X系MS

 小惑星基地「ペズン」で大戦後、連邦軍によって開発されたMSがXシリーズである。ジオン公国軍の「ペズン計画」で提案されたプランをベースに、ペズンの兵器開発局が設計したもので旧公国軍系MSのフォルムを色濃く持つ。
 最初に開発された機体はRMS-141ゼク・アインであり、RMS-106ハイザックに代わる汎用型MSとしてロールアウトした。性能は当時の量産型MSとしては高く、連邦軍のMS教導団専用機(アグレッサー機)として準生産された。

 その後、重MSとしてRMS-142ゼク・ツヴァイ、ゼク・アインとゼク・ツヴァイの統合機種であるRMS-143ゼク・ドライなどのプランが提出されたが、実機が完成したのはゼク・ツヴァイまでである。

 0088年のペズンの乱によってXシリーズの開発は中断を余儀なくされ、高性能だったにも関わらず後継機にも恵まれてなかった不運のMSである。


 機種一覧

 RMS-141ゼク・アイン
 RMS-142ゼク・ツヴァイ
 RMS-143ゼク・ドライ


 RMS-141ゼク・アイン

 ペズン製連邦軍MS、Xシリーズ最初の機体である。かつてのジオン公国軍の「ペズン計画」のプランをベースに開発された機体で、汎用性の高い量産機としてロールアウトした。
 機体の設計やフォルムに旧公国軍系の技術が色濃く見られる一方、胸部廃熱ダクトと増加装甲をはじめとする胸部構造などに連邦系の伝統も引き継がれ、連邦とジオンの折衷型MSとも言える設計である。

 戦争終結後、連邦軍は接収したジオン公国軍のMS技術の解析と研究を始めたが、ジオンが持つデータは膨大で解析には多大な時間を要することが判明した。
 軍は解析をスムーズに行うために各拠点に兵器開発局を置いて研究を分担させ、場合によってはジオンの技術を活かしたMSを開発することを命じた。これが拠点開発制度のはじまりであった。
 特にペズン基地にあったペズン計画関連の資料は膨大を極め、解析を終えるには最低でも五年はかかるとされた。連邦軍はペズンで働いていた旧ジオン軍技術者を再登用するなど、効率化を計る一方でペズン基地だけに調査を委ねるだけではなく、ルナツーやグラナダ、オーガスタに置かれた兵装研や兵器開発局、あるいは民間企業であるAE社に作業を分散化させることで早期の調査完了を図ることにした。
 
 ペズンで開発された機体の評価試験はペズンとルナツー、オーガスタ兵装研でそれぞれ担当し、そのデータをAE社や他拠点の兵器開発局にも提供して、連邦軍のMS開発に生かすという体制が築かれた。
 この中でルナツー基地ではMS-17ガルバルディの調査を担当し、RMS-117ガルバルディβを生み出し、オーガスタ兵装研では強化人間パイロット訓練用MS、MS-11Bアクト・ザクを開発し、それぞれ連邦軍MSとして生産ラインに乗せられることになった。
 だが、ペズン基地の兵器開発局ではすでに完成していた機体をベースに改修を行うのではなく、実現しなかったプランから見直しを行い、そこから新型MSを開発するという方針に決定した。

 確かにルナツーやオーガスタのように既存の機体を連邦軍規格に改修してアップデートさせる方法は、短期間に高性能MSを自軍機として配備させることが可能であったが、すでにムーバブル・フレーム構造、新素材ガンダリウムといった新技術の模索がはじまっていた時代である。大戦時の設計を引きずった改修機は、いずれ陳腐化することは目に見えていた。
 そこでペズンでは新規設計という冒険に出たのである。これは長い目でみれば正しい判断だった。

 ペズン兵器開発局が目をつけたプランとは、基本となる汎用型MSにいくつかの専用の追加武装を行うことで、あらゆるミッションに対応した万能型MSというものである。元来、連邦軍はフルアーマー・オペレーションやGファイターによるMSと連携したウェポン・システムというこれと類似した土壌があり、比較的取り組みやすいテーマでもあった。
 ジオン時代では、このプランは試作に入る直前で終戦を迎えており、一時中断していたものだが、これを引き継いで再開させたのが戦後のペズン基地兵器開発局であった。
 この新型MS開発計画はペズン計画の暗号名であったMS-Xにちなんで「X計画」と呼ばれ、そこから完成した機体もXシリーズと呼ばれることが決定したのだ。

