA型生産が優先されたため、これ以上C型が量産されることはなかった。

 RGM-89Dジェガン後期型

 RGM-89Aジェガンの後期生産型。第二次ネオ・ジオン抗争時におけるロンド・ベル隊で運用されたジェガン、アラハス隊で試験運用されたB型からのフィードバック及び戦訓を元に一部に改良が加えられた上で第二次ネオ・ジオン抗争後の0094年より製造が開始されている。

 A型よりジェガンシリーズは拡張性を有していたが、その拡張性をより高めるため火器管制システムの強化を図り、増加装甲や追加兵装の装備を容易に行えるように考慮されているのが特徴的である。後にロンド・ベル隊に配備されているA型もすべて、このD型にアップデイトされ、さらには一般部隊に配属されているA型も0100年までにはD型準拠となっている。

 換装機能の強化に重点が置かれているため、素体形態における性能はほぼA型と変化はないが火力強化型のS型への換装が可能となっている他、エコーズ隊仕様のDe型への換装もデフォルトで可能な性能を有している。

 ロンド・ベル隊では作戦に応じてS型装備を施した上で投入することも多く、多くの機体がラプラス事件、及び環月危機にて実戦投入された記録が残っている。またエコーズではRGM-96ジェスタの不足分に補うため、D型に増加装甲装備や通信能力強化を施して近接戦闘に特化したDe型を配備し、ジェスタとの連携作戦において運用している。

 D型は後の大規模アップデイトとなるR/J/Mの各型、第三世代ジェガンの原型ともなっており、D型はジェガンにおける第二世代と区別することが出来るだろう。パイロットからは在来のA型と区別するため、D型をコマンド・ジェガンと呼ぶ者もいたという。

 RGM-89Deジェガン(エコーズ仕様)

 RGM-89Dジェガン後期型のエコーズ隊仕様。いわゆるマン・ハンターとも呼ばれる特殊部隊「エコーズ」での特殊任務に性能を特化し、また少数生産でエコーズに充分な数が配備されなかったRGM-96ジェスタの補完を行うために開発された機体である。

 エコーズとは地球に不法滞在する反政府運動家を取り締まるために0090年にロンド・ベル隊と共に創設された特殊部隊である。その使命からかつてのティターンズを彷彿とさせる部隊であったため部隊創設には議会から反対論も根強かったが、旧ティターンズとは異なる部隊であることを示すために出身地による入隊制限を無くし、スペースノイド出身兵でも入隊可能とし、また他の正規部隊に対する階級上の優位もない、純然たる連邦正規軍である。ただし旧ティターンズに所属した経歴のある将校の入隊は明文化されていなかったものの、実質的に不可能であった。
 また、ティターンズのように肥大化することを恐れられたためロンド・ベル隊以上に予算も規模も少なく、少数精鋭であることが求められ、反政府運動家を摘発する過程で彼らと連携するネオ・ジオン残党軍と真正面から交戦する機会が一番高い部隊でもあり、少数精鋭故に早い時期より所属パイロットから高性能MSの配備要望が上がっていた。
 宇宙ではロンド・ベル、地上ではエコーズとその役割を分担していたが、エコーズは場合によっては宇宙での作戦も行うこともあり、この場合はロンド・ベルとの共同作戦を取ることも多く、0096年のラプラス事件時にはエコーズの分隊がロンド・ベルに帯同して作戦を遂行している。

 その与えられた任務から少数で作戦行動を取ることも多く、エコーズ所属のパイロットからはノーマルのジェガンではエコーズが遂行する諸任務では力不足であり、専用の性能向上形かかつてのエゥーゴで開発された高性能量産機の配備要求が高まりつつあった。これを受けてポスト・ジェガンとしてAE社から提案されたRGM-96ジェスタの配備を決定するものの予算の関係上、ジェスタの大量生産という判断は下せずにスポット生産に留まり、完成した一部の機体が評価試験名目でエコーズに回されただけに過ぎなかった。