 ペズン基地の開発スタッフはこのプランをベースに連邦軍のMS技術を融合させ、さらに性能向上を図ることとし、ムーバブル・フレーム技術導入の検討や、次世代素材を装甲材に使用するなどの仕様書が提出された。この開発に時間をかけたため、ルナツーやオーガスタ、グラナダといった基地より量産型MSを送り出せずに遅れをとることになる。

 屋台骨となるムーバブル・フレームは追加武装に耐えられるように骨太で頑丈であることが条件とされ、そのために重MSを多く生み出したジオン系MSのフォーマットが踏襲された。
 しかし、実際にフレームの設計となるといかに高い技術力を持つペズンといえども簡単には進まず、難航した。内骨格機の研究までペズンでは進んでおらず、フレームに関しては一から作らなければならなかった。最後まで設計が遅れたのは、フレーム部分であったという。

 ペズンはムーバブル・フレーム関連で高い技術力を持っているとされるグリプス基地兵器開発局にフレーム設計図の提供を求めたが許可が降りず、結局フレームの設計を終えたのは0087年のグリプス抗争勃発後のことであった。
 この時、ペズンのXシリーズ開発陣はAE社で開発され、ティターンズに提供されたRMS-108マラサイのムーバブル・フレームとガンダリウムγ合金製装甲に着目し、技術的な解決を図ることができた。ペズンはAE社にかけあって、ティターンズに譲渡されたマラサイA型のサンプル引渡しを要請し、それが実現したのだ。

 こうして、結局、実機が完成するのは0087年のグリプス抗争勃発後のことであった。ムーバブル・フレーム構造にガンダリウムγ合金装甲。これはマラサイがもたらしたものだが、その結果、ゼク・アインは第二世代MSとしてロールアウトすることが出来た。
 基本設計そのものは、この時期に開発・生産された第二世代量産型MSとほぼ代わりはなく、特に新機軸や特異な機能は持っておらず、可変MSや高性能試作機が次々と生み出されていたこの時期の機体としては平凡な設計だが、逆にいえば信頼性が高く、確立された技術で構成されているとも言える。
 ジェネレーターは先のRMS-106ハイザックの教訓を元に、出力に余裕のあるものを搭載した。これは様々な追加武装を装備し、稼動させるためにも必要な処置であった。

 肩側面部には、追加武装装備用のラッチとマウント・システムが配置された。これはムーバブル・フレーム接続式であり、パワー・ポイントも兼ねる。ここには主にシールドと、ランディングデパイス、プロペラントを装着する。シールド接続時はバインダーとしても機能する。
 肩アーマーには可動式のツメが装備され、これに弾薬ドラムや電子機器類などの追加機器を挟んで固定する。これは骨太なムーバブル・フレームを持つゼク・アインだからこそ出来る芸当である。

 頭部ユニットはマラサイに酷似した形状を持つが、頭部装甲はヘルメット式ではなく、MS-06系の特徴でもある顎部冷却ダクトが見当たらず、ジオンMSの代表格であるザク系MSとはかなりかけ離れたデザインとなっている。
 また、隊長機には額部にツノがつくが一般機との性能差はない。こうした仕様や伝統はジオン系を色濃く受け継いでいる。

 こうして、ゼク・アインは連邦軍/ティターンズの一般部隊に普及していたRMS-106ハイザックよりも総合的に高い性能を、最新鋭のRMS-108マラサイよりも高いポテンシャルを持つに至ったのだ。
 当然、ティターンズ上層部でもゼク・アインのポテンシャルの高さに着目し、連邦軍(ティータンズ)の次期主力機候補として俎上に挙がったものの、生産性の低さからエゥーゴとの抗争が沈静化に向かうまで、しばらくの間は準生産のみ行うことで決着した。
 ティターンズでは生産性の高い量産機を欲しており、結局はRMS-154バーザムの配備を優先せざる得なかったというわけである。