 新鋭機ジェスタはエコーズのパイロットからも好評で迎えられたが、すべてのパイロットがジェスタに乗れるわけではなく、ジェスタを受領そこねたパイロットからは不満が上がっていた。またジェスタとの混成部隊を構成することから、性能をある程度合わせる必要も生じたため、アップデイトされたジェガン後期型をベースに近接戦闘を考慮した増加装甲装備と特殊部隊MSに欠かせない通信機能による僚機との連携強化強化といった性能向上型を開発し、これを不足するジェスタの補完とすることにした。これがDe型なのである。

 頭部ユニットは通信能力強化が施され、それに伴いバルカン・ポッドは撤廃され、代わりに各種センサーを組み込んだサブ・バイザーが装備されている。これはかつてのRGM-79SCやSP型と同様のもので、索敵モード時にはバイザーがメイン・センサー部に下がるようになり、狙撃戦や対人索敵モードに対応した性能となっている。また通信能力強化は指揮TMSであるD-50ロト、及びバディを組む僚機との連携に欠かせないものである。
 胸部と腹部前面を覆う増加装甲は近接戦闘を重視したもので、元より防御力の脆弱さが指摘されていたジェガンのウィートポイントをカバーした形となった。増加装甲はガンダリウムγ合金製のものでその強度も高い。また緊急時には爆薬による撤廃も可能となっている。
 
 増加装甲装備、及び通信機能の強化に重点が置かれており、ジェネレーター強化や大幅な武装強化はなされておらず、改造そのものはむしろ平凡ですらあるが用兵側のエコーズのパイロットから求められていた要望を的確に追加装備した機体であり、ジェスタには及ばないもののバランスそのものは良く、ジェスタに乗れなかったパイロットからは比較的好評であった。
 主にジェスタを小隊長機として、ジェスタに従って作戦行動を取るする姿が見られ、0096年のラプラス事件時にはエコーズに配備されているジェガンはすべてこのDe型に換装を終え、戦力向上に寄与した。

 エコーズMS部隊ではジェスタやロトとの連携作戦によって活躍し、地球上で活動する反政府運動家や今だ抵抗を続けるネオ・ジオン残党討伐作戦に投入され、多くの摘発作戦において戦果を挙げている。

 RGM-89EEWACジェガン

 RGM-89ジェガンの簡易電子戦仕様。頭部ユニットをセンサー機能を強化した大型タイプに換装し、両腕部にそれぞれ増設のセンサー・ユニットとカメラ・ユニットを装備するジェガン系バリエーションの中では一番の変り種である。

 連邦軍ではEWACSとしてすでにMSA-007EEWACネロを制式採用しているが、電子兵装の塊である同機はコストが高く、艦隊旗艦のCIC付き電子戦部隊に少数が配備されているのみであった。また、母体となったMSA-007ネロは0090年に生産を終えてしまったために増備も容易ではなく、そこでコスト削減を図るべく0093年より配備数を増やしていたジェガンをベースにしたEWACSの開発が行われた。ネロの再生産を行わずにジェガンベースとした理由としては高価となりがちであったEWACSのコスト削減を下げるという思惑が強かったようだ。

 ベースは後期型となるD型で頭部を大型のものに換装。これはEWACネロと同様、ロートドーム型ではない角型のレーダー・センサーサイト頭部で、その規模は肩部まで及ぶ巨大なものとなっている。このユニットを装備する場合、肩部ユニットの回転可動が制限される。また肩部ユニットには増加装甲を装着する。
 
 更にD型をベースとしているためS型同様、艦内で在来のD型からE型改修キットで換装することが可能であり、拡張性強化が施されたD型だからこそ可能な芸当であった。ただし、電子戦能力はコスト削減による簡易化を行ったためにEWACネロよりも低く、性能を補うため2機で出動し、また武装を施していないため護衛機が随伴する運用方式となるのは他のEWACSと変化はない。

 また、EWACジェガンはサラミス改級軽巡洋艦を改装したビッグアイ級情報収集艦に配備され、専用の電子戦艦と連携することでその威力を発揮するように設計されている。0095年より生産が開始され、ジェガンを集中運用するロンド・ベル隊にも旗艦である機動戦艦ラー・カイラムやネェル・アーガマに配備され、電子戦や情報収集任務に投入されている。