 生産はペズン基地内の生産施設で行われ、同基地に駐留する地球連邦軍教導団のアグレッサー機として先行配備が決定した。これは新鋭機ゼク・アインを教導団で評価試験するという意味合いと、教導団の配備機更新を兼ねていた。
 教導団では連邦軍とティターンズにMSの操縦補佐システム、IMPCのデータ収集とアップデート版を供給しており、エゥーゴMS部隊との戦闘が激化していたティターンズにとって、教導団の能力が向上することは好ましいことでもあった。

 これまで、教導団ではRMS-106Bハイザックを使用して任務にあたっていたが、グリプス抗争勃発時から旧式化が懸念されていた。ティターンズでは第二世代MSの配備も進んでいたこともあり、教導団でも第二世代MSへの代替を検討しており、同時期にロールアウトしたゼク・アインに白羽の矢が立ったのである。

 教導団では年内での置き換えが終了し、訓練が行われた。教導団のパイロットは連邦軍内でも手練れのパイロットが揃っているため、機種転換作業はごく短期で終わったという。
 
 ゼク・アインはペズン計画のオプション・プランを元に、連邦軍の技術と第二世代MSの基礎を取り入れた機体である。従って、当初からいくつかの装備バリエーションが存在し、ミッションに応じて換装を行うことが可能である。これが他の連邦軍/ティターンズ製量産型MSにない点である。
 
 最初に装備化されたプランはそれぞれ第一種、第二種、第三種とそれぞれの兵装形態がある。

 第一種兵装状態は、ゼク・アインのデフォルト仕様である。ビームライフル(RX-178ガンダムMkIIのものと同タイプで、これにグレネードとEキャップを追加装備したもの)を装備しただけの形態で、両肩のハード・ポイントとラッチには基本的には何も装着しないが、月面降下時にはランディング・デパイスを装着する。場合によってはシールドも装備するが、軽装を主とする。小型のクレイ・バズーカを装備する場合もある。

 第二種兵装状態は長距離攻撃仕様で、ビームスマートガンを主武装とする。これに砲撃を補佐するためのディスク・レドームシステムを左肩のラッチに挟み込み、防御対策としてシールドを左肩ハード・ポイントに装備する。レドームはモノアイが装備され、索敵などの補助任務にも使用が可能だ。
 長距離支援戦、狙撃作戦などではこの第二種兵装で出撃する。

 第三種兵装状態は実体弾を主体とした仕様で、大型、大口径のマシンガンを装備する。両肩ラッチにマシンガン用のドラムマガジンを挟み込み、両肩ハード・ポイントにはシールドを装備する。
 シールド裏にはビームサーベルを二本づつ装備する他、表面ラッチには小型のクレイ・バズーカと予備弾装を装着する場合もある。ゼク・アイン用クレイ・バズーカはMSA-099リック・ディアスのものよりも小型化されており、取りまわししやすい。
 メインとなるマシンガンは、大口径でビーム兵器に劣らない破壊力を持つ。量産型MSであれば充分に撃破することが可能だ。ドラムマガジンは2000発近くの弾を持ち、ドラム換装時は僚機のサポートを受ける。
 コロニー内戦、基地制圧作戦、対Iフィールド対策といったビーム兵器の使用が制限される作戦や、出来るだけ損害を少なくしたい作戦の時には、この第三種兵装で出撃する。この場合、ドラム換装などを行うために二機でペアを組んで行動する。

 ペズンの乱の時、反乱軍が動員したゼク・アインのほとんどはこの第三種兵装であり、ペズン駐留連邦軍部隊を短時間で制圧した実績を持つ。
 
 この他にも検討中の装備として、ビームカノン装備型、マインレイヤー型などかあったが、これらの装備は実現しないまま、開発は中断している。

 こうして、0087年秋には1号機がペズン工廠内でロールアウトし、予定通り、評価試験と旧式機代替を兼ねて同基地を拠点に任務にあたっていた地球連邦軍教導団に引き渡された。軍きってのパイロットが揃っている教導団では短期間で機種転換を終え、0087年末には教導団が必要とする機数の調達を終えた。

 一般的に、ゼク・アインは教導団(ニューディサイズ)のみで運用された機体として知られているが、このうち、ティターンズでの評価試験のために三機がゼダンの門へ送られ、さらに教導団から三名のパイロットがティターンズに編入され、自機のゼク・アインと共にメールシュトローム作戦に参戦した記録が残っている。
 当然、ティターンズへのゼク・アイン引き渡しはダカール宣言前に行われており、ダカール宣言以降、ペズンの乱の間は、ゼク・アインがティターンズや他の連邦軍部隊に引き渡された形跡はない。
 こうしたことから、少なくとも合計六機のゼク・アインがティターンズ指揮下で運用され、エゥーゴMS部隊と砲火を交えたという。メールシュトローム作戦では黒系のカラーリングにティターンズのファイティング・ファルコンのマークをつけた機体が確認されている。

 0088年1月、教導団内部の地球至上主義者による決起の時がやってきた。彼らはティターンズ総帥、ジャミトフ・ハイマン元帥の掲げる思想に共感する青年将校団であり、エゥーゴ支持についた連邦政府と軍を見限って、ペズン基地で反乱を起こしたのだ。
 この時、教導団の最新鋭機であったゼク・アインが反乱軍によって多数確保、動員され、ペズン駐留部隊を文字通り蹴散らして短時間で基地を制圧することに成功した。
 ペズンにはRMS-154Aバーザムが多数配備されていたが、ゼク・アインの高性能と教導団パイロットの手練れさに敵うことなく、次々と撃破されていった。この時、ペズン基地での牢城を考慮して損傷を少なく出来る第三種兵装が施されていた。

 基地の制圧を終えると反乱軍はニューディサイズを名乗り、エゥーゴの傀儡となった連邦政府に対して決起を宣言。彼らの手のうちにあるゼク・アインと、完成したばかりのRMS-142ゼク・ツヴァイはそのまま、ニューディサイズ所属機として連邦軍の討伐部隊との戦闘に投入された。
 
 しかし、この内部抗争はゼク・アインの高性能を連邦軍上層部に見せつける結果となった。それ以上にニューディサイズのパイロットたちが熟練の粋に達していたということもあるが、やはりゼク・アインのポテンシャルの高さがニューディサイズの善戦を支えたといってもいいだろう。
 彼らは連邦軍の討伐部隊やエゥーゴ艦隊に追われ、少ない戦力ながらも対等に戦闘を続行できたのも、ゼク・アインの高性能によるものだ。

 ゼク・アインはニューディサイズ側の主戦力となり、ペズン制圧戦から最大の山場となったエアーズ攻防戦において多数が投入された。
 数で押す連邦軍に対してニューディサイズは少数精鋭で退けたものの、エアーズ市陥落と共に大多数を失うことになる。エアーズ市脱出時に残存機がマス・ドライバーで射出され、戦域を離脱したものの、射出時の衝撃とキャッチャーへの衝突に耐えられず、大半が故障に見舞われてしまい、この時点で稼動機はごく少数であった。

 そして、ペズン基地爆破と共にゼク・アインをはじめとするXシリーズの開発は中断され、ゼク・アインも反乱軍で運用されたことによって不採用に終わってしまった。これ以降、増加生産されることも、後継機が開発されることなく、Xシリーズは終焉を迎えたのだった。

 しかし、反乱時にペズン基地を追放された技術者の中にはエゥーゴやAE社に協力を申し出る者もおり、彼らはグラナダ基地に身を寄せ、RMS-108系MSの後継機開発に携わることになる。
 Xシリーズに関わっていた技術者はXシリーズで培った技術を提供してRMS-108SオライオンRMS-109レギュシオ・ザックといったジオン系連邦軍MSを生み出している。

 RMS-142ゼク・ツヴァイ

 ペズン製Xシリーズの第二段階MSで、汎用MSとして開発されたRMS-141ゼク・アインに対し、ゼク・アインの二倍の性能を謳い文句とする特殊機として開発された。
 その規模はまさに超重MSであり、パプテマス・シロッコ大尉が設計したPMX-003THE・Oの設計思想に近く、その結果、人型とは言えないものとなっている。

 ゼク・ツヴァイが開発された背景には、当時のMSの高性能化追求による「恐竜的進化」が根底にある。特に連邦軍は前大戦でのRX-78ガンダムの活躍から「人型」にこだわり続けた。人型にとらわれて高性能を追求した結果、ムーバブル・フレームやジェネレーターが大型化していったのである。
 これはグリプス抗争〜第二次ネオ・ジオン抗争時に開発された連邦・ジオン双方のMSが総じて抱えていた問題でもあり、その中でもゼク・ツヴァイはまさに時代の申し子であった。