 電子戦担当士官用コクピットもなく、単座型であることも含めてEWACネロに比べて電子戦能力は低いため、ビッグアイ級情報収集艦や艦隊旗艦のCICと連携して2機ペアで電子戦を行うという不便さもあったが、EWACネロよりも低コストでEWACSを行えるという魅力さからと、通常のジェガンとパーツ共用が可能なことから連邦軍の各艦隊に配備が進んだ。

 0096年のラプラス事件時にはネェル・アーガマに配備された機体が「袖付き」の動向を探るために出動し、0099年の第三次ネオ・ジオン抗争にはビッグアイ級情報収集艦「雷眼」に配備された機体がネオ・ジオン残党軍に占拠されたシッガルト発電所への偵察と情報収集のために出動し、情報収集任務や艦載機部隊の目となり耳となり、敵部隊への的確な誘導に活躍した。

 RGM-89F重装型ジェガン

 RGM-89Aジェガンの砲撃戦仕様。ジェガンのみで構成されるMS小隊構想における、中距離砲撃戦用や拠点の防空用MSとして開発された機体である。元となったジェガンは平凡な性能を有するガンダム系量産機で、かつてのRGM-79BMSA-003といった歴代ガンダム量産機で指摘されてきた「火力不足」がジェガンにおいても問題視された。これはコスト削減と同時に汎用兵器であるMSの原点に立ち返ったためで、ジェガンのそうしたコンセプトは決して間違ったものではない。

 しかし、ジェガンを主力機として運用していたロンド・ベル隊やエコーズではしばし、パイロット側から火力強化の要望が出されていた。そこでAE社ではジェガンとの連携作戦を主眼に置いた中距離支援砲撃を行う砲撃戦用MSの開発に着手した。それがF型である。同機はかつてのRGC-80ジムキャノンRX-77系に近い設計思想を持っているが、汎用機としての持ち味を殺さないため、ジェガン重装型では二門のビーム・キャノンを両肩に背負わせる形を取らず、肩に装備させるという今までにない設計を持つ。このビーム砲は肩のムーバブル・フレームと接続されており、360度回転させることが可能である。また砲身にはグリップがあり、マニュピレーターで保持しての精密射撃も可能となった。

 砲身が360度回転することで任意の方向に砲撃を行うことが可能となり、より自由度の高い砲撃戦闘を行うことができた。装甲も腰部にC型からのフィードバックであるスカート・アーマーを取り付け、防御力強化を図っている。また腰左右にはグレネード・ランチャーを装備し近接戦闘においてもその威力を発揮する。
 また、ビームキャノンを稼動させるためにジェネレーターをD型に採用されたものと同一のものに換装、さらに冷却システムを強化して胸部ダクトが再び大型化した。

 0090年中頃に試作機がロールアウトし、ルナツー基地の防空部隊に試験的に配備されたが、ロンド・ベル隊やエコーズに配備されることはなかった。

 RGM-89G高機動型ジェガン

 RGM-89Aジェガンに高機動型バックパックを装備させ、ジェネレーターを新型のものに換装した全面性能向上型。ジェガンは内訌戦後の連邦軍における逼塞した兵站を圧縮し、エゥーゴ・ティターンズ系MSが混在する連邦軍MS部隊の機種統一を図るための救世主であったものの、シンプル過ぎる装備が祟り、ジェガンを優先して運用していたロンド・ベル隊やエコーズのパイロットからは不満の声が上がっていた。

 軍の兵器開発局はそうした用兵側の声を受けて、性能向上型や局地戦仕様のバリエーション機の開発に着手。試験機としてB型がロールアウトした他、陸戦仕様に特化したC型がロールアウトした。G型はMS本体には手を加えずにバックパックとジェネレーターのみを換装することで低コストで性能向上を施せるプランとして開発された。