 ゼク・ツヴァイは汎用型MSシリーズであるXシリーズの中では二番目の機体であるにも関わらず、言わば異端児とも言える機体である。量産ナンバーこそ取得しているが、その実体はMSの大型化の限界を目指したものであり、試作的要素が含まれていると言えるだろう。
 
 ゼク・ツヴァイは0087年頃より、ゼク・アインの最終設計を終えた時点で開発が始まっている。Xシリーズに関わる技術陣はゼク・アインの二倍の性能と、大型化の限界を命題とした。
 この頃、ティターンズとエゥーゴの抗争が激化していた時期でもあり、ティターンズ支持を掲げているペズンの教導団にとって、ゼク・ツヴァイの開発はいずれ発生するであろうエゥーゴとの交戦を見据えたものでもあったという。
 そのため、開発もスムーズに進み、0087年末には一号機がロールアウト。翌年より慣熟飛行が行われた。これより一ヵ月後にペズンの乱が発生するが、反乱軍、後のニューディサイズは製作途中のものを含めて全機、確保している。

 ゼク・ツヴァイは基本設計こそこそゼク・アインを引き継ぎ、ジオン系のモノアイ、連邦系の胸部廃熱ダクトと増加装甲を持つが、その巨体はゼク・アインを上回り、まさに重MSである。全高は27mだが、ゼク・ツヴァイの場合は前後幅の巨大さが大きな特色となっている。増加ブースターを装着した場合、40mにも達する程であり、前後幅においてはこの時期に開発されたMSでは最大の値を持つ。
 
 ゼク・ツヴァイ独特の装備としてメインの両腕のほかに、サブ・アームが肩から二基づつ、メインのものと合計して六本の腕を持つ。
 これは背部ウェポン・コンテナからクラブ(シュツルムファウストの連邦名)の取り出しなどの武器の支持や操作を行うためのサポート用のものである。ゼク・ツヴァイは巨体故に二本のメイン・アームだけでは武器の取り回しや取り出しが不可能であり、こうしたサブ・アームが設けられたのである。サブ・アームはムーバブル・フレームによってメインの肩アームに接続されており、自由度は高い。
 サブ・アームの指は三本と簡略化されているが、クラブやビームスマートガン、ビームサーベルの保持と操作程度であれば難なくこなすことができる。サブ・アームを全て稼動させて武器を操作する場合、一機で二機から小隊分の戦闘能力を持つことが可能となり、この腕こそがゼク・アインの二倍の性能と戦力を持つ所以なのである。
 ちなみにサブ・アームの操作はコンピュータで補佐されるため、パイロット一人で操縦を行うことが可能である。

 肩部アーマーにはゼク・アインと同タイプのツメを持ち、マシンガン用ドラムマガジンや増加ウェポンを挟み込むことが可能だが、ツヴァイの場合はツメは四本となり、倍のウェポンを装着できる。弾装ドラムは縦に二個づつ、合計四個を装備できる。
 
 背部バックパックはウェポンコンテナを兼ねており、合計六本のクラブと、大推力を生み出す巨大スラスターが設けられている。横型に亀型のコンテナが二基、背部に接続され、上部一基にクラブとビームサーベル、下部一基にマシンガンを収容し、四基のスラスター・ノズルを持つ。
 下部は増加プロペラントを装着するため二基のみだが、増加プロペラントに装着された小型のものを含めると計八基となる。
 更にプロペラント・タンクを兼ねたものが上部に二基、常設されているが、これに下部スカートに設置出来る巨大なプロペラント・タンク兼ブースターを加えれば、合計16基のスラスターを持つ。
 これがゼク・ツヴァイが巨体ながらも高い機動力を持つ「秘密」である。武装と装甲を増加させて機動力の低下した150tの巨大機を、並みの18m級MSと同等の機動力を与えるには逆説的に巨体を生かしたペイロードを最大に利用すること。これがペズンのXシリーズ開発チームの回答であった。

 武装はゼク・アイン第二種兵装形態のビームスマートガンを主装備とし、右腕ではなく左腕に装備する。可変グリップをサブ・アームが握り、メイン・アームはトリガーグリップを引く。片腕だけで巨大なビームスマートガンを操作できるのがゼク・ツヴァイ独特の特徴だ。