 主となるバックパックはMSN-00100S百式改のものを小型化させたもので、左右に円形のプロペラント・タンク兼ブースト・ポッドを装備する。この高機動デバイスが機動力を高めており、行動能力を向上させた。

 またジェネレーターを換装したことで火力が向上したため、再興ネオ・ジオン軍のAMS-119ギラ・ドーガとも対等以上に戦えるまでの性能向上を示した。このため、当初はRGM-91という独立したコードナンバーが用意されていたが、フレームそのものは原型からほどんど手が付けられていなかったため、結局はジェガンのG型としてサフィクションされた。
 ちなみにコードナンバーが独自に用意されたもう一つの理由は、RGZ-91リ・ガズィと同様のBWSとの連携を視野に入れていたためでもあったが、リ・ガズィでも問題となっていたコスト上の問題の解決が出来ず、ジェガンシリーズでのBWS運用は頓挫している。

 G型は0091年にジェガンの生産ラインから一定の割合で製造された、一部の機体がエコーズに配備されたものの、地上での作戦も行うエコーズにとってブースト・ポッドは無用の長物であり、また百式改からフィードバックされた高機動デバイスがピーキーで操縦性に難があるため高性能だがバランスの良い機体を求める傾向にあったエコーズのパイロットにとっては不評であった。

 こうした経緯から総生産数も20機程度と少なく、スポット生産の域を出ることは無いまま、試作的要素の強い機体で終わっている。後にS型への換装を可能とする後期型となるD型が生産ラインに乗せられると、G型の量産計画は正式に中断されている。

 RGM-89Sスターク・ジェガン

 RGM-89Dジェガン後期型のカスタム仕様。エースパイロット用に開発されたジェガン系MSにおけるハイエンド機として位置づけられる。今までも性能向上型としてシステム試験機のB型、高機動型のG型、火力強化型のF型などが開発されたが、S型はB型のテストで得られたデータを元に大火力を必要とする特殊作戦機として開発が行われた。S型はむしろRGM-86Rに近いコンセプトでもある。

 以前よりジェガンの火力不足、及び防御力不足はロンド・ベル隊のパイロットから指摘されており、第二次ネオ・ジオン抗争時にはロンド・ベル隊艦載機として多数が実戦投入されたジェガンは多数の未帰還機が続出することになり、過酷な空間戦闘の洗礼を浴びることになった。特に重MSの火力やNT用誘導兵器には無力であり、これらのネオ・ジオン残党軍が保有している重MSへの対抗案として武装と装甲、推力強化を含めた総合的なカスタム案として開発されたのがS型である。

 頭部ユニットは指揮管制・通信能力が高い新設計のものに換装され、胸部ダクトは他のジェガン・バリエーションと同様、大型化している。胸ダクトの大型化はジェガン性能向上型の宿命とも言えるようだ。
 また、腰部にはスカート・アーマーが装備され、防御力強化を果たしている。バックパックは新設計のものとなり、MSZ-006Cシリーズのプロペラント兼用のテール・スタビレーターが装備され、これをAMBAC肢として使用することも可能であった。先のG型ではMSN-00100S系の高機動デパイスを装備したのと対照的である。

 基本武装は母体となるD型と変化はないが、これに加えてS型には専用武装として脚部に装備するブースター内蔵型増加装甲、そして両肩部に装備するミサイル・ランチャーコンテナが追加された。後者はRGM-86RジムIIIの両肩装備のミサイル・コンテナと同型で、ジェネレーターを圧迫することなく実体弾兵装を装備することによって手堅く火力強化を図っている。また実体弾兵器はIフィールド防御能力を有するNT用重MS対策も兼ねており、重火力で敵重MSを押し切ろうというコンセプトが窺える。

 また、隠しスペック的に核攻撃能力を有していたとも言われているがこれを示す武装類は開発されておらず、あくまで準備工事に留まっていたようでロールアウトしたS型が核兵器を搭載しての作戦行動を取ることは無かった。

 S型は言わば、ジェガン性能向上案の集大成的な機体であり熟練パイロットが操縦した場合、ガンダム系MSに匹敵する高性能を示したものの操縦性に難があり、特殊作戦用兵装の一環として換装キットが生産ラインに乗ったのみに終わった。

 0093年の第二次ネオ・ジオン抗争後にA型から1機が改造され、テストが行われた後、0094年よりD型への換装を想定した改修キットの製造が開始され、D型を運用していたロンド・ベル隊において運用された。ラプラス事件時には多数のD型がS型仕様に換装されて実戦を経験している。A型から改造されたテスト機はほぼD型と同一の設計であるが、改造母体が異なることから便宜上「プロト・スターク」と呼ばれていた。

 RGM-89STセンサーターレットガン

 RGM-89Aを母体にセンサー類を装備させた試験機。ST型は試作MSに随伴してデータ収集を行う機体で、戦闘用MSではない。0100年代にSNRIによって改装された機体で15m級MS、F90のテストにおいて試験飛行中のF90に随伴していた。多数のセンサー類を稼動させるためジェネレーターは換装されており、母体機よりも性能は高い。

 センサーは両肩に回転式のレーザーセンサー類が装備され、これがターレットのように回転してサーチングするため、センサーターレットガンと命名された。しかし現場のパイロットたちは主に名前を縮めてSTガン、と呼んでいた。

 RGM-89Jジェガン

 0089年に数々のAE社製プランの中から制式採用を勝ち取ったRGM-89Aジェガンは、当初優良装備を必要としたロンド・ベル隊に優先的に配備されており、0093年までは一般部隊にはほとんど配備されず、ほとんどロンド・ベル隊専用機的な扱いを受けていた。しかし戦乱が終息した0093年以降、一般部隊への配備も進み、前線部隊の大半はジェガンへの機種統一を果たした。生産そのものは0100年代前半まで続き、軍用MSとしては20年近くも生産されるベストセラー機となった。

 その後、0100年代に入ると大きな戦乱もなく、配備されたジェガンの大半は主だった戦闘を経験しないまま10年、20年と運用されてきた。途中にラプラス事件、環月危機、マフティー一揆といった事件があったものの世界情勢は概ね平穏であった。しかし、0100年代に入ると0089年に生産が開始されたMSをそのまま使用し続けることにさすがに限界が出てきた。
 0100年代当時、連邦軍では15m級小型MSの研究も進んでおり、次期主力機は小型MSであるとの道筋もついていたが、15m級MSの実用化にまだ程遠いため、小型MSの実用化までの間、在来のジェガンに延命工事を施して使用続行することが決定された。

 その最初のマイナーチェンジタイプがJ型と呼ばれる機体である。D型をベースとする、ジェガン・シリーズにおける第三世代となる機体である。バックパックを新規設計のものに換装した以外はD型とほぼ代わりはなく、推力と出力が向上している。

 J型は0105年から改修が開始された他、生産ラインもD型からJ型準拠に改められた。このJ型を基本に火力強化型のM型、指揮管制能力を強化しコロニー内戦闘を想定して運動性を高めたR型が生み出された。J型は汎用仕様としてM/R双方のタイプの母体機であり、パーツ換装によってそれぞれのタイプとして使用することも可能である。
 J型は宇宙艦隊や月面、コロニー駐留軍に広く配備され、0123年に勃発したバビロニア紛争時にはRGM-109ヘビーガンと共に多数が実戦参加しているが、すでに旧式化しきっており、パイロットの経験不足も重なり、クロスボーン・バンガード軍が動員した小型MS部隊には到底太刀打ち出来なかった。このバビニロア紛争での戦訓を元に連邦軍は小型MSの戦力化を進めることになり、0120年代末にはジェガン系の大半は前線部隊からは退役し、前線から捻出された機体はコロニー軍に払い下げられ、補助戦力の一環として0130年代中頃まで使われた。