 前面スカートには射撃用ディスク・レドームと、三基のミサイルポッドを装着する。スカートの装甲そのものも厚く、ムーバブル・フレームによって接続・保持されている。
 
 頭部ユニットは縦に長く、60mmバルカンを装備する。センサーはモノアイ式だが、固定式で移動はできない。視界確保は首振りとサブ・センサーで補佐される。後頭部はセンサーで埋め尽くされ、連邦軍MSの中でも異様となっている。

 脚部ユニットはとてつもない重量を支えるために、通常のMSとはムーバブル・フレーム構造は大きく異なり、歩行能力は低く、歩行時には脚部装甲の一部が分割される。これは先のPMX-003THE・Oと同じ経緯を辿っていると言えるだろう。歩行よりブースターと着艦時のランディング・システム的な要素が強い構造である。
 こうした脚部構造は元々、空間戦を想定した機体であるため、脚部の歩行能力はあまり考慮されなかったものと思われる。

 こうして、重武装と装甲、プロペラントの塊であるゼク・ツヴァイは教導団のパイロットから「歩く武器庫」の異名で呼ばれるに至ったのだった。ゼク・アインが正常進化であるとすれば、ゼク・ツヴァイは異常進化、恐竜的な末期的進化を遂げたMSと言えるだろう。これはMSの性能と進化の限界という挑戦が命題にあったXシリーズ開発チームの成果の形でもあった。

 ゼク・ツヴァイはペズンの乱初期の戦闘では投入されず、基地放棄後の戦闘から投入された。基地放棄時に製作途中のものを急遽、艦艇に搬入したため、その後の組み立てや再整備は逃走中の艦船内で行われたためである。 結局、生産性が極端に悪い機体だったため完成した機体は3機のみで、ニューディサイズが確保したのも同数であった。
 3機のゼク・ツヴァイはその後の遭遇戦と、エアーズ市攻防戦に投入され、ニューディサイズの参謀役であったトッシュ・クレイ元中尉らが搭乗した。同市脱出時にも全機収容することに成功している。

 エアーズ脱出後の最後の作戦、連邦政府首都が置かれているダカール市と軍参謀本部の移転先であったチベットのラサへの降下作戦を敢行した時にα任務部隊の妨害にあい、防戦のために全機が出撃したが、この戦闘で全機が撃破され、ニューディサイズは全滅した。
 
 Xシリーズはこの後もRMS-143ゼク・ドライが構想として存在したが、実機が完成したのはこのゼク・ツヴァイまでであり、その後はペズン爆破によって後継機が生み出される機会は永遠に失われてしまった。

 RMS-143ゼク・ドライ

 RMS-141ゼク・アインRMS-142ゼク・ツヴァイに続くXシリーズの第三段階MSとして設計されたMSで、ゼク・アイン、ゼク・ツヴァイ双方の設計を統合させた発展型である。

 設計はゼク・ツヴァイの最終設計をほぼ終えた0087年末から開始され、ペズンの乱直前まで設計が続けられていた。先行機であるゼク・ツヴァイが試作的要素を持つ機体であったのに対し、最新のゼク・ドライでは初心に立ち返って、ゼク・アインの高い汎用性を受け継いだ量産機として想定されていた。
 ゼク・ツヴァイが早くも大型化の限界に挑戦した結果、恐竜的進化を遂げてしまったため、次の機体ではコストを含めたスリム化、コンパクト化を目指した。ツヴァイとは逆行する設計がゼク・ドライの特色でもあった。

 しかし、開発途中でペズンの乱が発生。兵器開発局のXシリーズ開発陣も決起兵によって拘束され、地球や月に追放されてしまったために開発は中断した。
 そして、実機が完成することなく、開発拠点であったペズンは反乱軍、ニューディサイズによって核で爆破され、Xシリーズの開発は無期延期、事実上の中断となった。

 ペズンから持ち出された構想スケッチによると、ゼク・ドライはゼク・アインより小型化された機体で、肩アーマーにゼク・ツヴァイから引き継がれたサブ・アームが一基づつ装備されていた。
 小型化にともなって、ジェネレーターも新規に設計されたものを搭載する予定だった。

 もし、ペズンでの反乱もなく、ゼク・ドライが予定通り開発が進み、量産機がロールアウトしていれば連邦軍の次期量産型MSに多大な影響を与えたものと思われる。