 RGM-89Mジェガン

 マイナーチェンジ型であるRGM-89Jをベースに、火力強化を施したタイプ。腰左右に大型ミサイル・ポッドを装備しており、F型の設計がフィードバックされていることが分かる。ビームライフルもロング・レンジのものを装備する。右腕にはビーム・サーベルを二本装備しており、全面的な火力と武装強化が試みられている。
 ジェネレーターも換装され、それに合わせて胸部ダクトが大型化された。ジェガン系の特徴である小さな胸部ダクトは、胸部装甲の強化には役立ったものの、必ずしも拡張性の高いものではなく、特に火力強化案の性能向上型の大半はダクトを大型化され、M型もその法則に漏れることはなかった。
 
 M型はR型と共に0110年から改修が開始され、AE社でもJ型から改装が可能なキットが開発された。これらの機体は0123年のバビロニア紛争に投入されたが、クロスボーン・バンガードのMS部隊に太刀打ち出来なかったという。

 RGM-89Rジェガン

 J型をベースに指揮管制機能を強化し、機動性能を向上させた機体。J型、M型で構成されるジェガンMS隊の指揮官用及びコロニー内戦用として開発されたものである。M型と共に0110年より生産が開始された。
 
 ジェガンそのものは0110年代中頃まで生産が続いており、小型MSの嚆矢となったRGM-109ヘビーガンも軍の性能要求を満たせず、ジェガンを退役に向かわせるまでには至らなかった。旧式化しつつあったものの、長い間現場で運用され続けたジェガンは軍の上層部から現場に至るまで揺ぎ無い信頼性を勝ち得ていたとも言える。
 その後、0110年代後半から連邦軍への需要を満たしたことからジェガンの生産を一時停止した後も、0120年代まではやはり現役にあった。30年近くも連邦軍内において主力の座にあったジェガンは長い平和が続き、それと反比例して軍備が停滞していた時期の象徴とも言える機体であった。

 ジェガンそのものは軍の戦乱の縮小による軍事費の縮小を見据えて、長期使用に耐えうるMSとして開発されたが、30年も現役にあったMSは0120年代においては同機のみであり、また総生産数においても名機MS-06ザクIIやRGM-79RジムIIを凌ぐ数となり、当時の開発者たちもこれ程の長期使用はむしろ予想していなかった。

 その後、ジェガンは0120年代前半に多発したジオニズム再興運動で、テロ闘争を開始した反連邦組織「オールズ・モビル」との戦闘で、相手のカスタムMSに苦戦を強いられる局面が出てきたが、連邦軍上層部はジェガン置き換えを含む抜本的な対策を練ることはなく、ジェガンの生産再開と物量戦といったその場凌ぎの対策でしか応じることはなかった。オールズ・モビルのMSは外見こそかつてのジオン軍MSである「ザク」や「ドム」といった往年の名機であったが、実際にはムーバブル・フレームやジェネレーターはジェガンとほぼ同一のものであり、スペック面ではジェガンのJ/M/R各タイプと変わりはなかったのだ。
 オールズ・モビルを裏で操っていたブッホ・コンツェルンとクロスボーン・バンガード軍はAE社から多数のジェガンのムーバブル・フレームとジェネレーターを裏取引で買い付けており、これを元にジオン系の装甲を取り付けて完成させたのがオールズ・モビルのMSの実体であったのだ。

 にも関わらずオールズ・モビルのMS部隊に押される局面が度々発生したのはひとえにジェガンの性能不足だけではなく、パイロットの実戦経験不足を含む練度不足にも原因があるだろう。これは当時の連邦軍は戦う組織ではなく、単なる職業訓練学校や、職にあぶれた人間の居場所でしかなったためだ。そして、0123年に勃発したバビロニア紛争におけるジェガン敗北を目前にして、ようやく参謀本部は重い腰を上げてジェガン置き換えを始めたのである。

 その後、RGM-119ジェムズガン、RGM-122ジャベリンといった15m級小型MSの量産が軌道に乗ると、ジェガンは序々に新型の小型後継機たちによって主力の座を追いやられ、0120年代後半には前線部隊からは全機が退役している。ジャベリン制式化によって二線級となったジェガンは艦載機運用から外され、拠点防空における補助戦力やコロニー駐留軍などに転用されていったが、これらの機体も0130年代中頃には退役し、木星動乱時には補助戦力としても使われることはなかった。